技比べ ◆cNVX6DYRQU
「失礼。そこの川を人が流れて来たやもしれぬのだが、何か見ておられぬか?」
「人ですか。見てませんねえ。扇なら、下流に流れてましたが」
城下からやって来た男とにこやかに話す
沖田総司。
平和的なやりとりと言って良いだろう……二人の間に渦巻く殺気と、男の身を染める血さえ無視すれば。
石川五ェ門は、沖田を止めるべきか加勢すべきか、迷っていた。
ここは、川沿いから道一本分だけ城下の中に入った路地の奥、向こう岸からは死角となった区域。
血の臭いが近付いてくるのを知った沖田は自ら歩み寄り、この位置で相手を迎えたのだ。
彼が川岸で相手を待たず、向こう岸と視線の通らないこの位置まで来た理由は明白。
一つには、芹沢達にこの出会いを気付かせぬ為。もう一つは、男に自分達が総勢五人の大集団と知られぬ為。
つまり、沖田ははじめから、この男との勝負を目論んでいると見て間違いないだろう。
無論、五ェ門とて、この男が殺戮を好む危険人物であれば、討つのにやぶさかではない。
その場合、ヒナギクや細谷にわざわざ川を渡らせる必要はなく、自分達二人で十分だとも思っている。
だが、問題はこの男が果たして危険な殺し屋であるのかどうかだ。
あの姿は、酒蔵で会った天狗男のような者に襲われた結果かもしれないし、同意の上での果し合いの結果かもしれない。
殺気とて、明らかに戦うつもりでいる沖田を見れば、それに応じるのは剣士ならば当然であろう。
この男の心底を知るにはどうするべきか。言葉を重ねるか、それとも……
五ェ門はそっと移動し、角から顔を出して対岸を覗き見る。
こちらの姿が見えないのを不審に思った芹沢達が、川を渡って来でもすれば、悠長に詮議などする余裕はなくなるだろう。
そこで、彼等の様子を伺い、場合によっては押し留めるつもりだったのだが……
五ェ門は芹沢達の様子を見てぎょっとする。彼等に一人の男が近付いているのが見えたのだ。
そして、その男の手には剥き出しの白刃……明らかに尋常ではない。
三対一とはいえ、ヒナギクの実戦での実力は未知数だし、天狗男との立ち合いを見ても、細谷の力はどうも安定に欠ける。
そして最大の問題は、芹沢のあの粗暴な性格。
あの男は、強敵に襲われた時、仲間と協調して戦うどころか、ヒナギクや細谷を盾にしかねないのではないか?
そうでなくても、芹沢には細谷を足手まといとして疎み、ヒナギクを新見の仇かと疑っている節があるのだし。
それらの危惧によって、五ェ門の心に焦りが生まれた。
彼等から目を離しているのは危険。出来ればすぐにでも駆け戻りたい所だが、沖田を放っておく訳にもいかない。
そもそも、こちらにいる男と、対岸の白刃男が仲間で、呼応してこちらを襲うつもりという可能性もあるのだし。
振り返って沖田達の様子を見ると、二人は微妙に位置を変え、男は木の陰に半ば隠れる形になっている。
いざとなったら、これを盾にして、二人に挟撃されるのを防ごうという魂胆だろうか。
これは、仮に闘う事になった場合、一筋縄ではいかなそうな相手だ。
「沖田殿、あまり時間をかけると芹沢殿が怒り出すぞ。早く行った方が良いのではないか?」
名前を呼ばれたのが気に入らなかったのか、呼び掛けた五ェ門を僅かに睨む沖田だが、すぐににこやかに反論を始める。
「でも、折角会えたのに、何もせずに別れるなんて失礼じゃないですか。こちらの……ええと、お名前は伺いましたっけ?」
「失礼。名乗るのが遅れたが、拙者は柳生厳包と申す」
沖田に乗せられたのか、自覚してか、「柳生」という名を無造作に口にする厳包。
こうなると、沖田は無論、五ェ門も彼を捨てて戻ろうとは言いにくくなる。
「柳生ですか。これなら、少々時間を取っても芹沢さんは許してくれると思いませんか?石川さん」
「いや、柳生と言っても、厳包殿の尾張柳生は江戸柳生とは一線を画していたと聞く。敵とは限るまい」
柳生連也斎厳包と言えば、柳生宗矩の息子宗冬を御前試合にて打ち破ったと伝えられる人物。
