=============此文字D-konathalD-Racing☆ster(後編)=============
みゆきは、あきらの攻略ポイントをメンタル面に見出していた。
同じ女性ドライバー、車格として格下のマシン。
それらはあきらにとって、負けられないと感じさせるに充分な要素。
そして、あきらの持ち味とも言えるアグレッシブな性格。
それらはあきらにとって、負けられないと感じさせるに充分な要素。
そして、あきらの持ち味とも言えるアグレッシブな性格。
その二つをぶつけさせたとき、あきらの計画は破綻する、
だが、そこにしかこなた達の勝機は見出せないのも事実。
だが、そこにしかこなた達の勝機は見出せないのも事実。
ゆえに、こなたは粛々と文句ひとつ言わず、いつものこなたらしくない
クレバーで大人しい走りに徹しているのである。
クレバーで大人しい走りに徹しているのである。
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『よっしゃ見えてきた・・・あとは、あきらのミラーに私を出来るだけ写しつづける、・・・と』
10ラップを消化して、約60m先行するNSX。
ようやくここまできて姿を捉えられるようになった。
ようやくここまできて姿を捉えられるようになった。
『くっそ、・・・消えろ貧乏人・・・ッ!』
確実な手ごたえとして、あきらは急激にタイヤのグリップが
失われつつあるのを感じていた。暴れそうになるステアリング、車体。
失われつつあるのを感じていた。暴れそうになるステアリング、車体。
あきらの走りに全力を以って応えた結果、Sタイヤの表面は
ほぼ全磨耗一歩手前のレベルまで失われているのがあきらの感触に伝わる。
ほぼ全磨耗一歩手前のレベルまで失われているのがあきらの感触に伝わる。
それでも1周1分2秒前半のペースに踏みとどめるあきらの技術は驚異的といえた。
だが、ミラーに映る派手なシビックは、ひたひたとその姿を大きくし、
あきらに無言の圧力をかけ続ける。
あきらに無言の圧力をかけ続ける。
こちらはコンスタントに、変わらず1分1秒30前後でラップを刻み続けていた。
普段なら終盤は磨耗しきったタイヤに無理をかけず、
追いつかれない手前までペースを落として逃げ切る、いつもそれが許された。
追いつかれない手前までペースを落として逃げ切る、いつもそれが許された。
『まずいね、まずいね・・・。』
それができない。
きっと必ず来る、その圧力がそうはさせない。
結果、あきらのタイヤはいつもより激しく磨耗していた。
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ピットウォールでみゆきの横にオブザーバーとして陣取る白石は、
ディスプレイに映るラップタイムを見て鳥肌を立てた。つまり鳥肌実。嘘です。
1.04.16;start-lap
1.01.32;
1.01.28;
1.01.34;
1.01.29;
1.01.27;
1.01.34;
1.01.29;
1.01.25;
1.01.31;
1.01.28;
1.01.33;
1.01.28;
1.01.32;
1.01.28;
1.01.34;
1.01.29;
1.01.27;
1.01.34;
1.01.29;
1.01.25;
1.01.31;
1.01.28;
1.01.33;
1.01.28;
スタートを除いたラップタイムが、ほぼ予定通りの
1分1秒30から、きっかり0秒コンマ05とずれていない。
1分1秒30から、きっかり0秒コンマ05とずれていない。
はたして自分ですら、こんな芸当をやれと言われてできるだろうか?
『・・・FFだけに終わらせるにはもったいない逸材だよな・・・』
『ほんとうに、泉さんは天才です。』
『ほんとうに、泉さんは天才です。』
(初めて会った走行会で俺に翻弄されていたヒヨッ子が、
いつの間にか、よくもここまできたものだ・・・。)
いつの間にか、よくもここまできたものだ・・・。)
白石は、遠くを見やり、思いにふける。
(こいつぁ・・・本当に乗せてみたい!世界クラスのマシンに・・)
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コントロールラインを抜ける瞬間、みゆきの視界にも、
かなり差を詰めているのがわかった。
かなり差を詰めているのがわかった。
データではなく、それは実感で。
残り1周、まだNSXが1コーナー侵入のブレーキを踏む前に、
EK4が最終コーナーを立ち上がる。
EK4が最終コーナーを立ち上がる。
残り1ラップの逆転に、こなた達は全てを賭ける。
残り1ラップを逃げ切る事に、あきらは希望を託す。
『泉さん、最終ラップです!リミット解放してください!』
『・・・!』
こなたは無言だ。答えは、走りで見せてやればいい。
1コーナー、50m看板を通過。
ドッギャァアアアアアアアアアアアアア!!ワンッワォオオ!!
