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カケラ 9

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匿名ユーザー

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9.

ひっく………ぐすっ………ひっく……………

洗面所で何度も何度も顔を洗う。備え付けの石鹸は一回り小さくなってしまった。
文字通りの「冷水」で顔を洗って、ようやく私は落ち着いた。
側にあった冷水器で水を飲む。

「いつまでも泣いてたらお母さんに笑われる。頑張って現代に帰らなきゃ」
タオルで顔を拭きながら、自分にそう言い聞かせて客室へと戻る。

客室に入る。
私の席の隣に誰か座っている。
女の人だ。
歳は……………私より年下? 少なくとも同い年みたい。

「あ」
目が合った。

客室内の奥へ進むにつれ、一番奥から3番目の列に座っている『彼女』のディテールが段々と明確になっていく………。
(ま、まさか?!)
わずかな期待と戸惑いを同時に抱く。
段々段々胸がドキドキしてくる。
そして、遂に私の席の前へ着いてしまった。

私と同じくらいの背丈。
華奢でか細い体つき。
白く滑らかな肌。
同じ蒼のロングヘア。
エメラルドグリーンの瞳。

再び、目が合う。
私の座席は窓側で、彼女は通路側に座っている。
「すみません」
と声を掛けると、彼女は席を立って私を通してくれた。
私がショボい割にどっしりとした座席に腰を落ち着けると、隣の女性は私に予想外の言葉を放った。

「『泉、こなた』さん、ですか?」

私の名前を知っている?
彼女を改めて見る。

私と同じくらいの背丈。
華奢でか細い体つき。
白く滑らかな肌。
同じ蒼のロングヘア。
エメラルドグリーンの瞳。

(ま、まさか………)
「おかあ………さん?」
「分かってくれたのね? 嬉しいわ」
隣の女性は開いた口が塞がらない私の顔を見て、ふふっと頬笑んだ。

………
……………
…………………

私の中には『お母さん』の記憶は全くない。
お母さんに対する嫌な思い出があった訳ではない。
私の場合、物心が付いた頃から『お母さん』という存在を知らずに18年間育ってきた。
つまり、私のお母さんは、私が物心のつく前に亡くなっているということだ。
お母さんが亡くなったのは今から18年前。そう、私が生まれてすぐの事だった。

今はちっとも寂しくないけれど、時々、お母さんの事を考えることがある。

お母さんはどういう気持ちで私を生んだのだろうか?

お父さんの話によると、お母さんが身籠もったのはお母さんが余命宣告を受けた後の事だったらしい。
お母さんの病気は子供、つまり私には先天性の障害を持つといった病的な悪影響は非常に小さいとのことだったが、
代わりにお母さんが出産時に力尽きてしまう危険性が非常に高かった。
それでも「一人でもいいから子供を残したい」というお母さんの強い希望によって、私を産む事を決意したらしい。

成人した人間の場合、一般に3歳以前の『記憶』は一切無いと言う。
余命2年と宣告されたお母さんは私を産んだ3箇月後、予定よりも1年半早く天国に行った。
記憶が無いので、お母さんが死んだショックは全くなかった。
ただ、私が生まれて来なければ、お母さんはあと1年半生きられたんだなぁと思うと何だか胸が痛む。
「かなたはお前を産んで本当に良かったと言って最期を迎えた。産んでなかったもっと後悔していたかも、って言ってたぞ」
そう言ってくれたのはお父さんだった。
普段は優しくてちょっと変なお父さんだけど、時には厳しく叱られたし、特にしつけに関しては親戚よりも厳しかった。
一時期はいじめを理由に荒れていた時もあったけど、それでもお父さんはお母さんの分まで愛してくれた。
だから、『母親の愛情』を知らなくても、それなりに幸せだった。

でも、一度だけでいいから、お母さんに会ってみたかった。

訂正。
『母親の愛情』を全く知らない訳ではない。
お母さんの一番の愛情は、私を生んでくれたことだ。
お母さんが私を産まなかったら、私はこの世に存在していなかった。

