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劣情×欲情×扇情

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だれでも歓迎! 編集
 私たち――私こと田村ひよりと泉先輩――がアツアツの百合カップルになってから、一週間が経った。
 みんなにはもちろん内緒。
 だってそんな事が知られたら、私もそうだけど先輩も友達との関係が面倒なことになりそうだし、みんなの前では普通に振舞おうって先輩と決めたっス。
 けど、トイレとかで二人になると……(赤面)
 人目を気にしないバカップルよろしく、ハグしたり、キスしたりはおろか……
 こ、これ以上は言えないっス(苦笑)。
 でも、お互いに欲求不満だったんだなあ、と私は思った。
 先輩に胸を触られたら、エッチな気分にもなるけど、同時に心が安らぐのも感じてた。
 もし人に言ったら、女の子相手にそんな気分になるなんておかしい、とか言われそうだけど……
 好きなものは好きだからしょうがない、っス……
 だけど私たちは、私がハルヒの同人誌を先輩に渡した日以来、その……セ、セセ、セックスをしてないっス(早口で)。
 あの日は、両親は元から仕事でいないけど、たまたま兄さんたちもどっか出かけてたのが、本当に幸いしたっス。
 そして今日、二人の我慢がピークに達した今日、先輩は切り出してきました……

 お昼休みのことだった。
「デッ、デートっスか?!」
 女子トイレに、私の甲高い声が響いた。
 ……いきなりだけど、私の声は巷でよく「普通」とか「平凡」とか言われるっス。
 なんというか、自分では結構色気のある声音だと思ってるだけに、ちょっとサミシイ。
「そっそ。あれから私たち、二人だけの時間がまともに取れてないでしょ?
 それに、デートっていっても、秋葉に一緒に行こうってことだよん。けど、もちろん最後は……グフフフッ」
 先輩は、アヤしげな薄目を私にむけながら、口に手をあてて含み笑いをもらした。
「で、でもっ、場所はどうするっスか?」
 率直に疑問をついてみる。
「それはぁ、な・い・しょ。分からないほうが、ひよりんの気持ちも高まっていいと思うでしょ?」
「た、確かにそうっスねえ」
 私は、感嘆たるおもいを自然な笑みと言葉にあらわした。先輩の配慮が、素直にうれしかった。
「んじゃ、放課後にいつもの場所でねっ☆」
「は、はいっ! 心づかい感謝っス!」
 ウインクしながらトイレを退出する先輩に、私は満面の笑みで応え、見送った。
 ちなみに、いつもの場所っていうのは、図書室のこと。
 私たち一年生と、泉先輩たち三年生は下校の時間がちがうから、口約束とかでもしておかないと一緒になれない。
 だから、先輩の授業がおわるまで、私は図書室で本を読みながら待つことにしていた。
 一年生は読書に無頓着な人がおおいのか知らないけど、放課後の図書室はあまり人がいない。
 まあ、私は静かなところがすきだし、先輩をまつうえでも好都合だから、困るわけじゃあないんだけど……
 あ、ちなみに陵桜学園の本棚……実は、けっこう色濃くなってます。
 ラノベとか漫画とかもあったりして(さすがにBL本はないけど)、暇つぶしに最適。
 でも、今日は先輩をまつ時間がすごくながく感じるだろうなぁ、と思いながら、
 私は身だしなみを整えて女子トイレを出ました。

