とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第5章 ゲームセンターでの攻防、真実と嘘


12/24 PM9:36 薄曇り


 その後どうにか手を離した二人は、ベンチに座りだらだらとしていた。
 しかしどうにもさっきの一連のことが頭をちらついてしまい、二人の会話も妙にぎこちない。
 ついにその空気に耐えられなくなった美琴が立ち上がり「ゲームで勝負よん」と上条に不敵な笑みを投げかけた。
 同じく空気に耐えられなかった上条もそれに乗ることにする。


―――レースゲーム

 ゲームセンター慣れしてる美琴に上条が勝てるわけもなく、僅差であったが美琴の勝利。
 これで美琴はかなり元気になる。
 ちなみに僅差であったのは一生懸命運転する上条の方をチラチラ見ていたせいだ。

美琴(写真、撮っておきたいわね……)

 というところまで考えて、思考パターンが黒子っぽいことに気づき一人で絶句。


―――コインゲーム

 ビデオポーカー、不正行為無しなのに美琴が一発目にロイヤルストレートフラッシュを出す。美琴の勝利。
 スロット、不正行為無しなのに美琴が一発目に大当たりを出す。美琴の勝利。
 その他諸々、同様。
 いつも通り上条は不幸である。
 さすがに美琴は上条が不憫になり、少しだけ慰める。
 とはいっても上条の方はいつものことなのでさほど気にしていない。むしろそういう風に気を使われることが嫌なようだった。
 ちなみにコインは数枚だけ抜き取り、他は専用機で電子カードに蓄えた。

上条「お前……まさかそれは一体何に使うものなんでせうか」
美琴「レールガン用」

 その中の何枚かが自分に向けられることになるのだろうか、と考え上条は憂鬱になる。

美琴「アンタと一緒にいると何も当たらないって訳でもないのね」
上条「まーな。運絡みのゲームで知り合いと対戦すると、俺以外が大勝ちして嫌な空気になるんだよ。対戦じゃないと何も
    当たらなくて嫌な空気になるんだけどな。あ、でも俺と対戦すれば大勝ちするからっつって俺を連れてきた奴は
    大負けしてたな。結局嫌な空気になるってわけだ。ははははは……………はぁ」
美琴「………じゃぁ、それに対抗できるのは、アンタと居るだけで楽しいって人くらいってことか」
上条「んー?あー、確かにそうかぁ。結局俺とゲーセン来る奴って、単に話してるだけで面白いような輩だけだな」
美琴「………………」
上条「御坂センセー的には今の楽しさ評価はいかほどで?」
美琴「………………し、知らないわよそんなの自分で考えろ!」

 頭をグリッと無理矢理回してそっぽを向く。

上条(はぁ…………やっぱ俺ってまだ嫌われてんのか?まさか生理的に受け付けないとか??全く分かんねえ)

―――格闘ゲーム

 美琴が得意なゲームでは美琴が速攻で勝利。
 上条が得意なゲームでは上条が姑息なハメ技で辛勝。
 結果一勝一敗。
 先程のことがあるので美琴はハメ技について責めることができず、若干イライラする。
 しかも上条の使用したのが巨乳キャラだったのでさらにイライラする。

美琴(はぁ…………やっぱこいつってこういう属性好きなのかしら)


―――音感ゲームその1:ボタンを叩くオーソドックスなタイプ

 そもそも勝負にすらならず、美琴が上条に教えることになった。
 要領が掴めない上条にイライラし、ついには上条の手首を持ってバタバタ動かし始める。

上条「だーもう分っかんねー!!つか、音楽経験者に勝てる気がしねえよ」
美琴「難易度上がるとそんなの関係無くなるわよ。ただの反射ゲームみたいなもんじゃんこんなの」
上条「反射神経には自信あるんだけどなぁ」
美琴「うーん……あ、命が掛かってないからじゃない?」
上条「……………………納得しかけた自分を殴りたい」


