「あきらちゃん、今日このあとちょっと付き合わない?」
なんて。
ふざけたことを口にしたスーツの男を思わず見つめてしまう。
収録も終わり、がやがやとした喧騒から抜け出しだるい体を癒すためゆっくり休もうと思った矢先の誘い。
この男は誰だろう。あまり見ない顔だが、見たことが無いわけでもなさそうだ。
思い出そうと半眼で凝視していたのをなにやら勘違いしたらしいそいつは、
ふざけたことを口にしたスーツの男を思わず見つめてしまう。
収録も終わり、がやがやとした喧騒から抜け出しだるい体を癒すためゆっくり休もうと思った矢先の誘い。
この男は誰だろう。あまり見ない顔だが、見たことが無いわけでもなさそうだ。
思い出そうと半眼で凝視していたのをなにやら勘違いしたらしいそいつは、
「あぁ、大丈夫。君に迷惑はかけないよ。それで、いい店があるんだけど」
はぁ?あんた何様?この空前絶後の超がつく美少女小神あきらさまがあんたみたいなショボそーな男にほいほいついてくとでも思ってんの?
むしろ誘うだけで迷惑だってことに気づいてないワケ?余程浮かれた頭なわけね氏ねじゃなくて死ねダボ。
半ば反射的に出そうとしてしまったこのセリフを喉元でこらえ、プロ根性よろしく猫撫で声で対応する。
むしろ誘うだけで迷惑だってことに気づいてないワケ?余程浮かれた頭なわけね氏ねじゃなくて死ねダボ。
半ば反射的に出そうとしてしまったこのセリフを喉元でこらえ、プロ根性よろしく猫撫で声で対応する。
「あ~っ。ごめんなさい…。あきら今日はちょっと用事入っちゃってて…」
「いや、ちょっと付き合ってくれるだけでいいんだ。そう、1時間くらいでいいからさ」
「いや、ちょっと付き合ってくれるだけでいいんだ。そう、1時間くらいでいいからさ」
夜にそんな時間ないわよ。あたしは早く帰って寝たい。
大体明らかに酔わせちまえばこっちのモンてきなオーラ放ってる下半身至上主義みたいな奴についてく女は底が知れてるっつーの。
大体明らかに酔わせちまえばこっちのモンてきなオーラ放ってる下半身至上主義みたいな奴についてく女は底が知れてるっつーの。
「えぇ、でもぉ…」
こんなときにも自動で返事をする長年染み付いた猫。
最近はあいつの前でだけ何故かコントロールが聞かなくなってるけど。
最近はあいつの前でだけ何故かコントロールが聞かなくなってるけど。
「じゃあ、先約があるのかな?それなら仕方ないけど、誰だい?」
用事と言えばすぐに男に持っていくこいつがたまらなくうざい。色魔め。
しょうがない、適当な誰かに協力してもらうか…。
っていっても、こんなこと頼める奴なんて一人しかいないんだけど。
しょうがない、適当な誰かに協力してもらうか…。
っていっても、こんなこと頼める奴なんて一人しかいないんだけど。
「今日は白石くんと仕事について話すから…ごめんなさぁい」
少し離れたところでADと談笑してるあいつを呼ぶ。
甘ったるい声で、しらいしく~ん、と声をかけることでなにかを勘付いたらしく、少し落ち着かない様子。
近寄ってきたところを目で脅す。
甘ったるい声で、しらいしく~ん、と声をかけることでなにかを勘付いたらしく、少し落ち着かない様子。
近寄ってきたところを目で脅す。
あんたはとにかくほいほい頷きなさい。はい、わかりましたあきらさま!
