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続 ここにある彼方(5)

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匿名ユーザー

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「あら?これが洗濯機、変わった形してるわね?」
脱衣所に鎮座しているドラムタイプの洗濯機にかなたが見入る。
「ああ…買い替えたばかりなんだよ。乾燥機能付きの。でも乾燥皺が付きやすいから、結構運用が難しいけど」
「乾燥機能?洗濯からそのまますすいで乾燥するってこと?」
「そうそう。梅雨時とかなかなか重宝したよ」
「へぇ~~今はすごいものがあるのね」
「まぁね。前から買おうよっては言ってたんだけどね。前のがちょうど壊れてね。いやー、便利ですよこれは」
しげしげと見入るかなた。
「…時の流れってホントにすごいわね…」
「そのうち、食器洗浄機も導入するかもね♪」
「え?そんな物まで一般家庭に?携帯電話とかもそうなんだけど…なんかすごい時代なのね…」
「だってもう21世紀ですよ?」
「…ああ、そういえば、そうね。ふふふ、21世紀って言われてもピンとこないけどね(笑」
「今を生きてる私も、ピンとはこないけどね。全然SFちっくなことは起きてないし、基本、何も変わんないよ」
「それでも、20年近い時をまたいだ私にはすぐには理解できかねるものがあるわね…」
「まぁ、そんなものなのかな?」
こなたが、服を脱ぎ始める。
かなたも、同じく脱ぎ始める。
同じ服が二着、脱衣所のかごに入れられる。
「うーーん、こうして見ると、ホントーにそっくりだよね。まるで鏡でも見てるみたいだよ」
「ほんとにね、なにもここまで似なくてもいいかと思うけどね」
こなたが、思わず見入ってしまう。
「へへ…なんか、お母さんと似てるって…上手く言えないけど…うれしいもんだね」
「ふふ…言われる方もうれしいものね…でも、わたしみたいなお子様体型でもなの?」
「ふっふっふっふっ、そこら辺も大丈夫だよ。相手選ばなければ、需要はばっちりあるよ!」
「じゅ、需要って…」
思わず苦笑いする。
「…そう君みたいな人?」
「…うぅ…ちょっとは相手選ぼうかな…」
「あらあら、そう君じゃダメ?」
やっぱりそうなの?といった感じで困った笑顔をみせる。
「ダメってこたぁ無いだろうけど…オタなのもいいけど…もうちょっとこう、常識みたいのがある方が…」
どこか遠くを見つめる…
「…そこまで酷かったかしら……もしかして…わたし、感覚がマヒしてるのかしら…」
額に手をあてつつ、しばし考え込む。
「いや、お母さんが知ってるお父さんよりもきっと、ぱわーあっぷしてるんだと思うよ?」
「…ぱわーあっぷですか…それはそれで、困ったものです…」
こなたのあたまにスッと手を伸ばし、軽くなでなでする。
「でも、あんな父親なのに、こなたはこんなにいい子に育って…よかったわ…」
「…いいこだなんて…なんか、照れちゃうね…」
「ン~、さて、続きはお風呂に入ってからにしましょ?裸でこんな所で話すことでもないし」
「あははは、そうだね。さっさと入ろう!」