―――音感ゲームその2:ジェスチャーを読み取るダンスタイプ

 途中までは美琴が圧勝していたが、途中から上条が巻き返し勝利。
 理由はレースゲームの時同様、美琴が上条の方をチラチラみていたせいだ。
 その後上条に無理矢理一人でやらせてみる。
 最初は爆笑しながら上条が踊るのを見ていたが、やがて静かになり、最後にはぽーっと見蕩れてしまっていた。

美琴「ま、まぁ初めてにしては上出来じゃない」
上条「ホントか?何でだろうな、もしかして才能あるのか俺」
美琴「うーん……あ、体を自由自在に動かせないと命が幾つあっても足りないからじゃない?」
上条「……………………さっきも思ったが、テメェがそれを言うな」

 ちなみに上条がプレイ中美琴はこっそり携帯でそれを撮りまくった。
 しかしゲームセンター自体それほど明るくないため、全て思い切りブレていた。

美琴(………デジカメ買おうかしら)

 頭の中で何かと何かが葛藤を始める。


―――エアーホッケー

 好勝負だったが、上条の勝利。

上条「やっと真っ当に勝負して真っ当に勝った気がする。伊達にお前の電撃を何度も防いでねえよ」
美琴「考えてみたら恐ろしい反応速度よね。もう意識を介さないで脊髄反射してるんじゃないの?」
上条「そうかもしんねえけど、全然素直に喜べないのは何故なんだろう」

 その他最新すぎてよく分からないゲームなど数種で対戦した。
 さすがの二人も徐々に疲れてきたので、徐々に対戦という名目からずれていく。


―――おみくじ勝負

上条「最新技術を使った超高精度おみくじシステム………って、色んな方面に喧嘩売ってねえかこれ。何がどう最新で技術なんだよ」
美琴「アンタってやっぱこういうのはやらないわけ?」
上条「やらねえな。例え引いて大吉が出たところで何かが変わるわけでもないし」
美琴「気分ってのもあるんじゃないの?それに色々細かいとこまで書いてるのとかあるじゃん?」
上条「そう言うお前は信じてんのか?」
美琴「んー、科学技術の結晶たる私が信じるってのも変でしょ」
上条「まーな。って、じゃぁ俺にくれたお守りは何なんだよ」
美琴「だから気分よ。あ、でも、私一回大凶ってのを見てみたいのよね。ねえねえ引いてみてよ」
上条「…………………お前さらっと酷い事言ってません?」
美琴「信じてないんなら良いでしょ。ほらさっさと引く」
上条「………ったく、はいはい」

 上条は仕方なしに神社の形をした小さめの機械に20円を投入する。
 ややあって、何のギミックも無しにポロッと巻物状の小さい紙が神社の扉から出てくる。
 上条はそれを取ると中を開いた。

上条「あれ?」
美琴「なになに?」

 美琴は上条の手元を覗き込む。

美琴「何これ、真っ白?」
上条「あーはいはい、バグだろ。20円飲み込まれて終わり。一番萎える展開だよなぁ」

 上条は天に『お前の運勢なんか知らねえよ』と言われたように感じて少し悲しくなる。

上条「試しにお前も引いてみれば?」

 美琴は言われたとおり引いてみる。
 中を見ると中吉と書かれて、詳細が読みやすいように現代語で書かれている。

上条「何だこりゃ、分かりやすい代わりにありがたみゼロだな。占いっつうより予報」

 美琴は真っ先に恋愛運のところを見た。

 恋愛運………○ 7日以内に変化がある可能性が高く、32%です。その時できるだけ勇気を持って行動しましょう。
         良い方向に進む確率が12%上昇すると思われます。今年全体の恋愛運については、不確定要素が強く
         判断が付きません。ただし、待つより積極的に行動した方が相対的に9%良い結果が得られると思われます。

美琴(積極的とか勇気とか、できるならやってるっつうの)
美琴「アンタももう一回引いてみれば?」
上条「いや、多分またバグる気がするからいいよ」
美琴「んじゃ私が引いてあげるわよ」
上条「それ、おみくじ的に良いのか?」

