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スケッチスケッチ!  2筆目 猪突猛進な先輩

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だれでも歓迎! 編集
タッタッタッタッ……


「おーい、早くはやくー!」
「ハッ……ハッ……ちょ、先輩……待っ……」
「早くしないと置いてくぞー!」
「ハッ……ハッ……はぁ……」
せ、先輩、いくらなんでも、ゼェ、元陸上部と、インドア腐女子とでは、ハァ、
基礎体力が、違い、ゼェ、過ぎます! ……ハァ、ハァ……


スケッチスケッチ!  2筆目 猪突猛進な先輩


あ、どーも、田村ひよりです。
えっと、このたび泉先輩に誘われまして、スケッチ大会に参加することになりました。
なんでも総勢10人での大会ということで、先輩と一緒に遅刻したときはホントに
申し訳ないと思ったッス。
それで、ペアになってスケッチをするということで、爪楊枝でのくじ引きの結果、
3年生の日下部先輩と組むことになったッス。
日下部先輩とは文化祭のときに一緒にチアをしたくらいしか面識がなかったんですけど、
ペアになったとき、
「おぅ、お互い頑張ろうな!」
と気さくに声をかけてくれて、結構気が楽になったッス。
でも……


「……ハァ、ハァ……」
「んだよだらしないなー、もうへばったのか?」

日下部先輩は泉先輩の合図と同時に「よっしゃー!」と叫びながらロケットスタートを決め、
その姿に私が呆気にとられていたら、
「何やってんだよー、早く来いよー!」
と日下部先輩が叫んで、私は慌ててその後を追いかけたッス。
……駆け始める直前に柊先輩の「お気の毒に……」という呟きが聞こえてきまして……
まさにその通りの状態になってます、自分……

「ハァ、ハァ……く、日下部先輩、な、何をそんなに急いでるんですか?」
ちなみに私達の向かう場所は、駅から少し離れた小高い山。泉先輩が指定した5ヶ所の中で
一番遠い場所にあるんですけど、これがまた泉先輩が開始時間に指定した12時までには
歩いても充分間に合う距離なんです。なのに日下部先輩は何で……

「ん? 別に急いでるつもりはないぞー」
舌っ足らずな声で日下部先輩はこう答えました。
「そ、そうなんですか?」
見ると、私はかなり息を切らしているのに対し、日下部先輩は私よりも猛スピード
走っていたはずなのに、少しも呼吸の乱れを見せていません。
うぅ、これが運動部と文化部の違いッスかね……

「な、なら、歩いていきませんか? わ、私、このままだと、大会が始まるまでに、絵を描く
体力がなくなっちゃいそうで……」
と私が提案すると、
「んぁ、そうなのか? んじゃ、しょうがないなー」
日下部先輩は渋々ながらも私に合わせて歩調を緩めてくれたっス。


と、その時、
「ところでよー」
駅と山との間ぐらいの、左手に黄金色の稲が干してある田んぼ、右手に私たちが向かう山とは
違う山肌が見える砂利道の上、
「お前、名前何て言うんだっけ?」
「ふおっ!?」
日下部先輩は今になって、まさに今更な質問を私にぶつけたッス。

「せ、先輩……今まで誰だかわからずに私と行動してたんですか?」
「いや、文化祭の時にいたよなー程度しかわからなくてさー。名前も聞かずに出発
しちまったし」
先輩がお互い自己紹介もせずに走ってっちゃったんですけど……というツッコミは心の中に
しまって、
「そうですか……私は田村ひよりといいます。さっきいた泉先輩の従姉妹の小早川さんや
高良先輩の隣にいた岩崎さん、私と一緒に来たパティとは同じクラスの友達ッス」
「そっか、田村か。私は日下部みさお。改めてよろしくな!」
そう言うと、日下部先輩は左手をずいっと私の方に向けました。
「あ、はい、よろしくお願いします」
私も、自分の左手を差し出して、日下部先輩の手を握りました。



しばらく歩いていますと、川を越えた先に木でできた看板が立っていて、そこには、
← ○○山 山頂
と、目的地への案内が書いてありました。その先には、紅葉で綺麗な色に染まった小高い山が
あったッス。

「ここから登るみたいですね」
「そーみてーだなっ。じゃ、さっさと頂上まで行くぞ!」
「あ、は、はいッス!」
日下部先輩の号令で、私達は山のほうへ向かいました。
ちらっと腕時計を見てみると、針は11時40分を指していました。

「……ハァ、ハァ……」
「お、思ったより急だな……」
「そ、そうッスね……」
しばらくして、私と日下部先輩は山の中腹辺りを登っていました。
日下部先輩の言うとおり、この山の登山道は思ったよりも急で、しかも何も舗装されていない、
人一人が通れるくらいの細い砂利道だったッス。私だけでなく、日下部先輩も少し息を切らす
ほどの坂道ッス。
前を歩く日下部先輩の後ろを歩いていると、
「……ハァ、ハァ……」

ズルッ

「うおっ!?」
私は砂利道に足をとられ、思いっきり右足を滑らせてしまったッス!
徐々に前方に倒れていく私の体。あ、マズイ! このままだと左腕から地面に
落ちてしまうッス! な、何とか命の次に大事な利き手を守らねば……
私はとっさに体を捻り、何とか地面に背を向けることができたッス。でも、背中から落ちると
今度は呼吸が苦しくなるんスよね……と、その苦しみを思い出しながら、私は地面に――


「………あれっ?」


――落ちるはずが、一向に背中に痛みを感じない。足は地面についてるから、空を飛んでる、
なんてこともないッス。むしろ、何かに支えられて――

「……おい、大丈夫か?」
その声に反応して後ろを向くと、私の前を歩いていた日下部先輩が、私の両肩をつかんで
支えていたッス。日下部先輩はそのまま私を持ち上げ、立たせてくれたッス。