…………………
……………
………


「──た、こなた」
「…………??」
つん。
誰かが私の左頬を突く。
「ふぉわ!!」
「大丈夫? ずっとぼうっとしていたけど」

意識が戻った。
どうやら私は『お母さん』の事を想うあまり、魂がふらふらと抜けてしまった。
「い、いやぁ………あの………その…………、ちょ、ちょっと、昔のことを思い出しちゃって………」

私の隣の席に座っているのは『本物の』お母さんらしい。
いや、この当時はまだ結婚していないから、お母さんではない。
ややこしいのでここでは『かなたさん』と呼ぶことにしよう。
先ほど自己紹介をしたけれど、今私の隣に居る女性(ひと)は、お母さんの旧姓と一致する。
能登半島の矢波という集落の出身であること、私の父・そうじろうを知っていることから、
隣にいる『かなたさん』イコール『私のお母さん』で正しいだろう。

あまりにも信じがたい『偶然』に、私はただただ驚いていた。


「この世(ヨ)にはね、『偶然(グウゼン)』というものは存在(ソンザイ)しないの。有(ア)るのは全て『必然(ヒツゼン)』」
どっかの酒好き魔術師と同じ事を言うかなたさん。
言葉の一つ一つに片仮名のヨミが振ってある……様な気がする。
「じゃあ、私が『貴方』とも出会うのも………」
「そう、私と『こなた』がここで逢うのも必然。理由は何であれ、私とこなたはここで逢う必要があったの。
 今まで起きた事(コト)、今起きている事、これから起こること、それぞれには全て意味(イミ)があるのよ」

お母さんが今生きているとしたら40代後半。計算すると、この時代のかなたさんは私と同じ18歳となる。
意外と年増に思えるのは、多分、ゆきおばさんが16歳でゆい姉さんを産んでいるせいだろう。
あの時は親戚じゅうで大騒ぎになったらしい。

「どうして、私に逢う事が分かったの?」
初対面の人には敬語を使いなさい、とお父さんに躾けられたけど、ここでは敢えて普通に話す。
同い年だし。
「それはね、私が数年後の将来、貴方の母親になるからよ」
「はぁ…………」
長門有希よろしく電波話を続けるかなたさんに、開いた口が塞ぐ気配すらない。喉が渇いてきた。
「夕べね、夢を見たの。
 神さまがね、私に言ったの。
 『貴方は明日、未来から来た自分の子供に会うでしょう』って。
 最初は吃驚しちゃった。
 だって、結婚どころか、好きな人は………」
少しの間。かなたさんは言葉を選んで、続ける。
「……まぁ居るけど、まだ男の人と付き合うことすら考えた事の無い私に、
 将来生まれる子供と逢う事になるんですもの。
 本当に逢って驚いちゃった」

これは夢かまぼろしか?
私は昭和50年代に飛ばされた『夢』を見ているのか?

いや、今起こっている事は、全て『事実』だ。



それから私は、自分の事を色々と話した。
と言っても、『現代』でしか通じない話題……特に自分の趣味の事に関してはなるべく言わない様にした。
前者は、まぁ、『場の空気』を読んだ結果で、後者は、ちょっと恥ずかしかったから。
でも……、
「私も漫画、大好きよ? テレビアニメも、あまり観させて貰えないけれど、結構好き。
 そうね、今は『キャプテンハーロック』とか、『銀河鉄道999』とか、『ガッチャマンII』とか、
 男の子が好きそうなモノが多いかも。一番好きなのは『未来少年コナン』かな?
 後は『ヤッターマン』とか『ペリーヌ物語』、『ルパン三世』も観るわ」
懐かしいタイトルが出てくる出てくる。てか、コナンは『バーロー』方じゃないのか。
『999』や『ヤマト』は今でも人気があるし、主題歌もよく耳にする。
ルパン三世は今年も金曜ロードショーでやってたしね。

何よりも驚いたのは、お母さんが大のアニメ好きだった事だ。
これはお父さんからも聴いていない。というか、お父さんの方がハマっているので気付かなんだ。
結局、私とかなたさんの『超濃厚なアニメ&漫画トーク』は終点の新潟駅まで続いた。

