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37th lucky! 6.5話

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「ったくあいつ!」

強制的に切られた通話にいらついて、思い切り携帯を閉じる。

「本当、何考えてんのよ……」

車の窓から外を見ると、赤く染まった太陽が向こう側に沈みかけていた。



――――



白石が住んでる部屋の前に着き、その玄関をノックする。
すると中から走る音が近づいてきた。
そして予想通り部屋の主である白石ではなく、やっぱり予想通りみさおさんが出てきた。

「お、久しぶりー」
「久しぶり、みさおさん。白石の奴は居るかしら?」
「白石なら今さっきバイト行ったぞー」
「……そう」

白石の奴、本当にバイト行ったのね。
バイトのほうを優先する芸能人なんて聞いたことがない。
今度はどうしてやろうかしら……。

「大丈夫か?……なんか怒ってね?」

みさおさんが少し心配そうに声をかけてきた。
相当なしかめっ面をしてたらしい。

「そんなことないわよ。さ、そんなことより早く行きましょ」

私はケロリと表情を変え、みさおさんの手を引いて玄関の外へと連れ出す。
するとそのとき。

「……っと、そういえば」



そう言ってみさおさんは私の手を離して、急にドアの方へと戻った。
そして何かをポケットから取り出してドアノブへと差し込み捻る。

「あぶねーあぶねー」「それ、何?」
「ん、ここの部屋の鍵」
「……何でみさおさんがそんなもの持ってるのかしら?」
「今日からしばらくここに住むことになったんだよ」
「ふーん。……ってえええ!!」

驚きの余り声を上げる。
白石の部屋に……住む!?
一方のみさおさんは少しマズイ事をやったなー、みたいな顔をしていた。

「あ、やべ。白石に怒られるから今の忘れ」
「教えて」

みさおさんの服の襟首をがっしりと掴む。

「……か、顔が恐いぞ?」
「教えなさいよっ!」
「ちょっ、何す……うあああぁぁぁ」

そのままズルズルとみさおさんを玄関前から車中まで引きずり、前後に振り続けること約数分。
彼女は大人しく詳細を教えてくれた。

「なるほどね」

なんて羨ま……いやいや。
何でこんな無茶を許可したのよ白石。
芸能人って自覚あるの?スキャンダルになったらどうする気よ。

「でも、まあ仕方ないわよね……」



でもでも、やっぱり羨ましい……。
と、さっきまで真横で泡を吹いてたみさおさんが私に訪ねてきた。

「なあ、今日ってどこで仕事やるんだ?」
「仕事?」
「だって、その為に私が行くんだしさ」

仕事……か。

「今日のは仕事じゃなくて、買い物よ」
「へ?買い物?」

みさおさんは呆気に取られたような顔をする。

「でも白石が今日は仕事だって」
「嘘よ、嘘」
「何で嘘なんかついたんだよ。白石も結構困ってたんだぜ?」
「え、それは……」

言えない。
いくらなんでもこれだけは言えない。
その……恥ずかしすぎて。

「……ま、いっか。芸能人には芸能人の事情ってもんがあるんだろうしな」

みさおさんはそう言うと体を深く座席に沈めた。
助かった。何て言うか……細かい事を気にしない性格で。
そして今の言葉で思い出す。彼女に言えなかった理由。
そう、本当は――白石と買い物に行くはずだった――行きたかった、けど。

「はあ」



ため息をつく。せっかくの今日の考えが台無しだ。
最も、まわりくどいやり方をした私が悪いんだろうけどね。
やっぱり鈍い奴にはガツンとストレートにいったほうがいいのかしら……。
と、私のため息が気になったのか、再びみさおさんが体を起こして話しかけてきた。