白洲にいた主催の男が宗矩ならば、厳包はその手下と言うより敵である可能性が高いと見るべきではないだろうか。
「だとしても、柳生新陰流には違いありませんからね。その技を見せて貰うのは有意義だと思いませんか?」
そう言う沖田は何流だろうと見たがるに決まっているが、今回は彼の言葉にも理がある。
主催者に深く繋がると思われる、柳生家の剣や人に関する情報は何としても手に入れたいところだ。
しかし、長々と話を聞いていては、その間に芹沢達の方で何が起きるか知れたものではない。
となると、やはり、勝負を申し込むのが最善手なのか……
「誰だ!」
強い調子で誰何する芹沢。
まあ、白刃を持った男が背後から近付いて来れば、彼でなくとも、態度が刺々しくなるのは必然だ。
しかし、次の一言で、芹沢の戦意は大きく削がれる事となる。
「私は
白井亨と申す者」
石川五右衛門がいるくらいだから、二十年前に死んだ筈の白井がこの島に来ていても何の不思議はない事。
これが、
宮本武蔵のような「歴史上の」剣客であれば、芹沢もむしろ更に闘志を滾らせただろう。
しかし、白井亨と言えば、芹沢が剣術を始めた頃にはまだ、伝説的な剣豪として存命であった剣士。
当時の多くの若者同様、天下第一とも噂される白井の教えを受ける事を、若き日の芹沢もまた夢想した事がないではない。
そんな大先達を前にしては、さすがの芹沢も、他の者に対するような傲慢な態度が取れる筈もなかった。
「貴方があの高名な白井殿か。真だとすれば、お会いできて光栄の極み」
「いえ、私は未だ剣の振り方も碌に知らぬ未熟者に過ぎません」
「ご謙遜を……」
芹沢はそう返すが、白井が己の剣技を未熟なものと考えているのは謙遜でもなんでもなく、ただの事実。
この認識は、天下一流の腕を持ちながらも、更なる進歩を強く求める貪欲さに裏打ちされたもの。
そして、白井はこの島で、生と死の狭間に身を置く事で、新たな剣に開眼出来る事を体感していた。
だから……
「ですから、ここで少し試させて頂きます」
三人までの残りの距離を一気に詰め、切り付ける白井。
今回、白井が試そうと思っているのは、一刀流の秘技「払捨剣」。
大勢の敵に囲まれた際の技だが、白井の見解によれば、この技は完全ではない。
と言うのも、この技は、個々の敵の腕が己よりも数段落ちる場合にしか通用しないからだ。
もっとも、同等の腕の者に多数で掛かられれば死ぬのが道理であり、それに対応できる技を求める方が無理とも言えるだろう。
だが、白井はそんな無理を成し遂げる事で、真の剣術を会得しようとしていた。
腕の立ちそうな三人の集団に出会えた事を奇貨として、白井は自己流の払捨剣を試してみようとする。
最初の標的は、白井の奇襲に最も機敏に反応しようとしていた桂ヒナギク。
ヒナギクは無限刃を抜きつつ、咄嗟に後退して白井の剣をやり過ごした……筈が、かわしきれずに服の前を大きく切られた。
それで多少なりとも彼女の気を逸らせれば、というのが白井の目論見だったが、実際の効果は予想以上。
「きゃあ!」
呑気な事に、ヒナギクは悲鳴を上げると、両手を使って露わになった自分の身体を隠す。
無論そんな隙を白井が見逃す筈もなく、剣を回して柄を叩き付け、ヒナギクを吹き飛ばした。
続いては、仲間がやられた事で、漸く白井への畏敬を忘れて剣を向けて来た
芹沢鴨。
白井の剣を紙一重でかわして反撃しようとする芹沢だが、その寸前に視界が赤く染まり、慌てて飛び退く。
紙一重でかわした筈の剣が瞼の上を掠め、出血して芹沢の目を塞いだのだ。
元々、白井亨は、古流の心法と道場剣法の技を併用し、相手の間合いの読みを狂わせる事を得意としていた。
ただし、今回の敵である芹沢やヒナギクは、実戦経験が豊富な上に、白井より後代の、より進歩した技を学んでいる。
故に、柳生連也斎に対して使ったような技では見切られる可能性が高かっただろう。
