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ラブマイライフ~すべては、ありのままで美しい~(1)

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「お疲れ様、二人とも。ん~。何と言うかぁ、自分のベストを尽くして頑張り……」
「おーつかさ、頑張ったじゃん!でもやっぱり、かがみの方が上なんだぁ」
「こら、まつり!もうチョット空気をだなぁ……」

こんな風に言われた事は今まで何度もあった
双子だからこそ余計にお姉ちゃんとは昔から比べられた

比べられる事が嫌だった
何でもできるお姉ちゃんが嫌いだった。

どんなにがんばっても
お姉ちゃんみたいにテストでいい点は取れない
どんなにがんばっても
早くなんて走れない

いつもいい点数を取れて、スポーツはなんでもできて
なのに全然自慢なんてしなくて
そんなところが余計に悔しかった

なんで双子なのにこんなに違うんだろう
私もお姉ちゃんみたいに生まれたかった
何度もそう思った。

あの日までは……。


あの日もテストがあった日だった。

「つかさ、どうだった?」
「ん~ダメだった。エヘヘ」
「次は私が教えてあげるからがんばろ」
「……うん」

二人でお父さんにテストを見せると、お姉ちゃんのを見て
「かがみ、がんばったな」
と褒め、次いで私のを見て
「つかさは……まぁ次頑張ればいいさ、な」
と慰めてくれる

なんだかとても惨めだった。
いっそ怒られたほうがましだ。
私は両手をぎゅっと握り締めた。

「……がんばったって、無理だもん」
「つかさ……」
「がんばったってお姉ちゃんみたいになんて無理だもん!」
「かがみのことは関係――」
「みんな思ってるもん!双子なのに
 お姉ちゃんは何でもできて、私は何もできないって」
「お姉ちゃんと双子になんて生まれたくなかった!」
言ってはいけないことだと子供心にわかっていた
なのについ、口に出してしまい、
お姉ちゃんの顔を見る事ができなかった。
その罪悪感と居た堪れなさで、私は家を飛び出していた。

行くあてなんてないのに
ただ闇雲に歩いて気がつくと知らない所だった
私は小さな公園を見つけブランコに乗る

「なんであんなこと言っちゃったんだろう」
あんなこと言うつもりなかった。
最低な事を言ってしまった。
本当に自分という人間は駄目だなって笑ってしまう。

地面を軽く蹴って揺らしたブランコは
やがてゆっくりと止まる。
しかし、次に揺らす気になれない。
それくらい一人で乗るブランコはつまらなかった。

気づけばあたりは暗くなり、公園の真ん中にある街灯だけが
地面をぼんやり照らしていた

今にして思えば隣町くらいでさほど距離は無かったのかもしれない
でも小学生だった私にとって隣町はとても遠い所の様な気がした。

ずっとこうしていたってしょうがないことはわかっていた
私はブランコを降り、家に帰ろうと思ったが
どっちに行けばいいかわからず、
あてずっぽうにまた歩き出した

周りはどんどん暗くなっていく
歩けど歩けど見覚えのあるものは見えない

「つかさ?」
その時後ろから聞き覚えのある声が聞こえた

振り向いて、それが誰なのか認識した時には
その人は自分を抱きしめていた。

「もう!こんなとこまで来てるなんて」
お姉ちゃんは少し呆れたといった様子で言った。

「……お姉ちゃん」
安心感で涙が溢れ出した

「もう!心配したんだからね!
 お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、みんな探してるよ」

私はゆっくりと言葉を紡ぎだす
「…………ごめんなさい……ごめんなさい……」
「ごめんなさい、あんなこと言って」
「つかさはさ何もできないっていうけど、そんなことないよ?」
「つかさ、裁縫上手じゃない。調理自習の時だって上手に作ってたし
 いつもお母さんの手伝いやってるじゃない」
「あれは好きだから……」
「それぞれ得意不得意なものがあって当たり前。
 それが、つかさにとって裁縫や料理で、私にとって勉強やスポーツだっただけでしょ。
 つかさにできない事は私が助けるから、私ができないことはつかさが助けてくれなくちゃ。
 せっかく双子に生まれてきたんだから。
 ……私はつかさと双子でよかったと思ってるよ?」
「お姉ちゃん……」
「それに……つかさがいなかったら、私つまらないもん居てくれなくちゃ困るよ」
「私もつまらなかった、一人でブランコ乗ってもつまらなかった、
 お姉ちゃんがいないとつまんないよ……」

あの日からかな、変な劣等感を感じなくなったのは
私は私でいいんだってそう思えた



「つかさ?」
「え?」
「ごめんっ気にした?」
まつりお姉ちゃんは何故か焦って私に謝る
「え?何が?」
「あっいや気にしてないならいいんだけど、おっとお母さんに
 洗濯物頼まれてたんだった、じゃ」

