世間は夏休み。ある者はいつものようにコミケに行き、ある者は嫌々ながらそれに付いて行き、またある者はコミケ恐怖症に陥り家での留守番を余儀なくされたり。
そんな中で、バイトのシフトが入っていないという事で家でゆっくりしていた白石みのるに、一本の電話が入った。
「はい、白石です」
『あー、白石?あたしよあたし』
もしや臨時のバイトか、と思いきや。電話の相手はバイト先の店長ではなかった。
「あきら様?珍しいですね、あなたから電話をかけて来るなんて」
『こっちだって私用でかけたいとは思わないわよ。……ちょっと頼みがあってね』
電話の相手……小神あきらはそう言ったきり、口をつぐんでしまった。『どうしたんですか?』という白石の問いかけを聞いてようやくあきらは、
『とりあえず、明日の朝にこれから言う場所に来て』
という言葉と、目的地とそこに向かうまでの交通手段を口にした。……関東南部の海に近い場所。それがあきらの指定した場所だった。
「了解しました。それじゃあ切りますね」
『っと、ちょっと待って』
「何ですか、あきら様?」
電話を切ろうとした白石をあきらが止めた。
『……やっぱ、なんでもない。ちゃんと来なさいよ』
しかし、何かを言いよどんだ挙句、結局はそのまま切ってしまった。電子音のみが鳴る携帯を手に、白石はただ呆然としていた……。
そんな中で、バイトのシフトが入っていないという事で家でゆっくりしていた白石みのるに、一本の電話が入った。
「はい、白石です」
『あー、白石?あたしよあたし』
もしや臨時のバイトか、と思いきや。電話の相手はバイト先の店長ではなかった。
「あきら様?珍しいですね、あなたから電話をかけて来るなんて」
『こっちだって私用でかけたいとは思わないわよ。……ちょっと頼みがあってね』
電話の相手……小神あきらはそう言ったきり、口をつぐんでしまった。『どうしたんですか?』という白石の問いかけを聞いてようやくあきらは、
『とりあえず、明日の朝にこれから言う場所に来て』
という言葉と、目的地とそこに向かうまでの交通手段を口にした。……関東南部の海に近い場所。それがあきらの指定した場所だった。
「了解しました。それじゃあ切りますね」
『っと、ちょっと待って』
「何ですか、あきら様?」
電話を切ろうとした白石をあきらが止めた。
『……やっぱ、なんでもない。ちゃんと来なさいよ』
しかし、何かを言いよどんだ挙句、結局はそのまま切ってしまった。電子音のみが鳴る携帯を手に、白石はただ呆然としていた……。
『オーシャン☆デイ』
そして、来る翌日。白石は朝早くに起きてすぐに仕度をし、目的地に向かった。指定の駅を降りるとすぐに見知った顔に出会った。……あきらのマネージャーだ。
マネージャー……伊藤氏に挨拶をし、道すがら今回あきらが呼んだ件についての説明を受ける。伊藤氏曰く……
マネージャー……伊藤氏に挨拶をし、道すがら今回あきらが呼んだ件についての説明を受ける。伊藤氏曰く……
『イメージビデオの撮影をやりたいんだけど、そのコンセプトが『小神あきらとのバーチャルデート』なんだよね。だから、白石君を呼んだわけ』
(台詞は要約されたものです。実際の伊藤氏の台詞とは異なります)
(台詞は要約されたものです。実際の伊藤氏の台詞とは異なります)
「へぇ……、って!ぼ、僕があきら様とデートですかっ!?」
仰天した白石の絶叫に、伊藤氏は違う違う、と言う風に手を横に振り、『あくまでもイメージだから』(台詞は要約されたものです。実際の(ry)と言った。
要するに、『バーチャルデート』と言う以上、カメラは相手の男視点でなければならないのだ。誰かは知らないがその相手役に白石を抜擢したと言う事だろう。
「はあ……」
また呆然としながら歩く白石に、伊藤氏は『ま、頑張ってうちのあきらちゃんの彼氏を勤め上げてくれよな』(台詞は要約された(ry)と激励の言葉を送った。
「んー、勤まりますかねぇ……僕じゃ頼りないと思われそうですし。って、本当の彼氏じゃないんですね」
