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スケッチスケッチ!  3筆目 青色栗色紅葉色

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匿名ユーザー

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うーん、空気がきれいだー。天気も良いし、絶好のスケッチ日和だねー。みさきちが突然
走り出すのもなんとなくわかる気がするね。


「もう、みさちゃんったら……後で注意しておかないと」
「みさきちと一緒に行動してると、とても疲れそうだよねー」
「でも、元気が良いのはとても良い事だと思いますよ」
「そうデスヨー。人間、energeticなのが一番デース!」
「そ、そうだけど……元気すぎるのもね……」


スケッチスケッチ!  3筆目 青色栗色紅葉色


どーも、私、泉こなた。このスケッチ大会の主催者みたいな者です。
今私達は駅前から山の中に向かって伸びる砂利道の上を歩いています。

って、私ってばこんな風に丁寧語で話すようなキャラじゃないよね。修正修正っと。

んまぁそんな訳で、私と一緒に歩いている人は、合わせて3人。
あれっ? 確かこのスケッチ大会ってペアで行動するんだよね? って疑問に思った人、
実は私のいるペアともう一つのペアは途中まで同じ道を歩いていかなくてはならないのだ。
ちなみにみさきち・ひよりんペアもホントは私達と同じ道を歩いてくんだけど、先述の様に
みさきちがスタートと同時に走り出してしまい、こちらからは二人はもう点のようにしか
見えなくなってるんだー。

と、
「あ、私達がスケッチをする場所は、ここから入るみたいですよ?」
「Oh! ホントデスカー? じゃあココでコナタ達とはお別れデスネー!」
ピンク髪の委員長がある草むらの前で立ち止まり、それにつられて金髪の留学生もそこで足を
止めた。やたらハイテンションで。

「あ、そっか。んじゃ頑張ってねー」
「はい、頑張ります」
「Yes! expectしてくださいネー!」
そう言って、二人は草むらを貫いている、獣道のような小道の中に入っていった。


さて、と。
一緒にいた3人のうち2人と別れ、今、私の隣にいるのはただ一人。
「……じゃあ、私達も神社まで行きましょうか」
「うん、そうだね」
峰岸あやの。かがみやさっき出てきたみさきちとは中学生のころからの友人で、クラスメイト。
そして今日のスケッチ大会における、私のペア。
くじ引き後、私の開始の合図の直後に走り出したみさきちを見て、かがみが呆れた様に
ひよりんに呟いたのに対し、この峰岸さんは少し困ったように微笑んでいた。さすがつかさ、
みゆきさんと並ぶいい人さんだー。

「ひよりんも大変だよねー。よりによってみさきちとなんてさ」
「……否定できなくてごめんね? みさちゃん……」
「うおっ、み、峰岸さん。今の発言、ちょっと黒くなかった?」
「えっ、そうだった?」
「うん、なんか……あ、ここ右だね」
「あ、ホントね。……わぁ……」
右折をして、神社――私達の指定場所――までのまっすぐな道に入ると、私達の目の前に、
会話している間には気づかなかった、とてもきれいな景色が広がっていた。
目の前の山肌は一面紅葉色に染まって、それが小春日和の快晴の空と相成って、とてもよく
綺麗に映えていた。

「……すごいねー……」
「……えぇ、そうね……」
私達はしばらくその景色に見惚れていて、でも私がまだ指定場所に到着してないことに
気づいて、峰岸さんを促して、その神社までの一本道を歩き始めた。



「……高いね……」
「……そう、だね……」
さて問題です。私たちは何を見ているのでしょーか?


正解、やたら長い石段。
……うん、地図を見て神社の前に階段があることはわかってたけど、ここまで長いとは
思わなかったなー。上を見上げても――木が邪魔で、っていうのもあるけど――その急で長い
石段の終わりを見つけることができないし……

「「…………」」
その長さにしばらく圧倒される私と峰岸さん。でも、目的地の神社にたどり着くにはこの
石段を登りきらなければならない。

「……とりあえず、登ろっか?」
「あ、うん、そうだね……」
私は峰岸さんに促され、一緒に一段ずつその石段を登り始めた。



「……ハァ、ハァ……よ、ようやく頂上が見えたわ……」
「み、峰岸さん、ハァ、だ、大丈夫?」
「い、泉ちゃんこそ……」
約4分後、私達の目の前にようやく神社の鳥居が見えて、この地獄の階段登りが終わりを
告げた事がわかった。その頃には私も峰岸さんもバテバテで、鳥居が見えたことでようやく
ホッとというか、安堵することができた。
それにしてもこの石段、長すぎだよ……3分間登りっぱなしでようやく頂上が見えてくる
なんて……おかげで石段の周りの紅葉を見てる余裕なんてなかったし……
えっと、2段に1秒かけたとして、4分だから……