窓の向こうは無彩色の雪景色。その先に広がるのは鉛色の日本海。
見てるだけで背筋が凍る程寒い雪の日だったけれども、私達の心はぽかぽかと暖かかった。


特急「いなほ」号は始終大雪だったにも拘わらず、5分遅れただけで新潟駅に到着した。
東武だとちょっと積もっただけで全線ストップするのとは対照的だ。
やっぱり、雪国を走る列車は雪に強い。当たり前田のクラッカーだけど、関心した。感動した。

『新潟ー新潟ー、何方様もお忘れ物御座いません様お気を付け下さい。
 長岡より直江津、糸魚川、富山方面、金沢行き特急「北越」号は─────』

「よっと」
ヒータで熱せられたステップに火傷しない様に注意しながら、新潟駅の低いプラットホームに降りる。

『───番のりばへお越し下さい。
 長岡より越後湯沢、水上、高崎、大宮方面、上野行きエル特急「とき」号は………』

新幹線もまだ開業していない新潟駅。
ここもまた、深い雪に閉ざされていた。
ホームは地方都市のターミナル駅らしい賑わいを見せる。
今日は平日だけど、多くの人が大きな荷物を持って歩き回っていた。
雪の灯りが眩しすぎて、屋根の下のホームはとても暗く感じる。
目の前では「ブーン」という電車の送風機の音、向こうのホームでは「ガラガラガラ」というディーゼルエンジンの音が静かに響く。
先ほど、隣のホームに居た赤と黄色の電車が発車する。
昔野田線で走っていた、やたらと喧しい電車と同じ音がした。
懐かしいような懐かしくないような……。

階段を上って、私達は一旦改札を出る。
「途中下車します」と言うと降りられる事を知ったのは、以前みゆきさんからうんちくを聞いたから。
切符そのものも有効期間が長く、途中で泊まるために改札を出る人も多いらしい。

それはさておき、私達はお腹が空いた。
改札の外で一軒の蕎麦屋さんを見付けたので、そこで腹ごしらえをすることに2人で決めた。

かなたさんは金沢へ向かうとのことで、次に乗る列車も同じ「北越」号とのこと。
私も3駅手前の富山まで行くので、お昼は一緒に食べることに決めたからだ。
駅で蕎麦屋さんと言えば大抵「立ち食い」なのだが、ここのお店はテーブル席もあるので有り難い。
「月見蕎麦2つ」
「まいど」
威勢の良いおじさんは、すぐに麺を湯がく。あの道具って何て名前だったっけ? ウチには無いから分かんないや。
手際よく盛り付け(といっても蕎麦の上につゆをかけて、ネギと卵を載せただけだけど)られた月見蕎麦は、
あっと言う間に完成した。
「へいお待ち」
2人前の月見蕎麦をトレイごと受け取って奥のテーブル席へ。場所はかなたさんに確保して貰っていた。


じゅるじゅるじゅる─────

つるっとした喉越し。うーん、旨い!
ここの蕎麦屋さんの出汁は関東とも関西とも微妙に違う、独特な味わいだった。
これが新潟の蕎麦なのかな? 今度再現してみるか。
蕎麦そのものはコシの強いやたらと歯応えのあるもので、『喉で食べる』らしい生粋の江戸っ子は喉を詰まらせてしまうかも知れない。
因みにウチの場合はお父さんの口に合わせているので、市販の関西出汁に鰹節と味醂を加えている。