そんな白石に伊藤氏はため息をつき、『何を言ってるんだ、まったく。……まあ、そんなに硬くならないでいいよ。いつもの収録みたく考えれば』(台詞は要約(ry)と言葉を返す。
「わかりました。頑張らせていただきます」
言葉と共に、白石がうなずく。その後、しばらく歩いた後に伊藤氏が足を止めた。
駅から歩いて数分の海岸。夏なので人は多いのかと思えばまったくいない。近くに停まっている車からスタッフが機材を下ろしているのを見るに、ここが撮影場所だろうと思われる。
伊藤氏曰く、『ここはいわゆる穴場みたいなものさ。今の時期はビデオ撮影用にこういう人気のない場所を探すのは大変なんだよ』(台詞(ry)との事。
「白石ー、こっちこっち!」
と、その時。視界の外からあきらの声が白石の耳に入った。すぐに声のするほうに振り向いて……
「あ、おはようございま……」
……絶句した。
夏で海とくれば、当然なのかもしれないが。白石の目に映るあきらの格好は、裾が短いショートパンツタイプのタンキニ水着の上に薄手の上着を羽織っているものだった。
上半身の露出が少ないのはいつもの事だが、タンキニの上が短いせいか常時見えるおへそ。そして初めて見る事になるすらりと伸びた健康的な足が白石の目に飛び込む。
「……どうしたのよ」
そのあまりの衝撃に硬直してしまった白石を見て、あきらは疑問符を頭に浮かべる。あきらの後ろにいた女性(恐らくあきらのスタイリストか)は、そんな二人を見てくすくすと笑い、その後にあきらに耳打ちをした。
「っ!?」
その直後、あきらの顔はみるみるうちに赤くなり、彼女自身も硬直してしまった。
「ほら、白石君?彼女に何か言ってあげなさい」
耳打ちをした後に、女性はいかにも面白がっているような笑みで白石の行動を促した。
「え、あ……いや、凄く、似合ってます……よ?」
「う、うん……そう……」
お互いになんともギクシャクしたやり取りを交わすあきらと白石。そんな様子を見た伊藤氏は、心の中でニヤリと笑っていた。
仰天した白石の絶叫に、伊藤氏は違う違う、と言う風に手を横に振り、『あくまでもイメージだから』(台詞は要約されたものです。実際の(ry)と言った。
要するに、『バーチャルデート』と言う以上、カメラは相手の男視点でなければならないのだ。誰かは知らないがその相手役に白石を抜擢したと言う事だろう。
「はあ……」
また呆然としながら歩く白石に、伊藤氏は『ま、頑張ってうちのあきらちゃんの彼氏を勤め上げてくれよな』(台詞は要約された(ry)と激励の言葉を送った。
「んー、勤まりますかねぇ……僕じゃ頼りないと思われそうですし。って、本当の彼氏じゃないんですね」
そんな白石に伊藤氏はため息をつき、『何を言ってるんだ、まったく。……まあ、そんなに硬くならないでいいよ。いつもの収録みたく考えれば』(台詞は要約(ry)と言葉を返す。
「わかりました。頑張らせていただきます」
言葉と共に、白石がうなずく。その後、しばらく歩いた後に伊藤氏が足を止めた。
駅から歩いて数分の海岸。夏なので人は多いのかと思えばまったくいない。近くに停まっている車からスタッフが機材を下ろしているのを見るに、ここが撮影場所だろうと思われる。
伊藤氏曰く、『ここはいわゆる穴場みたいなものさ。今の時期はビデオ撮影用にこういう人気のない場所を探すのは大変なんだよ』(台詞(ry)との事。
「白石ー、こっちこっち!」
と、その時。視界の外からあきらの声が白石の耳に入った。すぐに声のするほうに振り向いて……
「あ、おはようございま……」
……絶句した。
夏で海とくれば、当然なのかもしれないが。白石の目に映るあきらの格好は、裾が短いショートパンツタイプのタンキニ水着の上に薄手の上着を羽織っているものだった。
上半身の露出が少ないのはいつもの事だが、タンキニの上が短いせいか常時見えるおへそ。そして初めて見る事になるすらりと伸びた健康的な足が白石の目に飛び込む。