 2時30分頃。
 私は、人気のない図書室にいた。
 一年生はとっくに授業を終えて、部活に興じる人たち以外はみんな下校した。
 私が所属するアニ研は、水曜日だけお休みで、今日がその水曜なので、お休みです。
 曜日を問わず、一年生の授業は五時間目まで。
 終わるのが2時15分で、授業時間は50分、授業の合間の休憩時間が10分。
 六時間目がある泉先輩は、ここに来れるのは3時25分てとこっスかね?
 ともかく、あと一時間もある。
 それまで私は、‘そっち系’の本を読みながらまつ事にした。
 ……先輩にされるがままじゃ、失礼だなあと思って(赤面)……
「え、えと……『リズム良く腰を動かさない女は、最低だ』……?
 『女性の九割九分は、悶えている時の顔はブサイクなので、うまく顔を隠した方が良い』……ふむふむ」
 人がいないのを良いことに、あられもない内容を音読する私。
 ……え? そんな本、どこから入手したのかって?
 そ、それは内緒っス。企業秘密っス。
「『緊張をほぐそうとして、ムードまでほぐさないこと。
  私のアソコを見て彼が、「うわあ! びっくり、くりくり、クリキントン!」と言った時には殺意が沸きました』……
  あはっ、あはははは!」
 机をバンバン叩きながら、「やれやれだぜ」のポーズをし、豪快に笑い飛ばす私。
 男性経験がないクセに、何やってんだか。
 でも、面白いものは面白いからしょうがない。
 どんな事柄でも、良いものは良い、ダメなものはダメ、と認めるところは素直に認めるのが、私の流儀。
 しばらくえっちい本を読みふけっていた私は、ふと図書室の時計に視線を送った。
 いつのまにか、3時20分。
 そろそろ、先輩がきてもおかしくないはずだ。
 ……っと、こんな本見られたら、いくら泉先輩とはいえ恥ずかしい。
 私は慌ててえっちい本をバッグの奥のほうへ押し込み、かわりに漫画を取り出し、読み始めた。
 といっても、もうそろそろ先輩が来るから読んでる時間はほとんどないけど。
 ……一応言っておくと、カモフラのためっスよ?
 読んでいるのは、「クレイモア」という、クールな女剣士ばっかりが出てくる漫画。
 女ばっかりとなると、普通はメインターゲット層は男だと思われがち。
 けど、自分でいうのもなんスけど、これは腐女子人気も結構高いんスよね。
 なんでかって? そりゃ~……読んでみてくらはい(宣伝すな)。
 ガラガラッ……っと、ふいに図書室のドアが開けられる音がした。
 漫画をしまってからそちらに視線を送ると、泉先輩があたりをキョロキョロ見回しているのが見えた。
「泉せんぱ~いっ!」
 私は手を振り上げながら、泉先輩に向かって控えめに駆け出した。
 普通こういうシーンの場合、女の子が男の先輩に向かっていくイメージだと思うけど……
 ――けど?
 ……スイマセン、返答が思い浮かばなかったっス(苦笑)。
「やあ~、ひよりんお待たせ~。待たかな?」
 この和やかな声を聞くだけで、なんか癒されるな~……と感じながら、私は先輩と向かい合った。
「いや、全然っス。じゃ、じゃあ早速いきましょうか?」
 ややうわついた声に、そわそわした挙動で言う私。
「あわてないあわてない。一呼吸一呼吸。
 ひよりんは気持ちがおもてに出ると分かりやすくて、ほんとかわいいね~。このっ☆」
「ひんっ!」
 先輩に制服越しに胸をつつかれ、素っ頓狂な声を上げちゃった。
 ……「ちゃった」じゃなくて、「上げた」、だけどね。
 何気にエッチな私は、身体の各所にそういうポイントがあったりする。
 わき腹とか、肩とか、背中とか。
 つっつかれたり、なでられたりするだけで、えっちい声を出したくなっちゃう。
 今だって、すぐに床をともにするわけでもないのに、心臓の鼓動が早く高鳴ってる。
 今日の最後にすることを考えるだけで、興奮が抑えきれないんっス。
「ひんっ! って……ひよりん、何気にえっちいね~」
 ……ちょっとショック(ホントのコトだけど)。
「あはは……面目ないっス」
 と、そこで先輩は表情を引き締めて、
「んじゃまっ、積もる話は後にして、行こっか?」
「は、はいっ!」
 先輩の言葉に、私は「待ってました!」と言わんばかりの、喜びあふれる返事をした。
 そして、足早に図書室を後にしました。

「ひよりんってさ、リアルの男子には全く興味ないの?」
 駅にむかう途中の並木道で、先輩は分かりきった事柄を訊いてきた。
「あは……今まで全く縁がないんスよね。お父さんと兄さん二人とは話せるんスけど、ほかの男の人とはそれも難しくて……」
「へえ。って言っても、私も興味ないんだけどね~。リアルでも二次でも、私は女の子一筋だし」
 ……どこかで聞いたはなしだけど、先輩は「リアルで同姓趣味はない」って言ってたらしいけど、偽ってたみたいっスね。
 でも、それで正解だと思う。
 誰にだって秘め事はあるものだし、むしろ何でも正直にいう方が……正直な事しかいえない人には申し訳ないけれど。
「でも、ひよりんは二次では男の子好きなんだよね」
「そ、それはもう……やっぱり、美少年たちの情事を見るのは、共感できる部分がおおくて癒されるといいますか……
 あ、でも、じつは百合も結構好きなんスよね。身体と心のつながりの中に見る、ある種の背徳的な切なさ悲しさがですね……」
「……ひよりん、齢いくつ?」
 私のセリフに、疑念の声と表情を露にする先輩。
 わからないでもないですが……ううむ。
「そ、そんなにオトナっぽいセリフだったっスか?」
「いやー別に。……けど、何か私たち、自分のこと棚に上げてるよね」
「……そうっスね」
 私は、頬をほんのり上気させながら、ささやかな声でつぶやきました。

