「じゃあ、そろそろ晩御飯の準備をするね」
日が傾き始め、みんなにも騒ぎ疲れの色が見え始めてきた頃、
私達はゆーちゃんと一緒に二階のリビングへと移動した。
「今日はワタシも手伝うヨ、ユタカ」
エプロンを巻いて台所に立つゆーちゃんに、
パティが寸足らずの、おそらく泉先輩用のエプロンを巻きながら近づき、
「ヒゴロの家事で鍛えた料理のウデ、見せてあげまス」
そう言って腕まくりをして、某お菓子会社のマスコットのようにペロリと舌を出した。
「お、もう晩御飯かい」
私達の話し声が聞こえたのか、はたまたお仕事が一段落して丁度休憩にきたのか、
おじさんも顔を覗かせた。
「俺も手伝おうか、ゆーちゃん」
「ううん、今日はパティちゃんが手伝ってくれるみたいだから」
「ソウいうわけで、パパサンは休んでいて下さいネ」
ゆーちゃんとパティにそう言われ、
おじさんは少しの間寂しそうにしていたけれど、
「ふむ、しかしこうして後ろから見ているのも悪くないかもな。
エプロン姿の外人さんというのもなかなか……」
と言い出したときにはさすがの私もどうしようかと思った。
「あの、そういうのは心の中で言ったほうが……成美さんに言いつけますよ?」
私にそう言われてあたふたするおじさんを見て、
私はやっぱりこの人は何故か嫌いになれないな、と思うのだった。
日が傾き始め、みんなにも騒ぎ疲れの色が見え始めてきた頃、
私達はゆーちゃんと一緒に二階のリビングへと移動した。
「今日はワタシも手伝うヨ、ユタカ」
エプロンを巻いて台所に立つゆーちゃんに、
パティが寸足らずの、おそらく泉先輩用のエプロンを巻きながら近づき、
「ヒゴロの家事で鍛えた料理のウデ、見せてあげまス」
そう言って腕まくりをして、某お菓子会社のマスコットのようにペロリと舌を出した。
「お、もう晩御飯かい」
私達の話し声が聞こえたのか、はたまたお仕事が一段落して丁度休憩にきたのか、
おじさんも顔を覗かせた。
「俺も手伝おうか、ゆーちゃん」
「ううん、今日はパティちゃんが手伝ってくれるみたいだから」
「ソウいうわけで、パパサンは休んでいて下さいネ」
ゆーちゃんとパティにそう言われ、
おじさんは少しの間寂しそうにしていたけれど、
「ふむ、しかしこうして後ろから見ているのも悪くないかもな。
エプロン姿の外人さんというのもなかなか……」
と言い出したときにはさすがの私もどうしようかと思った。
「あの、そういうのは心の中で言ったほうが……成美さんに言いつけますよ?」
私にそう言われてあたふたするおじさんを見て、
私はやっぱりこの人は何故か嫌いになれないな、と思うのだった。
包丁の音が軽快にリズムを刻み、順調に料理が進んでいると思われた最中、
突然ゆーちゃんの「あっ」という声が聞こえたのは、
私がリビングに置いてあったロデオボーイIIIでバランスを崩して勢いよくこけ、
みなみちゃんにおなかと顔を押さえられながら笑いを堪えられていたときだった。
「どうしたの、ゆーちゃん」
心配になって私とみなみちゃんがキッチンのほうへ行くと、
ゆーちゃんは冷蔵庫の前でなんだか困った顔をしていた。
「それが、生クリームが切れちゃって。新しいのがあると思ってたんだけど……」
机を見るとケーキの材料と思われるものが並べられていて、
私自身料理をすることはほとんどないけれど、
ボールにあけられた生クリームはそんな私が見ても明らかに足りないと分かる量しか入っていなかった。
「それなら、私が買ってくるよ。何もしてないっていうのも悪いしね」
私がそう言うとゆーちゃんはもちろん最初は反対したけれど、
私がどうしても、とお願いすると、他に方法も無かったこともあって、
結局私とみなみちゃんでおつかいに行くことになった。
「急いでないから、ゆっくり行ってきてね」
「二人トモ、気をつけてネ」
「うん、まかせといて」
エプロン姿のゆーちゃんとパティに見送られながら、私達は近くのスーパーへと出発した。
突然ゆーちゃんの「あっ」という声が聞こえたのは、
私がリビングに置いてあったロデオボーイIIIでバランスを崩して勢いよくこけ、
みなみちゃんにおなかと顔を押さえられながら笑いを堪えられていたときだった。
「どうしたの、ゆーちゃん」
心配になって私とみなみちゃんがキッチンのほうへ行くと、
ゆーちゃんは冷蔵庫の前でなんだか困った顔をしていた。
「それが、生クリームが切れちゃって。新しいのがあると思ってたんだけど……」
机を見るとケーキの材料と思われるものが並べられていて、