美味しい蕎麦はあっと言う間に食べ終わってしまった。
食べている間、私とかなたさんの間に会話は一切無かった。
ただ単に食べていることに夢中だったからだったりする。

「ごちそうさまー」
「ご馳走様です」

店を出る間際、厨房のおじさんに「姉妹で仲良しでいいねぇ」と声を掛けられた。
私とかなたさん、お互い顔を合わせてクスリと照れ笑い。

さて、駅蕎麦で腹ごしらえをした私達は、いよいよ「北越」号に乗車。
指定された座席は偶然なのか、やっぱり必然なのか、お隣同士だった。

「北越」号の車両は「いなほ」号と色は同じで、先頭車の形が違っていた。
「北越」号は私が『現代』で何度か乗ったことのある「能登」号と良く似た車両で、前が出っ張っているやつだ。
座席は「またグリーン車かな?」と少し期待していたのだが、残念、特急券は普通車指定席だった。
車内は「能登」号そのものである。何だか矢波の親戚の家に行くような気分だなぁ。
お父さんも、ゆきおばさんも、おじさんも、ゆい姉さんも、ゆーちゃんも居ないけどね。


さて、富山まではまだまだ時間が掛かる。
私は座席を倒して寛ぐことにした……………のだが!!

「何でこの電車、リクライニングしないの?」

何と「北越」号の普通車は、ただ座席の向きが変わるだけのお粗末仕様だった……。
何だか先行きが不安になって来たよ…。とほほ。






間.

その『穴』は直径10メートル程もある大きな穴だった。
峰岸のエスティマなら楽に入れる大きさだ。
「試しに入れてみようか」と冗談で言ってみたところ、彼女は何も答えずに『穴』を指さし、
「まずアンタが入れ」と冷たく答えた。コイツには『ボケとツッコミ』の概念が無いようだ。
面白くない奴だな。たまには妹を見習え。

穴はコンパスで描いた様な綺麗な円形であり、その縁は巨大なカッターナイフで切ったかの様に綺麗なエッジを形成している。
試しにそこらに転がっている石を投げ入れる。相当深い穴の様で、石が下に落ちる音がするまでに数秒を要した。
当然ながら、おれが持ってきた超大光量懐中電灯で照らしても「底」は見られなかった。
おっと、この電灯は電気を喰いまくるため30分で電池が切れる。

おれが『穴』について調べている間、峰岸には見張りを頼んでいた。
と言っても、周囲にはフェンスと橋脚しか無いので、誰か(特に警察)来てもすぐに隠れることは難しそうだ。

一応、何枚か写真を撮っておく。
朝は晴れていた空は次第に曇り始め、今にも雨が降りそうだ。
高架橋の春日部側は重機が橋を崩す音と、自衛隊の叫び声が聞こえる。
おれと峰岸は現場から200メートルほど離れた位置に居るが、それらの音が良く聞こえる。
それ位、辺りは静まりかえっていた。

おれは改めて『穴』を覗き込む。
冗談みたいな正円からは、微かに冷気を感じる。
そんなおれに、峰岸が後を向いたまま声を掛ける。

「どう? 何か分かった?」
「いや、さっぱり。『穴』の形が妙に綺麗で、えらい深さがありそうな事くらいだな。

 事故との関連性は……今のところ無いかも」
本当に分からない。
一体誰が、何のために、こんな所へ『穴』を開けたのか?
謎だ。謎過ぎる。
特にこの上を鉄板や何かで塞いだ痕跡も無いし、最近になって穴を掘った気配は無い。
今立っている所は土で出来ているが、おれらが立ち入るまでは殆ど無かった。
夕べ東武鉄道のサイトで見た高架橋の検査結果報告書(の抜粋)にもこの『穴』の報告は一切無い。
検査報告書がサイトにアップされたのは先月なので、この穴は11月半ばから昨日夕方までの間に開けられたものと考えられる。

「こりゃちょっと調べるのに時間が掛かりそうだ。雨も降りそうだし、今日はここで引き揚げるか」
「そうね。そろそろあやの達も下校時刻だから、迎えに行かなくちゃ」
そうだった。今日は午前授業だったんだ。
収穫は少なかったけれども、『穴』の情報が幾らか手に入ったからまあ良しとしよう。

