校内にチャイムが鳴り、生徒たちが移動を開始した。
部活動のある生徒、委員会のある生徒、用事がなく帰宅する生徒。
それぞれ目的地は同じだったり、異なっていたり。
部活動のある生徒、委員会のある生徒、用事がなく帰宅する生徒。
それぞれ目的地は同じだったり、異なっていたり。
「みゆきさーん」
バス停へと向かうみゆきをこなたが呼び止める。
「泉さんもこれからお帰りになるのですか」
「うん、今日はちょっと寝不足でね。寄り道せずに、まっすぐ帰る予定。
たぶん家に着いたら即、ばたんキューだよ」
「ふふ、受験勉強もほどほどにしないといけませんね」
「う゛、私の原因はそれとはちょっと違うんだけどね……」
バツの悪そうな顔を、ポリポリと掻きながら答えた。
「?」
「なんでもないの。気にしないで。……あ、ほら、バスが来たよ!」
「はい、うまく座れるといいのですが……」
バス停へと向かうみゆきをこなたが呼び止める。
「泉さんもこれからお帰りになるのですか」
「うん、今日はちょっと寝不足でね。寄り道せずに、まっすぐ帰る予定。
たぶん家に着いたら即、ばたんキューだよ」
「ふふ、受験勉強もほどほどにしないといけませんね」
「う゛、私の原因はそれとはちょっと違うんだけどね……」
バツの悪そうな顔を、ポリポリと掻きながら答えた。
「?」
「なんでもないの。気にしないで。……あ、ほら、バスが来たよ!」
「はい、うまく座れるといいのですが……」
「……最後尾だけど、何とか座れたね」
「そうですね。助かりました」
五人掛けのシート、進行方向右側端に二人は座っている。
難点を挙げるとすれば、通路にも生徒が居るため降車に手間取るといったところか。
扉が閉まり、それを確認した運転手がバスを走らせる。
エンジン特有の小刻みな揺れ。アスファルトを走る際の大きな揺れ。
この程よい感覚は、安楽椅子のそれか、ゆりかごのそれか……。
ふと、みゆきは隣を見る。こなたは、うつらうつらと櫂を漕いでいた。
「あらあら、うふふ」
「パトラ……あ、みゆきさん。安心したらなんだか眠くなってきちゃったよ」
「では、駅に着いたらお起こししますので、それまでおやすみください」
「なんか悪いね。でも、お言葉に甘えて――」
糸の切れた操り人形のように、コクンとうなずくと、夢の中へ落ちていった。
そんなこなたをみゆきは優しい眼差しで見つめる。
十八歳になったとはいえ、親から受け継いだ体は幼いままだ。
安らかな寝顔は、まだ何も知らない“無垢”を映し出しているかのようだった。
「ちょっと、失礼しますね」
こなたを起こさないよう、ゆっくりと肩に手を回し、ポン、ポンと一定の速度で撫ぜる。
心なしか、みゆきの表情にあわせ、こなたも笑顔に変わっていく……。
「……にゃ」
「そうですね。助かりました」
五人掛けのシート、進行方向右側端に二人は座っている。
難点を挙げるとすれば、通路にも生徒が居るため降車に手間取るといったところか。
扉が閉まり、それを確認した運転手がバスを走らせる。
エンジン特有の小刻みな揺れ。アスファルトを走る際の大きな揺れ。
この程よい感覚は、安楽椅子のそれか、ゆりかごのそれか……。
ふと、みゆきは隣を見る。こなたは、うつらうつらと櫂を漕いでいた。
「あらあら、うふふ」
「パトラ……あ、みゆきさん。安心したらなんだか眠くなってきちゃったよ」
「では、駅に着いたらお起こししますので、それまでおやすみください」
「なんか悪いね。でも、お言葉に甘えて――」
糸の切れた操り人形のように、コクンとうなずくと、夢の中へ落ちていった。
そんなこなたをみゆきは優しい眼差しで見つめる。
十八歳になったとはいえ、親から受け継いだ体は幼いままだ。
安らかな寝顔は、まだ何も知らない“無垢”を映し出しているかのようだった。
「ちょっと、失礼しますね」
こなたを起こさないよう、ゆっくりと肩に手を回し、ポン、ポンと一定の速度で撫ぜる。
心なしか、みゆきの表情にあわせ、こなたも笑顔に変わっていく……。
「……にゃ」
――と、バスが大きく右に曲がった。
「ひゃうっ!」
その影響で、眠っていたこなたがみゆき側に倒れる。
こなたはそれでも起きるそぶりを見せなかったので、結果として膝枕のような体勢となった。
みゆきの鼓動が速くなる。
「ええと、どうしましょう」
脳が計算を開始する。
・まだ目的地までは時間がある。
・ここで起こすのはかわいそうだ。
・それに、実はこの体勢もまんざらではない。