シャワーの前に二人で横に並んで、各々身体を洗い始める。
「椅子とか二組あるのね」
「ゆーちゃんと二人で入る時もあるしね。極稀にゆい姉さんも入れた三人ってこともあるし。シャワーそのものは
1個しかないから、風呂桶とかも使って、うまく使い回さないといけないけどね」
こなたが、お風呂の椅子に座ると、その長い髪が床に到達する。
立ったままのかなたが、何気に見入ってしまう。
「ん?なに?お母さん?」
問いかけられ、我に戻る。
こなたの頭をなでつつ、隣の椅子に腰を落とす。
「えっと、そのね…髪の毛、随分長いわね…お手入れ大変でしょ?」
「ああ~…へへ、頭洗うのは、ちょっと面倒だけどね…まぁ、もう慣れたから、あまり問題でもないかな?」
「そういえば、伸ばしてる理由とかってなにかあるの?」
「ん~理由かぁ…そ、その…お母さんみたいにしたいなって思ったことかなぁ…」
なにか微妙に恥ずかしげに答える。
「そういうお母さんは?」
「へ?わたし?……んん~と…そう君がね、やっぱり髪長い方がかわいいって言ってくれたことかな?」
これまた恥ずかしそうに答える。
「おおっと、お父さんの趣味なんだ…なるほど、むかし、わたしが『髪伸ばす』って言ったら、お父さんうれしそう
にしたのはそういうことだったのか…つーことは、わたしはストライクど真ん中な訳か…」
「ストライクど真ん中って…」
困った笑みを浮かべる。
「ん~~~、お父さんってばああ見えて、ストライクゾーン狭そう…っていうか、お母さんがストライクの基準
なんだろうなって思うんだよね。なんのかんのいって、お母さんにベタ惚れだもんね…わたしがここまでお母さん
に似てなかったら、今みたいにあそこまでぺたぺた引っ付いてはこないと思うし…ねぇねぇお母さんにもぺたぺた
引っ付いて来てたの?」
「ええっと…まぁ、それなりには…ね。いや、いつも気がつくと抱っこされてたような気もするけど…でも、
夫婦なんだし、わたしも好きだったし、気にはしてなかったけど…娘に…それも、こんな年頃の子にするって
いうのが…うーーん…やっぱり、いくら寂しいからとはいえ…後できっちりお話しないといけないかしら…はぁ…」
身体を洗うのを一旦やめて、頬に手を添え、ため息をしつつ少し遠くを見つめる。
「お、お母さんの時からだったのか…」
ほぉ~っと、なぜか感心する。
「まぁ~、お父さん曰く愛情表現らしいけどね…お母さんが相手ならちっとも不自然じゃないよね」
「…そうね…わたし相手ならね…確かに、ね…」
下を向き、どーーーんと沈み込む
「おぉぅ……ちょ、ちょっとお母さん?そ、そこまで凹まなくてもいいんじゃない?」
「なんかね…いろいろとね…これからのこととか…心配です…」
(むー…お母さんってば、悪い方向の思考がグルグルと頭の中でも駆け巡っているのかな…)
「お母さん?」
下から覗き込むようにして話しかける。
「ん?」
「きっと大丈夫だよ。これからのことを、そんな心配しなくてもさ」
すくっと立ち上がり、かなたの後ろにまわり、背中に抱きつく。
肩に顔をのせるようなカッコで頬寄せ、
「お父さんもそのうち子離れするって…多分、成人式あたりで一区切りすると思うよ…」
「ふぅ…だと、いいんだけどね…」
「今までのが、ロリコンスケベおやぢだからだけじゃないってのがよーくわかったし。やっぱり、わたしにお母さん
がダブってるんだと思う。だから、どっかで、自分で線を引いてくると思うよ」
「ぷっ…ロリコンスケベおやぢって…確かにそうね…でも、それ以上に父親として自覚はあるようですしね」
すこし表情が明るくなったようではある。
「そーだ、お母さん…背中、流してあげるね」



「…じゃ、お願いしちゃおかしら」
「そいじゃ…」
わしゃわしゃとタオルを泡立てて、背中を洗っていく。
「……お母さんって、やっぱ色白だよね」
透き通るようなその白さに少し見入ってしまう。
「そ、そう?こなたみたいに運動が得意じゃなかったし、あんまり外で遊ばなかったからってのもあるのかしらね」
「あ~でもお母さんのイメージ的にはそうかも…そうそう、だとしたら、お父さんって運動神経よかった?」
「過去形で聞くってことは、今はダメなの?」
「ん?いやー、お父さんが運動してるとこ見たことないから、どうなのかなーって。ほら、わたしの運動神経の良さ
は遺伝なのかなーって」
「あ~なるほどね。そう君、昔からみんなより一回り大きくてね、クラスでも1、2を争うほど運動ができたのよ
今はあんな感じだけど、小学校のころとかカッコよくて結構、モテてたのよ」
「へぇ~へぇ~意外っつーか…てか、その言い回しだと、今はカッコよくなくてダメみたいにも聞こえるね」
ぷぷっとこなたが思わず笑う。
「え?あっ、そんなことはないわよ。今でも十分カッコいいじゃない」
「いや、そんなにあわてて力一杯言わなくても…ふふっ…もう、面白いなぁ……でも、モテモテくんだったんだぁ~。
お父さん、いったいどこで道を間違えたのやら…」
「…そうねぇ…そういえば、いつの頃から今みたいな趣味というか…目覚めたのかしら…」
「そうなんだよね、そういうのって、ずーーっと一緒にいると気がつかないもんだよね。わたしもさ、いつ、オタク
になったのか、よくわからないし。気がつくとこうなってたっていうかさ」
ざーっと、背中にお湯を流し、完了する。
「…ぁぁ…まぁ…こなたの場合は少し特殊かもしれないわね…物心ついた頃には、そう君な訳ですし…」
「あははは…まぁね。でも、お母さんは染まらなかったね」
「私は私で趣味はもうあったしね…さて、今度はこなたの背中を流しましょう」
「あ、うん、それじゃ」
二人が入れ替わるように移動する。
「そうそう、お母さんってさ、いつもはどうしてるの?やっぱ天国?あの世ってところ?」
「へ?」
「いやさぁ~今日はたまたま、こうしてここにいるけどさ、今までというか、普段どこにいるんだろ?って思ってさ」
「ああ~…うーーーん、なんて言えばいいのかしら…睡眠してるような感じかしら?」
「え?睡眠?」
「そう。寝て、起きるまでって基本的に意識ないでしょ?夢とかは別として」
「うんうん」
「寝て、起きたら数年経ってるとか、そんな感じね」
「ほえ~、死後の世界とかって特にないんだね~」
「さぁ~それはどうかしらね。まだまだ、わからないわよ?」
といいながら、ざーっと背中を流し、こなたの背中も洗い終わる。