それまでとはうってかわった全力制動、そして神速のシフトダウン。
EK4から、ひさしぶりに青白いオーラが立ち昇った瞬間、
迫力にのまれた観客は言葉を失った。
迫力にのまれた観客は言葉を失った。
まるでフォーミュラカーを思わせるありえない旋回速度で
1コーナーを抜けていくEK4。
1コーナーを抜けていくEK4。
これまで温存してきたフロントのグリップを、この1周に全て捧げる。
あきらまでの距離は、残り、40m。
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第1ヘアピンに進入しながら、ミラー越しでも
あきらの目に、EK4の異様なオーラが圧力をかける。
あきらの目に、EK4の異様なオーラが圧力をかける。
『やっぱりそーきたわね。・・・そうでなくっちゃ、』
ズジャ、ジャジャッ!
『・・・っと!面白くないわよね!!』
どこかに飛んでいきそうな低下したグリップ、ただでさえミッドシップゆえ
素早い対応を強いられる上、瞬発的な速さを求めて尖ったハンドリング特製を与えたNSX改、
素早い対応を強いられる上、瞬発的な速さを求めて尖ったハンドリング特製を与えたNSX改、
タイヤと同様に、あきらも激しく消耗し、疲労はピークに達していた。
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ダンロップコーナー、タイヤが消耗しているとは信じがたいペースで
コーナーの先に消えるNSXを必死に視界に捉えようとするこなた。
コーナーの先に消えるNSXを必死に視界に捉えようとするこなた。
軽いチートブレーキで姿勢を作り、小さなスライドでほぼ全開で抜けていく。
『・・・・まだだ!まだ終わらんよ!!』
あきらを捕まえるまであと、30m。
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第2ヘアピン、アンダーになろうとするNSXをなだめすかしながら、
『あと少し、あとコーナー二つ・・・』
直線になってしまえば馬力差で逃げられるんだ、
そう願いを込めて少しずつリアタイヤにパワーをかける。
そう願いを込めて少しずつリアタイヤにパワーをかける。
だがはたして、その気の焦りが狂わせたのか、
いずれにせよタイヤが限界を迎えたのか。
いずれにせよタイヤが限界を迎えたのか。
ズジャァアアアア!
熱ダレの進行したスーパーソフトタイヤは
立ち上がりのトルクを受け止めきれず、あきらの予想を越えて後輪のグリップを失う。
立ち上がりのトルクを受け止めきれず、あきらの予想を越えて後輪のグリップを失う。
『くっそ!!』
NSXの重いリアは、遠心力に負けてアウト側へ大きく振り出された。
瞬時にカウンターを当て、アクセルハーフ、暴れるリアをねじ伏せる。
瞬時にカウンターを当て、アクセルハーフ、暴れるリアをねじ伏せる。
だが、戻したアクセルの遅れは取り戻せない。
そしてコーナー立ち上がりの速度ロスは、そのままストレートスピードでは
何倍にもなって跳ね返ってくるのだ。
何倍にもなって跳ね返ってくるのだ。
いっぽう、こなたはチートブレーキをフル活用して
最適な立ち上がりを実現する。
最適な立ち上がりを実現する。
『NSX立ち上がりで失速しました!なんとかスリップに入ってください!』
『これが・・・・・最後のチャンス!!』
(20m以内に入ってくれれば・・・)
みゆきの傍らのディスプレイのひとつには、
CFD(数値流体力学)シュミレータ―の画像が映し出され、
あきらのNSXの後方には、20mにおよぶ巨大な乱流域が
存在することを示していた。
CFD(数値流体力学)シュミレータ―の画像が映し出され、
あきらのNSXの後方には、20mにおよぶ巨大な乱流域が
存在することを示していた。