「……どうしたのよ」
そのあまりの衝撃に硬直してしまった白石を見て、あきらは疑問符を頭に浮かべる。あきらの後ろにいた女性(恐らくあきらのスタイリストか)は、そんな二人を見てくすくすと笑い、その後にあきらに耳打ちをした。
「っ!?」
その直後、あきらの顔はみるみるうちに赤くなり、彼女自身も硬直してしまった。
「ほら、白石君?彼女に何か言ってあげなさい」
耳打ちをした後に、女性はいかにも面白がっているような笑みで白石の行動を促した。
「え、あ……いや、凄く、似合ってます……よ?」
「う、うん……そう……」
お互いになんともギクシャクしたやり取りを交わすあきらと白石。そんな様子を見た伊藤氏は、心の中でニヤリと笑っていた。
*** ***
今回の撮影についての説明を聞き終わり、まずはカメラを回さずに必要な動きを追っていく。……と言っても、基本的にはあきらが何かをしてくるので、それに受け答える形で白石がリアクションをするだけだが。
それを繰り返し、二人が慣れてきた所でカメラを回すことになった。白石の顔の左側に付けられた小型カメラがちゃんと対象を映しているかを確認し、ついに撮影が始まった。
「いいかい、君は身振り手振りだけで反応するんだ。絶対に声を出すんじゃないぞ。後々処理が面倒になるからな」
「わかりました」
撮影前にも再三言われている事をスタッフにもう一度言われ、白石はうなずく。
まずは、普通に砂浜を歩くシーンから。ここでの会話は多くない。すぐに終わるだろう。
それを繰り返し、二人が慣れてきた所でカメラを回すことになった。白石の顔の左側に付けられた小型カメラがちゃんと対象を映しているかを確認し、ついに撮影が始まった。
「いいかい、君は身振り手振りだけで反応するんだ。絶対に声を出すんじゃないぞ。後々処理が面倒になるからな」
「わかりました」
撮影前にも再三言われている事をスタッフにもう一度言われ、白石はうなずく。
まずは、普通に砂浜を歩くシーンから。ここでの会話は多くない。すぐに終わるだろう。
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最初は進行方向を向いて歩いているだけ。そのしばらく後にあきらから声がかかる。
「……ねえ」
声を出さずにあきらの方を振り向く。身長差のせいで隣を歩くあきらを見下ろす形になっているので、必然的にあきらの目線は上目遣いになっている。
「もう、どうしたの?あきらの方を向いてくれないなんて」
その目線に少しの寂しさを乗せ、最初の質問を出された。それに対して、目線を逸らすようにカメラを少しずらし、もう一度戻して肩をすくめる。
答えとしては、「君が可愛くて、直視できなかったからだよ」とかいう歯の浮く台詞だろうか。その声なき言葉に返すかのように、あきらは立ち止まってから小さく俯いて『……もう、バカ』と答える。
その直後、白石が慌てて前に回りこみ、下からあきらの顔を覗き込んだ。「ごめん、怒っちゃったかな?」というのがここでの台詞だ。
「そうじゃないよ。……ちょっと、嬉しかっただけ」
俯いた顔を上げ、はにかんだ笑顔で白石に笑いかけるあきら。すぐに二、三歩離れてため息を付くしぐさをする。「そうか、よかった」という台詞の後、「それじゃあ行こうか」とあきらに手を差し伸べた。
その手をあきらが握り返し、このシーンは終了となる。
「……ねえ」
声を出さずにあきらの方を振り向く。身長差のせいで隣を歩くあきらを見下ろす形になっているので、必然的にあきらの目線は上目遣いになっている。
「もう、どうしたの?あきらの方を向いてくれないなんて」
その目線に少しの寂しさを乗せ、最初の質問を出された。それに対して、目線を逸らすようにカメラを少しずらし、もう一度戻して肩をすくめる。
答えとしては、「君が可愛くて、直視できなかったからだよ」とかいう歯の浮く台詞だろうか。その声なき言葉に返すかのように、あきらは立ち止まってから小さく俯いて『……もう、バカ』と答える。