そもそも、道場剣法は基本的に多対一を想定していないし、心法も達人複数に対して使っていてはとても気力が保たない。
だが、ここで白井が使ったのは、心法でも道場剣法でもなく、剣をどこまでも理詰めで考える白井独自の技術。
日本刀は鉄で出来ており、その為に一定の延性を持つ。つまり、強い力が加わる事で多少なりとも変形するのだ。
微妙な加減速の調整によってこの性質を活かし間合いを稼ぐのが、白井流払捨剣の肝となる技である。
無論、こんな事で稼げる間合いはごく僅かだが、白井の剣を紙一重で見切るほどの達人に対しては効果覿面。
そして、複数の達人の刀が乱舞する場では、皮一枚程の傷による毛一筋の隙ですら、致命傷になり得る。
達人の精緻さ故の脆さを利用し、数の優位を活用する間を与えずに押し切る……それが、白井の払捨剣だ。
こうして二人を「払い捨て」た白井は、最後に、最も反応の鈍い細谷に向かって行った。
この男も相当の使い手ではあろうが、老いを克服できていないのか、或いは病か、動きに微かな破綻が見られる。
そこを突いて戦闘力を削らんと、白井は細谷に必殺の一撃を繰り出す。
相手が間合いを外そうとするのを見越し、延性によって負傷させようという剣だったが、意に反して細谷は前に出た。
「!?」
そして細谷は、白井の剣を受け止めようとすらせず、相討ちを狙うかのような一撃を放つ。
白井が咄嗟に身をかわした事で、この交錯は互いに傷を与えるに留まったが、無理にかわした白井の体勢が崩れ、そこへ……
「老体、動くなよ!」「許さないわよ!」
立ち直った芹沢が正確に細谷の身体をすり抜ける突きを放ち、ヒナギクは超人的な身軽さで細谷の身体を越えて白井に迫る。
次の瞬間、対岸から轟音が響いて彼等の気が逸れなければ、白井は致命傷か、少なくとも重傷を負っていただろう。
この僥倖を逃さず、白井は飛び退くと、身を低くして田の中に走り込み、身を隠しつつ駆け去った。
対岸への警戒や、酔いが醒め切らぬまま激しい動きをした為に細谷が座り込んだ事もあって、芹沢達は追跡を断念する。
(まだまだ甘いか)
白井の払捨剣は、浅めの攻撃を放てば相手は引いてかわすだろうという読みに基づいたもの。
しかし、多数の達人が居れば、その心根も流儀も様々であり、中に細谷のように命を捨てて前に出る者がいてもおかしくない。
その程度の事で破綻するようでは、とても多数の達人に対抗する技とは言えないだろう。
相手がどう動こうと成り立つ、もしくはもっと確実に敵の動きを制御する工夫が必要だ。
(あの死地を乗り切れたのは天佑。必ずやそれを活かさねば)
決意を新たに、白井亨は剣術の更なる進歩の為に、無謀な道行きを再開するのであった。
【へノ伍 水田/一日目/午前】
【白井亨@史実】
【状態】左腕、肩に軽傷
【装備】打刀(鞘なし)、町人の着流し、掻巻
【所持品】「孝」の霊珠
【思考】
基本:甘さを捨て、真の剣客になる
一:自ら、この死合を仕掛けたものの正体を掴む。他者とは馴れ合わない。
二:更に修練と経験を積む。
三:命を落とすまで勝負を諦めない。本当に戦闘不能になれば、自害する。
【備考】※この御前試合を神仏が自分に課した試練だと考えています。
※珠の正体には気付いていませんが、何か神聖な物である事は感じ取っています。
※八犬士の珠は、少なくとも回復、毒消しの奇跡を発現出来ます。
川の東岸にて白井亨と芹沢鴨等の死闘が始まった直後、西岸においても、三人の剣士が剣気を高めつつ向かい合っていた。
睨み合う三人の中心に、互いの姿を隠すように木が立っているが、この程度、彼等にとってはどうという事もない。
「はあっ!」「てやーっ!」
掛け声と共に、五ェ門と厳包の刀が閃き、木が切り倒されると同時に、その樹皮が切り刻まれる。
木を伐り倒したのは、厳包の刀。但し、峰打ちでだ。
鈍刀で鉄をも両断する尾張柳生の豪剣をもってすれば、峰で木を切断するくらいは容易い事なのだろう。