こなたがかなたの方に向き直し
「もしかして、それってお母さんが成仏してないってこと?」
「ふふふ、そうかもね。でも、当の本人が一番わかってない訳だし、あまり気にしなくてもいいんじゃないかしら」
「まぁ、本人がいいって言ってるんだから、いい…の…かな?わたしはまた、お父さんのことが心配で成仏
できなかったんじゃないかと、ふっと思ったわけですよ」
「あらあら、ほんとにもう~」
やれやれ、困った困ったといった感じで苦笑するかなた。つられてこなたもニヤリとする。
「そう君も心配といえば心配だけど、心配で成仏できないってことなら、こなたの事の方がよっぽど心配だったのよ?」
その優しいまなざしでこなたを見つめる。
「え?…う、うん…その、ありがと…」
照れくさいのか目線をそらして、斜め下の方へ目を泳がす。
「でも、その心配も今日でおしまいだけどね」
笑顔でこなたの頭をなでなでする。
「へへへ…………んしょっと…身体も洗った事だし、お風呂に入るとしますか」
慣れた手つきで、くるくるっと髪をまとめ頭の上に持ち上げるかなた。
こなたはそのまんまで、髪の毛を気にする事無く湯船に入ろうとする。
「あら?髪はそのまま?」
「…うん、もう面倒くさくてね…」
「髪先とか痛まない?」
「結構、大丈夫なもんだよ」
「…そんなものなのかしら…」
「今んとこ気にはなってないし…そんじゃ……とりゃっ!!」
ざぶーーーーんと水しぶきを上げ、お風呂に飛び込む。
「こらこら、どこの小学生ですか」
思わず突っ込む。
「いやーー…ははは、ついつい、なんか、はしゃぎたい気分だったんで…って、おりゃおりゃーーーー」
湯船に入ろうとしていたかなたに向かって、両手でお湯をザバザバとかける。
「きゃっ!!」
完全に不意をつかれて、浴槽を跨いだ状態で立ち止まってしまう。
「…やったわねーーー…えい!!」
まだ立ってる状態ゆえ、バシャバシャと豪快にやる事ができた。
「うおわっぷ…」
まさかの反撃にこんどはこなたが虚をつかれる。
「お母さんもやるねぇ~」
「やる時はやりますよ♪~」
ニヤリとするふたり。
そして、お湯の掛け合いがはじまった。



「あはははは、、、はぁはぁ、、はぁ~」
そのまま、ドブンッと湯船に潜るこなた。
お湯の掛け合いは、こなたの勝利っといったところで一息ついた。
「……ぶぐぶぐ…ぷはーーーー」
ザバーっと潜航状態から湯面に浮上する。
「いんやー、久しぶりに楽しかったよ。案外、お母さんもこういうの好きなんだねぇ」
「へへへへ。たまにはね。あたしも、子供の頃に戻ったみたいで楽しかったわ」
「でねでね、お母さん………」
話し込む、二人。
昨日からいろいろ話しているはずだが、話がまるで尽きない。

キリのいいところでかなたが
「そろそろ、あがりましょうか。なんか、のぼせてきたみたいだし」
「そ、そだね…わたしも少しきてるかな?こんなに湯船に入ってるのは久しぶりだよ」
二人とも、少しふらつきながら浴槽から立ち上がり、脱衣所へと向かう。

「着替えは、このパジャマでいいかな?」
見れば、色違いの三着のパジャマ。
「へへ、普段はわたしは着ないんだけど、わたし用とゆーちゃん用とスペアの三着があるんだよね…ゆーちゃんは今、
帰省してていないから、好きなのをどうぞ♪」
青、緑、ピンクの3色の同じデザインのパジャマがある。
「うーーーん…わたしは…この緑のでいい…かな?」
「あらら、見事にスペアを引き当てたね。んじゃ、わたしは自分用の青っと」
とりあえず、二人して、パジャマに着替え始める。
「…うーん、なんとなくそんな気がしたのよね」
「おお!?お母さんってばニュータイプ?」
「いやーね、もう。そんなエスパーじゃないわよ。でも、なんとなくわかるでしょ?緑は違うなぁーって」
「いや、その何となくがニュータイプの発動だったりするんだよ…ってかニュータイプが判るんだ」
「……まぁ、そう君に力説されたし…概要はなんとはなしにね…言葉を介さずに意思疎通が出来る…か…」
「確かにね…できりゃー苦労はしないっつーところかな?」
「…長いこと一緒だとある程度はわかるようにはなるけどね…」