私自身料理をすることはほとんどないけれど、
ボールにあけられた生クリームはそんな私が見ても明らかに足りないと分かる量しか入っていなかった。
「それなら、私が買ってくるよ。何もしてないっていうのも悪いしね」
私がそう言うとゆーちゃんはもちろん最初は反対したけれど、
私がどうしても、とお願いすると、他に方法も無かったこともあって、
結局私とみなみちゃんでおつかいに行くことになった。
「急いでないから、ゆっくり行ってきてね」
「二人トモ、気をつけてネ」
「うん、まかせといて」
エプロン姿のゆーちゃんとパティに見送られながら、私達は近くのスーパーへと出発した。
てくてくてく、と決してちぐはぐではない二人分の歩調だけが聞こえる。
私とみなみちゃんが二人きりで行動することは珍しい。
一年前なら、私はきっとこの静けさを、居心地の悪いものに感じていただろう。
何も話さないみなみちゃんを、私は怒っているのかなと勘違いしたかもしれない。
けれど、今は違う。
みなみちゃんはこういう子だって、知っているから。
少しおしゃべりが苦手なことも、感情をあまり表に出さないことも知ってる。
すごく優しくて、誰よりも友達思いなことも、自分の胸のサイズを気にしていることも、
クールでかっこいいというよりも、実は「可愛い」という言葉のほうが似合うことも知ってる。
そんな風にたくさんみなみちゃんのことを知っているからか、
私はこうして何も話さずに歩いているだけなのに、すごく安心することが出来る。
「ひよりは」
そんなことを考えていると、突然みなみちゃんが口を開いた。
「ひよりは、最近少し変わったよね」
そんな予想もしていなかったことを言われて、私は少し戸惑った。
変わったって、どういうことだろう?
自分ではそんなつもりはほとんどないし、むしろ、
みなみちゃんのほうが最近、すごく楽しそうに微笑うことが多くなったから、
変わったといえばみなみちゃんのほうだと思うんだけれど。
「立ち位置の変化、っていうのかな……。
ちょっと前までのひよりは、私やゆたかを、一歩離れて見ていた感じ……
あっ、もちろん違ったらごめんね……でも、なんとなくそんな気がした。
けど、今は……もっと奥まで踏み込んできてくれているような、そんな感じで、
……ごめんなさい、なんだか上手く伝えられなくて……」
「ううん、大丈夫」
みなみちゃんは少しの間言葉を考える素振りを見せ、そして一呼吸置いてから、
「だから私……嬉しいんだ。ひよりと、もっと仲良くなれて。
ゆたかやパティと同じように……ひよりも私にとって初めてできた、大切な親友だから……」
甘い蜜に吸い寄せられるようにみなみちゃん達に近づいていき、
それこそ本当に一歩引いて、百合の花を愛でるように見ていた私。
きっと、みなみちゃんの言うことは本当のことだ。
けれど、もちろん踏み込んできている、という部分も本当のことなんだろう。
そっか。そういうことだったんだ。
こんなにもみなみちゃんを身近に感じられるようになったのは、私が変わったからなんだ。
「ありがとう、ひより」
「ううん、こちらこそありがとうね、みなみちゃん」
良いところも、悪いところも知ってる、
友達という枠を超えたお互いを信頼しあえる関係。
それがなんなのか、どういうことなのか、みなみちゃんは教えてくれた気がする。
「でも……あまり私達を漫画のモデルにしちゃ、駄目」
「はい……ごめんなさい」
「ふふっ……」
そう、私達は良いところも、悪いところも全て知っている、そんな関係……。
私とみなみちゃんが二人きりで行動することは珍しい。
一年前なら、私はきっとこの静けさを、居心地の悪いものに感じていただろう。
何も話さないみなみちゃんを、私は怒っているのかなと勘違いしたかもしれない。
けれど、今は違う。
みなみちゃんはこういう子だって、知っているから。
少しおしゃべりが苦手なことも、感情をあまり表に出さないことも知ってる。
すごく優しくて、誰よりも友達思いなことも、自分の胸のサイズを気にしていることも、
クールでかっこいいというよりも、実は「可愛い」という言葉のほうが似合うことも知ってる。
そんな風にたくさんみなみちゃんのことを知っているからか、
私はこうして何も話さずに歩いているだけなのに、すごく安心することが出来る。
「ひよりは」
そんなことを考えていると、突然みなみちゃんが口を開いた。
「ひよりは、最近少し変わったよね」
そんな予想もしていなかったことを言われて、私は少し戸惑った。
変わったって、どういうことだろう?