 美琴は再び引いて、それを上条に渡す。
 今度はきちんと書いていて、大吉であった。

美琴「あれ、意外」
上条「いやそうでもないみたいだぞ。詳細のところがボロクソ。何でこれで大吉なんだよ」

 詳細にある基本運、金運、仕事運などがあらかた×になっている。唯一恋愛運が◎になっているだけだった。
 自然とそこに目が行く。

 恋愛運………◎ 7日以内に変化がある可能性は不明。その時どうなるかは不明。良い方向に進むか、悪い方向に進むかは不明。
         今年全体の恋愛運については、不確定要素が強く判断が付きません。ただし、今一番近くにいる知り合いの
         女性を大切にすること。

美琴「何て書いてあるの?」

 美琴が再び覗き込もうとしてきたので、上条は慌ててそれをクシャクシャにし、ポケットにしまってしまった。

美琴「ちょっ!見せてくれたって良いじゃない!」
上条「………………くっだらねえことばっか書いてたから見なくていい」

 慌てたのを気取られないようにだるそうに言った。

―――景品GET勝負

上条「もはや勝負でも何でもなくないかそれ」
美琴「まあそうなんだけどね。ものは試しにと思って」

 美琴はとあるゲーム機の中にある猫のキーホルダーを取ろうとした。
 そのゲーム機はボタンを押すと回転している矢印が止まり、矢印が差す部分の点数が加算され、それが5点溜まると景品が
貰えるというシステムであった。
 美琴は100円を投入し、チラッと上条の方を見る。

美琴「アンタ、これが取れたら一緒に喜んでくれる?」
上条「へ?まあ、うん。何だ藪から棒に」

 それを確認すると美琴は上条の方を向いたままボタンを押す。
 結果、矢印はマイナス5を差しハズレ。
 もう一度100円を投入する。

美琴「もし次に当たったら、アンタに美人のお姉さん紹介してあげる」
上条「はい??」

 ボタンを押す。はずれ。100円を投入。

美琴「もし次に当たったら、アンタに何でも好きな物買ってあげる」
上条「あー」

 ボタンを押す。はずれ。100円を投入。

美琴「まぁ予想通りね。次に当たったら、アンタを思い切り殴るわ」
上条「そう言うことか」

 ボタンを押す。はずれ。

美琴「あ、あれ?…………何だ、アンタの不幸もこんなもんか」
上条「本気じゃないからじゃねえの?前に同じ事やった奴が居たんだけど、その時は当たったぞ。しかもその後その馬鹿は
    本当で殴ってきやがった。返り討ちにしたけどな」
美琴「………………………」

 無言で100円を投入。

美琴「もし次に当たったら……うーん……今日はもう帰りましょう」
上条「………」

 ボタンを押…………せない。

美琴「ちょっとたんま!今の無し!」
上条「一人で何やってんだ」

 どうやら美琴的にはまだ帰りたくないらしい。

美琴「もし次に当たったら………………えーと、あ、アンタに抱き付く」
上条「へ?」

 ボタンを押す。大当たり。
 テッテレーと軽快な音楽と共に景品が落ちてきた。美琴はそれを拾いあげる。

美琴「ふーーーん」
上条「ちょっと待て何で俺を睨む!こんなのただのランダムだろ!!っつか、どうせ本気じゃねえんだろそれも!?」
美琴「ええそーよ。本気じゃないわよ。………ま、いいけどねー。別に私は!」
上条「何怒ってんだよ。抱き付きたいのか?」
美琴「ち、違うわよ!!そうしたらアンタは不幸なんでしょ!!」
上条「だからんなことねえって!」
美琴「それじゃ幸せなわけ?」
上条「え?……………………………………さ、さあ。ドウデショウ」
上条(マズイ、またこの流れか)
美琴「………………………………」
??「みーさっかちゃん!」