「つかさ、気にしなくていいからね?」
「え?ああ…」
やっと状況が把握できた
「気にしてないよ、いつもの事だから。エヘヘ」

いつからだっただろう
自慢の姉なんだって胸を張れるようになったのは

そういえば初めて、こなちゃんとゆきちゃんにお姉ちゃんのこと紹介した時も

「私の双子の姉のかがみお姉ちゃん
 勉強もスポーツもできてすごいんだよ」
そんな風に言ったら
「ちょっとやめてよ!シスコンだと思われるでしょ」
ってお姉ちゃんは顔を真っ赤にして怒ったっけ

その完璧さ故に憎く思ったこともあったけれど
認めてしまえば、もう後は好きなるしかなかった。
誰よりも近くにいるから
誰よりも柊かがみという人間の良い所も悪い所もわかった。
誰よりも好きになっていた。

何度も嫌いになろうとしたけど
好きになるより嫌いになる方が難しくて

もし、あんな事がなければ私はずっとお姉ちゃんを嫌いでいられたのかなって
その方がよかったのかなって思うことがある。
でもそれはきっと無理なのだ
だってお姉ちゃんだから……

「でもさ、私がこんなこと言っても、あれかもしんないけど
 今回はつかさ頑張ったと思うよ。私も教えた甲斐あったよ」

「ありがとう、お姉ちゃん
 でも、ごめんね、お姉ちゃんの勉強の時間つかっちゃって……」

「人に教えればそれだけ頭に入るからいいのよ
 今回のはただの予習不足だから気にすんなー」

そんな私を気遣ってくれる言葉の一つ一つが
胸の中に積もっていく
それが息を詰まらせて

「つかさ?」
「なあに?」
お姉ちゃんは首を傾げ
「いや…なんかわかんないけど、つかさが悲しい顔してるような気がした」
「え……?」
「なんでだろ、気のせいかな?」

私は笑って見せた。
「気のせいだよ」

「ならいいけど……私部屋戻るね?」
「うん」

お姉ちゃんが出て行くのを見送って
はぁ…とため息が自然と漏れた。



次の日の午後
急に振り出した雨を窓越しに眺めていた
「こまったなーあたし傘持ってきてないんだよね…」
こなちゃんもそんな雨空をみながらぼやいた。
「私も、お姉ちゃん傘持ってたけど、
 晴れてたから振らないだろうと思って……」
「さすがかがみん、抜かりないなー」

その日の放課後、案の定気がつく姉である。
私の教室へと迎えに来てくれた。
「つかさー帰るよー」
「かがみーあたしも入れて~」
こなちゃんは、傘を持ってきたおねえちゃんにすがりつく
「3人も入れるわけないでしょ、みゆきにでも入れてもらいなさいよ」
「その手があったか!」
ポンと手をつき、
こなちゃんはそのままのノリでゆきちゃんの席へと走っていった。
お姉ちゃんが開いた傘に入り、ゆっくりと歩き出す
「朝天気予報で、降水確率80%って言ってたの見てなかったの?」
「……ごめん」
お姉ちゃんは、小さなため息を吐いた。
「まぁいいけどね」

でも、そのおかげでこうやってお姉ちゃんと一緒の傘に入れることを
嬉しいなんて思ってしまう
些細な事かもしれないけれど、今の私にとって
とても意味のあることだった。

校門を出たところで、
「雨好きだったっけ?」
不意にお姉ちゃんが問いかける
「え?そんなことないけど…」
「そう?なんかうれしそうだから」
「ほ、ほら、暑い日が続いてたから
 雨降ると、少し涼しいから、その、たまに雨でもいいかなーなんて」

お姉ちゃんは、微笑むように少し笑った。
「どうして笑うの?」
「別に、そうだね最近暑かったしね」

家に近づくにつれて、
雨は止むどころか、ますます激しさを増していく

前に見える道には複数の小さな水溜り
水溜りに写った私とお姉ちゃんと傘。



「相合傘……」
ぽつりとつぶやく。

「……相合傘っていうのは男女が一緒に入る事言うんだってよ」
お姉ちゃんはそれに答えるように言った。

私はその水溜りを踏み、写っていた私達の姿はグチャっと歪んだ。
「そうなんだ……」

水が飛び散り、少し水が浸み込んでくる。
私はその足を止めた

お姉ちゃんと一緒に傘は私を通り過ぎる
「ちょっつかさ濡れるっ」
お姉ちゃんは慌てて振り向き私を傘に入れようとする。

今出来る精一杯でお姉ちゃんに笑いかけた。
「ごめんね」

「つか――」

走った。

ただ走った。

あの日のように。

逃げ出すように。

雨でよかった。
雨が涙を隠してくれるから。


びしょ濡れのまま玄関に入ると
「つかさ、どうしたのそんなびしょ濡れで
 かがみに入れてもらえばよかったのに」
お母さんは慌ててバスタオルを取ってきてくれた。
「ありがと、お母さん」
上手に笑えてるかな。それが気がかりだった。



















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  • やっぱりこの作品イイ!! -- 名無しさん (2010-10-26 14:23:38)

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