対して、五ェ門の刀は、木の皮のみを細断し、中身には掠り傷一つつけていない。
斬鉄剣という、切れ過ぎるほど切れる剣を相棒としていただけに、五ェ門は「斬らない」技術に非常に長けていた。
そして、幹を切断され樹皮を剥がれた木は轟音と共に地面に転がり……いきなり、その一点が陥没する。
下手人は沖田の木刀。沖田は厳包や五ェ門と同時に、神速の突きを放っており、その効果が数秒送れて現れたのだ。
子供好きな沖田が、血の臭いで子供に嫌われるのを厭い、人を斬っても返り血を浴びぬ為にこんな技を編み出したとか。
「それで、この勝負は誰の勝ちになるんですか?」
そう。木を使ってそれぞれの秘技を披露し、斬り合う事なく技比べをするのが、五ェ門が申し込んだ勝負である。
こうすれば、無駄な争いをせずに、柳生の剣を見る事ができるという訳だ。
見れる技は一つとは言え、秘技ともなれば、中には幾つもの技の要諦が内包されているだろう。
加えて、どのような技を秘技としているかを分析すれば、柳生新陰流の心根を推し量る事も出来る筈。
五ェ門としてはそういう意図で申し込んだ勝負だったのだが、厳包の方は……
「参考になった。勝者などは各自で判定すればよかろう」
そういう厳包の言葉は本心からのもの。
そもそも、この手の技比べの勝敗など、何処に着目するかでどうとでも変わり得る。
例えば、実戦での実用性という点に注目すれば、己の技が最高だと、厳包は考えている。
斬らない技や、斬った効果が遅れて出る技よりは、得物の威力と切れ味を増幅する技が実用的というのは、まあ妥当だろう。
しかし、それ以外の側面……例えば、技の神秘性で比べれば、沖田の技の方が上かもしれない。
どうやれば、突いた数秒後に木が陥没するなどという現象を起こせるのか、実見した厳包にも未だ読みきれていないのだ。
本人は子供に嫌われない為に編み出したなどと簡単に言っていたが、如何に才子でも簡単に身に付けられる技ではあるまい。
厳しい修練と経験の中で、剣というものの本質を自分なりに捉えていたからこそ、あんな事が可能になったのだろう。
そして、技比べという字義の通り、技量そのものを比べれば、五ェ門が一枚上手だと思われる。
厳包や沖田の技と違い、木の中身を傷付けず樹皮だけを切るというのは、ゆっくりとならば凡庸な剣士にも十分可能な技。
だが、神速で剣を振るいながらそれをやるとなると、その精度は驚異的だ。
ここまで思い通りに剣を扱えるようになるまで、五ェ門は一体どれほど多くの物を斬って来たのであろうか。
それらの凄まじい技を見れただけでも、この技比べは厳包にとっても得るものが多い勝負であった。
優れた剣士の技を見れたというのもそうだし、彼等の剣が厳包のものとは異質であったというのも参考にするには良い。
二人の秘技、そしてそれを可能とする技術体系は、厳包が見知っている流派のそれとはかなりの隔たりがあった。
岩本虎眼なる者の剣も異質ではあったが、それは戦国の遺風が残っていると考えれば納得の行く類のもの。
対して、沖田や五ェ門の剣の異質さは、虎眼のそれとは大きく方向を異にする、まるで未来のものの如き剣。
白井の剣にも似たような印象を感じたが、沖田や五ェ門の剣は、更に自分の剣から遠いように思える。
このような様々な流派が世にあるとは、厳包にとっても意外であった。
彼等のような剣士ともっと出会い、見聞を広げる事ができれば、厳包の剣は更に大きく進歩する筈だ。
(もっとも、その前にすべき事をしておかねばならぬが)
白井亨の口を封じる……その為に、厳包はまずはこの東側の川の下流を見てみようと思っていた。
前に会った少年の言葉を信じれば、白井は逆の川を流れた筈だが、藤木は見ていないというし、沖田が見た扇も気になる。
それに第一、西側の川の下流は、城下から、森の立ち入りが禁じられた区域に向かう通り道になっているのだ。
今そこに向かえば、好戦的、或いは柳生に含むところがある剣士に出会う確率が高いだろう。