 そんなこんなで。
 場面は一気に秋葉原駅構内。
 4時30分前とあって、駅は雑踏していた。
「いやぁ、聖地はいつ見ても聖地だねえ」
 改札口を通ってから、先輩は満足げに言ったものだった。
 正直、私の脳内は別のことでいっぱいだったけど、努力してそれを表に出すまいとしていた。
 なんとか煩悩を追いやろうとしてるんスけど、これから待ち受けることを考えたら……無理っス。
「じゃあ先ずはゲマズから寄ってこか~……って、どしたのひよりん?」
 かすかに浮かない表情だったであろう私に、少し心配そうな声をかけてくる先輩。
「え? ああ~、いやぁ、な、何でもないですよ。さ、早く行きましょう」
「ん、そうだね。アレの新巻出てっかな~」
 ……なんとか悟られずに済んだみたいっス。
 ふう~っ、と控えめな胸に手を当てる私。
 機嫌良さそうな先輩を見て、私も心が安らいだ感じになりながら、先輩のあとを追随しました。

 ゲーマーズ二階。
 ここはおもに、新着CDやDVDなどが置かれているフロアっス。
「ええっと……これと、これと、あ、あとあれも買わなきゃ」
 一体どこからそんなお金が出てくるのか――と訊きたくなるほど、先輩は結構な数のアニメDVDやアニソンなどを漁っている。
 やはり、バイトするとしないでは、相当大きいんだなあ。
 と思うと同時に、バイトをしてしまうと、自分の時間が取れなくなる懸念もあって、私はバイトはしないと決めていた。
 親からもらうお小遣いだけでじゅうぶん足りるし、漫画や絵を描く時間もけずられるのはちょっとね……
「ひよりんは何も買わないの?」
 予想通りの質問に、私は用意してある回答を述べる。
「あー、そうっスねえ……あ、アンインストールでも買おうかな?」
「えぇっ? ひよりんまだ買ってなかったの?」
 先輩はちょっとおおげさなリアクションで、私の両肩を掴んできた。
 アンインストール――深夜帯に放送されたアニメ「ぼくらの」のOP曲です。
 たぶんだけど、知名度はアニメと同じかそれ以上に高いんじゃないかなあ。
 本編より圧倒的に売れてしまった、アニメ「創世のアクエリオン」のOP曲は持ってるけどね。
「いやあ、ニコニコでよく見かけて「良いな~」とは思ってたんスけど、買う機会がなくてですね……」
「もったいないよひよりん。基本はおさえとかなきゃ。創作にはそういう所が大事なのだよ」
「いやあ、面目ないっス」
 全力で同意するわけじゃないけど、先輩の言うことにも一理はあるので、首肯しておいた。
「ふ~う、っと。私は買うもの取ったけど、ひよりんはそれだけでいいの?」
「あ、ハイ。だいじょぶっス」
「そう。じゃ行こうか」
「ラジャっス」
 先輩にいざなわれてレジに向かう途中、私は自分が少し落ち着いてきたことに気付いた。
 そうだよね、せっかく先輩との大切な時間なんだし、余計なことかんがえずに楽しまなきゃ。
 自分にそう言い聞かせながら、私は先輩のちいさな背中を目で追っていきました。

 色んな店をめぐっているうちに、電気街はあっという間に夜空につつまれた。
 ふと携帯をひらいて見ると、7時過ぎであることがわかった。
 十二月とあって、今は完全な夜の時間帯。
「ねえひよりん……おナカ、大丈夫?」
 お腹が空いているか空いていないかなら、当然空いてたっス。でも……
「いや、今日はそんなに空いてないっスね」
 とウソをついた。
 この後、先輩が言おうとしていることを、私は確信に近い予測を立てていたから。
「そっか、良かった~。あと、親には言ってあるよね?」
 事前に、先輩には親の承諾を得たことは話しておいた。
 詳細ははぶくけど、「クラスメイトの女の子の家に泊まる」と言ったら、意外にあっさり許可してくれて助かった。
「もちろん、言ってあるっスよ」
「よっしゃー! じゃあ、ひよりん。私についてきてもらうよぉ」
 先輩は、なんだか不敵な表情を私に向けながら、秋葉原の駅へと方向を定め、歩みはじめた。
「……あ、あれ?」
 ふいに、私は胸をつよくおさえる。
 ドクッドクッドクッドクッ……心拍数が異常に速く――180くらいに、なっていた。
「おお、おかし、ぃなあぁ……」
 独り言も、明らかなふるえを帯びている。
 怖い。ものすごく怖い。
 私の顔は大量の汗におおわれて、胸がはりさけんばかりの思いに吐き気をもよおした。
 瞳の焦点はただ一点を見つめ、口は半開きになってしまっている。
「ひよりん!? どしたのっ? 大丈夫!?」
 先を行っていた先輩が、焦燥に満ちた顔で私にかけよってきて、背中をさすってくれた。
 すると、不思議なことにだんだんと落ち着きを取り戻し、汗がひいていくのがわかった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 喘鳴を発しながらも、どうにか平常心を取り戻せていた。
「ひよりん……だいじょぶ?」
 ようやく落ち着きを取り戻した私に、いたいほどに心配そうな声をかけてくる先輩。
「……ええ。迷惑かけて、すいませんっス。でも、私は大丈夫です。早く行きましょう」
 口調が若干おかしいなと思いつつも、私は平静を装いながら駅に向かって歩み始めた。
「ひよりん……」
 先輩の、私のなまえをつぶやくたった一言が、その時ばかりは身に染みて痛かったです……

