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あなたのかがみ 第1話 "つかさ、早起きの理由"

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匿名ユーザー

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子供の喧嘩----を、この前、学校からの帰り道で偶然目撃した。
 内容はそれこそ無いようなものだった。
 単なるすれ違い。
 だけどその子達はそう自分にさえ言い聞かせる事も出来ないまま、
互いの気持ちを荒々しく声に出し、蹴りを入れ、叩き合っていた。

 思わず声をかけてしまいそうになった。
 名前も知らない子達の喧嘩を止めそうになった。
 ----止めなさい、と。
 それが実際に声にならなかったのは勇気がなかったからなのか、
それともそんな善人ぶった真似をしようとする自分が嫌だったのが、
それは今になってはもう分からない。
 ただ、何度も何度も振り返った。
 すれ違い様に、遠くなっていく小さな背中を----
 見えなくなるまで何度も何度も……振り返った。

 "子供の喧嘩"と言う言葉は、おおよそにして大抵、大人同士の醜い
争いに向けて言われるものだと、私は思っている。
 お互いが、そして誰もが人の話を聞かず、そして真実を言わず、
 都合の良い罵り合いをしている様を"子供の喧嘩"と言ってしまったら
"子供に失礼だ"とも、思うけれど。

 だから。
 だから、私は弁護士になろうとしている。
 都合の良い言葉を並べて正直な人を罵る、そんな奴を真っ二つに
してやりたいと、思っている。
 誰もが浮かべるうすら寒い笑顔の下の本性を、映すようになった、
映してしまうようになってしまった7歳のあの日から、ずっと。
 あの時も、振り返りながら、そんな事を思っていた。

 矛盾。しながら。

7歳の、最後の七五三の夜に目覚めたこの力は、次の日の朝から
もう早速、私を支配するようになっていた。
 朝。
 食卓に並んだ家族の顔を眺めると、とても、とても愛しくて堪らなくなった。
「おはよう」
 と、笑う父さんと母さん。
「おはよー」
 と、ご飯を食べているいのり姉さんとまつり姉さん。
「うみゅう」
 と、まだ半分夢の中を旅しているつかさ。
 そのどれもが愛しい。いや、愛されている事を、私が映していたのだ。

 素晴らしい力だと思った。
 こんな力があれば、どれだけ毎日楽しいだろう、そう信じた。

 だけど、それは私の思い違いだった。

 小学1年生。
 そんな頃に他人の好き嫌いはあるものか、とそう思いたいけど
実際はそうじゃなかった。
 むしろ、小学1年生だからこそもっと感覚で----生理的な部分のみで
自分以外の誰かを判断するそんな残酷さがあった。

 その日から仲の良かった隣の席の女の子と話さなくなった。
 ----あの子が私と話したくない、という気持ちを、
私は映してしまったから。
 その日から私は担任の先生も嫌いになった。
 ----先生が私を嫌う気持ちを、私は映してしまったから。

 そんな風にして、閉ざして、素直さを失った私が学校で
全く話さなくなるには10日もかからなかった。
でも、つかさは。
 つかさだけはそうじゃなかった。
 いつも私に引っ付いて、甘えて、泣き虫で、ドジで----
 だけど私を愛してくれていた。
 どんな時も、四六時中私を愛してくれていた。
 その想いも、私の心は映した。
 わたしもつかさを今まで以上に愛してしまっていた。

 それがただの"家族愛"ではない事に気付くまで、9年もかかったけれど。
 その時からつかさは、私にとって一番特別な存在になった。


 本題。
 つかさが珍しく早起きした11月のある日曜日の朝。
「いや、もう、ほんとにたまたまで」
 と、頬をかいていたつかさと私は、朝ごはんの為に食卓に降りた。

「おはよう、かがみ……つかさ?」
「おはよう。そうよね、そりゃお母さんもそんな顔になるよね」
 漫画みたいに頭から"?"が出ている。当然のリアクションだ。
 いつもなら私一人だもの。
「つかさはちょっと早起きするだけで珍しいもんね、
のび太がとる65点みたいに。」
「む~。ひどいよお姉ちゃん。それになんで私、さっきからのび太君なの?」
「それは……」
 ----日曜日の神様が言うからよ。とは、言わなかったが。
 案外的を得た表現だと思う。"のび太がとる65点"ってのは。
「あっ、そう言えばお姉ちゃん。今日はお昼からこなちゃんが来るんだよ」
「あぁ、昨日言ってたわね。ま、あいつの事だから昼って言っても
夕方に近い時間になりそうだけど」
「あは、また朝までネトゲがー! って?」
「そうそう、野球中継がーアニメがーって今日も来たら言うわよ、あいつ。
昨日遅くまでやってたもんねー、日本シリーズ」
「お姉ちゃん……私たち……」
「ん? どしたの?」
 そんなに見つめて……何か良いことでもあったの?
「……ずいぶん染まっちゃったね」
 おかずの塩鮭をほぐす手が止まった。
 ----誰に? とは聞けなかった。


 朝食が済んで部屋に戻ると、早速、参考書を開ける。
 受験前の11月。
 センター試験までいよいよ2ヶ月を切ろうとしている今の時期に、
 本当はこなたと遊んでる暇なんて無いのかもしれない。
 もっともっとやらなければ、叶わないのかもしれない。