「おお?何気にすごい発言だよ?それ。わたしは、いまいちお父さんの真意がわからない時が多いんだけど」
「でも、わかる時もあるんでしょ?」
「うーーーん、まぁ…でもそれは趣味関係で重なってるところだけで、わからない部分の方が多いと思うよ?」
「それがね不思議な事に、だんだんとね、わからない部分がね、減ってくるのよ」
「む、むぅ~愛の力ってやつなのかなぁ~」
愛という言葉に反応して、かぁ~と赤くなる。
「い、いや、あ、あのね、愛とか、そ、そ、その…」
「ああああ~お母さん、そんな照れなくても、ここにはお父さんいないんだし。ほんと、なんでこんなにかわいんだろ」
「そ、そんなんじゃないわよ………」
ぷいっとそっぽを向く。
「おおぅ…」
(もーーーしかして、お母さんってば、かがみみたいなツンデレ属性なのかなぁ?)
「…お母さん?」
そっぽを向いたかなたの腕に自身の腕をくぐらせ、腕を組みの体制にして自分の頭をかなたの肩に乗せる。
「照れてるお母さんってばかわいい…ってかね、それとはなしに理解できちゃうってなんか羨ましいなって…」
「……それは、その、好きになった人のことですから……」
と言って、再びゆでだこさんになるかなた。
(そんな台詞をサラッと言える辺り、かがみよりか数段素直ですな…というかさ)
「お母さんがわたし位の頃って、お父さんのこと好きだったんだよね?ってかもっと前からか…」
「…うん…そうね…」
「わたしは、未だに、無いんだよね…そういうの。いいなぁ~とか、あの人が好きだ~とか…そういうの」
「……」
かなたがはっとなってこなたに振り向く。
相変わらず肩に頭をのっけてはいるが、心なしかその頭が寂しそうにも見える。
「焦らなくても大丈夫よ…こなたは私に似て、こんなにかわいいんだから。必ずいい人が現れるわよ」
「えへへ、、、そうかな?」
こなたが腕に力を入れてくる。
「ええ、必ず」

居間に戻ってくる二人。
「お父さーんってあれ?寝ちゃってるよ」
床の上で座布団を枕にごろーんと大の字で寝ているそうじろうの姿がそこにあった。
「あーまぁー徹夜してた訳だしね~昼寝邪魔したし…そりゃぁ寝ちゃうか…」
てくてくと冷蔵庫のところへと歩いていき、麦茶を取り出す。
「おかーさーんも麦茶飲ーむー?」
少し離れた台所から聞こえる。
「あーうーん、お願い」
こなたがコップと麦茶をもってやってくる、と。
「そう君、えい、えい、起きろーえい、えい」
そうじろうの枕元に正座して、ほっぺを指でプニプニプニと押している。
「ちょ、お母さん…ダメ、それはダメ…反則…可愛すぎ…」
違う意味でこなたが悶絶する。


「はぁーはぁー萌え死ぬってこういう事を言うのか?」
「え?もえじぬ?それはなに?」
「うぅ、あぁ、いや、なんでもないなんでもない…ってかなんで、そんなにやる事なす事、可愛いのかなぁ」
かなたがテーブルに戻って来て麦茶を飲む。
麦茶を飲みながらも、じーっとそうじろうの事を見つめている。
「…お母さん、お父さんのこと気になる?」
「ええ?…ええ、まぁ…」
「んじゃさぁ、しばらく、お父さんといなよ。わたしは、部屋でゲームでもしてるからさ」
「……いいの?」
「いいっていいって、お父さんも寂しかったと思うからさ」
「……じゃ、お言葉に甘えてしばらく、ここにいさせてもらいますか」
「んじゃぁ~ねぇ~」
こなたが自分の部屋へと戻っていく。
「さて…」
かなたが、再びそうじろうの枕元へと移動する。
「……久しぶりに、膝枕でもしちゃおうかしら」
枕元に再び正座して頭をそっと支えつつ、すーっと座布団をどけて自分の太ももを滑り込ませる。
「へへへ…そう君…」
頭をそっとなでなでする。
「…昔は良く、こうやってましたね…」
気持ち良さそうに寝ているそうじろうを見つめる。
「……そう君…少し老けちゃったね…あれから18年も経っちゃったからね…当然よね…」
「むーーー…」
不意にそうじろうが寝返りを打つ。
「あっ!!そ、そう君…」
ゴスッと床に頭が落ちる。
「ちょっと、そう君、大丈夫?」
あわてて頭を乗せ直す。
「むが…」
痛そうな音だった割には、目を覚まさないそうじろう。
「あらあら、あれでも起きないなんて…」
安心半分、あきれが半分といったところで笑みがこぼれる。
「そうだ」
何かを思いついたのか、ニヤリと悪戯な笑顔になる。

耳元で大きめの声で
「起きろー、原稿書けたの?締め切り過ぎてるんでしょー?」
反応なし
「早くしないと、担当さん来ちゃうぞー」
「…むーーー、まだ…むにゃ…」
お?反応がでた。これはいけますね。
「担当の か と う さ ん が お 見 え ですよ」
ぱっと耳元から顔を離す。
「………!!!」
カッと目が開いたかと思うと、ごろんと横に転がり、土下座をする。
「ごめんなさいごめんなさい!!申し訳ありません、ま、まだできてません、きょ、今日中には仕上げます…」
そこまで言ってハッとなり、ぱっと顔を上げ、ぽかーんとしているそうじろう。
「ぷっくっくっくっ、あははははは、そ、そう君ってば…も、もしかして今でも担当加藤さんで締め切り守ってないの?」
対照的に腹を抱えて笑うかなた。
「……か、かなた、こ、このぉ、やったなぁ~」
してやられたそうじろうは恥ずかしげに苦笑いしつつ膝立ちのまま素早くかなたの背後に回り込み、後ろから抱き上げ、
自分のあぐらをかいた太ももの上にちょこんとかなたを乗せ、背中越しに抱っこするような感じになった。
「…ふぅ…してやられたな…はは…」
おなかの前で交差する腕に力が入る。
「あっ!!……へへ…まさか、いまだにあれで起きれるなんてね………へへへ……」
そうじろうに背中を預ける。
「このかっこだと、そう君と顔の高さが同じになるから…」
不意にそうじろうの方を向き、ほっぺたの辺りに、軽くキスをする
「…こんな事も気軽にできたりして、私は好き…」
こてっとそうじろうの顔に頬寄せる。
「んふ…そーくぅーん」
おもいっきり、後ろに身体を預ける。
それをしっかりと受け止める。
「んん?なんだ?かなた」
「ずっとこうしてたい…」
「ああ…俺もだ…」
それは、叶わぬ願いだと、二人とも判らない訳ではない。