「いやびっくりしたぜー。様子を見ようして後ろを振り返ったら、田村がちょうど足を
滑らせたところでさー」
「あ…ありがとうございます……」
「いやいや……ところでさー、何で田村、コケそうになった時回転して背中から落ちようと
したんだ? まあ確かに手から落ちたら突き指とかするかもしんねーけど、そこまでして
怪我したくなかったのか?」
「えっ!? あ、いや、その……」
日下部先輩の質問に、私は言葉を濁してしまったッス。日下部先輩に「漫画を描くために
利き腕は命の次に大切ッスから」とか言ってもあまり理解されないし、下手したら変な目で
見られるかもしれないッス。

何とかせねば……
「えっと、そのですね……そう、そうッス! これから絵を描かなきゃいけないのに、手を
挫いて描けなくなるのがいやだったんですよ」
「あー、なるほどー。確かにそんなんで楽しみがなくなっちまったらつまんねーもんな」
「そう、そういう事ッス!」
よ、よかったッス。日下部先輩、納得してくれたみたいッス!
「んじゃ頂上までもう少しだし、ちゃっちゃと登っちまおーぜー」
「は、はいッス!」



「……わぁ……」
「うわっ、すっげー!」

数分後、私達は無事、山を登りきって、山頂に到着したッス。
山腹と違って、山頂付近は草むらが広がっていて、そこからの景色も綺麗だったのですが、
「おっ、なんか展望台みてーのがあるんだってヴァ! 田村、登ってみようぜ!」
との日下部先輩の提案で、その高台に登ってみたッス。
すると、展望台に登る前は見えなかった、山の下の景色がそこには広がっていたッス。
さっき日下部先輩に名前を聞かれた、駅から登山口まで続く田んぼ沿いの道。
山の右側から蛇行して下っていく川。
そして、私達が降り立った、小さな駅。
その、まるでジオラマを見ているかのような景色に、私はしばし圧倒されてしまったッス。


と、

「……ヤッホ―――!!」
「うひゃっ!?」
突然、左隣にいた日下部先輩が前方に向かって大声で叫んだッス。
何事ッスか!? と私がきょどっていると、また前方から、

……ヤッホー……

と、小さな声が返ってきたッス。

「おーすげー! マジで返ってきたんだってヴァ!」
「……日下部先輩、そういうことは先に私に一言言ってからやってください」
つまり、日下部先輩はただ「やまびこ」を試してみたくて叫んだわけで……

「あ、わりぃわりぃ。こーゆーとこ来ると、ついついやってみたくなるんだってヴァ!」
「そ、そうッスか……」
私が少しキーンとなっている耳を押さえて、少し呆れ口調で日下部先輩の弁解(?)を
聞いていた、その時。


――キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン――


「えっ?」
「お、なんだなんだ?」
突然、どこからか学校のチャイム音が鳴って、

――ただいまの時刻は、午前、12時です――

遅れて、まるで時報の様なアナウンスがかかったッス。

「あ、もうそんな時間スか」
そう、今の時刻はさっきのアナウンスの言うとおり、午前12時。つまり、スケッチ大会の
始まりを告げるアナウンスでもあるッス。

「じゃあ早速描き始めますか」
「おぅ。よーし、すっげえやつ描いてやるぜー!」
私が始まりを告げると、日下部先輩は気合を入れて、とても楽しそうに展望台の階段を
三段抜かしで駆け下りていったッス。私も、先輩の様にとはいきませんが、できるだけ
駆け足で、階段を下っていきました。



その後私達は、しばらくは一緒に絵のモチーフを探して、何を描くか決めてから一緒に
お昼ごはんを食べたッス。昼食中は、日下部先輩と今日のこれまでの事を思い出したり、
学校でのそれぞれの学年での話をしたりしたッス。その中で、日下部先輩が、
「柊のやつ、私にはすっげー冷たいんだぜー!」
と何度も言っていた事がなぜか印象に残ってるッス。

で、その後は私と日下部先輩、分かれてそれぞれの絵を描き始めたッス。ちなみに私は
山頂付近にあったもみじを、日下部先輩は――なんと、展望台から見下ろした風景を、
それぞれ描く事にしたッス。


絵を描いている間、私はもう一度今日のことを振り返ってみました。そしてそのほとんどは、
日下部先輩の事だったッス。
私は展望台で一人お絵かきに没頭する日下部先輩を見上げてみました。
始まっていきなり駆け出した先輩、山に行く途中で私の名前を聞いてきた先輩、山頂の展望台で、突然叫ぶ先輩。
確かに泉先輩から聞いたとおり、日下部先輩はバカキャラかもしれません。
でも、疲れた私の意見を聞いて走るのを止めてくれたり、山道でこけそうになった私を
支えてくれたり。そして何より、初対面の私と、気さくに話をしてくれたり。
本当は優しくて、気が利いて、フレンドリーな人なんじゃないかな、と私は思うんです。


良い意味でも悪い意味でも、一直線な先輩。
……何か、萌えるッス。
そんなことを考えてデッサンをしていたらいつの間にか、もみじの下で幹の側に立っている
日下部先輩を描いていたッス。








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  • このカップリング、珍しい…
    でも良いですね! -- ちょっと (2012-11-02 12:22:03)
  • ひよ×みさ… イイ! -- 名無しさん (2009-05-18 23:03:58)
  • このペア新しいな… -- 15 (2009-01-25 18:54:20)
  • ひよ×みさ -- 名無しさん (2008-11-08 07:54:21)

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