その直後、白石が慌てて前に回りこみ、下からあきらの顔を覗き込んだ。「ごめん、怒っちゃったかな?」というのがここでの台詞だ。
「そうじゃないよ。……ちょっと、嬉しかっただけ」
俯いた顔を上げ、はにかんだ笑顔で白石に笑いかけるあきら。すぐに二、三歩離れてため息を付くしぐさをする。「そうか、よかった」という台詞の後、「それじゃあ行こうか」とあきらに手を差し伸べた。
その手をあきらが握り返し、このシーンは終了となる。
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「ふむ……まあ、始めはこんなもんかな?」
という撮影監督の言葉により、最初の撮影はOKをもらった。それに安堵し、喋れなかった分の言葉を出すように大きいため息を付く。
「ありがとうございます……。こういう撮影は初めてですから……」
「あれ?そういえば撮影のために城ヶ島とか北海道とか行ったんじゃなかったっけ?白石君は」
「あ、それは中の人……もとい。同姓同名の別人の話ですよ。僕は旅行といっても修学旅行で京都に行った位ですから」
と、白石がスタッフの一人と話していると。『次のシーン行きますよー』という他のスタッフの声かけがあり、すぐにそちらに向かった。
という撮影監督の言葉により、最初の撮影はOKをもらった。それに安堵し、喋れなかった分の言葉を出すように大きいため息を付く。
「ありがとうございます……。こういう撮影は初めてですから……」
「あれ?そういえば撮影のために城ヶ島とか北海道とか行ったんじゃなかったっけ?白石君は」
「あ、それは中の人……もとい。同姓同名の別人の話ですよ。僕は旅行といっても修学旅行で京都に行った位ですから」
と、白石がスタッフの一人と話していると。『次のシーン行きますよー』という他のスタッフの声かけがあり、すぐにそちらに向かった。
*** ***
その後も、様々なシーンを撮影した。
シーン撮影は着々と進み、太陽が昇りきった状態、時間で言うなら正午か午後になって昼休憩をとっていたそんな時。スタッフからの一言が入った。
「次、海に入りまーす。準備してくださーい」
「え、う、海ぃっ!?」
白石は素で驚いていた。そんな準備などしていない。……まさか、この状態で入れと?なんとなく絶望感を感じたその直後。
「白石君はこれに着替えて」
と、スタッフに小さい袋を手渡された。……中に入っていたのはハーフパンツ型の水着とラッシュガード。
「よ、用意がいいですね……」
「はは、そりゃね。……ほら、時間が無いからさっさと着替えた」
スタッフに背中を押され、キャンピングカーの中に押し込まれた。……ここで着替えろ、という事だろう。
「まあ、確かにそうだよな」
スタッフの中にも女性はいるし、何より相手が相手だ。路上で着替えるわけには行くまい。そう考え、水着の袋を脇に置いて自分の衣服に手をかけようとした時。
「……あれは、もしかしてあきら様の?」
ふと目にした小さな籠。その中に衣服が畳まれて入っていた。……白石がここで目にした人物の中で、この場所で衣服を着替えていそうな人物は一人だけ。
「ま、さすがに水着でここに来るなんてことはありえないし……」
そう、小神あきらただ一人。……白石の中に、ムラッと何かが湧き上がった。
「次、海に入りまーす。準備してくださーい」
「え、う、海ぃっ!?」
白石は素で驚いていた。そんな準備などしていない。……まさか、この状態で入れと?なんとなく絶望感を感じたその直後。
「白石君はこれに着替えて」
と、スタッフに小さい袋を手渡された。……中に入っていたのはハーフパンツ型の水着とラッシュガード。
「よ、用意がいいですね……」
「はは、そりゃね。……ほら、時間が無いからさっさと着替えた」
スタッフに背中を押され、キャンピングカーの中に押し込まれた。……ここで着替えろ、という事だろう。
「まあ、確かにそうだよな」