しばらく、時間だけが過ぎていく。


「そういや、こなたが5歳頃のときにも来てくれた事があったよな…あのときは、かなたのことを言うこなたが、不憫で
ならなかったが…今思えば、今みたいに、遭いにきてくれてたんだなぁって。あれ以来、こなたのわがままがピタって
消えてなぁ…逆に心配になったくらいだ。あの時の俺にできることといえば、抱きしめてやる事ぐらいだったしな…」
「え?…それは本当なの?本当に私は逢ってるの?それは、現実に起きた事として記憶されてるの?」
「??え?いや…俺もな、今日みたいなことが無ければ、きっと思い出しもしなかったろうけどな、それとも
本当に、こなたの夢の出来事で…」
そうじろうの言葉を遮るように強い言葉で
「ううん、逢った、逢ったわ、間違いなく…ただ、それはこなた夢の中の事だと思ってたの。現実だとは…」
「そうか…そうだよな…普通は夢だと思うよな…ってか、夢の中に出れる可能性もあるんだな…
向こうに帰ったら…その…たまには俺の夢にでも出てきてくれよな…たまには、話、しようぜ、な」
「わたしもね…そうしたいんだけど…なかなか、うまくはね…こっちに来れることがあまりないし、そもそも、
こうしていられるのがどうしてなのか、よくわかってないし…」
「うーーむ、まぁ、次の機会でいいからさ…頼むわ」
「いや、そんな、頼まれても…夢の中に入る方法だって良くわからないっていうのに…」
「ははは、いいんだって。こういうのは、そう願ってれば、叶うものなんだってば」
「そ、そうなの?」
「だって、今、こうしてることが出来てるじゃないか」
「え?えええ?確かにそうだけど…」
「俺は、そうだと思ってる」
「………そうね…そうよね…はっ!!この世界がそう君の夢の中とか?」
「あははは、ナイナイ。昼間は俺、逢ってないじゃん」
「……確かに…よかった…なんかホッとした」
「はは…俺も今でも、もしかして夢?とは思ってるけど、夢でもいいやとも思ってるよ。夢とか現実とか、
そんなの関係なくて、かなたとこうして逢えることが重要なんであって…逢えるんなら、夢でも別にかまわないさ」
「…そう君…」
「ん~?」
「あたしも…夢の中でもいいから逢いたかった…でも、こんなに時間がかかっちゃったね…」
「ああ…そうだな…でも、ここまで、なんかあっという間だったからな。こなたなんか、いつの間に18?って感じだしな」
「そ、そういうものなの?」
「ああ…そういうもんさ」

「そういえば、こなたが小さい頃に…5歳頃?…に逢ったときにね、怪我をしてないのに泣くのは心に怪我をしてて
痛いからだよって……そう君もたまに泣いてることがあるって…」
「その台詞は……まあ…我ながら、良い台詞だと思ったけどな」
「…心に怪我してて、痛かったんだ…そう君…」
「あははは…あんときはな…こなたには随分と助けてもらったよ、こなたがいなかったら、正直やばかったかな~」
ふと見れば、さっきからそっぽを向いている。
なんか、微妙に肩が震えているような、そうでもないような…
「あぁ、いや、なんだ…今は全然そんなことは無いぞ?かなたが泣くようなことじゃないって…だからさ…」
「泣いてなんかいないもん…ばか…」
相変わらず、そっぽを向いたまま。
(あはは、いやー、こう…なんつーか、やっぱ拗ねたかなたもかわいいもんだなぁ…)
「あぁ~もう~かわいいなぁ~」
抱っこする腕に力を入れ思いっきり抱きしめ頬ずりする。
「あっ、ちょ、そ、そう君ってば…んもう…」