480段。

……さすがに後半はバテてたからもう少し段数は少ないはずだけど、こんな田舎に400段
以上の石段を登る神社があるって……
というか、何で私はこんなどうでもいい事を計算してるんだろうね。

まあ段数の話は置いといて、私達は息を切らしながら最後の数段を登りきり、息も絶え絶えに
鳥居を通り抜けた。そして苦しくて閉じていた目を開けて、前を見てみると――


「「……わぁ……」」


そこには今日何回目の感嘆だろうか、なんて野暮なことを考えるのももったいないくらい、
綺麗な景色が広がっていた。


吹き抜ける風がサラサラと、色を染めたカエデやイチョウの木々を揺らす、その中に、
少しこじんまりした、それでも威厳のある、立派な神社がそこには建っていた。大きさは、
私の家と同じくらいかな? それよりも少し小さいかも。でも、それほどの大きさでも、私や
峰岸さんを圧倒させる、厳かな雰囲気が漂っていた。

「……何というか……凄いね」
「……ええ、そうね……」
凄いとしか言えない、って言う感想を旅行系のテレビ番組でよく聞くけど、今ならなんとなく
その気持ちがわかる気がするね。あまりにも素晴らしい景色とかに出会うと、ホントに
それしか言えなくなるね、今の私達みたいに。


そんな風に私と峰岸さんがその凄さに見惚れていると、

―――ッホー―――
「んっ?」
「へっ?」
どこからともなく人の声が私達の耳に届いた。しかも、どことなく間の抜けた声が。

「……何? 今の声……」
「……後ろから聞こえたような気がするけど……」
と、峰岸さんは後ろを振り返った。私もつられて後ろを見てみる。
後ろには誰もいなかった。あるのは神社の鳥居と紅葉色の木々、そしてその隙間から見える、
小さな山だけで……山?

いやいや、いくらなんでもここまで声が届く訳が……
「もう、みさちゃんったら……」
……って、やっぱりそうなの!?

「ていうか、よくみさきちだってわかったね」
「……あれもみさちゃんの子供っぽいところでね。みさちゃんったら、山とか高いところに
登ると、いつもああやってやまびこみたいな事をするの。しかも突然……」
やや呆れ気味に峰岸さんは呟いた。

「……まあ確かにみさきちの声ならここまで届きそうな気がするね」
と私がフォロー(?)をしたところで、


――キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン――


「あら? このチャイムは……」
突然のチャイムに、峰岸さんは少し戸惑いを見せた。

「あ、このチャイムはね――」

――ただいまの時刻は、午前、12時です――

「――ってわけ」
「あぁ、時報の代わりなのね」
峰岸さんは納得した様にこう言った。

「そういう事。さあ、スケッチ大会の始まりだー!」
私はそう言って、何を書くか決めるために神社の周りを歩き始めた。



「……泉ちゃんって、あんなに絵が下手だったんだ……」
「……そんなストレートに言わないでよ……」
20分後、私と峰岸さんは一旦スケッチをやめ、お昼ご飯の用意をしていた。ある意味で
お楽しみだったランチタイムだったけど、今の私の心はブルーで、峰岸さんはそんな私の
フォローに回っていた。
事の始まりは私がモチーフを見つけてその対象のスケッチを始めたとき、峰岸さんが私の
後ろに来て、描いてた絵を覗き見したことが発端。

「だ、だって、私がぱっと見たとき、最初は何が描いてあったかわからなかったんだもん」
「だからってさー、驚いた様に「えっ? これ、何?」って私の耳元で言わなくてもいいじゃん!」
いくら私が絵を描くのが苦手だからって、そこまでびっくりされるとさすがの私でも
傷つくよ……

と、
「……そういえば、どうして泉ちゃんはこのスケッチ大会をしよう、って思ったの?」
峰岸さんがお昼用の敷物を広げながら私に尋ねた。そういえば、みさきちや峰岸さん達には
言ってなかったっけ。
私はかがみ達に言った様に、その理由を答えた。最近美術系の漫画がアニメ化されて、それに
感化されてこの大会を開いた、と。でも峰岸さんはあまり納得した様子は見せないで、
「でも泉ちゃん、絵が、その、えっと……あ、あまり上手くないじゃない? なのに、どうして?」
と、少し遠慮がちに尋ねた。