おれと峰岸は誰も居ない事を確認して、裏道を遠回りして車の方へと戻った。


おれを乗せた峰岸の車は、一旦稜桜高校へ行ってみさお達を乗せる。
ついでに同じ方面で最近みさおが泉こなたちゃん経由で知り合ったらしい3人の子も送っていく事にした。
2列目に座っているのはみさおとあやの。みさおは朝からずっと元気が無い。あやのはそんなみさおをずっと気に掛けている様子。
3列目に座っているのは1年生の子達で、名前は小早川ゆたか・田村ひより・パトリシア=マーティンという名前だった。
小早川ゆたかちゃんは泉こなたちゃんの従妹だそうで、幸手市に住んでいるとのこと。
留学生のパティは姫宮、田村ひよりちゃんは杉戸町で、それぞれの距離は比較的近い。

さて、

「みさお、どうだった?」
「ん? ………………ああ」
みさおはゆっくりと顔を上げて中途半端に返事をしたが、すぐに黙ってしまい、下を向いてしまった。
無理もない。自分の大切な友達が事故に巻き込まれた『かも知れない』のだから。
あやのが代わりに答える。
「柊ちゃん、今日、学校に来てなかったの。今朝、おばさんが連絡を入れたみたいで、柊ちゃんも妹ちゃんも全然連絡が取れないって……。
 ゆたかちゃんにも訊いてみたんだけど、泉ちゃん、昨日から家に帰っていないって…………。
 それと────」
「────緊急の全校集会があって、その時に三郷が死んだって連絡が入った。
 他に8人が行方不明…………」
みさおがやっと、重い口を開いた。『三郷』とは、みさおの陸上部の友達である。
目元が潤んでいるのがバックミラーごしで確認出来る。みさおは一生懸命堪えているけれど、今にも泣き出してしまいそうだ。
「学校でも亡くなった生徒が5人ほど居て、行方の分からない生徒も何人かいるみたいっス」
「お姉ちゃん…………お姉ちゃん…………ぐすっ」
「ダ……大丈夫デスヨ。きっと今頃アキb……コナタはスグに帰って来マスって」
「ほら、泣かない泣かない。先輩達、すぐに帰って来るよ」
「みさちゃん、………ほらっ、泣いちゃだめ………っ……うっ…………ね」
「わ…………分かってるよ……………でも……でも………………」
遂にみさおが泣き出してしまった。あやのの涙腺も崩れてしまった。
帰りの車の中は、とても重い重い空気で包まれた。


おれはさっきから他人事のように話しているが、決して無関係ではない。
実は先ほど、携帯電話にメールが入り、やはり、社内でも事故に巻き込まれた人が居たらしい。
特に親しかった同僚は今、病院の集中治療室で治療を受けているとのことだが、意識はまだ戻っていないという。
おれの家族と峰岸の家族が無事だった。それだけでもラッキーだったと思う。
残念ながらみさおの友達が1人亡くなってしまった。妹が世話になった。

おれの中に怒りがこみ上げてきた。
一体何故、事故が起きたのか?
どうして、橋が崩れたのか?
もしかすると、『誰か』が橋を破壊したのか?
おれは専門家ではない。しかし、この事故の『鍵』は何処かにある筈だ。
怪しいのは…………例の『穴』。
もしかしたら、あの『穴』に今回の事故の『鍵』が隠されているのかも知れない。


最後にわし宮団地第3街区の前でおれとみさおを降ろして貰い、おれはみさおの手を引いて帰宅した。
昼飯を食べた後、おれは急いパソコンを持って役場の近くにある町立図書館へと向かう。
「兄貴ぃ……」
「ちょっと、図書館へ行ってくる。すぐ帰ってくるから留守を頼む」
両親は今、共に働きに出ている。
「行かないで…………」
上着の裾を引っ張る我が妹。気持ちは分かるが、これは『事故』(or事件)のためでもある。
「すぐ帰るから。な」
「嫌だ」
「ほら、もう行くから、ごめんな。すぐ帰るから、な」
裾を引っ張る手をちょっと強引に引き剥がし、おれは家を出た。
外は生憎の雨。仕方ない。歩いていくか。



この時、おれは全く『予想』をしていなかった。
まさか、自分の妹が……………………………、












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