「ねぇ、そう君、再婚とかは考えなかったの?」
「え?……再婚ねぇ…これっぽっちも。かなた以外にいないからさ。俺が惚れた女なんて…」
「その割には、ゲームやアニメの女の子に夢中なのは?」
「ちょっっっ、それはそれ。可愛いものを愛でるというか、リアルと2次元は別もんだぞ?俺は…俺が好きなのは…
愛してるのは、かなた、お前だけだ!!これは譲れないし、誰にも負けない……
例外としてだな、こなたを同じ位、愛しているってことかな…」
「ププッ、そんなに慌ててフォローしなくても…」
「あはは(汗……むふぅ~やっぱ、笑顔のかなたが一番かわいいな。うん、かわいい、かわいい」
再び、すりすりと頬をする。
「そ、そう君、う、うれしいんだけど、、、その、、髭が、痛いかな、、、」
「あ、ありゃ?すまんすまん…」
「髭くらい、剃らなきゃダメよ?」
「…あは(汗…編集部に顔出す時くらいしか剃ってないんだよなぁ…まさしく無精髭だな」
「もう…」
「いや、すまんすまん、今日は、ちゃんと剃るよ。ちょうど、これから風呂だしな」

「で、かなたはいつまでこっちに居られるのかわかるのか?」
「うーーーん、わからないってのが正直なところね」
「ありゃ、そうか。でも今日は大丈夫そうだな」
「そうね。多分、お盆の間は大丈夫だとは思うんだけど…」
「…ならさ、この後はさ、こなたと居てやってくれないか?」
「え?」
「…なんていうかさ…俺はかなたとの想い出がいっぱいある訳だ…でも、こなたには…無いからさ…
次がいつになるかわからないし、そもそも次があるとも限らん。だから出来る限り、こなたのそばに居てやって
くれないか?……お母さん居なくても寂しくないって言ってくれてるけど、そんなこなたが不憫でな…」
「うん…そうね…出来る限り想い出を残してあげないとね…でも、もう寝てるんじゃないかしら?」
時計を見れば1時近くを指している。
「んん~ああ、まだ1時じゃないか、全然大丈夫だな。普通に起きてるよ。夏休みとか土日前なんかだと明け方まで
起きてゲームとかやってるし、次の日学校があっても3時くらいまでは起きてるぞ?」
「ええぇぇ!!ちょ、ちょっと、そう君、ダメでしょ、そんな夜更かしさせちゃ」
「えっ?やっ、そ、そりは……俺も、一緒になって遊んでるときもあって…その…ごめんなさい、以後気をつけます」
「…まったく…親の背中見て育ってしまいましたか…」
かなたが心なしか、がっくりときたように見える。
「はははは………………………面目ない…」
「でも、優しくて良い子に育ってくれてるわ…ありがとう…そう君」
「だろだろ~?目の中に入れても痛くない自慢の娘だぜ!!」
「…でも、私に似た背にマニアックな性格なのが…なんていうか…少し悲しかったり…」
「いやいやいやいや、んなこたないぞ。マニアックな性格は、正直、すまんと思うが、かなた譲りの身長が
なんで悲しいんだ?かなた同様あんなに可愛いじゃないか!!大丈夫さ、小さかろうがナンだろうが、
たいして悩む事でもないし。そもそも、規格外に小さい訳じゃないだろう?かなたもこなたも。標準の範疇さ」
「うーーん、昔からだけど、そう君にそういわれると、なんか、どうでもいいことのように思えてくるのよね…」
「高校の頃から、背が小さい事を嘆いてたよな。まったく、それが良いっていうのに」
「………そう君がいいっていうなら、いいのかなって、いつも思い直してたのよね…そして今も、また…」
「うし!!思い直してもらったところで、俺は風呂にいくわ。かなたは、こなたのところに行ってやってくれ。
今頃はネトゲでもしてるか、アニメでも見てるんじゃないかな?」
かなたをリリースして立ち上がる。



「ねとげ?」
「あぁ~…え~っとだな…パソコン通信で一緒にゲームをリアルタイムプレイできるってとこかな」
「…なんか、想像もつかないわね…」
「ファミコンで対戦ゲームとかの対戦相手が、回線の向こうの人とかさ、ドラクエのパーティーで自分は戦士だけど
味方の魔法使いといかが回線の向こうの人とか…そんな感じと言えば…どうかな?」
「…あっ…なんかわかったかも…すごい時代になってるのね…」
「やっぱり、ファミコンの時代から、一足飛びに今に来ちまうとギャップが激しいか…」
「ゲーム機本体のギャップは昼間に体験したから…まぁ…すごいとしか言いようが無いけど…」
「はは…、ま、なんだ、その、こなたのこと、頼むわ。ちょっと甘えさせてやってくれ。小さい頃寂しい想い、いっぱい
させちゃったからな…でも男親じゃ限度ってもんがあるからな~、いつまでも抱きしめてやる訳にもいかないしな…」
すこし寂しげなそうじろう。
「そうね…そう君の分もしっかり抱きしめてきてあげるわ。でも、もうそろそろ、子離れしないといけない時期よね」
「…ああ…そうだな…寂しいけど、後2年もすりゃ20歳だしな…俺も、どっかで線引かないとな」
「そうそう、いつまでも子供じゃないんだから…ってことね」
「正直さ、いつまでも子供で居てほしいけどな…親って寂しいものだな、はは」
「わたしがそばに居てあげられれば少しは…」
そうじろうの手を握り、うつむく。
「あ~ほらほら、笑ってくれようぉ~、な?かなたはいつでも俺の心の中にいるんだぜ?ずーっと一緒さ
現実では離ればなれかもしれんが、心ではつながってると信じているよ。いつか逢えるとも信じてたし、現に今だって、
こうやって巡り会えたんだ、それで十分満足さ、そして、またいつか、ひょっこり逢えるかもと思えば、楽しみも増える
ってもんだし。な?だから、かなたはいつでも笑顔で居てくれ。笑顔のかなたとこなたが居れば俺は無敵だ」
「…えへ…」
「そうそう、そうやってさ……むふむふぅ~~~~やっぱかわいいなぁ~~もう~~」
再び、きゅーーっとかなたを抱きしめる。
「へへへ…もう少しこうしててイイ?」
「ああ…」