自分ではそんなつもりはほとんどないし、むしろ、
みなみちゃんのほうが最近、すごく楽しそうに微笑うことが多くなったから、
変わったといえばみなみちゃんのほうだと思うんだけれど。
「立ち位置の変化、っていうのかな……。
ちょっと前までのひよりは、私やゆたかを、一歩離れて見ていた感じ……
あっ、もちろん違ったらごめんね……でも、なんとなくそんな気がした。
けど、今は……もっと奥まで踏み込んできてくれているような、そんな感じで、
……ごめんなさい、なんだか上手く伝えられなくて……」
「ううん、大丈夫」
みなみちゃんは少しの間言葉を考える素振りを見せ、そして一呼吸置いてから、
「だから私……嬉しいんだ。ひよりと、もっと仲良くなれて。
ゆたかやパティと同じように……ひよりも私にとって初めてできた、大切な親友だから……」
甘い蜜に吸い寄せられるようにみなみちゃん達に近づいていき、
それこそ本当に一歩引いて、百合の花を愛でるように見ていた私。
きっと、みなみちゃんの言うことは本当のことだ。
けれど、もちろん踏み込んできている、という部分も本当のことなんだろう。
そっか。そういうことだったんだ。
こんなにもみなみちゃんを身近に感じられるようになったのは、私が変わったからなんだ。
「ありがとう、ひより」
「ううん、こちらこそありがとうね、みなみちゃん」
良いところも、悪いところも知ってる、
友達という枠を超えたお互いを信頼しあえる関係。
それがなんなのか、どういうことなのか、みなみちゃんは教えてくれた気がする。
「でも……あまり私達を漫画のモデルにしちゃ、駄目」
「はい……ごめんなさい」
「ふふっ……」
そう、私達は良いところも、悪いところも全て知っている、そんな関係……。
「ありがとう、みなみちゃん、ひよりちゃん」
「どういたしまして」
私達が泉家に戻ったときには既にメインの晩御飯の支度はほとんど終わっていた。
鍋から良い香りがしてきて、思わずおなかが鳴りそうになる。
「ケーキが出来るまでもうちょっとだけかかるから、みんな先に食べてて」
「ありがと。でも、やっぱりみんな揃ってからのほうがいいからね」
「うん、出来上がるまで、待ってるから……」
「ワタシも最後まで手伝いまス。だから、みんなで食べようネ、ユタカ」
「うん、ありがと、パティちゃん。じゃあ、急いで作っちゃうね!」
「どういたしまして」
私達が泉家に戻ったときには既にメインの晩御飯の支度はほとんど終わっていた。
鍋から良い香りがしてきて、思わずおなかが鳴りそうになる。
「ケーキが出来るまでもうちょっとだけかかるから、みんな先に食べてて」
「ありがと。でも、やっぱりみんな揃ってからのほうがいいからね」
「うん、出来上がるまで、待ってるから……」
「ワタシも最後まで手伝いまス。だから、みんなで食べようネ、ユタカ」
「うん、ありがと、パティちゃん。じゃあ、急いで作っちゃうね!」
それから数十分後、私達とおじさんはほかほかと湯気を立てている鍋を囲み、席についた。
「わぁ、美味しそうだねぇ」
「うん、すごく美味しそう……」
「モチロンでス。私とユタカが愛情込めてツクりましたから。ネー、ユタカ♪」
「うん、結構美味しく出来たと思うから、遠慮なく食べてね」
待ってる、とは言ったもののやはりあの香りをかいでおあずけを食らうのは少し酷なものがあり、
私はいただきますの合図を待たずにすぐにでも食べてしまいたいくらいだった。
