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つかさとみゆき

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 ☆Intro☆

 とある喫茶店に二人はいた。
「その…どうだったのでしょう?」
 その言葉につかさは珍しいにんまりした笑顔を見せる。
「えへへぇ、」
 鞄をごそごそと探って一枚の紙を取り出す。定期テストの結果表。びしっとみゆきに向かって広げた。
「じゃん!」
「あっ!」
 満面の笑顔。
「うん!目標達成だったよ!」
「良かった!嬉しいです。」
「えへへ、ゆきちゃんが手伝ってくれたおかげ、ちょっと自信ついたかも。」
「一緒に頑張ったかいがありましたね。」
「でもやっぱりゆきちゃん凄いよね、学年トップ。」
「実は私自身いつも以上にやっていたんです。つかささんのフォローのためといいますか、つかささんとの勉強が楽しくて…。上手くいって本当に嬉しいです。」
「うん。」
 つかさは少し視線を下に落とした。
 みゆきは疑問を浮かべて首をかしげた。
「つかさ、さん?」
「…あのね、私、もっと頑張っちゃおっかなって。その、」
 声がか細くなる。
「…ゆきちゃんの隣に名前がのるまで、なんて。ゆきちゃんと、一緒に…。」
 上目で不安げにみゆきの瞳を覗く。
「む、無理だよね、迷惑…だよね?」
 みゆきはにっこりと微笑んでいた。
「無理だなんて全然思えませんし、迷惑なんかじゃないですよ。それに結局私のためにもなります。一緒にやりましょう。」
 つかさはちょっと顔を赤らませながら幸せに笑んだ。
「うん!」


~つかさとみゆき~


 ☆第一幕☆


どうすれば…


「一緒」になれるのでしょう。


多分、役割みたいなもの。


私らしくある限り、きっとこれは埋まらないんです。



 ある日、つかさは机にうっぷして元気がなかった。
 理由は単純で、努力したテストで思うように点がとれず、自分の要領の悪さとだんだん分からなくなる内容に途方にくれていたのだ。
 こなたとかがみが買い物で、二人っきりの帰り道、つかさが相談があると言って、近くの喫茶店によった。悩みを打ち明けると、みゆきは一緒に勉強することを提案したのだった。
 二人はあれこれ考えて、週に三回、みゆきの家で二人だけの勉強会を開くことに決めた。

 初日、教科書を読んでいるつかさはうつらうつらと眠りに入っていた。
「つかさ、さん?」
「はぅ!?」
 驚いたように目を丸くしてみゆきを見つめるつかさ。
「わぁ、寝ちゃうとこだった…」
 みゆきは少し困る。彼女には、わからないところを訊かれたら答える、そんなスタイルしか勉強会のイメージがなかった。
 しかし、初日でこの様子ならば当人の質疑を待っていているだけだと週に七回やっても、大して進まなそうな気がする。
「う~ん…あ、」
 みゆきはピンクの髪をふわりと揺らして指をたてた。
「つかささんはきっと、文字に慣れてないんじゃないでしょうか?」
「へ?…もじ?」
「教科書じゃなくて、新聞や本を読んでても眠くなりませんか?」
 つかさは上目に記憶をたどってからうなずいた。
「あ…、うんっ。そうかも。」
「慣れない事は、誰だって疲れて眠くなっちゃいます。もしかしてそれかなって思ったんです。」
 つかさはぱあっと明るくなった。
「そうかも~。うん!難しいのだと余計そう!ゆきちゃん凄いよ!」
「なんとなくそうかなって思っただけです…」
「う~ん、どうすればいいかな?」
「毎日ちょっとでも文字に触れるといいかも知れません。何か面白い本を少しずつ読んだり。」
「なんか楽しそうかも。」
「ただちょっと、遠回りなアイディアかも知れませんね。でも、次のテストまでは時間もありますし、価値はあると思います。」
 つかさはぼうっとみゆきを見つめていた。
「あの、やっぱり遠回り…でしょうか?」
 つかさは焦って首を振った。
「うううん!なんか…ゆきちゃんって凄いな、と思って。」
 みゆきは、いえ、そんな…とはにかんでから
「次は絶対成功させましょうね。」
 と力を込めて言った。
「うん!」
 つかさも両手を握りしめた。
 翌日つかさはみゆきと駅前の書店に寄って、自分なりに好きな本を選んで買った。
 つかさの好みはちょっと変わっていたが、みゆきは「面白そうですね、毎日読んで下さいね。」と優しく微笑んだ。

