多種が交じり合う悲劇の集落にて

その獣は異端であった。
己等の脆弱さを弁え、他者に縋り庇護を受けることを至上とした。



 その獣等は貧弱で脆弱であった。
知能は低く、力も無きに等しく、存在も希薄。
故に他の獣に庇護されるよう画策し、全てを騙し曲げ、能書きを綴り続けた。

守られ教えられ鍛えられ植えつけられ、次第に育った獣は庇護を受けていた獣等を食い殺した。
己等の脆弱さ貧弱さを忘れ、何よりも強くなったと慢心した獣等はふと思う。
我等はいったい何であったか?
我等は他者であり、他者は我等。
では、私はナンだ?

疑問すらも他者に委ねていた獣等は、強大になろうとも変わることはできなかったのだ。
即ち、その獣等は脆弱であるからこそ異端であり。
獣等が獣等である限り、脆弱で貧弱で在り続ける。

獣等は忘れてしまったのだ、己等が異端である証を。
故にその身は贄とされ、獣等は思い出す。
自分達の脆弱さを。

そして獣等は己を失った。
最終更新:2011年01月24日 20:21