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やまとの文化祭~参加編~

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 その練習を、私は体育館の出入り口から見ていた。
(…ここだ。)
 ここでかがみさんは足を捻る。もう何度も時間を繰り返してきたが、実際に
この目で見たのは初めてだった。
 やはりこの"今"は何かが違う。悪いほうに違うのではなく、極端に修正が弱
い。前回までのパターンなら私がこんなところに来れる筈がなかった。
(…でも、それもいつまで続くか)
 抑圧された歪は弾けたとき、より強く元に戻ろうとする。もしそうなれば、
間違いなく時間のループに閉じ込められる。ここでの時間の脱却は諦めた方が
いいだろう。ならば…
「その凛役、私にやらせてもらえない?」
 今まで出来なかったことをやってしまおう!

 やまとの文化祭~参加編~

「えぇ~…」
 みんなから非難の声が上がる。まぁ仕方ないといえば仕方ない。少し前に
準備に参加する、しないでかがみさんに喧嘩を売ったばかりなのだ。でも
対策は用意してある。私は演技っぽく手を前にかざすと、もう何度一人で
練習したか判らないその台詞を言う。
「逃げてもいいけど辛いだけよ。どうせ勝つのは私なんだから。」
 場がシーンと静まりかえった。呆気にとられているのが手に取るように判る。
自分でも人前でこれだけ出来るとは思わなかった。
「やまとちゃん、それ…」
 つかささんがやっとという感じで聞いてくる。
「かがみさんの件は私も悪かったって思ってる。本当は、ずっと皆と一緒に桜藤祭
をやりたかった…けれど、私、そういうの表に出せなくて。」
「おぉ、やまとんはツンデレキャラだったか~」
 こなたさんが妙に盛り上がる。ツンデレ…確かに私の今までの言動はそうなる
のかもしれない。まったく不本意ではあるのだけど。
「で、結局どうするのさ。まぁ俺としてはやってもらえるとこっちに大役が回って
こないで助かるんだが。」
 りおん君が口を挟む。正直ぐたぐたな雰囲気になりそうだったのでこれは助かる。
「どうするって、ねぇ…」
「まぁ、あそこまで完璧な演技見せられますと、ね…」
 みゆきさんとあやのさんが顔を見合わせる。この流れ的に行くと…
「それじゃあ。」
「はい、ヒロイン役、辛いと思いますが頑張ってください。」
 いよっしゃー!と心でガッツポーズ。ずっとこれがやりたかった。自分があの舞台
の上に立つことを何度夢見たか。それが、現実にかなってしまった。たとえその先で
ループして皆の記憶に残らなくても、きっと私は満足できる。どうやら彼も大分力を
取り戻しているみたいだし、一度くらい先送りしても罰は当たらないだろう。



 それからの時間は、今までの"今"よりずっと早く過ぎた。りおんくんを余計な干渉
に巻き込ませないようにしながら、今までは一人寂しくやるしかなかった練習を皆と
やる。そこには今までにない充実感があった。そんなこんなで、もう桜藤祭の日に
なってしまった。
「がんばって。俺も裏から応援しているから。」
 りおん君が私に声をかけてくる。それに私は微笑みながら答えた。
「ええ。そちらもがんばって。」
 思えば、当日にりおん君と話をすることもそうなかった。もしかしたら演劇前に
話すのはこれが初めてかもしれない。
 そして、演劇は始まった。
「汝三大の言霊を纏う七天、
 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」


「……………アーチャー、わたし」
「ところで凛。一つ確認していいかな」
「………いいわ。なに」
「ああ、時間を稼ぐのはいいが―――
 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「アーチャー、アンタ――――」
「―――ええ、遠慮はいらないわ。
 がつんと痛い目にあわせてやって、アーチャー!」


「それからこれは命令。
 士郎、死んでも勝ちなさい。」

 終わった。客席からは拍手が怒涛のように押し寄せる。今まではその光景を見て
るだけだった。まさかやれるなんて思っても見なかった。押し寄せる拍手がこんな
にも心地よいものとは思わなかった。けれど、もう終わる。
 空を見た。後三分後、この時間は終わりを迎える。止めたかった。花火を打ち上
げる場所まで判っている。でも、止めようとすればきっと時は暴発する。だから―――
「きっとこの光景を、おぼろげにでも皆が覚えていますように。」
 そう祈るようにつぶやいて目を瞑る。遠くで花火の音が鳴った。目を開ければ
また転校初日からのやり直し。想い出はもう得た。今度こそ抜け出す。そう誓って
私は、もう何度も見た出会いへと歩を進める―――。

fin




















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コメント:
  • 最高すぐる。GJ -- 岩崎みなみ (2010-03-15 00:48:17)
  • なんていい話…
    GJです!
    -- さすらいのらき☆すたファン (2009-01-25 21:20:27)

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