よし、コミュニケーションは完了。この間僅か1秒。
「へぇ、こいつと?…夜にまで仕事なんか良くないよ」
明らかに白石を見下している視線。まぁそうよね。ぽっと出の新参のくせになぜかあたしと組んでレギュラーまで持ってるし。
頭の硬い奴らはは妬みこそすれよく思うことはない。
頭の硬い奴らはは妬みこそすれよく思うことはない。
「そもそもこいつは本番でもミスだらけだし、顔も平凡だ。君のパートナーとしてつりあってるとは思えないよ」
…こいつは自分が相応しいとでも思ってんの?思い上がりも甚だしい。
「こんなさえない奴と一緒にいないでさ、僕に付き合ってよ。絶対に気持ちよくさせてあげるから。テクには自信があるんだ」
ついに本音が出てきた。やりたいだけなのが丸出しで、品性の欠片も無いじゃない、こいつ。
今はまだ「え~、あきら何のこと言ってるかわかんなーい」でいけるが、もう怒りが臨界点を突破しそう。
そこで初めて白石が口を開いた。
今はまだ「え~、あきら何のこと言ってるかわかんなーい」でいけるが、もう怒りが臨界点を突破しそう。
そこで初めて白石が口を開いた。
「あきら様。行きましょう」
手を握られ、引かれる。一瞬びっくりして、すぐに握り返す。
やっぱり、あれだけ言われてなんとも思ってないはずはない。
やっぱり、あれだけ言われてなんとも思ってないはずはない。
「ちょっと、お前?彼女は僕と行くって言ってるんだから、さっさと手を離せよ」
言ってないし、離さなくてもいい。殺意が芽生えるのと怒りゲージが振り切れるのを感じ、叫ぼうとしたところで、また白石が口を開く。
「それは出来ません。僕はあきら様を離したくないんで、あなたに渡しもしません」
「な”っ…」
「それじゃあ。行きましょう、あきら様」
「な”っ…」
「それじゃあ。行きましょう、あきら様」
呆然とする名も知らぬ彼を尻目にあたしを連れてずんずん進む白石。
勿論あたしも呆然としていた。
勿論あたしも呆然としていた。
外に出て、外気が肌を刺して、それからやっと外に出たと気がついた。
繋がれた手から熱が伝わってきて、そこからだんだんと体に暖かさが伝わってゆく。
繋がれた手から熱が伝わってきて、そこからだんだんと体に暖かさが伝わってゆく。
「…あの、あきら様?さっきのことなんですけど…」
ばかじゃないの、と思った。
いまどきそんなクサイ台詞で女が喜ぶとでも思ってんのか。
いまどきそんなクサイ台詞で女が喜ぶとでも思ってんのか。
「あきら様?顔が赤いですよ?風邪ですか?」
「…うるさい。あんたさっきの意味わかってて言ってるんでしょうね」
「あ、はい!僕はあきら様のことが好きです」
「…うるさい。あんたさっきの意味わかってて言ってるんでしょうね」
「あ、はい!僕はあきら様のことが好きです」
真っ直ぐにこっちを見据えた白石のその言葉に、また頬が紅潮するのを感じる。
くそ。白石ごときにやり込められるなんて、あたしのプライドが許さない。
くそ。白石ごときにやり込められるなんて、あたしのプライドが許さない。
「…じゃあ、疲れたから家までおんぶして」
「え?」
「さっさとしなさいよ。何?あたしをおぶるのは嫌なわけ?」
「い、いえ、滅相もありません!ではっ!」
「え?」
「さっさとしなさいよ。何?あたしをおぶるのは嫌なわけ?」
「い、いえ、滅相もありません!ではっ!」
よいしょ、と背中におぶさる。
頼りなさそうな白石の背中は意外と広くて、暖かかった。
頼りなさそうな白石の背中は意外と広くて、暖かかった。
「…好き」
「え?何か言いました?」
「何でもないわよ。ちゃっちゃと進みなさい、ちゃっちゃと」
「は、はいっ!」
「え?何か言いました?」
「何でもないわよ。ちゃっちゃと進みなさい、ちゃっちゃと」
「は、はいっ!」
ぼーっとしながら思う。こいつ、このまま送り狼になるんじゃないの?
…こいつにそんな甲斐性があるわけないか。まず、何期待してんのよあたし。
…こいつにそんな甲斐性があるわけないか。まず、何期待してんのよあたし。
ああ。やっぱり、こいつに調子を狂わされっぱなし。
女の子の感触が嬉しいのか顔をにやけさせながら歩いてる白石の髪を袖から余った指先で引っ張り、八つ当たりをした。
女の子の感触が嬉しいのか顔をにやけさせながら歩いてる白石の髪を袖から余った指先で引っ張り、八つ当たりをした。
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-- こきんとん (2009-05-20 17:51:31)