「ただいまー。ごめんごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
では早速いただきます、と手を合わせようとしたとき、丁度泉先輩が、
行きのときには持っていなかった青や緑の袋を下げて帰ってきた。
「おおー、美味しそうに出来たね。クリームシチュー?」
「うん、パティちゃんにも手伝ってもらったんだ」
鶏肉に、人参、玉ねぎ、ジャガイモ、ブロッコリー等の色とりどりの野菜。
ゆーちゃんとパティが今日作ってくれた料理はクリームシチューだ。
文字通り綺麗なクリーム色をしたそれは、口の中に入れた瞬間にとろけそうで、
見ていると思わず涎がこぼれてしまいそうになる。
「ホントに美味しそうっスよね。早く食べたくてしかたがないっスよ!」
「ごめんねひよりん、すぐに手洗いしてくるから、待っててね。
……で、何でお父さんはさっきからずっと俯いてるの? 大体想像はつくけど」
泉先輩が口を三角にして、やや呆れたようにおじさんのほうを見た。
そういえばさっきから一言も話してないような……どうしたのかな?
泉先輩にそう言われたおじさんは、
「……こなた、今までも何度かこういう機会はあったが」
と小刻みに震えながら喋り始め、
「やはりいいものは何度体験してもいいっ!」
と勢いよく立ち上がって手をバンザイの形にしたかと思いきや、
突然「どわー」と涙を流し始めた。
思い出した、確かパティの誕生日のときもこんなことがあったっけ。
いやぁ、なんというか、この人は自重という言葉を知っているのかな。
「あー、はいはい、良かったね」
泉先輩は慣れた様子で軽くあしらい、ゆーちゃんは困っているようだったけど、
これまた慣れた様子の、なんとも言えない笑みを浮かべていた。
あの、いつまで泣いてらっしゃるんですか、おじさん。
「わぁ、美味しそうだねぇ」
「うん、すごく美味しそう……」
「モチロンでス。私とユタカが愛情込めてツクりましたから。ネー、ユタカ♪」
「うん、結構美味しく出来たと思うから、遠慮なく食べてね」
待ってる、とは言ったもののやはりあの香りをかいでおあずけを食らうのは少し酷なものがあり、
私はいただきますの合図を待たずにすぐにでも食べてしまいたいくらいだった。
「ただいまー。ごめんごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
では早速いただきます、と手を合わせようとしたとき、丁度泉先輩が、
行きのときには持っていなかった青や緑の袋を下げて帰ってきた。
「おおー、美味しそうに出来たね。クリームシチュー?」
「うん、パティちゃんにも手伝ってもらったんだ」
鶏肉に、人参、玉ねぎ、ジャガイモ、ブロッコリー等の色とりどりの野菜。
ゆーちゃんとパティが今日作ってくれた料理はクリームシチューだ。
文字通り綺麗なクリーム色をしたそれは、口の中に入れた瞬間にとろけそうで、
見ていると思わず涎がこぼれてしまいそうになる。
「ホントに美味しそうっスよね。早く食べたくてしかたがないっスよ!」
「ごめんねひよりん、すぐに手洗いしてくるから、待っててね。
……で、何でお父さんはさっきからずっと俯いてるの? 大体想像はつくけど」
泉先輩が口を三角にして、やや呆れたようにおじさんのほうを見た。
そういえばさっきから一言も話してないような……どうしたのかな?