スタッフの中にも女性はいるし、何より相手が相手だ。路上で着替えるわけには行くまい。そう考え、水着の袋を脇に置いて自分の衣服に手をかけようとした時。
「……あれは、もしかしてあきら様の?」
ふと目にした小さな籠。その中に衣服が畳まれて入っていた。……白石がここで目にした人物の中で、この場所で衣服を着替えていそうな人物は一人だけ。
「ま、さすがに水着でここに来るなんてことはありえないし……」
そう、小神あきらただ一人。……白石の中に、ムラッと何かが湧き上がった。
――どんな匂いなんだろう……
「あー、落ち着け俺!何を考えてるんだ!第一そんな事したら終わりじゃないか!」
自分の顔に連続でビンタを張り、小さな籠を視界に入れないようにして着替え始めた。
自分の顔に連続でビンタを張り、小さな籠を視界に入れないようにして着替え始めた。
*** ***
海での撮影も順調に進んだ……とは言いがたい。というのも、多少ハプニングが起きてしまったのだ。
水のある場所での定番、所謂水の掛け合いにてあきらが白石の攻撃にほんの少し怒りを覚えてしまい、思いっきり海水をぶっ掛けてしまったのだ。
幸い、カメラは防水仕様だったため無事なのだが……それで白石もヒートアップしてしまい、結局二人して本気になってしまった。
当然喋ってしまったためにこのシーンは撮り直しとなった。水着が乾くまでの間、二人は正座で反省させられたという。
しかしその後は得に目立ったハプニングやリテイクもなく海での撮影も終わった。そして、ついにラストシーンの撮影となった。
……ちなみに、言い忘れていたが。突然あきらに呼び出されてやってきた白石には、撮影の内容は全てその直前に伝えられる。なので……
「えっ……ちょっと待ってください!?あ、あきら様との、きききききキスシーンですかっ!?」
キスシーン撮影の言葉に驚くのも無理はなかった。
「何言ってるんだ。あそこまで気分が高まっていて最後にキスの一つもないんじゃああまりにも味気ないだろ?」
「そ、そうですけど……」
監督にそう言われ、視線をあきらの方に向ける白石。さすがにこれはあきらも怒ってるんじゃないかと思ったのだが……
「あ、あきら様はどうなんですか!?」
「……あのねぇ、どうせキスシーンって言ってもふりだけでしょ、ふり。そんなに騒ぎ立てる事もないじゃないの!」
……そう言われ、ようやく今回の撮影がどういう物かを思い出した。よくよく考えてみれば、あくまでも視点は白石の物。それならばキスのふりでもバレる事はない。
「あ、そ、そうでしたね……す、すいません。変な風に騒いじゃって……」
思わず真っ赤になり、頭を下げる白石。……スタッフ達はそんな白石をニヤニヤと見守るだけだった。
その後に監督から『少し頭を冷やせ』と渡された冷や水を飲みながら、スタッフによる説明を聞く。どうやらこのシーンでは体を動かす必要はあまりないらしい。
そして、このシーンのためだけに小型カメラを眉間の位置につけた状態のゴーグルが白石に手渡された。最後のシーンはこれで撮るらしい。
まずはカメラをつけてない状態で動きを確認し、その後にカメラをつけてリハーサル。……その内容はこうだ。
水のある場所での定番、所謂水の掛け合いにてあきらが白石の攻撃にほんの少し怒りを覚えてしまい、思いっきり海水をぶっ掛けてしまったのだ。
幸い、カメラは防水仕様だったため無事なのだが……それで白石もヒートアップしてしまい、結局二人して本気になってしまった。
当然喋ってしまったためにこのシーンは撮り直しとなった。水着が乾くまでの間、二人は正座で反省させられたという。
しかしその後は得に目立ったハプニングやリテイクもなく海での撮影も終わった。そして、ついにラストシーンの撮影となった。
……ちなみに、言い忘れていたが。突然あきらに呼び出されてやってきた白石には、撮影の内容は全てその直前に伝えられる。なので……
「えっ……ちょっと待ってください!?あ、あきら様との、きききききキスシーンですかっ!?」