しばらくして
「…そう君、それじゃ…また…」
「ああ、そいじゃな」
お風呂とこなたの部屋へとそれぞれわかれて行く。

風呂場にて…
「うーむ、危なかったな…俺が泣いちゃってたら世話ないもんな…」
浴槽につかりつつ、天を仰ぐ
「かなた…今日はありがとうな…こなたのあんな嬉しそうな顔は初めてだよ。かなた…おまえは死んで消えて無くなった
訳じゃなかったんだな…例え、離れていても…ずっーーと居てくれたんだな…あぁ、そうだとも、お前は永遠だ……
俺の中で永遠に生き続けてる…かなた………神様ありがとうと言いたいところだが、だがしかし、だったら、俺とこなた
から、かなたをなぜ………いや、止そう…かなたは生き返りはしない…今ここにある奇跡を感謝すべきだな…とにかく
かなたが来てくれた…これはまぎれもない事実だしな…来てくれてありがとう……逢いたかったんだ…ありがとう…」
誰にも知られる事の無い涙が流れていく…


コンコンッ
静かにノックする
「こなた~?起きてる?」
「…うん、起きてるよ~お母さん?」
「ええ、入っていい?」
「いいよ~」
部屋に入り、ベットに腰掛ける
「お母さん、もう、お父さんとはもういいの?」
「え?ええ…とりあえずはね」
「ふーーん…ちょっとまってて、今、ゲーム終わらすから」
「ん?いいのよ別に」
「え?あ、いいっていいって。ゲームはいつでも出来るけど、お母さんとは今しかないからさ…んしょっと」
PCの電源をオフにしてベットまでてくてくと移動し、かなたの隣に腰掛ける。
「こなた、いつもこんな時間まで起きてるの?」
「ん?ん~そだね、特に今は夏休みだし、下手すると明け方まで起きてるかな?」
「あらあら…そんなとこまでそう君に似てしまうとは…」
「おぉぅ……」
「夜更かしさんもほどほどに、ね?」
「……うん…」
バツが悪そうに下を向き頭をぽりぽり。
「ふふ…」
ぽんっとこなたの頭に手をのせる。
「そろそろ、寝ましょうか?」
「うん…って、お母さん、わたしとでいいの?お父さんとこ行ってあげなよ」
「あら?こなたは、わたしとは寝るのはイヤ?」
「ううん…そんなことは………ないっ!!」
力強く、かなたを見つめる。
「…でも、きっとお父さんも寂しかったと思うし、お父さん、お母さんにベタ惚れだし…わたしよりもお父さんの方が
何倍もお母さんに逢いたかったと思うし…」
「こなた…ありがとう…ほんと、優しいのね…でもね、今日は良いのよ。そう君とは、昔、いっぱい一緒に居れたし…
でも、こなたとは……だからね、わたしはこなたと一緒に居たいの。それに、そう君も、こなたと一緒に居てやってくれ
なんて…ふふっそう君ってば、なんか、妙にカッコイイこと言っちゃって…こなたの事が本当に大切なのね。でもわたしも
そう君に負けないくらい、こなたの事が、大切…ううん、大切とか大事とか、そういう類いの言葉じゃおかしいわね…
うーん、なんて言えば良いのかしら…世界にたった一つしかない宝物……」
優しいまなざしで見つめる。
「うぅ…」
「ん?」
「な、なんでもない」
目線から逃れるかのように反対側を向いてしまう。