 だけど、人の心をそっくりそのまま映す"鏡"を持ってしまった
私にとって、純粋に好きだと言えるこなたやみゆき、そしてつかさの存在は
 何事にも代えがたい大切な人たちなのも、本当なのだ。
 みんなのお陰で、落ち着いて勉強できるのよ----
 なんて、言い訳もしたくなるほどに。
 それに"遊びたい"と想われたら、私も"遊びたい"と想ってしまう。
 "好きだ"と想われたら、好きになってしまう----
 そんな私の"鏡"が、理性を押し退けて
厄介な事態を引き起こしたこともあったけれど----
 それはまた別のお話。
 それにまたもうすぐ厄介な----いや、違うな。厄介だなんて思ってない。
 むしろ嬉しい。
 そんな出来事がもうすぐドアの向こうで……
「お姉ちゃーん?」
 ほらね。
 声色の、雰囲気の、違い。
 それはドアの向こうからした声だったけど、私にも分かっていた"違い"。
「入るよぉ?」
 確信していた。その恐る恐る、ドアノブが回る感じ。
 あなたが、何を望んで、ここに来たのか。
「ねぇ……"かがみ"おねぇちゃん……」
 日曜の朝に早起きした理由----それは土曜日の夜に"何も"無かったから。
 早起きしたんじゃなくて、眠れなかっただけなのね。

「おいで……つかさ」
 最初から、全部知ってたよ。
「意地悪だった? 気付かないふりなんて」
「ううん……平気、だったよ」
 ベッドにもたれ掛かった私を、右手の指を絡めて押し倒す。
 優しく。
 左手は私の頭の後ろを抑えながら。
「どうして嘘つくの?」
「だって、いやらしい子だって……思われたくないもん」

 力を。
 私の力を知っていてつかさが嘘をついたのは、きっと本当に
そう思ってくれているからだろう。
 私の身体が全部、ベッドに横たわると力一杯に抱きしめられた。
 左耳に息がかかる。
 吐息。
 甘くて、このまま心臓まで一つになってしまうような感覚。
 ----あぁ、ごめんね。我慢させちゃって。
 私は伸ばしていた右足を曲げ、つかさの足の付け根の方へ擦り合わせた。
「ふぅっ……ん……」
 熱い。
 どんどん広がるように熱が伝わってくる。つかさの体温と、吐息になって。
「お姉ちゃ……んっ。キス……キスしよう?」
「良いよ……キスして? つかさ……」
「……んふぅっ、お姉ちゃん……だめぇ。足止めてぇ……っ!
キスできないからぁ……あぅんっ……」
「……止めて、いいの?」
「んんっ……お姉ちゃんのいじわるぅ……はぁっ!」
 白いワンピースの奥の熱をまさぐるように足を擦り合わせて、
耳元でわざと息がかかるように言う。
 耳が弱いと知っているから。
 もっとしてほしいと映しているから。
「はぅ……っん! ダメだよぉ……いっちゃうよぉ……あぁっ!」
「いって……いって良いよ、つかさ」
 血が燃える。
 頭の奥まで熱に侵されていく……
 もっと。
 もっと震えて、もっと気持ち良くなっていいんだよ。つかさ……
 熱をちょうだい。もっと奥まで、深くまで、私が届くように。
 擦り合わせるスピードを上げていく。
「だめぇっ……! いく、いっちゃうよぉ……!」
 ほら、いっちゃえっ!
「あぁっ! ふあぁぁぁっ……!」

午前10時30分。
 つかさはまだ私の上で余韻に浸っている。
 日曜日の朝っぱらからこうして私は勉強をほっぽりだして
つかさともつれ合った。
 受験生失格? なのかもしれない。

「そう言えばお母さんたちは?」
「うぅ……うんとね……お母さんとお父さんは神社で……
いのりお姉ちゃんとまつりお姉ちゃんは出掛けたみたい……」
「あぁ、そうなんだ」
 色っぽい声で報告どうもありがとう。
「ねぇ……お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「いつから分かってたの?」
 いつからって……そりゃ、
「つかさが朝、この部屋に来た時からよ」
「やっぱりなぁ……今日は気付いてないかもって、ちょっと思ったのに」
「それは無いわね」
「え~! ひどいよぉ……」
「だって……」
 ----7歳の七五三の夜から、ずっと。
「だって?」
 ----高校1年の冬も、高校2年の夏も。
「つかさがもし来なくても……」
 ----そして今も。
「……私から行ってたもの」
 ----あなたの想いを、私は映してきた。
「ふにゃ? どうゆうこと?」
 好きよ、つかさ。
「そういうことよっ!」
「えぇ~。わかんないよぉ……」
ベッドに向かい合って座り、"わかんない"と"そういうこと"を
それぞれ8回ずつ繰り返した----午前10時40分。
「ねぇ、つかさ」
「ん? どうしたの、お姉ちゃん?」
「こなたが来るまでまだ時間あるわね」
「えっ……と、うん……そうだね」
「キス、しよっか」
「……キスだけ?」
「……ぜんぶ、したい」
「……うん。しよう? "かがみ"おねぇちゃん……」

 今度は私から、畳み掛けるようにつかさを押し倒す----
 頭の中で、お昼までに何回出来るかしら……
 なんて計算しながら。
 そして外国のドラマのように勢い良く倒れ込むと、
 机の上の参考書が白旗を挙げるように、ぱたぱた揺れている----

 "青春"と言う言葉が頭をかすめた。



















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  • 双子姉妹百合… 大好きです!
    かがみ×つかさ萌えますね! -- チャムチロ (2012-08-27 21:26:53)
  • 全体的に妖艶な感じがしていいです。 -- 名無しさん (2010-07-22 16:57:19)
  • 朝っぱらからこの双子ときたら,,,もっとやれ!!!! -- 名無しさん (2010-05-27 17:39:26)

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