スリップストリーム。前を走る車体の後方であれば、
より少ない空気抵抗で加速し、追いつくことができる技。
より少ない空気抵抗で加速し、追いつくことができる技。
いつもより緩慢になってしまった加速にあえぐ、
NSXの大柄なテールを目指して突進するこなた。
NSXの大柄なテールを目指して突進するこなた。
立ち上がりのミスが大きく響き、最高出力450馬力を誇る改造NSXも、
現在の瞬間、発揮できている出力は300馬力以下でしかなかった。
現在の瞬間、発揮できている出力は300馬力以下でしかなかった。
GTウイングとディフューザーが、その後方に確実に、
乱流域を生成しているはず・・・EK4はまっしぐらに、見えない風のカーテンを目指す。
乱流域を生成しているはず・・・EK4はまっしぐらに、見えない風のカーテンを目指す。
シビックのドンガラの室内に響く風切り音が変化したとき、
『おおお、効く効く!吸い込まれてくよ!!』
20mが、15m、10m、
5m、1m、50cm・・・そしてテール・トゥ・ノーズ。
空力デバイスの力であきらが味方につけていたはずの空気は、
突如として裏切り、こなたをNSXに吸い寄せてしまった。
突如として裏切り、こなたをNSXに吸い寄せてしまった。
『インは・・・渡さない!!』
NSXは進入でイン側進入ラインを閉めてしまった。
『はい、そーくると思ってましたーーーー!!』
そして、アウト側はがら空きになる、そこを最初からこなた、
むしろ、こなたとみゆきは狙っていた。
むしろ、こなたとみゆきは狙っていた。
”うわぁああああああああああっ ”
スリップストリーム域から出て、
渾身の進入で大外からNSXに並びかけるEK4にスタンドの観衆が一斉に沸き立つ。
『ここ・・・・・だ!』
ズギャァアアアアアアア!
軽量ゆえに有利な進入のブレーキングで、こなたはEK4を
ついにNSXの鼻先と並べることに成功した。
ついにNSXの鼻先と並べることに成功した。
筑波最終コーナー、両者サイドバイサイド。
『この野郎ぉおおおおおおおおおおおおッ!!』
最終コーナー中盤、あきらはアウトからかぶせられたNSXに、最後のフルパワーをくれる。
あてになるのは、高速コーナーゆえの空力効果、それくらいだ。
それでも、あきらは紙一重の勝利に向けてアクセルを全開にする。
あてになるのは、高速コーナーゆえの空力効果、それくらいだ。
それでも、あきらは紙一重の勝利に向けてアクセルを全開にする。
こなたも決してアクセルを戻さない。
チートブレーキも使わない。わずかでも抵抗を増やせばNSXに先行されてしまう。
温存してきたタイヤもこの最後のアタックで発熱が少しずつ限界に近づき、EK4はアンダーになる。
チートブレーキも使わない。わずかでも抵抗を増やせばNSXに先行されてしまう。
温存してきたタイヤもこの最後のアタックで発熱が少しずつ限界に近づき、EK4はアンダーになる。
理想のラインからズルズルと外側へはらんでいくEK4。
こなたはこのままの経路では、アウト側の縁石まで越えてしまうことを悟った。
だがアクセルは戻さない。
アウト側のカベ際までふくらんででも、このまま全開で抜けてやる。
『いけぇえええええええええええええ!!』
覚悟を決めたこなたが叫ぶ。
『うおぉおおおおおおおおおおおおッ!!』
最後の死力を振り絞るあきらが吠える。
あきらは、GTウイングの効果も越えて、
限界を越えリアタイアが滑り出すのを感じ取る。
限界を越えリアタイアが滑り出すのを感じ取る。
車体にスライドアングルがつき始めた。
アクセルを戻さなければ、やがて車体の姿勢は破綻する。
だが戻せばシビックを前に出してしまう。
戻すものか。前に出すものか。
10度、15度、スライドアングルはズルズルと増えていく。
ガツッ!