挑戦されればいつでも受けるつもりでいる厳包だが、出来れば、先にすべき事を済ましてしまいたい。
余計な悩みがない方が、剣士との勝負で得られる物も多いだろうし。
「それでは、拙者も先を急ぐので失礼する」
そう言って踵を返す厳包の背中に、五ェ門が声を掛けた。
「拙者達は昼から、城でこの御前試合を叩き潰そうとする方々と会談する手はずになっている。
宗矩の手下ではない柳生の者ならば歓迎されるであろう。用が済んだら、是非参られよ」
「……承知した。必ず」
厳包としても、宗矩や将軍の企みを叩き潰すのには賛成だし、多くの剣士と会えるのも嬉しい事だ。
力強く約すると、柳生厳包は己の剣の道の障害となる者を排除する為、歩き出すのであった。
【へノ肆 城下町/一日目/午前】
【柳生連也斎@史実】
【状態】胸部に重傷
【装備】打刀@史実
【所持品】支給品一式、「仁」の霊珠(ただし、文字は「如」に戻っています)
【思考】
基本:主催者を確かめ、その非道を糾弾する。
一:白井亨を見つけ出し、口を封じる。
二:城に行ってみる。
三:戦意のない者は襲わないが、戦意のある者は倒す。
四:江戸柳生は積極的に倒しに行く。
【備考】※この御前試合を乱心した将軍(徳川家光)の仕業だと考えています。
「ちっ、せっかくの上物をこんな事に使う破目になるとはな」
愚痴りつつ、芹沢は酒蔵から拝借してきた酒を口に含み、細谷の肩に吹き付ける。
白井が逃げ去った後、芹沢の傷とヒナギクの服の処置はすぐに終わったが、細谷の傷の治療には時間が掛かっていた。
重傷という訳ではないが、きちんと手当てしておかないと、後で支障が出るかもしれない。
「ごめんなさい。私達が不甲斐ないせいでこんな事に……」
「何の、これでも儂は腕利きの用心棒じゃ。この程度、何ともないわ」
「けっ」
細谷の大口に苛立つ芹沢だが、先程の失態を鑑みれば、反論もしにくい。
「腕利きだってんなら、次は無傷で乗り切れるよう工夫しやがれってんだ」
そう低声で呟くと、芹沢は細谷の手当てを続けるのだった。
【へノ伍 川沿い/一日目/午前】
【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康
【装備】:近藤の贋虎徹、丈の足りない着流し
【所持品】:支給品一式 、酒
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:機会を見付けて桂ヒナギクに新見の事を吐かせる。
二:昼になったら沖田たちと城へ向かい、
足利義輝に会う。どうするかその後決める。
三:沖田、五ェ門を少し警戒。
四:会った時の態度次第だが、目ぼしい得物が手に入った後、虎徹は近藤に返す。土方は警戒。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
【状態】健康
【装備】無限刃@るろうに剣心
【所持品】支給品一式
【思考】基本:殺し合いに否定的な人を集めて脱出。
一:
新見錦が主催者に捕えられているのなら救出する。
二:足利義輝たちと合流する。
三:芹沢鴨や沖田総司が馬鹿な事をしないよう見張る。
四:
柳生十兵衛を探して、柳生宗矩の事を聞きたい
五:自分の得物である木刀正宗を探す。
※自分たちが何らかの力で、様々な時代から連れてこられたことを推測しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っていますが、もしかして…。
【細谷源太夫@用心棒日月抄】
【状態】肩に軽傷
【装備】打刀
【所持品】支給品一式×3
【思考】
基本:勇敢に戦って死ぬ。
一:ほノ伍を調査し、主催者の手の者を待ち伏せる。
二:五ェ門に借りを返す。
【備考】
※参戦時期は凶刃開始直前です。
※桂ヒナギクに、自分達が異なる時代から集められたらしい事を聞きました。ちゃんと理解できたかは不明です。
