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アイとラブとユー、という歌

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だれでも歓迎! 編集
あなたの声は、私まで届いてるよ
だから大丈夫
心配しないで


アイとラブとユー、という歌



「私、みなみちゃんのこと好きだなぁ」
校庭に照りつける太陽も目が眩むくらい眩しい表情でゆたかが言った。
私はそれがどこまでの意味なのか計り知れずに顔を伏せる。
友達として?それとも恋愛対象として?
そんなの決まっている。ゆたかは友達として私に行為をよせているんだ。
女の子を、ゆたかのことを好きな自分。
「私も、ゆたかが好き」
ぎりぎりそう返して私はまたその無垢な瞳から目をそらした。
胸の高鳴りを、それが表す意味からも私は逃げていて。
そんな私を好きだと言ってくれるゆたかがいっそう愛しく思えて。
チャイムが鳴り国語の先生が教室に入ってくる。
さっきのことは私の中で思い合っているふたりの会話ということにしてしまっていた。
それくらいならゆたかは許してくれるのだろうか?
いっそこの気持ちを吐き出してしまえば笑って受け入れてくれるかもしれない。
淡い期待を抱きながら校庭を見つめていた。バットがボールを叩く音が心地良かった。
「岩崎、おい岩崎」
「みなみちゃん先生呼んでるよっ」
「は、はい」
「岩崎、今の続きのところを読んでみなさい」
「あの、考え事をしていて……」
「以後気をつけるように。じゃあ田村、続きから」
一瞬授業に呼び戻されたけど、すぐに私の頭はゆたかのことを考えてしまう。
なぜこんなにも悩むのだろうか、それは私が女の子でゆたかも女の子だからだろうか。
ゆたかも誰かに対してこんな気持ちを抱くのか、その誰かが私じゃダメかな?


窓際の席に差し込む日差しが一段と強くなった昼休み、わたしたちは机をならべてお喋りをするのが日課だ。
たいていは田村さんやゆたかの話に私が相槌を打つ、という形で会話が進んでいく。
「みなみちゃんはかっこいいから中学の頃も人気あったんじゃない?」
「そりゃこんな美少女をほっとくアホな男子はいないっすよ」
「そんなこと」
「謙遜しちゃって、この良い女」
「みなみはクーデレね」
ゆたかが何気なく口にした話題。私に恋人がいたかとか、そんなことを聞きたかったのだろう。
中学のころ告白してきた子は何人かいたけど私は誰かと付き合うなんて気にはなれずに断っていた。
恋人になりたいと思う人は今目の前にいる。
「いやぁ、でも岩崎さんと釣り合う男子なんて中々いないッスね」
「そうだよね、みなみちゃんはどんな人がタイプなの?」
私のことをちゃんと分かってくれて一緒にいると落ち着けて
守ってあげたくて、心地よくて
春の日差しを体いっぱいに浴びたタンポポみたいなひと。
「ちょっと分からない」
「そうッスか~残念ッスね」
「ひよりん、また何か考えてるね」
「パ、パティ。いやそんなこたあないッスよ」
ゆたかは何の気なしにこんな話題を出せる。それだけで私には何の可能性もないことは明らかで。
「みなみちゃんどうしたの、顔色悪いよ?」
「ちょっと疲れているだけ」
「そうなんだ。具合悪くなったらすぐに言ってね、私じゃ頼りないかもしれないけど」
あぁ、ゆたかはなんでも見透かしてしまうんだな。
恥ずかしいと思うと同時にだからこんなにも私を夢中にさせることを再認識させられる。
本当に心配そうな目で見つめてくるこの子を、大切な親友を、私のワガママで失ってしまったら
私は壊れてしまうだろう。こんな風に笑える日々を過ごすことはできなくなる。
何よりも、一番大切なゆたかを傷つけてしまう。それだけは許さない。
だからこの想いは心にしまっておこう。私でなく、ゆたかのために。
「やばいッスよ、5限は体育だから急がないと」
田村さんの一言で私たちは昼ごはんを片付け、誓いの途中だった私も遅刻するわけにもいかないので着替えの準備にとりかかった。


窓から眺めていた体育の風景はひどく爽やかに見えたけど、実際には暑さとの戦いだった。
ゆたかが熱に当てられないようにすること、それが第一だ。
先生の話よりもゆたかの体調の変化を気にかける、それが保健委員である私の務め。
ゆたかもこちらの視線に気づいて「心配しないで」という風に笑顔で返してきた。
今日は先週に引き続きソフトボールをするのだろう。守備の時間が長引くとゆたかが倒れてしまうかもしれない。
迷わずピッチャーの役を買って出た。
「うわあ、岩崎さんがピッチャーじゃボールに当てるのがやっとだよ」
「大丈夫、みんなには優しい球を投げるから」
こんな時は運動神経がいいことを嬉しく思える。
ゆたかのために何かできるのなら、それはゆたかのために使いなさいと私に与えられたものだから。
「みなみちゃん、頑張ろうね」
その微笑だけで私はもっと強く、速くなれる。
――ヒュッ
ほらこんなに速い球だって投げられるんだ。
セカンドを守るゆたかの方へ振り返ろうとした。けれど目の前は真っ暗になった。