 後ろから肩を叩かれて、美琴は振り向く。

美琴「え?ああ、店長じゃん、久しぶり」

 店長と呼ばれたその女性は20代後半に見えた。
 セミロングの黒髪は後ろに束ねていて、何故かこの場に似つかわしくない白衣をまとっている。
 ほんわかした優しそうな雰囲気なのに、眼鏡の奥に光る瞳だけは妙に鋭い印象があった。

店長「店長じゃなくて管理責任者だっての。まぁ実質的には店長だけど。御坂ちゃんは今日デート?」
美琴「ふぇっ!?あの、ち、違います!全然、違います!!」
店長「あら、そんな思いっきり否定しなくても良いじゃないの。彼氏もそんなこと言われたら悲しいわよねぇ」

 唐突に話を振られて二人の会話をぼーっと見ていた上条が焦る。

上条「えっ!?お、俺は、彼氏とかそんなんじゃなくて……なんつーか……今日は頼まれ事されただけでしてはい」
美琴「そ、そうそう」
店長「ゲーセンで頼み事?」
美琴「別の場所でそれはもう済んでしまって、ゲーセンはそのついでに…………」
店長「なら今はデートでしょう?」
上条「…………………」
美琴「…………………」

 言い返せないで二人は黙ってしまう。
 確かにこれまでの流れは誰がどう見たってデート以外の何物でもないだろう。

店長「あ、ごめんごめん。そんなつもりじゃなかったの。ちょっと御坂ちゃんに新作機種をやって欲しくて声を掛けたんだけど」
美琴「えーまたぁ?」

 実験的なゲームセンターであるため、必ずしも全てが面白いというわけでもなく、人気にかなりばらつきが出る。
 そうなると不人気機種は必要なデータが取れず、研究としてはかなり問題となるのだ。
 そのため、店長や店員が美琴にテストプレイをお願いすることは過去にも数回あった。

美琴(大抵面白くなかったり、意味不明だったり、危なかったりするから遠慮したいんだけど)
店長「そうなの。皆やるのを躊躇っちゃって。でもゲーセンマスターの御坂ちゃんならきっとできるって思って。丁度二人用だしさ、
    もう御坂ちゃんしか頼れないのよー」

 店長は手を合わせて拝むようにお願いする。
 上条と美琴は二人で顔を見合わせたが、お互い気まずくてすぐに顔を戻した。

上条「そもそも俺、そんなゲーム強くないっすよ?」
店長「あ、そう言う系じゃないのよ。難しくもなんともないわ。何て言うかお願いできるような二人組ってのが中々居ないの。
    もうすぐ閉店だし、今月中に何とかあと数件はデータ取らないと学会まで間に合わないって上司から言われるし………
    あ、タダとは言わないわ。最上階の展望台の入場券二人分あげるからさ!ほんとお願い!!」

 やや涙目になりつつお願いされ、そこまで断る理由も無い二人は仕方なく了承した。
 店長は喜んで二人を案内する。
 その先には飾り気のない白黒模様の小さな部屋があった。入り口は暗幕のようなものが床まで垂れていて中の様子は見えない。
 それをくぐって中に入ると、3人くらいは余裕では入れそうな薄暗い空間に、一つの台、二つの椅子、二つのヘッドセットの
ような物があった。台には幾つかのボタンがついている。
 また、壁には何やら土色をした大きな顔のモニュメントが飾られていて、その両脇にディスプレイが掛けられている。

美琴(ん?何だっけこれ、どっかで見たことある気が………)

 ヘッドセットのようなものは頭の部分で脳波を測定するらしく、店長が二人の頭に載せてくれた。
 上条の頭に載せる際に、屈んだ店長の胸が思い切り見えてしまい、上条は思わずそれに釘付けになる。

上条(で、でかい……)