泉先輩にそう言われたおじさんは、
「……こなた、今までも何度かこういう機会はあったが」
と小刻みに震えながら喋り始め、
「やはりいいものは何度体験してもいいっ!」
と勢いよく立ち上がって手をバンザイの形にしたかと思いきや、
突然「どわー」と涙を流し始めた。
思い出した、確かパティの誕生日のときもこんなことがあったっけ。
いやぁ、なんというか、この人は自重という言葉を知っているのかな。
「あー、はいはい、良かったね」
泉先輩は慣れた様子で軽くあしらい、ゆーちゃんは困っているようだったけど、
これまた慣れた様子の、なんとも言えない笑みを浮かべていた。
あの、いつまで泣いてらっしゃるんですか、おじさん。
「「「「「「いただきます(マス)」」」」」」
ゆーちゃんとパティの作ったクリームシチューは見た目と香りもさることながら、
味も当たり前のように良くって、思ったとおり口に入れた瞬間にとろけ、
口の中にまろやかな味と香りが広がり、噛み締めるごとに肉と野菜の旨みが出て、
何回口に運んでも飽きることはなかった。
「うーまーいーぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「Oh,ヒヨリの口からbeamが出てまスね……」
「あ、天使に連れ去られちゃう……」
「でも、ホントにおいしいよ、ゆーちゃん。ルウ使ってないんでしょ?
うーむ、ひよりんが飛んでいくのも分かるかも」
「こりゃあ、こなたといい勝負かもな。何か隠し味とか入れたのかい」
「はい、最後に生クリームを少し入れたんです。
そのほうがまろやかになるみたいで。上手くいってよかったです。
みんな、たくさんあるから遠慮なくおかわりしてね。あ、でもケーキもあるからほどほどにね」
それからリビングに何度もおかわりを告げる声が上がり、
温かな雰囲気とともに、晩御飯の時間は穏やかに流れていった。
「じゃあ、そろそろケーキを出しちゃうね」
みんなの手も止まり始め、食事の時間がおしゃべりの時間へと変わりつつあった頃、
ゆーちゃんがそう言って持ってきたのは、ろうそくの立てられた苺のショートケーキだった。
ゆーちゃんとパティの作ったクリームシチューは見た目と香りもさることながら、
味も当たり前のように良くって、思ったとおり口に入れた瞬間にとろけ、
口の中にまろやかな味と香りが広がり、噛み締めるごとに肉と野菜の旨みが出て、
何回口に運んでも飽きることはなかった。
「うーまーいーぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「Oh,ヒヨリの口からbeamが出てまスね……」
「あ、天使に連れ去られちゃう……」
「でも、ホントにおいしいよ、ゆーちゃん。ルウ使ってないんでしょ?
うーむ、ひよりんが飛んでいくのも分かるかも」
「こりゃあ、こなたといい勝負かもな。何か隠し味とか入れたのかい」
「はい、最後に生クリームを少し入れたんです。
そのほうがまろやかになるみたいで。上手くいってよかったです。
みんな、たくさんあるから遠慮なくおかわりしてね。あ、でもケーキもあるからほどほどにね」
それからリビングに何度もおかわりを告げる声が上がり、
温かな雰囲気とともに、晩御飯の時間は穏やかに流れていった。
「じゃあ、そろそろケーキを出しちゃうね」
みんなの手も止まり始め、食事の時間がおしゃべりの時間へと変わりつつあった頃、
ゆーちゃんがそう言って持ってきたのは、ろうそくの立てられた苺のショートケーキだった。
ろうそくが灯され、電気が消えてみんなの歌が始まる。
――Happy birthday to you,
Happy birthday to you,
Happy birthday, dear ひより
Happy birthday to you.
Happy birthday to you,
Happy birthday, dear ひより
Happy birthday to you.
