本当の優しさAfterEpisode
―繋がっている空―
消しゴムが書いた文字を消していく。
まるまった消しゴムカスがノートの端に溜まった。
こなたと付き合う。形式的にそうなってから一ヶ月が過ぎた。
つかさも少しずつではあるが、普通に笑えるようになり、四人の間にある妙な気遣いみたいなものも少
しずつ薄れて、以前のような私達に戻っていった。
しずつ薄れて、以前のような私達に戻っていった。
確かに何かが変わったはずなのに、何も変わらないような。それでいて変わったような。
どこか不安定で、私の心のモヤは消えない。
「かがみ、どうしたの?」
どうやら私は無意識のうちにペンを止まらせていたらしい。こなたは溜まった消しゴムのカスを手で掬
いゴミ箱へ捨てた。
「ん、ごめんなんでもない」
そういって再びペンを動かし始めた。
どうやら私は無意識のうちにペンを止まらせていたらしい。こなたは溜まった消しゴムのカスを手で掬
いゴミ箱へ捨てた。
「ん、ごめんなんでもない」
そういって再びペンを動かし始めた。
もう目の前までせまった受験の最後の悪あがきとでもいおうか、私達は度々二人で勉強をしていた。
最近はこなたも真面目に勉強するようになった。もともとやればできる人間だったのはわかってい
たが、教えればどんどん覚えていった。ちょっと悔しいくらいに。
最近はこなたも真面目に勉強するようになった。もともとやればできる人間だったのはわかってい
たが、教えればどんどん覚えていった。ちょっと悔しいくらいに。
受験勉強。それを言い訳に私達はあの日から何も変わっていなかった。その原因は私のわがまま。
こなたが私に触れようとしたり、たぶんキスしようとしたときも、私はそれを避けた。だからこなたは
それを冗談にした。それからこなたはそういうことをしなくなった。
酷い事をしたのはわかってる、わかってはいるんだけど、私にはまだ、女として女を愛するということ
がわからない。言葉としてじゃなくて感覚として。
決して嫌なわけじゃない、好き。それは断言できる。だけど、きっとまだこなたの好きとは少し違う。
形だけそうなってしまうのは簡単だけど、そんな気持ちのままそういうことをしてしまっていいのかと
答えが出せないでいた。
それを冗談にした。それからこなたはそういうことをしなくなった。
酷い事をしたのはわかってる、わかってはいるんだけど、私にはまだ、女として女を愛するということ
がわからない。言葉としてじゃなくて感覚として。
決して嫌なわけじゃない、好き。それは断言できる。だけど、きっとまだこなたの好きとは少し違う。
形だけそうなってしまうのは簡単だけど、そんな気持ちのままそういうことをしてしまっていいのかと
答えが出せないでいた。
こなたが求めるものに何も応えられていないのに、こなたは相変わらず私を想ってくれて、それに私は
どこか安心感を覚えてる。
どこか安心感を覚えてる。
数ページ問題を解き、息抜きに顔を上げた瞬間、こなたと目が合う。
たまたまかもしれないが、こなたがサボっていた可能性が高い。しかしそれと咎めるのは躊躇われた。
たまたまかもしれないが、こなたがサボっていた可能性が高い。しかしそれと咎めるのは躊躇われた。
数秒――いや一秒すらなかったかもしれない時間の後、こなたは視線をノートに戻す。
そしてこなたは長い髪を耳にかけた。長い髪が曲線をうねるように流れた。
胸が――なんか…………。
「ねぇこなた」
「なに?」
「キス……したい?」
「…………ど、どうしたのかがみ」
どもるこなたに、私はいたって冷静に聞きなおした。
「したいかどうかって聞いてるの」
「したいから、この前……」
こなたは一度あげた視線を下へ戻した。
こなたは一度あげた視線を下へ戻した。
「そうよね、ごめん」
「かがみはさ、そういうのしたくないんだよね?」
「…………わからない」
「そう思ってくれるまで私待つよ。待つのには慣れてるから」
「…………」
こなたは少し寂しげな表情で笑った。
――まただ。
なんてわがままなんだろう私は、突き放しておいて、こんな表情させたくないって思ってる。
「キス……して」
「え…………。嫌々したって私嬉しくない……」
少し拗ねたようにこなたは言った。
「”していい”じゃなくて、してって言ったのよ、嫌じゃないから」
たぶん……。
「…………」
「…………」
二人して少しの沈黙。
「直前で嫌って言われても、私もうやめれる自信ないよ?」
「わ、わかってるわよ。そんなことしないから」
「…………」
こなたはゆっくりと私のそばににじり寄る。
こなたの左手が、私の右腕を掴んだ。
こなたの左手が、私の右腕を掴んだ。
ゆっくりと迫ってくるこなたの顔。
「こういうときは目を瞑るものだよ、かがみ」
目を瞑った刹那、柔らかい感触が唇に重なった。
そして離れる。
目を開くと、こなたはじっと私の目を見つめていた。
「どう?」
わかっていたんだ……。それなのにこなたは……。
やっぱり私はこなたに対して、欲情するとかまだよくわからない。
だけど、キスするのは嫌じゃなかった、むしろ嬉しかった。
だけど、キスするのは嫌じゃなかった、むしろ嬉しかった。
でも、こなたがその先に望んでいる事と私が望んでいる事はきっと違う。
手の甲に冷たい感覚。
「かがみ…………」
「ごめっ……」
私は慌ててそれを拭った。
こなたと同じように思えないのが悲しかった。
望みに応えてあげられないのが悲しかった。
望みに応えてあげられないのが悲しかった。
「それだけで十分だよ」
「こなた…………」
「ゆっくり変わっていこう?」
こんなに一緒にいたのに。私はこなたがこれほど優しい人間だったなんて知らなかった。
「……うん」
やっぱり私はこなたが好きだ。愛しい。たぶんその言葉も間違ってはいない。
こなたの未来でいたい。こなたに私の未来でいてほしい。それは間違いなく本心だった。
こなたの未来でいたい。こなたに私の未来でいてほしい。それは間違いなく本心だった。
こなたが見ているものを同じようにみたい。だけどまだ私には同じに見えない。
だから私は、同じに見える目が欲しいと思う。
「そろそろ帰るよ」
その言葉で時計に目をやると、五時を回ろうとしていた。
玄関まで見送って、こなたは帰っていった。
部屋に戻り、ベッドの上に倒れこむ。
しばらくしてふと空を見ると、赤くなった夕焼けの中、綺麗な虹が架かっていた。
私は慌てて携帯電話を開くと、リダイヤルを一回押して通話ボタンを押した。
三コールのあと電話が繋がる。
『もしもし、どったの?』
「空見て」
『空…………あ……』
「綺麗だなって」
『私、夕方の虹って初めて見たよ』
「私も、だからこなたにも見て欲しくて」
『……もー、また会いたくなっちゃったじゃん』
「え?」
『ううん、本当に綺麗だね』
「うん……」
『幸せな事があるね』
「え?」
『虹をみたらいい事があるっていうでしょ?』
耳元に届くこなたの声。
もうあったよ。いい事。
「そうね、あるといいわね」
こなたが見上げた空が今、見えた気がして
――こなたにまた、会いたくなった。
fin ~繋がっている空~