「なんだよ、ため息つくと幸せが逃げちゃうぞ?」
「ため息はストレス発散にもなるのよ。知らなかった?」
「へぇー」

感心して頷くみさおさん。
でもすぐに頭の上に?マークが浮かんだ。

「あれ?でもそれだとため息ってついたほうがいいのか?それともよくない?」
「さあ、それはその時の気分次第じゃない?ま、それはそれとして」

みさおさんのほうを向く。

「それじゃあ改めてよろしく。みさおさん」
「おう。えーと……」

そう言ってしばらく難しい顔をしてから、

「名前なんだっけ?」

がくっ。

「ちょっと……」
「あははは。ごめんごめん、最近会って無かったから忘れちまった。私も人の事言えないなー」

いや、そうじゃなくって。

「私、芸能人なんだけど……。テレビにも出てるのよ?」
「ん、そうだっけ?」



……何だか心配になってきた。
大丈夫かしら。みさおさんも、私の知名度も……。



――――



マネージャーの運転で、私たちを乗せた車は都内へとたどり着く。
マネージャーにその場で待機するように伝えて、私たちは賑やかな通りへと足を運んだ。

「で、どこで買い物すんだ?」
「どこって……そんなの決めてないわよ」
「えー、マジかよー」

明らかに不快そうな声を出すみさおさん。

「何か嫌な事でもあるの?」
「なんつーのかな。私はあやのみたいに……ウィンドウショッピングってやつ?それがあんまし好きじゃないんだよなー。買いたいものだけ買って、さっさと帰る感じだし」
「……ねえみさおさん」
「ん?」
「本当に女の子なの?」
「……お前もそれ言うのな」

急に涙目になるみさおさん。
え、何?私のせい?

「私ってやっぱり女っぽく無いのか?」
「うん」
「うぐっ」

私のまっすぐな台詞がみさおさんの胸をえぐる。

「私の周りには言葉をオブラートに包んで話す奴は居ないのか……」
「気にしないほうがいいわよ。私がそういうの嫌いなだけだから」

実際に白石にもいろんなことをストレートに言ってきたし。

「よし!」



すると急に顔をあげるみさおさん。
しかもなんだか元気が出てるっぽい。

「気分転換だ!ウィンドウショッピング行くぞー!」
「ええ!?ってちょっと待って!!」

思いきり私の手を掴んで走り出すみさおさん。
大丈夫かしら……。



――――



そして三時間後。

「ぐぇ~……」

そこにはやっぱりぐったりとベンチに倒れ込むみさおさんが居た。

「どう?女の子っぽく過ごした感想は?」
「女の子……厳しい……がくっ」

その言葉を発した口から魂が抜けかけている。

「……なあ。さっさと帰ろうぜ……」
「もう少し休んだほうがいいんじゃない?お互いに」

流石に私も三時間歩きっぱなしで疲れたし。

「みさおさん、少し質問してもいいかしら?」

そこで、さっきから何となく気になっていたことを聞いてみた。

「白石のこと……好きなの?」

宿泊を白石に頼ったから、という理由だけなんだけどね。
まあただ単に私の勘違いだろうし、そんなに気にすることじゃ

「好きだぞ」

……へ?
目の前に居る人の言葉に唖然とした。

「あ。で、でも男の中だけの話だからな?本当だぞ?」



必死に弁明するみさおさん。
それが、私に少しばかりの不安を与えた。
……もう少し聞いてみよう。

「本当に好きなの?」
「だから、男の中だけなら好きって言っただろ?そういうお前のほうはどうなんだよ、お前は」
「わ、私?」

これは思わぬカウンターが来た。

私は……白石のことなんて好きじゃないわよ」
「本当かー?」

みさおさんはニヤニヤしながら私の顔を覗き込んできた。

「いいじゃないの、別に言わなくたって!」
「自分が聞かれるその態度かよー。言わないとなあ……こうしてやるっ」

そう言われた直後、みさおさんに脇腹をがっしりと掴まれる。
まさか……。

「み、みさおさん?」「とりゃ!」

こちょこちょこちょこちょ。

「あははははは!」
「ふっふっふ。どうだ、私の自慢のくすぐりは!」
「ちょ、ちょっと。や、やめ、あはははっ!」
「やめろって言われてやめる奴がいるかー!」
「ほ、本当に!や、やめて!ははははっ!」
「おらおらー!まだまだー!」

都会の真ん中のベンチに、二人の嬌声が響いた。
その後。ベンチの上には重なり合うようにして死体のようにだらりとなった私とみさおさんが居た。



―――





マネージャーに私たち二人を回収してもらってから今、白石の部屋の前に居る。
と、そこでみさおさんが当然の疑問を口にする。

「なんで小神はここで降りたんだ?」
「私、白石の部屋に入ったこと無いのよね」

なんだかんだで、私は今まで白石の部屋に来たことは無かった。
……まあ来る機会が無かっただけなんだけれど。

「と、いうわけで。しばらくお邪魔させて貰ってもいいかしら?」
「どーぞどーぞ」

今の理由で部屋に入ることに疑問を持たないのか、まるで部屋の持ち主のような態度のみさおさんの後ろについていく。
さて、あいつが私をここで見たらどんな顔をするんだろう。













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  • 8話にも期待です。この話好きです。 -- 名無しさん (2008-01-06 08:18:38)
  • 白石が何か事を起こしてもそれに注目する記者はいないと思うww とにかくGJ!
    8話に期待してます -- 名無しさん (2007-12-30 20:14:20)

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