歌を捧げられる人を世界一幸せにする、素敵な歌だ。
ありがとね、みんな。
ありがとね、みんな。
「ふーっ」
ろうそくを吹き消すと、パン、とクラッカーが弾ける音がして、
一斉に拍手と「おめでとう」という言葉が部屋を埋め尽くした。
ケーキの上の「ひよりちゃんお誕生日おめでとう」と書かれたチョコレートを見て、
私はなんだか無性に感傷的な気分になるのだった。
ろうそくを吹き消すと、パン、とクラッカーが弾ける音がして、
一斉に拍手と「おめでとう」という言葉が部屋を埋め尽くした。
ケーキの上の「ひよりちゃんお誕生日おめでとう」と書かれたチョコレートを見て、
私はなんだか無性に感傷的な気分になるのだった。
「じゃあ、切り分けるね」
赤と白のコントラストが美しいケーキが、ゆーちゃんによって七等分されていく。
それを見ているだけで、先ほどのセンチメンタルな気分も、
ほどよい満腹感も、どこかへ飛んでいくみたいだった。
お皿がみんなのところに行き渡ったのを見て、私は誰よりも先にそれにフォークを入れた。
「うーまーいーぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
「俺は勝ち組だああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「ちょっ、お父さんうるさい! あとひよりん、巨大化しないで!!」
「うん、すごくおいしい……」
「Delicious! 頑張って作ったカイがありまシたネ、ユタカ」
「うん! みんなに喜んでもらえて嬉しいな」
「決して苺本来の味を損なわない上品な甘さ、ふんわりとした生地とクリームとの絶妙なコラボレーション!
洋菓子好きの私が言うんだから間違いないっス!!
これはまさに味の王道カップリングやああああああ!!!!!!」
賑やかな声が耐えない食卓の灯は、
ろうそくのようにいつか消えてなくなるということを知らないようだった。
おばさん、騒がしくしてごめんなさい。
赤と白のコントラストが美しいケーキが、ゆーちゃんによって七等分されていく。
それを見ているだけで、先ほどのセンチメンタルな気分も、
ほどよい満腹感も、どこかへ飛んでいくみたいだった。
お皿がみんなのところに行き渡ったのを見て、私は誰よりも先にそれにフォークを入れた。
「うーまーいーぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
「俺は勝ち組だああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「ちょっ、お父さんうるさい! あとひよりん、巨大化しないで!!」
「うん、すごくおいしい……」
「Delicious! 頑張って作ったカイがありまシたネ、ユタカ」
「うん! みんなに喜んでもらえて嬉しいな」
「決して苺本来の味を損なわない上品な甘さ、ふんわりとした生地とクリームとの絶妙なコラボレーション!
洋菓子好きの私が言うんだから間違いないっス!!
これはまさに味の王道カップリングやああああああ!!!!!!」
賑やかな声が耐えない食卓の灯は、
ろうそくのようにいつか消えてなくなるということを知らないようだった。
おばさん、騒がしくしてごめんなさい。
「うー、まだちょっと苦しいかも……」
さすがに食べ過ぎた……。
一番にお風呂に入れさせてもらった私は、浴槽の中でそのことを悔いた。
でも、美味しかったなぁ、あのシチューとケーキ……
「ヒーヨリ♪」
「わぁっ! 」
私が目を閉じてさっきの味を思い出していると、突然パティが入ってきた。
「あーびっくりした……ってパティ、まさか入る気?」
パティは裸にタオル一枚の状態だった。
相変わらず上はほとんど隠してないところがパティらしい。
「Yes, ハダカのツキアイでス! というコトで、おじゃまするネ、ヒヨリ♪」
「ちょっ……まぁいいけど、って、変なトコ触らないの!」
浴槽に入ってくるパティに軽くセクハラまがいのことをされ、私は水しぶきを上げて抵抗したけれど、
気がつけば私はパティに後ろから抱きつかれる形になってお湯に浸かっていた。
向き合うよりはいいけど、これもなんだか恥ずかしい。
ただ、一旦この形に落ち着くと、私もパティも暫くは何も喋らなかった。
ゆっくりとお風呂に浸かり、湯気の中に数時間前の光景を写しながら、
一日の余韻に浸るように静かな時間を過ごした。
「今日は楽しんでくれましタか?」
ピチョン、と水滴が落ちる音が聞こえ、
それを合図にするかのように、パティがそう言った。
「うん、すごく楽しかった。お祝いされるって、良いね」
「あのトキのこと、もう怒ってないでスよネ?」
「あのときのこと? あー、罰ゲームのことね。
うん、あのときは本気で怒ってるわけじゃなかったしね。今だって、パティに言われるまで、忘れてたし」
もちろんびっくりはしたけどさ。
というか、いつから仕込んでいたんだろう、あの悪戯……。
「よかった、ソレは安心しまシたネ」
「あのときはテンパっちゃって頭が回らなかったけど、
よくよく考えるとパティもあのままキスはしないだろうしね」
「でも、ワタシはあのままヒヨリにkissしてもよかったんでスよ?」
「へっ? えええええええっ!?」
それってどういう……!?
