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その、優しさの理由

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らっきー☆ちゃんねるの収録が終わって、
楽屋に帰ってきた。
畳の上に胡座をかいて座る。

「ねぇ、白石。」
「んぇ?」

僕は、ペットボトルのお茶を飲みながら彼女の方を見る。
彼女……あきら様のことだが…は、斜め45度、ぼんやりと視線を向けている。
どこを見ているんだろう?
僕もその方向に目をやる。
何もないじゃないか。

「……えっち、しよ。」
「ぶあはっ!!」

…よかった、彼女の方を向いてなくて!
僕は、彼女の意外に大人の考えであることと、
それよりも先に、この言葉が彼女から出たこと自体、
1年以上の付き合いの中で考えても、不思議でならなかった。

「な、な、何を突然言い出すんですか!」

机の上のティッシュを素早く取って
自分の顔と服、畳の上を拭く。
濡れた学ランを脱いで、ハンガーにかける。
これ、いつ乾くんだろう。

あちらからの視線を感じて、見ると、
あきら様は僕をみていた。

「って、あきら様?あの、え?」

すたすた、あきら様はこちらにやって来て、
どん、
足を引っ掛けられて、押し倒された。
14歳の、アイドルに、だ。
頭を強打する。
同時に、僕の頭の中は混乱しはじめた。
僕の体を跨いで、僕の肩を押さえつける。
振りほどこうにも、力が、入らない。
混乱からか、期待からか、僕自身にもわからない力が、体を支配する。

「ねぇ。」
「……なんでしょう、」

僕の真っ直ぐ上に、あきら様の顔がある。
頬を両手で挟まれた。
その手がひんやり冷たいのは、
彼女がさっきジュースを飲んでいたからだろうか。

「あたし、頑張ってるよね。」
「えぇ…あきら様は、頑張ってますよ…」

表情は何処へ置いてきたのだろう。
彼女は口だけを動かして、自分に確認するかのように呟いた。
僕を見ているようで、見えていないような、そんな虚ろな目をしていた。

「偉いよね。」
「えぇ、偉い、ですよ…、あきら様…?」

嘘じゃない。
彼女の顔が、ゆっくりと近づく。
肘を僕の顔の横にべったりとつけ、彼女の指が僕の髪の間をすりぬける。
鼻の先に、彼女の唇があって、
ちょっと首を傾げていて、

「だよね」
「―――」

初めてのキスは、
何故か涙の味がした。
驚いて、彼女の頬に触れる。
僕はその時、彼女の頬が濡れていることに、初めて気付いた。
僕は彼女の何を見ていたんだろう。
こんなにも近くにいるのに。

彼女の唇が離れて、
嗚咽が漏れる。
ゆったりと、体の重み。
耳元で、すすり泣く声。
僕は、彼女の震える背中を抱き締める。
それが、一番自然な行為だったから。

やがて泣き止み、僕の耳元でため息をつく。

「あきら様…無理、しないでください…」
「してない」
「なにか、あったんでしょう?」
「ない」

低い声でうめく様に答える。
僕は知ってる。
こんな状態になった小神あきらは、なにかを抱えていることを。

「なら、どうして泣いているんですか……」
「っさい、バカ…」
「どうして独りで悩むんですか…」
「あんたに、言った所で、なんにも、なん、ないっ…!」

再び聞こえ出す涙声。
ワイシャツの肩が、濡れていくのが分かる。

どうして、自分を鳥籠の中に入れてしまうのだろう。
その鍵を持っているのは、誰だろう?

「なんで!!」
「……?」
「なんであんたはあたしに優しくするの……!」

なんででしょうね、
1年以上一緒にいるのに、
どうして理由を今探しているんだろう。

「あきら様?」
「なによ」

視線がぶつかる。
頬に残る涙の跡を、そっと拭ってあげる。
僕は出来るだけ優しく、彼女の頭を撫でる。

「あきら様のことが、好きだから、じゃ、ダメですか?」

















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  • とてもお気に入りです。 -- 名無しさん (2008-06-16 08:25:00)
  • 素晴らしい!
    話の背景をもう少しはっきりさせてもらいたかったかも… -- ? (2008-05-27 20:48:39)

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