「あ、あら?もしかして、こんな事言われると恥ずかしい?」
「……う、うん…ま、まぁ……似たようなことお父さんに言われるのとは破壊力が違うなぁ…」
(泣いちゃいそうだったからなんて…ちょっと言えないなぁ)
再びかなたの方に向き直した顔を見て、スッとこなたを抱き寄せる。
「バカね…昼間も言ったけど…我慢しなくても良いのよ?こなたはずっと我慢してきたじゃない。今日ぐらい…
私が居てあげられる間くらい…ね?…そう君が悲しくならないように、泣く事をずっと我慢してきただなんて…そう君は
今ここには居ないし…泣いても良いと思うの、悲しくなくても、涙が止まらない、泣きたくなる時ってあるものよ?」
はっ!と見上げる。
「え?わ、わたしは別に…」
「顔に書いてあるわよ?」
「ええ?…」
「フフッ…お母さんらしいこと何一つしてやれなかったけど…わたしはこなたのお母さんですからね」
「……うぅぐぅ……」
再び抱かれるまま、うつむいてしまう。
「ちょっと、横になりましょうか?そっちの方がいろいろと楽でしょうし…」
「…う…ん…」
そのまま後ろに倒れ込むようにベットの上で横になる二人。ちょうど、かなたがこなたを腕枕するような感じに。
「……おかあさん…」
「はぁい?」
かなたの胸に顔を埋め、それを優しく抱きしめてこなたに応える。
「…あのね…嬉しいのに…悲しくなんかないのに…なんで…こんなに…涙が出てくるんだろう…
お母さんの優しい顔見てるとね…泣きたくなんかないのにね…なんで…かな…」
静かに涙が溢れてくる。
「きっと、それは寂しいかったからだと思うの。寂しいっていう心の怪我をね、だから、涙が出てくるんじゃないかな?」
「!!…そ、それって…」
「そう…だから、こうして抱きしめて、その寂しいって怪我を治しちゃいましょう!」
かなたの腕に力が入る。
「……ぅぅ………」
大泣きするという訳でもなく、嗚咽する訳でもなく、ただ静かに…流れ出てくる涙が涸れるのを待つかのように
じっとしている…時折、その小さな肩をふるわせながら…

だいぶ落ち着いてきたのか、肩の震えも止まりだし、ちらっと見える顔からは笑顔も垣間みれるようになった。
ときたま顔を左右にすりすりとやる仕草が、またなんとも…こそばゆいというか…かわいい…

「おかぁ~さん…」
「ん~~?なぁに?こなた」
「むふっ…よくわかんない…あはっ」
「あらあら…ふふ」



(ああ、なんだろ、この感じ…すごく安心する…こころまで暖かくなるような…)
「へへ…へへへ……寂しいなんて思ったことはないはずだったんだけどね…やっぱ無理してたのかなぁ?」
「ん~かもしれないわね」
「うーむ…寂しい…か…小さい頃は…そだね…お母さんの話題が出てくると、なんていうか…切なくて悲しかったな…
みんなが言ってることが良くわからなくて…ああそうか、私にはお母さんがいないんだなって……でもなんでいない
のかは良く理解できてなくて、友達のお母さんなんかにも聞いちゃったりで…」
不意にこなたが顔を上げる。
「今、お母さん、ごめんねとか思ってたでしょ?全く…ああ~もうね、寂しかった、そうですとも寂しかったですともええ
だけど、お母さんのせいじゃないんだしさ…それにね、まわりの大人の人達もすごく優しかったから結構平気だった、
今だからわかることなんだけど、お母さんが死んでいないってことすら理解できてないってのが、きっとアレだったん
だろうなって、でも、そんくらいの歳の時に、わたしはお母さんに逢えた。なんだ、やっぱり居たんじゃんって。
うれしかったよ。それからは、次いつ逢えるんだろうって、ずっと思ってた。言われた通りお父さんの言う事聞いて
いい子にしてたな………たまに取材とかでお父さん居なくて…そういう場合は大抵ゆきおばさんが来てくれてたんだけど…
そいうときはなんていうか、寂しかったかも…でもねでもね、ゆきおばさんも今のお母さんみたいにしてくれて、
寂しいんだけど寂しくなかったし…あれ?なんか言ってる事おかしいな…まぁいいや…寂しかったけど寂しくなかった!!
で、今は、もう大丈夫……えへへへ…お母さん…大好き…みんなのことも大好きだけど、次元が違うってところかな。
できればずーっとこうしてたいね。お母さん…っふふ…へへ…んん………いい…ね………こういう……の…て」
かなたの胸にスリスリと顔をすりつけてくる。
「あはは、ちょっと…くすぐったいって……んもう…なにから答えていいやら…」
「…答えなんて…いらないよ…答えなんて…そんなもの…いま、ここに、おかあ、さん、が、、、居て、、、、、、」
泣き疲れたのか、そのままこと切れてしまい、すーすーと寝息をたてている。

(あらら、寝ちゃいましたか…んふ…ちょっと寝顔でも拝借っと)
起こさないように、そ~っと身体をずらしてちらっとだけ見えるように体勢を変える。
(うわぁぁぁ、こ、これはかわいい…ど、どうしましょう…困ったわ……ああぁぁ、もうちょっと良く見えるように
したいわ…で、でも、下手に動かない方がいいわよね、起こしてもかわいそうだしね…)
「むぅ…」
再びかなたの胸に顔を埋めるように、もぞもぞとこなたが動く。
「…こなた、もしかして起きてる?」
だがしかし、返事はない。
「やっぱり、寝ちゃった?…みたいね…」
胸を枕に、すーすーと気持ちよさそうに寝息をたてている。
この状態だと、頭頂部しか見えないのが少々残念といったところか。
「こなた、私の娘として生まれてきてありがとう…今、とても幸せです…」
こなたの頭に頬寄せる。
「……私も、少し寝るとしますか…おやすみ、こなた…」

























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  • 名作です! -- チャムチロ (2012-10-02 12:31:10)

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