 数秒固まった後、ハッと我に返り他の方向を向いてやり過ごした。
 その動きを終始見ていた美琴は若干不機嫌になる。

店長「それじゃ、後はお願いね」

 そう言うと壁のコイン投入口に100円玉を一枚入れて簡単に入力をし、そのまま出て行こうとした。

美琴「って、これって何のゲームなのよ?」
店長「あれ、言わなかったっけ?まぁすぐに分かるわ」

 そう言って出て行ってしまう。
 次の瞬間、壁の大きな顔から「ハッハッハ」という老人のような声が鳴り出し、目が光った。

美琴「あ、思い出した!」
上条「?」
美琴「これ、真実の口じゃん」
上条「あー、ほんとだ」

 その顔のモニュメントは、ローマにある『真実の口』の形をしていた。

真実「わしは真実の口、最新型嘘発見器じゃ。君たちの嘘は全て見抜くぞ。今からは全て真実のみ話すのじゃ!!」
上条「…………………」
美琴「…………………」

 まずい!と二人は心の中で同時に叫んだ。


―――嘘発見器勝負

 真実の口が話した内容は次の通りであった。
 このゲームは、最新型の嘘発見器を利用した対戦ゲームであり、各々7個の質問に答えなければならない。
 その答えはヘッドセットのマイク部分から嘘発見器に入力され、真実度を測定される。
 最も真実であることを言った場合プラス100ポイント、最も嘘であることを言った場合マイナス100ポイントが加算
され、その合計得点を争う。
 マイナス40点からプラス40点はグレーと判断され、どちらでもないか、或いは真実も嘘も言っていないだけと判断される。
 質問は相手からするか、真実の口がするかを選択できる。
 質問する場合はボタンを押してから言う。
 持ち時間は質問するまでが60秒、ボタンを押してからが20秒、回答時間が30秒である。
 回答時間が0になったり、0ポイントを2回以上出したりすると、ペナルティーとして脳波から得られた現在の感情、真実を
言おうとしているか嘘を言おうとしているか、相手に隠していること、などなど知られたくないことを洗いざらい真実の口が
喋ってしまうので、なるべく無いようにとのこと(しかもこれは精度が悪いため間違ったことも結構言うらしい)

真実「さて君たち、準備は良いかな?」
上条「良くねえよ!!出ようぜ御坂……御坂?」
美琴「えっ、え、何?」

 美琴はボーッと何かを考えていたようだった。

上条「何だ、また具合でも悪いのか?出ようっつったんだけど」
美琴「うーん。でも頼まれちゃったし、仕方がないんじゃないっかなー」

 やや引きつった笑みを浮かべて返答する。

真実「それでは次は御坂さんの質問だ」

 真ん中にある真実の口に質問させる用のボタンと、美琴の側にあるボタンが点滅しだした。
 しかし上条はそれをチラッと見るだけで無視し、美琴の表情だけよく観察する。

上条「………………………………………」

 ガシッ!と唐突に上条は右手で美琴の左手首を掴んだ。

美琴「ちょっ!何してんのよ。離っ、離せこの馬鹿!!」

 掴まれた左手首をブンブン振り回すが、上条は離さない。

上条「御坂、お前さっき言ってたよな。ずるなんて簡単にできるって」
美琴「うっ………さ、さあ、言ったっけ?」
上条「……………まぁどっちでもいいけど、やるならどうでも良い質問でお茶を濁そうぜ。な?ここはお互い協力し合うところ
    ですよゲーセンマスター!」
美琴「その呼び方恥ずかしいからやめて。…………んー、ま、まぁそうね。わかったわ。適当に終わらせましょ。だから、とりあえず
    手を離してもらえる?」
上条「それは断る」
美琴「……………」

 幻想殺しで触られていたらチート行為は出来ない。
 それにこの状態で普通に質問をするのはさすがに無謀と思われた。
 もし仮に上条が「俺のこと好きか?」なんて聞いてきたら色んな意味でやばすぎる。

美琴(ちぇー。せっかく色々聞き出そうと思ったのに)