 なんと。
 私たちがやってきたのは、鷲宮神社。
 ……電車代とか、所要時間とか、計らないで欲しいっス、ええ。
 こんな夜更け、確かに人が来るはずはないっスねえ。
 ――落ち着いて、落ち着いて。平常心、平常心。
 私は、何度も自分の心によびかけた。
 となりを歩く先輩も、表情はふつうだけど、さっきから黙りっぱなし。
 これからすることを考えれば、神妙にもなる。
 けど、初めてでもないのに、私はちょっとおおげさにドキドキしている気がする。
 私自身はエッチな女の子のくせに、いざ本番前になるとガチガチになってしまう。
 我ながら情けない……
 二人は、同時に鳥居を潜り、一気に賽銭箱の前まで足を運んだ。
 そこで私はいったん足を止めたけど、先輩はおかまいなしに賽銭箱を迂回して、木の神殿の扉を開ける。
 ――ま、まさかそこでするんですか?
 なんかバチがあたりそうな感じがするけど、理性があっちまで飛んでしまっている私たちには、そんなことを思考する余裕はなかった。
 先輩はさっさと扉の奥へ進んでしまったので、私もおずおずとそれに追随し、神殿に入った。
 薄暗い、木造りの空間を見渡し、意外と明るいなぁと思っていた……
 まさにその時。
 先輩は、私の背後に回りこんできて――
「はあぅ、あん!」
 奇襲攻撃を受けてしまった。
 後ろからムネをわしづかみにされ、揉みしだかれた私は、その場にへなへな~、っとしゃがみこんでしまう。
「あっ、はっ……せんぱ……ああぁっ!」
 例によって、AV女優顔負けの喘ぎ声をあげる私。
 されている最中は、とことんエッチな気分になりたい。
 だからこそ、よりエロい声を上げるのが、私の想いだった。
 喘ぎ声を発しながら「先輩……」と呟き、顔を先輩の方へ向けた。
「……んんっ!」
 私の希望に応え、唇を重ねてくれた先輩。
 ちゅぷ、ちゅぴ、と淫音をたてるように、私に吸い付いてくる。
 ムネをまさぐられ、キスされて、私は気持ちよさと共に幸福感を覚えてた。
「……きゃうっ!」
 先輩に押し倒され、私は仰向けに寝転んだ。
 まるでクモみたく身体を動かし、今度は私の乳首を口に含む先輩。
「ひゃあぁん!」
 舌先で突起を撫で、ちゅううぅと吸い、更には歯を立ててきた!
「はぁぁん! あんっ、やぁ、んっ、あっ、んあぁんっ!!!」
 ちゅく、ちゅく、と淫猥な音が響き、合わせるように嬌声を上げる私。
 ――くらっ、と脳に何か違和感を覚えたけど、それに気を取られてる余裕はない。
「――っ! ひうんっ! んんっ!」
 お互い一度しか経験がない筈なのに、先輩の手はきわめてこなれた手つきで、私の下着に指を這わせていた。
 気を使って、両足をM字に開く。
 つつ~っ、とスジをなぞられ、両掌を地面に付けて、大きく仰け反る私。
「ふうぅ……ぅんっ! ……あぁっ! ……ひゃあん!」
 ゆっくりと、下から上へ、突起まで――その快感の波を愉しむように、私は間隔をおいて喘いだ。
 ちゅぷ、ちゅぷ、と巧く舌で弄ばれる乳首と、これまた巧くなぞられるアソコに、私は‘色々と’限界を感じた。
「――ひゃっ!!! いっ! はぁあぁぁんっ!」
 流れるように下着の中に滑り込んできたちっちゃな手が、私の恥部をめちゃくちゃにこすりつける。
 ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ……
「ひっ! いっ! はっ! あっ! あぁ! やぁ!」
 クリちゃん(いやん)を擦られつつ、膣内をかき回され、愛液があふれ出るのがわかる。
 身体中に走る電流の如き刺激に……私はまた何か嫌な感情が、身体の底から沸き立つのを察した。
 おかしい……これは、これはまさか!
 私は何かを思考することも許されず――
 くらぁ……と一瞬のうちに、視界が激しく揺れながら暗転した――