「……ありゃー、気づかれちゃったか」
私はしまったー、といった感じのポーズをとった。
「と、いうことは、他にも何か理由があるの?」
「うん、まあね」
そこで一呼吸を置いて、本当の理由を答えた。

「――ただ、みんなで集まって遊びたかったからだよ」


「……どういう事?」
峰岸さんは私から答えを聞いても、わからない、といった顔をしていた。まあ確かに色々と
端折り過ぎたところもあったかな。まあ峰岸さんにならぶっちゃけてもいっか。

「えっとね、私達、受験生じゃん? かがみには自覚がないって言われてるけど、これでも結構
気にしてるんだよ? 私。だからさ、私もそろそろ真剣に勉強頑張ろうかなー、とは思ってる
のよ。でもさ、真剣に頑張るんだったら、そろそろ遊ぶ事も止めたほうがいいかなって思い
始めてね。だったら始める前にもう一度みんなと遊ぶ機会がほしいなって。で、ちょうど
さっき言ったアニメがやってたから、それに感化された事を口実にみんなで遊ぼっかなー、
って思ってさ、この大会を開いたわけ。ゆーちゃん達やみさきち達との交流も兼ねて、ね」
私は一気にこの大会の動機を述べた。

「…………」
私の答えからしばらく、峰岸さんは敷物を持ったまま手を止めて、ポカンとした表情で私を
見つめた。
「…………」
「……ど、どうしたの? 峰岸さん」
それがあまりにも長いもんだから、私は心配になって峰岸さんに話しかけた。
「……え、な、何? 泉ちゃん」
「いや、何ボーっとしてるのかなって」
私に質問に峰岸さんは少し躊躇った様に沈黙して、
「……意外だなぁ、って思って」
「えっ、な、何が?」
峰岸さんの答えこそ私にとって意外なんだけど。
「えっと……私ずっと、泉ちゃんって、目先の楽しいことだけを考えてるのかな、って
思ってたけど、ちゃんと将来の事も考えてるんだな、って思って」
「ちょ、ひどっ! 私そこまで悪い性格してないよ! ちゃんと先を見つめてるよ!?
絶望した! 峰岸さんの私へのイメージの悪さに絶望した!」
ネタを交えて峰岸さんに反論。いや、確かに私オタクだからあんまりいいイメージは持たれて
ないよね、とは思ってたけど、少しひどくない!?


峰岸さんは私のまくしたてが面白かったのか、少し笑いを堪えた様な表情で、
「ご、ごめんなさい。でも、今の泉ちゃんを見たら、」
そして、まるでお母さんの様な、柔らかで優しい笑顔になって、

「――泉ちゃんって、寂しがり屋で優しくて、友達思いの人なんだな、って思えるの」

「…………ほえっ?」
「だって、そうじゃない。受験勉強を始めて、みんなとあまり遊べなくなるから、この大会を
開いたんでしょう? だから、そうなんじゃないかなって」

…………
今私、他人が見たらかなり変な顔をしてるんだろうな。それと、間違いなく顔は真っ赤だと
思う、メチャクチャほっぺの辺りが火照ってるから。
何? その恥ずかしすぎるセリフ、思わず「禁止!」って言いたくなるところだったよ!?
そうやって心の中でツッコミながら、私はしばらくさっきの峰岸さんの様にボーっとして、
その柔らかな顔を見続けた。



その後、峰岸さんの声でわれに帰った私は、峰岸さんと一緒にお弁当を食べ、その中で料理の
話で盛り上がり、今は二人で並んでスケッチを再開している。
でもさっきも言った様に、私にとって絵は二の次。問題は、自分のペアと楽しく過ごして
友好を深めることができるか。それもさっきのお昼の時の会話や、今のスケッチの中でも
お互いの意見を出し合いながら、笑顔で会話ができている事で、ちゃんと達成できてると思う。


――これが高校生で、みんなと遊べる最後のチャンスかもしれない――


我ながら女々しいと思うけど、そんな思いから始まったこのスケッチ大会、私の中では
ひとまず成功かな?

やや冷たい風の中でたなびく、私の青髪、峰岸さんの栗色の髪、そしてサラサラと音を立てる
きれいな紅葉を見ながら、私はそう思い、秋空の空を見上げていた。








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  • こなた・・・ 可愛いです -- チャムチロ (2012-11-02 12:30:41)

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