「起きて、みなみちゃん。起きてよ、みなみちゃん!!」
「小早川。そんなに揺らすな、危険だ」
「だって、みなみちゃんが。みなみちゃんが」
――あれ、ゆたか?
なんで泣いてるの?
そんな顔しないで、私笑ってるゆたかが好きなんだ
恋愛とか友情とかそんな言葉で決められないんだよ
ゆたかへの気持ちはそんな風に誰かが決めた言葉じゃ表せないんだ
ゆたかが好き
ゆたかを愛してる
この気持ちは私だけの特別な気持ちなんだ
今なら真っ直ぐ目を見て言えるよ
「好きだ」って――


「ふゆき先生、起きたッスよ」
「あら、やっぱり軽い脳震盪だったみたいですね」
校庭でソフトボールをしてて私がピッチャーで、ゆたかがセカンドにいて。
そうだ。速い球投げたんだ。それでゆたかの方を振り返って、急に目が霞んで真っ暗になって。
ゆたかが、ゆたかが泣いてた……。
「ゆたか!!」
「あら、気がついたみたいね」
「ゆたかは?どこ?」
「まぁ。まだ寝てなくちゃいけませんよ。それに小早川さんならあなたのすぐ横にいますから」
すぐ横、その「すぐ」というのは隣のベッドではなく私のベッドという意味で。
「私は止めたんですけどね、田村さんがこっちのが早く治るって言うから」
膝元辺りに顔を乗せて眠っていたその子の目は少しだけ腫れていた。
私が投げたボールに目を瞑ってバットを振ったらたまたま芯に当たり
投げ終わって少しだけ3塁側に流れていた私の後頭部に当たったということだった。
脳震盪を起こしていたのだから周りの状況など把握できないはず。
だけど、確かに聞こえた。ゆたかが悲しんでいるのが分かった。頬を伝うその涙を拭ってあげたかった。
ゆたかの言葉は、ちゃんと届いたよ。
私が保健室のベッドに運ばれてから傍にいたゆたかはいつの間にか眠ってしまったらしい。
先生は起こして隣のベッドに移そうとしたが田村さんがそれを引きとめた。
「ありがとう、田村さん」
「充分いいもの見せてもらったッス、では私はこれで」
「私は棚の整理してるわね。まだ寝てなきゃだめですよ」


「あれ、みなみちゃん。どうして私ここにいるの?」
「大丈夫、ゆたかは貧血で倒れただけ」
「みなみちゃんも良くなったんだね」
またこの目だ。私のいる場所、それはゆたかのいる場所。
「ごめんね、私また迷惑かけちゃったかな……」
「そんなことない。ゆたかのおかがで戻ってこれた」
「そんな。大げさだよ。私はただ騒いでるだけで何もできなかった」
「違う。ゆたかのおかげで私は自分の居場所に戻ってこれたから」
不思議そうな表情でこちらを見つめるゆたか。
「みなみちゃんのいる場所って?」
「それは……」
また言葉が詰まる、途切れ途切れでもいい。ゆたかの目だけは真っ直ぐに見つめるんだ。
「私のいる場所にはいつだってゆたかがいる」
ゆたかもしっかり見つめてくれる。私の言うことをひとつも逃さないと。
「だから、ゆたかがいる場所が私の場所。うまくは言えないけど」
「うん。私もいつだってみなみちゃんと一緒だよ」
「ゆたか」
「ん?」
「好きだよ」
顔が紅潮したゆたかにもう一度言う。
「私はゆたかが好き」
ほんの少しだけゆたかの体を抱き寄せる。ゆたかも少しだけ私の方へ身を寄せる。
こうやって少しずつひとつになれたらいい。私もゆたかも息苦しくない速度で、ゆっくりと。


私の声は、あなたに届いていますか?











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コメント:
  • みなみに幸せあれ!!
    GJ!! -- にゃあ (2008-09-14 03:49:39)
  • 心があったかくなりました。すごく良かったです!! -- 名無しさん (2008-07-27 21:54:13)
  • みなゆたは過疎化してるから嬉しくなるな。GJ!! -- 名無しさん (2008-07-22 06:31:42)
  • いいお話でした…。らき☆すたとは思えないくらい。またこういうお話を楽しみにしています。 -- ワンブリッジ (2008-07-21 23:37:54)

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