キスシーン撮影の言葉に驚くのも無理はなかった。
「何言ってるんだ。あそこまで気分が高まっていて最後にキスの一つもないんじゃああまりにも味気ないだろ?」
「そ、そうですけど……」
監督にそう言われ、視線をあきらの方に向ける白石。さすがにこれはあきらも怒ってるんじゃないかと思ったのだが……
「あ、あきら様はどうなんですか!?」
「……あのねぇ、どうせキスシーンって言ってもふりだけでしょ、ふり。そんなに騒ぎ立てる事もないじゃないの!」
……そう言われ、ようやく今回の撮影がどういう物かを思い出した。よくよく考えてみれば、あくまでも視点は白石の物。それならばキスのふりでもバレる事はない。
「あ、そ、そうでしたね……す、すいません。変な風に騒いじゃって……」
思わず真っ赤になり、頭を下げる白石。……スタッフ達はそんな白石をニヤニヤと見守るだけだった。
その後に監督から『少し頭を冷やせ』と渡された冷や水を飲みながら、スタッフによる説明を聞く。どうやらこのシーンでは体を動かす必要はあまりないらしい。
そして、このシーンのためだけに小型カメラを眉間の位置につけた状態のゴーグルが白石に手渡された。最後のシーンはこれで撮るらしい。
まずはカメラをつけてない状態で動きを確認し、その後にカメラをつけてリハーサル。……その内容はこうだ。
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夕暮れの浜辺で向き合うあきらと白石。
「今日、楽しかった?」
その問いかけに、白石は小さく首を上下させる。
「よかった。あきら、こういうの初めてだったから……」
にこやかに微笑むあきら。ここで白石があきらの頭を撫でる。ここで「君と一緒だったら、どこでも楽しいよ」という台詞が入る。頭に置いた手をあきらの頬に持っていく。
二、三度あきらの頬を撫で、「それに、今日は君と一緒にいられた事が一番嬉しいんだ」という台詞の後に、『……ありがと』とあきらが顔を赤くして呟く。
その後に、あきらが『……大好きだよ』と言って白石の方を向いて目を瞑る。そんなあきらの顔に向かって段々と顔を近付け……そこで終わり。
これでこのシーンは終了する。
「今日、楽しかった?」
その問いかけに、白石は小さく首を上下させる。
「よかった。あきら、こういうの初めてだったから……」
にこやかに微笑むあきら。ここで白石があきらの頭を撫でる。ここで「君と一緒だったら、どこでも楽しいよ」という台詞が入る。頭に置いた手をあきらの頬に持っていく。
二、三度あきらの頬を撫で、「それに、今日は君と一緒にいられた事が一番嬉しいんだ」という台詞の後に、『……ありがと』とあきらが顔を赤くして呟く。
その後に、あきらが『……大好きだよ』と言って白石の方を向いて目を瞑る。そんなあきらの顔に向かって段々と顔を近付け……そこで終わり。
これでこのシーンは終了する。
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「よーし、このまま本番いってみようか!」
監督の台詞と共に、ついに最後の撮影が始まった。白石の心中に緊張が走る。
「シーンファイナル、よーい……アクション!」
号令と共に、白石は口を一文字に結ぶ。……まずは、あきらの台詞から。
「今日、楽しかった?」
その問いかけに、白石は小さく頷いた。
「よかった。あきら、こういうの初めてだったから……」
その台詞を聞いて、顔だけで微笑みながら、左手であきらの頭を撫でる。少しくすぐったそうにしたが、すぐに顔を元に戻した。
白石の手はそのままあきらの頬にかかる。そのまま二、三度撫でると『……えへへ、ありがと』とはにかみながらあきらが答えた。
それに少し違和感を覚えたが、監督の声がないのでそのまま続けることにした。……確か、この次はあきら様が『大好きだよ』と言うはず……そう白石が考えていると。
監督の台詞と共に、ついに最後の撮影が始まった。白石の心中に緊張が走る。