 その翌日は「なんだか読んでたらすぐ眠くなっちゃって…。」としょげたが、毎日少しずつ読むうちに本に引き込まれていった。
「それでね、その彼氏だった人がね…、えと、私の説明、わかる?」
「わかりますよ。聞いていても面白いです。」
「ホント!?えへへ…、でね…」
 毎日一度は休み時間にみゆきの席に訪れ、つかさは自分の本の面白いところ、発見したところを一生懸命伝えていた。
 語っているうちに気持ちが入っていってやや興奮気味になるつかさは、みゆきから見て新鮮な上、少し可愛かったりもした。
 そうこうしながら定期的に行われる勉強会でも、つかさは集中力が増してきて、みゆきが器用に手伝った事も相まって、終わる度に充実した気持ちになれるようになっていた。


 そうして1ヶ月が過ぎた。

「う~ん!頑張ったぁ!…ちょっとお腹空いたよぉ。」
 と、背伸びするつかさ。
「今日はケーキがあるんですよ。」
 わ~い、と手を合わせる。
「ちょっと待ってて下さいね。あ…」
 と、つかさのノートを見る。
 何か間違いがあるのかな…。
「何かへん?ゆきちゃん。」
 みゆきは目を丸くした。
 前ならばこういう時、つかさは休憩が中断される事に落胆していた。
 まして甘党のつかさで、休憩にはケーキが待っているのだ。
 しかし、今の彼女の瞳は間違いを直して正しい知識が得られる可能性を楽しんでいる。
「目標、もう少し高くしちゃえそうですね。」
「そうなの!?」
「えぇ、最近つかささんが凄く頑張るので、私の予想以上に進んでまして、ホントに凄いです、つかささん。」
 つかさは顔を真っ赤にして、下を向く。
「ゆきちゃんの、おかげだよぉ…」

「いいえ、私は何も…、最近は自分の勉強ばかりで…」
「うううん、ゆきちゃんが頑張り屋さんだから傍にいると私もなんか頑張れちゃうんだ。」
「…いいえ、頑張り屋さんはつかささんです。」
「違うよぉ、ゆきちゃんだよ」
「いいえ、つかささんです…」
「そんなことないよぅ…」
 二人とも、恐縮そうに頭を下げて上目に相手を伺ったので、その目が合った。
 なんだか可笑しい。
「あは、あはははっ」
「うふふっ」
「あ、じゃあ、頑張り屋さん同士、って事にしようよ。一緒なの。」
 つかさは自分の言葉に照れながら満面に笑んだ。
「ふふっ、そうですね。私達、どこか似ている気がします。」
 つかさはその言葉が自分にはもったいないようで恥ずかしくて、でも嬉しくて、小さな声で呟いた。
「ゆきちゃんのばかぁ…」
「え…!?」
「あ、うんと、ゆきちゃん、私ね、明日新しい本買いに行きたいんだけど、ゆきちゃんにも一緒に行って欲しいんだけど、だめ?」
「もう、あれも読んじゃったんですか?」
「うん!あの作者のは大体読んじゃったからぁ、次新しい作家を探したいんだよね。」
「じゃあ、一緒に探しに行きましょう、私もちょうど何か本が欲しいので」
「じゃあ一緒のやつ買おうよ!」
「えぇ、いいですね。」
「わ~い!」
 ちょっと不経済ですけど、一緒の本を持っているってなんだか嬉しい気がします。

 みゆきは今までにない不思議な気持ちを感じていた。
 小さい頃から友達は多かったが、中学にさしかかって以来、みゆきに対しての友達の印象には高嶺の花のような感じが漂っていた。
 高校に入ってとても素敵な三人の友達に巡り会えたが、それでも、その小さな孤独は公然と芯に残っていた。