以上の三点から、このまま寝かせるという結論を出した。
その間0コンマ数秒。
「……こういった体験も、貴重ですよね」
自分に言い訳して、こなたがずり落ちないように姿勢を直す。
硬いシートから柔らかい膝に枕が変わったためか、
こなたの寝顔が笑顔を通り越してにやけているようにも見える。
「泉さん、なにか楽しい夢でも見ているのでしょうか」
「……うにゅ」
だんだんとみゆきも落ち着きを取り戻す。
「まるで仔猫のようですね」
青く長い髪を梳きながら言った。
“こうしていると、なぜだか心が安らぐ……”
“このまま、ずっと一緒にいたい……”
その願いは、結果的に叶えられることとなった。
「ひゃうっ!」
その影響で、眠っていたこなたがみゆき側に倒れる。
こなたはそれでも起きるそぶりを見せなかったので、結果として膝枕のような体勢となった。
みゆきの鼓動が速くなる。
「ええと、どうしましょう」
脳が計算を開始する。
・まだ目的地までは時間がある。
・ここで起こすのはかわいそうだ。
・それに、実はこの体勢もまんざらではない。
以上の三点から、このまま寝かせるという結論を出した。
その間0コンマ数秒。
「……こういった体験も、貴重ですよね」
自分に言い訳して、こなたがずり落ちないように姿勢を直す。
硬いシートから柔らかい膝に枕が変わったためか、
こなたの寝顔が笑顔を通り越してにやけているようにも見える。
「泉さん、なにか楽しい夢でも見ているのでしょうか」
「……うにゅ」
だんだんとみゆきも落ち着きを取り戻す。
「まるで仔猫のようですね」
青く長い髪を梳きながら言った。
“こうしていると、なぜだか心が安らぐ……”
“このまま、ずっと一緒にいたい……”
その願いは、結果的に叶えられることとなった。
安心すると人は眠くなるもので、それはみゆきにも例外ではなく――。
『次は、蒲田、終点でございます。本日も……』
「はっ? ここはどこでしょう!?」
みゆきの声に、こなたも目を覚ます。
「か、蒲田!? あちゃー、東京まで来ちゃったか」
「申し訳ありません、つい眠ってしまったばっかりに、こんなことに……」
「いや、私もぐっすりだったしさ。もう過ぎたことは水に流しちゃおう」
「本当にすみません……泉さん」
「いえいえ、膝枕してもらったり、髪も撫でてもらったり、楽しかったよ
それで今回のことは相殺ってことでいいかな?」
「はい……あれ、でもそのとき泉さんは寝ていらしたのでは――」
みゆきの言葉を聞く前に、こなたは歩き出す。
「さってっと。確か蒲田にもアニメイトがあったはずだし、
せっかくだから、私はそこに寄ってから帰るよ。じゃあね、みゆきさん!」
「あ、あの……」
状況が呑み込めていないみゆきを残し、こなたの姿は見えなくなってしまった。
「はっ? ここはどこでしょう!?」
みゆきの声に、こなたも目を覚ます。
「か、蒲田!? あちゃー、東京まで来ちゃったか」
「申し訳ありません、つい眠ってしまったばっかりに、こんなことに……」
「いや、私もぐっすりだったしさ。もう過ぎたことは水に流しちゃおう」
「本当にすみません……泉さん」
「いえいえ、膝枕してもらったり、髪も撫でてもらったり、楽しかったよ
それで今回のことは相殺ってことでいいかな?」
「はい……あれ、でもそのとき泉さんは寝ていらしたのでは――」
みゆきの言葉を聞く前に、こなたは歩き出す。
「さってっと。確か蒲田にもアニメイトがあったはずだし、
せっかくだから、私はそこに寄ってから帰るよ。じゃあね、みゆきさん!」
「あ、あの……」
状況が呑み込めていないみゆきを残し、こなたの姿は見えなくなってしまった。
「……また明日。泉さん」
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- 赤座あかり -- 名無しさん (2015-01-07 21:13:03)
- なんでバスで埼玉から蒲田までいっちゃうのよw
こなたもなんの疑問も持たないしw
-- アオキ (2012-02-02 13:42:32) - ↓↓眉毛がたくあんの人ですね -- 名無しさん (2011-04-14 03:45:48)
- 春日部(埼玉中部)から蒲田(東京城南地区)までのバスって・・・。
どんだけ・・・・。 -- 名無しさん (2008-10-18 07:21:16) - あらあら、うふふって
マンガ違いません?
-- 新藤 (2008-10-17 19:14:10)