左リアフェンダーがEK4に接触する。
『・・・・・・!!』
あきらがアクセルを6mm戻したとき、NSXは身震いしてリアのグリップを取り戻した。
再び後輪が路面を蹴りだし、NSXを加速させる。
だが既に、バンパー1枚分、EK4が前にいる。
左タイヤから土ぼこりを上げながら。
それでもその左側のタイヤ半分だけ、
コース上にとどめたEK4が
コンマ2秒差で先にフィニッシュラインを抜けた。
2台はアクセルを戻し、ゆるやかに速度を落としながら惰性で1コーナーへ進んでいった。
心身ともに疲労困憊のこなたは、NSXに軽く手を振ってみたが、
ヘルメットの中のあきらはただ、前方を見つめているだけに見えた。
観客席が割れんばかりの拍手と
スタンディングオベーションに包まれているのに気づいたのは、
スタンディングオベーションに包まれているのに気づいたのは、
『お疲れ様です!泉さんの勝ちですよ、0.204秒差!』
ようやくみゆきからの無線で我にかえったときだった。
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ファンからの握手攻めやサイン攻めから解放されたこなたや
あきらがふっとようやく一息つけたのは、イベントの片付けがほぼ終わりかけ、
夕闇がせまったピット内であった。
あきらがふっとようやく一息つけたのは、イベントの片付けがほぼ終わりかけ、
夕闇がせまったピット内であった。
一人片付け作業をサボり、ぬるくなったドリンクをぶら下げてぼーっとしていたこなたに、
あきらがつかつかと歩み寄り、一方的に口を開いた。
あきらがつかつかと歩み寄り、一方的に口を開いた。
『正直、あんたと戦えるって話になって、ホント楽しみだった。
マシンも対策したし、絶対に負けることなんてありえないと思った。
…出せるものは全部出し尽くして走ったから、そこだけは悔いはないよ。
マシンも対策したし、絶対に負けることなんてありえないと思った。
…出せるものは全部出し尽くして走ったから、そこだけは悔いはないよ。
…それでも負けた。それがわからない!
教えてよ、あんたと私と、何が違うのさ』
『・・・タイヤの温存策だとか重量とか、技術論で語ることはできるよ。
…でも、きっと聞きたいのはそんな話じゃないんだよね。』
…でも、きっと聞きたいのはそんな話じゃないんだよね。』
『・・・・・・!』
こなたは、夕焼けの中、ピットの片付けに精を出すみゆきやかがみ、つかさ、
白石はじめカドカワガレージの面々を遠く見つめて、答える。
白石はじめカドカワガレージの面々を遠く見つめて、答える。
『わたしは、みんなと一緒に戦ってる。
それがとても好きだし・・・だから戦える。
ま、・・イチバンの私の力は、ソレかな。』
『・・・いちいち、クサいのよ!あんた・・・!』
『小神さん・・・・。』
きびすを返し、ひとり早足でピットの奥に消えていくあきらに、
こなたはかけるべき言葉をもたなかった。
こなたはかけるべき言葉をもたなかった。
夕焼けが、サーキットの勝者も敗者も、だれもかれもを平等にオレンジ色に染めていた。
【fin】
コメントフォーム
- >サブキャリパー
ブレーキの回転ディスクを挟み込んで止める装置をキャリパーと呼ぶのですが、
今回のEK4には本来のキャリパーに加えて、
向きを変える為のもうひとつのキャリパーがついているという設定です。
まったく魔改造もいいところですが、
最新の車両安定装置では似たようなシステムがありますし、
かつてF1マシンでも一時はそういうシステムを採用
【割愛】 -- 物知りコドライバーさん (2009-08-13 11:22:16) - 良い作品ですね~。しっかし作者さんは車の事良く知ってるな~。
ただ、昔ならした俺は読みながら鮮明に脳内に『映像』が浮かんで来たけど、一般の読者にはきっついだろなー。(笑 -- kk (2009-08-09 22:40:04) - サブキャリパーってなんですか? -- 名無しさん (2009-08-09 16:32:24)
- 大好きだ。この作品。GJ -- 名無しさん (2009-08-09 06:47:29)