「シーンファイナル、よーい……アクション!」
号令と共に、白石は口を一文字に結ぶ。……まずは、あきらの台詞から。
「今日、楽しかった?」
その問いかけに、白石は小さく頷いた。
「よかった。あきら、こういうの初めてだったから……」
その台詞を聞いて、顔だけで微笑みながら、左手であきらの頭を撫でる。少しくすぐったそうにしたが、すぐに顔を元に戻した。
白石の手はそのままあきらの頬にかかる。そのまま二、三度撫でると『……えへへ、ありがと』とはにかみながらあきらが答えた。
それに少し違和感を覚えたが、監督の声がないのでそのまま続けることにした。……確か、この次はあきら様が『大好きだよ』と言うはず……そう白石が考えていると。
「大好きだよ、みのる」
「……んな、あ、あきら様!?」
ミステイク。そう判断した白石はつい声を出してしまった。そして、スタッフの方を見る。……全員、ニヤニヤしながら見守っていた。
監督の方に目をやると、『ほら、いいから続けろ!』と書かれたカンペが提示された。
ミステイク。そう判断した白石はつい声を出してしまった。そして、スタッフの方を見る。……全員、ニヤニヤしながら見守っていた。
監督の方に目をやると、『ほら、いいから続けろ!』と書かれたカンペが提示された。
……まさか、はめられた!?
つまりはそういうことだ。スタッフは全員グルで、あきらが告白するのを手伝っていただけなのだ。
「……ねぇみのる、みのるはどうなの?あきらの事、好き?」
横を向いていた白石の頬にあきらの手が添えられ、無理矢理あきらの顔に向けられる。……そんなすがるような目で見られたら、答えは一つしかない。
「……はい、僕はあきら様を好きです」
そして……二人は演技ではない本物の口付けを交わした。
「……ねぇみのる、みのるはどうなの?あきらの事、好き?」
横を向いていた白石の頬にあきらの手が添えられ、無理矢理あきらの顔に向けられる。……そんなすがるような目で見られたら、答えは一つしかない。
「……はい、僕はあきら様を好きです」
そして……二人は演技ではない本物の口付けを交わした。
*** ***
シーン撮影が終わった直後。突然監督が懐かしい赤のヘルメットを被って『どっきりカメラ』のプラカードを掲げた。
「いやー、お疲れ!なかなか面白いシーンが撮れたよ!」
そう言ってだっはっはと監督が笑う。他のスタッフも一斉に笑い、その様子を見た白石はため息をついた。
「……まったく、こんな撮影器具まで用意して僕を騙すなんて、ちょっと大掛かり過ぎませんか?」
「ああ、いや。実は本当のPV撮影も兼ねてたんだよ。実際に使うシーンは本番前のリハでもう撮ってあるから大丈夫だ」
な、なんじゃそりゃ……!?白石は目の前にいる監督を凝視していた。
「……というか、あきら様もあきら様ですよ。いくらなんでも……」
「違うもん」
「はい?」
「……さっきの台詞、あれはあたしの本当の気持ちだもん」
な、なんじゃそりゃ……!?二度目になる心の絶叫と共に、あきらの方に振り向いた。あきら本人は顔を赤くして俯いている。指を弄りながら、もう一度白石に告げた。
「だ、だから……あたしは、み、みのるが……好きなの」
「ほ、本当、なんですか……?」
「よ、喜びなさいよ!スーパーアイドルのあたしが平アシスタントのあんたごときに、あ、う……好意を抱いてるんだから」
本気の告白に白石がたじたじしていると、伊藤氏が『確かに、白石君と撮影してた時のあきらちゃんの顔は演技じゃなかったね。ほかの男だったらこうは行かないよ』(台(ry)と声をかけた。
「ちょっと伊藤!あんた何言ってんのよ!」
「……いやいや。本当にあきらちゃんの顔、『恋する乙女』って感じだったよー」
「ええ、女としてはちょっと羨ましい位にね」
伊藤氏の言葉を聞いて突っかかるあきらに、スタッフ達からの援護射撃(ただしあきらへの)が加わった。
「あう、うぅ……」
