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彼女は遷移状態で恋をする-こなたside-(6)

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  • 彼女は遷移状態で恋をする こなたSide(6)


「泉ちゃんだっけ、よろしくね」
「よろしくぅー……ってチビだなぁ、本当に同い年なのかぁ?」
 峰岸さんと日下部さん……かがみのクラスメイトだという二人が突然現れた。
 そして今は、その彼女らと三人。
 みゆき君とつかさは、かがみの襟首を捕まえてどっか行っちゃった。
 でも……クラスメイト、かぁ。
 私はかがみのそんなカテゴリにも入ってない……羨ましいな。
 あ、だ、駄目駄目。
 何暗くなってるんだろっ、笑顔笑顔。
「いやぁー、こっちこそよろしく。うちのかがみがいつもお世話になってます」
 と、わざと馬鹿にした風で頭を下げる。
 あはは、これぐらいでいいよね。
 ……ん? 笑い声くらいくるかと思ったんだけどなぁ。
「いやいや、こっちこそ。うちの柊がお世話になってっからよー」
 少ししてようやく日下部さんから返事。
 印象としては活発な感じ?
 八重歯が特徴的だね、よく笑うし。
 こりゃ隠れたファンが居そう。
 ……。
 ん?
 今なんか……喧嘩売られなかった?
「いやいや、うちのかがみが」
「いやいやうちの柊が」
 そしてよく分からない言い合いが始まる。
 な、なんの戦いしてるんだろ私ら。
 でもなんか……引きたくないな。
「ほらほら、その辺にね?」
 そこで間に峰岸さんが入ってくる。
 こっちはこっちで美人。
 歩く姿は百合の花……ってのは言いすぎだけど、華があるのは確か。
 そういや友人A(仮称)が言ってたっけね、可愛い女子が居るって。
「お待たせしました、では行きましょうか」
 少ししてみゆき君とつかさが戻ってくる。
 妙にみゆき君は笑顔で、つかさは何処か威圧感を放ってた。
 な、なんか二人とも……怒ってる?
 あはは、まさかねっ。
「あ、大分人増えてきたね」
「そりゃお祭りだもんなー、皆来るだろ」
 六人で駅からお祭りの場所まで歩く。
 すると予想通りに人が少しずつ増えていき、見る見るうちに視界が埋まっていく。
 うーん、皆考えることは一緒だね。
 夏、お祭り、花火。日本人なら外せないねっ。
「ぬおっ!」
 と、そこで雑巾を絞ったような声が響く。
 ん? 日下部さん?
 ああ、雑踏に押されたのかな。
 まぁ浴衣って動きにくいもんねー分かる分かる。
 私も何度つかさやみゆき君に支えられたか……。
「ほら、大丈夫か?」
「ん、あっ……あんがと」
 倒れた彼女に、かがみが手を差し伸べる。
 ……。
 いいな、って思うのは……私が馬鹿だからかな。
「みさちゃんまだ浴衣になれてないんだって、柊君エスコートしてあげてよ」
 峰岸さんが、二人の間に入る。
 その言葉を聞いて……また、心臓が揺れる。
 嫌だな……多分これ、一番みっともない感情。
 無視できないその感情が……心を蝕む。
「エスコートつっても、俺は良く分からんぞ?」
 心臓が暴れる。
 多分それは……嫌だから。
 嫌?
 そうだ……嫌なんだ、私。
 そんなかがみ……見たくない、から。
「大丈夫大丈夫、倒れないように手繋いでるだけでいいから」
「……っ」
 思わず上げそうになった声を、殺す。
 駄目。
 考えちゃ駄目。
 そんなの、気にしなければいいんだから。
 手なんか繋いだって、別に何もない。
 支えてあげないと転んじゃうなら、危ないから!
「手? 俺はいいけど……」
 そのまま、手を差し出すかがみ。
 危ないから仕方なく。
 危ない……から。
 ……。
 私だって……危ない。
 浴衣だって着慣れてるわけじゃない。
 じゃあ……言う?
 かがみの前にちょっと出て行って、言う?
 私も……お願いって。
 だって片手は空いてるから……うう、また私変なこと考えてる。
「じゃあ私も、お願いしよっかな」
「ぬおっ!」
「あっ……」
 その時だ。
 私よりも。
 日下部さんよりも先に……峰岸さんが、その手をとった。
 それと一緒に、心臓が切り裂かれる。
 ……ほらね。
 期待したら……こうなる。
 みっともなく心臓を跳ねさせて。
 みっともなく切り刻まれる。
 その度に苦しくて……哀しくて。
 なのに……抜け出せない。
「あははっ、両手に花だねっ。かがみ」
「うっさい、仕方なくだ。仕方なく!」
 そのまま右手で日下部さんと手を繋いだかがみを、からかう。
 そんな自分が惨めで……空しい。
 私、嫉妬してるんだ。
 かがみと手を繋いでる、二人に。
 そんなの……無駄なのにね。
 視線を下ろすだけで、私の体が視界に映る。
 それが滑稽で惨めで……憎らしい。
 同世代のそれと比べてどう?
 小さい背。
 張りのない胸。
 幼い顔立ち。
 どれをとったって……目の前の二人には敵いやしない。
 それに浴衣……だって。
『浴衣、似合ってるな』
 かがみの言葉が反響する。
 私にじゃない、『二人』に向けた言葉。
 それを、言って欲しかっただけなのに。
 私に……ただ、一言。
 その一言が聞きたくて、朝から押入れをひっくり返して。
 お父さんにも着付け手伝ってもらって。
 髪型だって、何度も見直して。
 でも結局……そんな言葉が返ってくるはずもなくて。
 ……。
 何でだろう。
 視界が……滲んだ。
「あ、そろそろ始まりますよ」
 みゆき君の声が聞こえた。
 それに合わせて、皆が空を仰ぐ。
 空に花火が光ってて、良かった。
 私の背が、一番小さくて良かった。
 零れた涙を、誰にも見られなかったから。
 きっと……駄目、なんだよね。
 あははっ、何を考えてたんだろ。
 かがみが好き?
 そんなの……駄目。
 駄目に決まってるじゃん。
 一瞬ですらそんな事……考えちゃ駄目だったんだよ。
 好きでいる事すら駄目だって、神様が言ってるんだよきっと。
 大丈夫、ほら花火を見よう。
 空はきっと、百花繚乱。
 カラフルにデコレートされた空に、皆も目を奪われてる。
 だから、今のうち。
 今のうちに……涙、拭かなきゃ。
「……こなた?」
「!」
 声が耳を、劈いた。
 聞きなれた声。
 私の心の中で、暴れる彼の声。
 かがみの……声。
「あ……」
 かがみと、目があった。
 空に広がっているはずの満開の花火。
 その咲き乱れる破裂音をBGMに、皆が空に見惚れてる。
 なのにその中でかがみだけ……。
 かがみだけが……私を、見てた。
 涙の零れた、みっともない顔の……私を。


















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