「……りん……よりんっ、ひよりんっ!」
 哀感と焦燥に満たされた特徴のある舌足らずな声が、私を繰り返し呼びかけていた。
「うぅ、ん……」
 おぼろげな意識とまぶたを起こすと、ツンツンした青髪の少女が、悲しみを塗った表情で私を見据えていた。
 青髪の少女――泉先輩の向こう側に、薄闇の中、この建物の天井が見える。
 ――今、何時かな?
「ひよりん! ……良かったぁ。死んじゃったのかと思った……」
 鼻をすすりながら、先輩は目に溜まった涙をぬぐっていた。
 先輩のこういう表情って、見てる側からするとたまらないものがある……なんて言ってる場合じゃないっスね。
「……とにかく起きてよ、ひよりん」
 私の両手――おナカの上に組んで置かれてたっス……――を取り、強い力でグイッと引っ張る先輩。
 どのくらい、気を失っていたのだろうか?
 上体を起こし、L字の体勢で辺りを見回すと、しっかりと事後処理が行われているのが確認できた。
 私もちゃんとした格好になってるし。
 その時、私は深い懺悔のおもいに顔を歪め、先輩に向き直ると、
「――本当に申し訳ありませんでしたっ!!!」
 腰を下ろしたままの状態だけど、ふかぶかと頭を下げた。
 先輩との行為の最中に寝るなんて、私は……私は!
「……気にしてないから。安心してよ、ひよりん」
「でも……せっかく、先輩が……わたし、の、ため、に……」
 ぐすっ、ぐすっ、と泣きながら言葉を綴る私に、
「ひよりんに悪気はなかったんでしょ? ……二人で治していこうよ」
 え?――と何かを訊く間を持たず、先輩は再び口を開き始めた。
「心の負担が強いと、ひよりんは意識を保てなくなっちゃう。最初は、私がいきなりしたから大丈夫だったのかもしれないね。
 だからさ、何回もエッチなこと積み重ねていけば、きっとそれも治ると思うから……ね?」
 その言葉を聞いていくうちに、私は徐々にわきあがってくるよくわからない感情に、身体を震わさずにはいられなかった。
「……せ、せんぱぁ~~い……!」
 もう遠慮などなく、先輩の背中に両手を回し、抱きつく私。
「ちょ、ちょっとひよりんってば……」
「私……私本当に、先輩がいてよかったぁ……いなかったら……うぅっ、ぐすっ……」
 嗚咽を洩らしながら、言いたいことをあますことなしに募る私。
 先輩もだと思うけど、私は今エッチな気分なんかどこぞに吹き飛んでしまっていた。
 信愛をさらに深められたことに、心の中は満ち足りていたから。
「……しょうがないなぁ。これからはまいにちお昼休みに、トイレで情事を興じることにしようかなっ?!」
「っ!――ええっ?!」
 一瞬、心臓を握りつぶされる感覚が私をおそった。
 思わず、左胸を強く抑える私。
「あっ、ひよりんごめん……けど、そうしないと、私たちいつまでもセックスできないジャン?
 あっ、でもこれからすぐに冬休みじゃん。困ったなぁ。どうしよ……」
 我がことのように悩む先輩に、私は破顔一笑し、
「先輩のそのお心遣いだけで、私の心は幸せに満ち溢れるような気がします。
 本当に、本当に感謝してます。だから――」
「続きをしますかっ?! このーっ☆」
 突然甲高い声を上げた先輩は、地べたにL字に座っている私の背後に回ってきて、私の両手をガバッと持ち上げると――
「えっ!? ちょっ! あははははははははっ! や、やだちょっと、せんぱっ……アッーーー!!!」
 触手を舞わせるかの如くわきの下をくすぐられ、私は笑顔のまま双眸に涙を湛えていた。
 今日は、また一つ、先輩のお陰で憑き物が取れた。
 そんな気がした、一日でした――                                         fin



















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  • こなひよに目覚めたぜ……
    続編頼む! -- 名無しさん (2008-07-26 14:02:25)

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