「まあ、良かったじゃないか!これであきらちゃんも白石にはっきり告白できたんだから」
そう言う監督をきっと睨み、しかし文句は言わなかった。あきらはその状態で少しの間固まってから、『……帰るわよ、白石』と呟いた。
「ふむ、今度の小神あきらのイメージVは『ウエディング編』で行くか。もちろん相手役は白石に決定。な、白石」
「え、えぇぇっ!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!そんないきなり、ふがっ!」
台詞の途中で白石の後頭部に空き缶が当たった。空き缶の飛んできた方では、あきらが叫んでいる。
「いいからあんたもさっさと着替えなさいよ!」
「わ、わかりましたぁ!」
ご立腹気味のあきらの元へ、白石は走り出した。
「いやー、お疲れ!なかなか面白いシーンが撮れたよ!」
そう言ってだっはっはと監督が笑う。他のスタッフも一斉に笑い、その様子を見た白石はため息をついた。
「……まったく、こんな撮影器具まで用意して僕を騙すなんて、ちょっと大掛かり過ぎませんか?」
「ああ、いや。実は本当のPV撮影も兼ねてたんだよ。実際に使うシーンは本番前のリハでもう撮ってあるから大丈夫だ」
な、なんじゃそりゃ……!?白石は目の前にいる監督を凝視していた。
「……というか、あきら様もあきら様ですよ。いくらなんでも……」
「違うもん」
「はい?」
「……さっきの台詞、あれはあたしの本当の気持ちだもん」
な、なんじゃそりゃ……!?二度目になる心の絶叫と共に、あきらの方に振り向いた。あきら本人は顔を赤くして俯いている。指を弄りながら、もう一度白石に告げた。
「だ、だから……あたしは、み、みのるが……好きなの」
「ほ、本当、なんですか……?」
「よ、喜びなさいよ!スーパーアイドルのあたしが平アシスタントのあんたごときに、あ、う……好意を抱いてるんだから」
本気の告白に白石がたじたじしていると、伊藤氏が『確かに、白石君と撮影してた時のあきらちゃんの顔は演技じゃなかったね。ほかの男だったらこうは行かないよ』(台(ry)と声をかけた。
「ちょっと伊藤!あんた何言ってんのよ!」
「……いやいや。本当にあきらちゃんの顔、『恋する乙女』って感じだったよー」
「ええ、女としてはちょっと羨ましい位にね」
伊藤氏の言葉を聞いて突っかかるあきらに、スタッフ達からの援護射撃(ただしあきらへの)が加わった。
「あう、うぅ……」
「まあ、良かったじゃないか!これであきらちゃんも白石にはっきり告白できたんだから」
そう言う監督をきっと睨み、しかし文句は言わなかった。あきらはその状態で少しの間固まってから、『……帰るわよ、白石』と呟いた。
「ふむ、今度の小神あきらのイメージVは『ウエディング編』で行くか。もちろん相手役は白石に決定。な、白石」
「え、えぇぇっ!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!そんないきなり、ふがっ!」
台詞の途中で白石の後頭部に空き缶が当たった。空き缶の飛んできた方では、あきらが叫んでいる。
「いいからあんたもさっさと着替えなさいよ!」
「わ、わかりましたぁ!」
ご立腹気味のあきらの元へ、白石は走り出した。
……これは余談であるが、白石とあきらの着替え場所が同じだったため、『着替えるまで入ってくるな』という怒鳴り声があきら達の向かった方から聞こえた。
それを聞いたスタッフは、おそらく白石に向かってだろう、『いいから入っちゃいなよ!人払いはできてるからさー!』と叫んだ。
……数十分後。顔を赤くして怒ったあきらと顔を腫らせた白石がスタッフの元に戻ってきた。何が起こったのかは当人達しか知らない。
それを聞いたスタッフは、おそらく白石に向かってだろう、『いいから入っちゃいなよ!人払いはできてるからさー!』と叫んだ。
……数十分後。顔を赤くして怒ったあきらと顔を腫らせた白石がスタッフの元に戻ってきた。何が起こったのかは当人達しか知らない。