「Non non, モチロンnotパテ×ひよ的な意味でス」
パティはそう言うとぎゅっと私との距離を縮め、
「ソレくらい、ヒヨリのことがスキってことでスよ」
そう耳元で囁くように言った。
愛の告白をされたわけではないのだけれど、かあっと顔に血が昇っていくのが分かる。
「……あの、当たってるんですケド……」
恥ずかしさを誤魔化すように、私はそう言った。
当然のように、「あててんのよ」なんて言葉が、すごく流暢に返ってくる。
けど、それ以降パティは何も言わなくって、
私は覚悟を決めて、おそらく今言わなくてはいけないのであろう、
紛れもない私の本心を、口を開いて言葉にした。
「……私も、パティのこと、スキだよ」
うああっ、私も別に告白してるわけじゃないのに、すごく恥ずかしい……。
パティはよく平気でこういうことが言えるなぁ……。
正面から顔を見られてなくて良かった。
多分、すごく真っ赤になってるだろうな、私の顔。
「フフっ、ありがと、ヒヨリ」
パティは満足そうにそういって立ち上がり、
「ひゃあっ!!?」
私にキスをした。
「ウブでスねー、ヒヨリは。ホッペにチューはイケませんでしタか?
背中流してアゲるから、コッチに来てください、ヒヨリ♪」
「もう、パティったら……」
そう言いつつも、キスをされたことをまんざらでもなく思っている自分がいることを、
私はどうしてか不思議には思わなかった。
さすがに食べ過ぎた……。
一番にお風呂に入れさせてもらった私は、浴槽の中でそのことを悔いた。
でも、美味しかったなぁ、あのシチューとケーキ……
「ヒーヨリ♪」
「わぁっ! 」
私が目を閉じてさっきの味を思い出していると、突然パティが入ってきた。
「あーびっくりした……ってパティ、まさか入る気?」
パティは裸にタオル一枚の状態だった。
相変わらず上はほとんど隠してないところがパティらしい。
「Yes, ハダカのツキアイでス! というコトで、おじゃまするネ、ヒヨリ♪」
「ちょっ……まぁいいけど、って、変なトコ触らないの!」
浴槽に入ってくるパティに軽くセクハラまがいのことをされ、私は水しぶきを上げて抵抗したけれど、
気がつけば私はパティに後ろから抱きつかれる形になってお湯に浸かっていた。
向き合うよりはいいけど、これもなんだか恥ずかしい。
ただ、一旦この形に落ち着くと、私もパティも暫くは何も喋らなかった。
ゆっくりとお風呂に浸かり、湯気の中に数時間前の光景を写しながら、
一日の余韻に浸るように静かな時間を過ごした。
「今日は楽しんでくれましタか?」
ピチョン、と水滴が落ちる音が聞こえ、
それを合図にするかのように、パティがそう言った。
「うん、すごく楽しかった。お祝いされるって、良いね」
「あのトキのこと、もう怒ってないでスよネ?」
「あのときのこと? あー、罰ゲームのことね。
うん、あのときは本気で怒ってるわけじゃなかったしね。今だって、パティに言われるまで、忘れてたし」
もちろんびっくりはしたけどさ。
というか、いつから仕込んでいたんだろう、あの悪戯……。
「よかった、ソレは安心しまシたネ」
「あのときはテンパっちゃって頭が回らなかったけど、
よくよく考えるとパティもあのままキスはしないだろうしね」
「でも、ワタシはあのままヒヨリにkissしてもよかったんでスよ?」
「へっ? えええええええっ!?」
それってどういう……!?