 どうすれば…


 「一緒」になれるのでしょう。


 多分、役割みたいなもの。


 私らしくある限り、きっとこれは埋まらないんです。


 それが、どこかで溶け消え始めている。そういう気持ちだった。


 ☆第2幕☆

 それから数日後。
「いや~、つかさと帰るのなんか新鮮だねぇ」
 電車のつり革に指先を引っ掻けたこなたは言う。
 かがみは隣でこなたがいつ揺れに耐えきれなくなってもフォロー出来るように意識しながらその言葉につっこむ。
「一昨日も一緒に帰ったじゃない。」
 勉強会は週に3日、大体は火、木、土とやっていて、今日のように無い日はいつもの三人で帰っている。
「えへへ…。」
「でもさ、最近一緒に帰るの減ってるでしょ、みゆきさんとこにしょっちゅう行ってるから。なんか新鮮なんだよねぇ。」
「まあね、でもつかさ、おかげで今回結構自信あるみたいよ」
 おぉっ!とこなたはつかさを見る。
「うん、ゆきちゃんのおかげでかなり自信あるよ。」
「うぅ…、もしかしてヤバいの私だけ?」
 かがみはそれにニヤニヤと返す。
「なんなら私が明日1日教えに行ったげよっか?ゲームや漫画に触ったら黒井先生ばりに制裁してあげるから。」
 …て、こんな言い方じゃオッケーしないか。
 つかさはわたわたと言う。
「わ、私は明日ゆきちゃんと勉強するから、行けないよ…」
「みゆきさんと追い込み勉強?」
「うん!」
 そのつかさの笑顔はいつになく幸せそうだった。
 それを見たこなた。
「ふぅ~ん…。私もかがみにお願いした方がいいかなこれは。」
 かがみは少し嬉しい展開にときめきながらも平静に話す。
「あんた一夜漬けじゃないの?」
「ま、まぁなんか今回授業ノートが全くなくてね…一夜漬けどころじゃないのだよ。」
「あんた授業中なにしてたんだ?」
「素直に言わせて貰うとDSだね。」
「ほぉ、それで私のノートが欲しいと。」
「ぶっちゃけ…」
「貸すと今後のためにならないと判断しました。」
「うわ~ん、かがみ~ん!」
「知らん。」
「うぅ、じゃあ私もみゆきさんとこ行こ。」
「あんた節操ないな…」
「と言うことで、つかさ、明日みんなでみゆきさんのとこ…あれ?」

 つかさは少し困ったような顔をしていた。
「そ、そだね…一緒に。」
「う、う~ん?」
 こなたの言葉に逆につかさは驚いた。
「あ、ふぇ…!?」
 あ、あれ?…なんで私嫌がってるんだろ。
「あんたじゃ足引っ張るだけだとさ。」
「うぁわ!?そこまで私おいてかれてんの!?」
「少しは懲りて自分で頑張るのね。」
 こなたはがっくりと肩を落とす。
「うぅ…。かがみぃ…、ノート見ないから…、一緒に手伝って…。」
 弱々しい瞳がかがみを射止める。
「いいわよ。その甘えが直るように厳しくいくからね。」
「うぐぅ…出来れば優しくお願いします。今日深夜アニメで夜更かしするので。」
「その甘えを直したいんだっつの。」
 はぁ…、なんで私、こなたなんだろう。
 それでもそう意識するだけでも気持ちが込み上げてくる。
 うぅむ…深夜アニメ録画にしたらかがみ褒めてくれるかな…。…それはそれで厳しいな。
 と、こなた。
 私、ゆきちゃんと二人っきりが楽しいのかも…。なんかケチだなぁ…。
 と、つかさ。
 なんだかよく分からないため息と沈黙が流れ、やがてこなたはつかさに訊いた。
「ねぇつかさ?」
 つかさはさっきので少し自己嫌悪気味だ。
「なにこなちゃん?」
「みゆきさんの事好き?」
 つかさはみゆきの事を考える。なんだか嬉しくなる。
「うん、大好き!」
「それはライク?それともラブ?」
「ら、ライクだけど…?」
 何かを見透かされたようでドキッとする。
「あんたなに訳のわからんことを…」
「やっぱリアルで百合ってあるわけないね。」
「聞いちゃいないわね。」
 少なくとも、今の言葉でこなたはそういった感情を誰にも持っていない事になる。それはかがみの心に少しばかり刺さった。
「まあ、あれだね、お互い明日は頑張ろう。」
「うん、こなちゃん、頑張ろうね。」
 つかさは最後まで「皆でやろうよ」と言い出せなかった。
 ここにみゆきがいたら四人で勉強することになっただろう。そうふと考えて、つかさは自分の友情の形が変になってきてるようで不吉な気持ちになったのだった。


 ☆幕間☆

「なぁ、柊ぃ。」
 こなたとかがみの、この酷く無能な作者の物語を演じている報われない労働のつかの間に彼女はあらわれた。
「何?」
「これさぁ、このみゆきってのが柊を、んでチビっ子が柊の妹を好きになったら凄くね?四角関係。」
「それってどうなのよ。不毛過ぎない?」
「そっか…、オール百合だと簡単に出来ちゃうね。どうせなら、10角関係とか?どうかがみ?」
「だから不毛だって。絶対まとまらないじゃない。」
















                     (いったんおしまい)




















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  • ええ、素晴らしいですね -- 名無しさん (2008-04-03 02:19:34)
  • 続きが気になるー! -- 名無しさん (2008-04-02 18:46:52)

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