響三日目(水曜日)

三日目(水曜日)

その日、やはり扉の前に人影がひとつ。更に足元には小さい影が二つ。
「やっぱり…開かないねえ…。」(きゃー…)(きゃー…)
響と白黒だった。

昨日白黒と訪れたが扉を開くことはできず、今日もそれは変わっていない。
「まだ怒ってるのかなあ。」
開けられない、つまりそれは進入を拒否されているのであり、ならばそういうことなのだろう。呟く響の眉はハの字になっている。
(みかづきーっ)(みかづきーっ)
白黒も扉をぺちぺちと叩くが、その音が建物に聞こえるほど大きいはずもなく、何も変化は訪れない。
(かいー)(かいー…)
最近できた友人の名も声なく呼ぶ姿は寂しげだ。
「二人は三日月さんと喧嘩はしてないんだから、多分入っても怒られないよ?零影に開けて貰う?」
入ろうとするなら手段はいくらでもあるのだ。零影でも神殿の幻獣でも集会所の面子でも開けてくれる存在は多々いるだろうし、そもそも神殿の扉は施錠されてはいない。響が三日月の意思を聞かずにいれば自分で開けられる。
しかし今回の場合その主の意思が大事なのだ。響はだからこうして神殿の中に声をかけることもせず様子を見ている。
だがそれは響の都合であって白黒のではない。昨日は付き合って貰ったが今日明日明後日と毎日付き合わせるのは本意ではない。
(んー)(んー)
しばらく白黒は扉と響を見比べ考えたが、やがて響の頭と肩によじのぼった。
「いっしょにまってー」「いっしょにあそぶの!」「きゃー」「きゃー」
「そっかあ。ありがとうー」
礼を言ってまだ柔らかい葉を撫でると、泉と墨は嬉しげに手足をぱたぱたさせた。

こうしてまた一晩が過ぎる。


神殿の外からは見えぬ窓の中、恢がそんな響と白黒を見ていたが、三人は気付かなかった。



最終更新:2010年07月04日 16:38