「Non non, モチロンnotパテ×ひよ的な意味でス」
パティはそう言うとぎゅっと私との距離を縮め、
「ソレくらい、ヒヨリのことがスキってことでスよ」
そう耳元で囁くように言った。
愛の告白をされたわけではないのだけれど、かあっと顔に血が昇っていくのが分かる。
「……あの、当たってるんですケド……」
恥ずかしさを誤魔化すように、私はそう言った。
当然のように、「あててんのよ」なんて言葉が、すごく流暢に返ってくる。
けど、それ以降パティは何も言わなくって、
私は覚悟を決めて、おそらく今言わなくてはいけないのであろう、
紛れもない私の本心を、口を開いて言葉にした。
「……私も、パティのこと、スキだよ」
うああっ、私も別に告白してるわけじゃないのに、すごく恥ずかしい……。
パティはよく平気でこういうことが言えるなぁ……。
正面から顔を見られてなくて良かった。
多分、すごく真っ赤になってるだろうな、私の顔。
「フフっ、ありがと、ヒヨリ」
パティは満足そうにそういって立ち上がり、
「ひゃあっ!!?」
私にキスをした。
「ウブでスねー、ヒヨリは。ホッペにチューはイケませんでしタか?
背中流してアゲるから、コッチに来てください、ヒヨリ♪」
「もう、パティったら……」
そう言いつつも、キスをされたことをまんざらでもなく思っている自分がいることを、
私はどうしてか不思議には思わなかった。
「「「「おやすみ(オヤスミ)なさい」」」」
一緒にお風呂に向かうゆーちゃんとみなみちゃんでパティと一しきり妄想し、
こんな日でもまったく自重していない自分に嫌気がさすところまでいつものようにこなした後、
お風呂から上がった二人と一緒に四人分の布団をゆーちゃんの部屋に引いた。
誕生パーティの終幕を知らせるかのように電気が落とされ、私達は眠りにつく。
来年は一体、どんな誕生日になるのだろう。
そんな三百六十四日後のことを今から考えると、私はなかなか寝付くことが出来なかった。
そして、次のみんなの誕生日には、精一杯お祝いをしよう、と、
今からみんなの分の誕生日プレゼントをあれやこれやと一生懸命考えるのだった。
一緒にお風呂に向かうゆーちゃんとみなみちゃんでパティと一しきり妄想し、
こんな日でもまったく自重していない自分に嫌気がさすところまでいつものようにこなした後、
お風呂から上がった二人と一緒に四人分の布団をゆーちゃんの部屋に引いた。
誕生パーティの終幕を知らせるかのように電気が落とされ、私達は眠りにつく。
来年は一体、どんな誕生日になるのだろう。
そんな三百六十四日後のことを今から考えると、私はなかなか寝付くことが出来なかった。
そして、次のみんなの誕生日には、精一杯お祝いをしよう、と、
今からみんなの分の誕生日プレゼントをあれやこれやと一生懸命考えるのだった。
カシャッ ピロリーン
「ふぇっ? な、なななんの音?」
「あっ、ひよりちゃん起きちゃった。おはようっ、もう十時だよ~」
「ひよりの寝顔、とても気持ちよさそうだったから……」
「ミンナで撮影会をしていたのでス。後で送ってあげるネ、ヒヨリ」
「ふぇっ? な、なななんの音?」
「あっ、ひよりちゃん起きちゃった。おはようっ、もう十時だよ~」
「ひよりの寝顔、とても気持ちよさそうだったから……」
「ミンナで撮影会をしていたのでス。後で送ってあげるネ、ヒヨリ」
そして、みんなの誕生日にはどんな悪戯をしかえしてあげようかな、と思うと、
私は今からみんなの誕生日がすごく待ち遠しくなるのだった。
私は今からみんなの誕生日がすごく待ち遠しくなるのだった。
コメントフォーム
- あなたの書く一年生ズは最高だ!!! -- 名無しさん (2008-06-29 07:47:19)
- ゆーちゃんは慣れてくると明るくなるのはわかるんだが、
ちょっとはっちゃけすぎかな。
でもそんなの関係ないくらいいい話でした。 -- 名無しさん (2008-05-28 21:44:23) - ひよりん誕生日おめでとう! -- 名無しさん (2008-05-24 14:08:18)
- これは良い癒し
-- 名無しさん (2008-05-24 09:27:17) - ニヤニヤが止まらず、暖かい気持ちになれる、良い小説ですね。みなみ編を希望 -- 名無しさん (2008-05-24 03:25:25)