「まだ時間がかかりそうですね」
沖田があからさまに溜め息をつく。
厳包との技比べを終えて川岸に戻った沖田と五ェ門は、細谷の負傷を聞かされ、手当ての間、待つよう命じられたのだ。
「こんな事なら、柳生さんとの勝負をあんなに急ぐ必要なかったんじゃないですか?」
「柳生殿も急ぎの用があるというのだから仕方あるまい。勝負の機会は後で幾らでもあろう」
「ちゃんと城に来てくれますかね、柳生さん」
「きっと」
そこに関しては、五ェ門には自信があった。
あのような形の勝負を申し込んだのは、柳生の技を見る目的もあったが、それ以上に厳包の心を見定める為。
厳包の本気の剣閃を観察する事で、五ェ門は彼の心が少しは理解できたと思っている。
彼の剣には、恐れや不健康な悦びは見られず、何よりも強く感じられたのは、気高い誇り。
故に、厳包は無体に剣を振るったりはせず、一度口にした己の言葉を違える事はまずあるまいと、五ェ門は考えていた。
「それならいいんですけどね……」
沖田はそう口ではそう言いつつ、やはり根に持ってるのか、恨めしげに五ェ門を見ながら続ける。
「じゃあ、あちらを待つ間、何をして暇を潰します?ああ、石川さんの本当の素性、なんて面白いかもしれませんね」
「む……」
この時には、五ェ門も既に己の失策を悟っていた。
「尾張柳生」「江戸柳生」やその関係、厳包が尾張柳生であり、二階笠の男が江戸柳生の宗矩と推定される事。
いずれも、豊太閤の時代に刑死した初代石川五右衛門が持っている筈もない知識だ。
五ェ門本人がそう名乗ったのではなく、芹沢達が勝手に誤解したのだが、騙したと言われても仕方ないかもしれない。
咄嗟に返事が出来ずにいる五ェ門を見て、沖田は急に機嫌を直し、笑みを浮かべて言う。
「まあ、石川さんには面白い技を見せてもらいましたから、名前なんてどうでも良いんですけどね。
機会があったらまた技比べをしましょうか。今度は、もう少しはっきりと勝負がつくやり方で」
どうやら、沖田は五ェ門の素性を深く追求しないでいてくれるようだが、それは善意からではなさそうだ。
むしろ、「何か企んでるなら面白そうだから泳がせておこう」的な、妙な期待をされているような……
五ェ門も溜め息を付くと、所在なさげに対岸の細谷の応急処置を見守るのだった。
【へノ肆 川沿い/一日目/午前】
【沖田総司@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】木刀
【所持品】支給品一式(人別帖なし)
【思考】基本:過去や現在や未来の剣豪たちとの戦いを楽しむ
一:芹沢を正午に城に行かせて義輝と会わせる。一応、罠がないか事前に調べる。
二:芹沢、ヒナギク、五ェ門と全力で勝負する状況をつくりたい。
【備考】
※参戦時期は
伊東甲子太郎加入後から死ぬ前のどこかです
※桂ヒナギクの言葉を概ね信用し、必ずしも死者が蘇ったわけではないことを理解しました。
※石川五ェ門が石川五右衛門とは別人だと知りましたが、特に追求するつもりはありません。
【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】打刀(刃こぼれして殆ど切れません)
【所持品】支給品一式 母屋に置いてあります。
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:桂ヒナギクを守る。
二:斬鉄剣を取り戻す。
三:芹沢・沖田を若干警戒
四:ご先祖様と勘違いされるとは…まあ致し方ないか。
【備考】
※ヒナギクの推測を信用し、主催者は人智を越えた力を持つ、何者かと予想しました。
※石川五右衛門と勘違いされていますが、今のところ特に誤解を解く気はありません。
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最終更新:2023年09月10日 11:16