その獣等は異端であった。
温もりを嫌い、喪失と崩壊を拒み続けた。
凍てついた草原は緑に溢れ、冷たい光を白々と照り返す。
青い空は氷りつき、陽の動きどころか風の流れすら感じられない。
全てが凍てついた一帯で、唯一停滞と言う名の死を感じさせない獣が一つ。
銀糸の毛皮は青く白々と。
剥き出す牙は穏やかな笑みを湛え、憎しみに啼いていた。
その長い足元には一人の老女。
獣が異端である故に、共に世界より弾かれた哀れな愛すべき女。
獣に付き従い、愛し合ったそれはもはや動かず。
獣が停めた肌に温もりは無い。
何よりも嫌悪した温もりの恋しさに獣は笑い嗤う。
そして望み続けた希望の先に絶望を見つけた。
獣は世界を憎み続けるだろう。
その憎悪は血に深く刻まれた。
最終更新:2011年01月24日 20:22