 美琴はボタンを押す。

美琴「うーんと、アンタはカレーライスって食べる方?」

 若干つまらなさそうにどうでも良いことを尋ねる。

上条「お、良い質問ですな。カレーか、普通に好きだぞ」
美琴「ッ!?」
真実「真実~!!!プラス100ポイント」

 かなり適当に質問したため、あまり想定していなかった上条の台詞を聞いて背筋にゾクゾクと電気が走るのを感じた。

美琴(ず、ずっとこのパターンで行こうかしら)
上条「次は俺か……うーん、ま、何でも良いか。お前ってもしかして苺味が好きなのか?」
美琴「ストロベリー?うん。す………………う、うん」
真実「真実~!!!プラス98ポイント」
美琴(やっぱ駄目!こいつの顔まっすぐ見ながら好きとか言えるわけないじゃないのよ!!)

 恐らく美琴が同じような質問ばかりすれば、上条の方も同じような質問をするだろう。
 仕方ないので質問の流れを変えるべくあれこれ考える。

美琴「あ、そう言えば質問内容のおまかせも出来るのよね。やってみない?」
上条「うーん。何か嫌な予感がしないでもないけど、まぁいいんじゃねーの?」

 美琴は真ん中にあったボタンを押してみる。

真実「ハッハッハ。ではわしから質問しよう」

 壁にあるやや気味が悪い老人の顔が口も動かさずに喋り出す。

真実「君たちは今日、楽しんでるかね?では上条さん答えてくれたまえ」
上条「えっと、色々トラブルばっかではあるけど………まぁ楽しいかな」

 チラッと一瞬だけ美琴の方を見て答える。

真実「真実~!!!プラス92ポイント……では御坂さん答えてくれたまえ」
美琴「私も大体同じ、そこそこは………楽しい、かも」

 美琴はそっぽを向きつつ答える。

真実「真実~!!!プラス75ポイント」

 この質問内容に二人は色んな意味で安堵する。

上条「何だ何だ、こいつにやらせた方がいいんじゃねえか」

 上条は気軽に真ん中のボタンを押した。

真実「ハッハッハ。ではわしから質問しよう。君たちはお互い、異性として好みのタイプかね?では上条さん答えてくれたまえ」
上条「……………………………」
美琴「……………………………」

 恐れていた事が起きてしまった、と二人仲良く固まる。

上条(ちょ、ちょっと待て、気まずい。恋人同士でもない男女のにそういう質問はタブーではないでせうか)

 上条は美琴に『弱っちまったな』といった風の視線を投げかけてみる。
 しかし美琴はそれに気付かないようで、上条の方をチラチラ見たり、興味なさそうにそっぽを向いてみたりと、かなり
忙しそうにしていた。

上条(えーと……………どう答えれば良いんだ?)

 ここでYESと答えて、嘘と判定されると美琴は怒るだろう。
 逆にNOと答えて、嘘と判定されるのは正直かっこ悪すぎる。
 結局正直に答えるしかないのだが……

上条(御坂がタイプかどうかなんてわかんねえよ。っつうかそう言う対象じゃねえだろ、ねえってことでお願いしますよ。あー
    まずい、意識すると変な気分になりそう。まずい)

 仕方ないので考えるのをやめてその胸中を正直に答えてみる。

上条「えっと、分かりませんです」
真実「嘘ー!!!マイナス45ポイント……では御坂さん答えてくれたまえ」
上条「えっ、アレ??」

 上条は混乱して慌てる。機械がバグったんじゃないだろうか。
 これおかしいぞ!と訴えるように美琴の方を見ると、美琴は汚い大人を見るかのような目で上条を見ていた。

上条「あ、やめ、やめて下さい。そんな軽蔑した目で見ないで。心が痛い」
美琴「アンタってそう言う奴なんだ。ふーん。まぁアンタの好みはあの店長みたいなのなんでしょ」
上条「へ?い、いやちげーよ!」
美琴「はいはい私はどうせガキでお子様でゲコ太好きよ。悪かったわね。あ、私も『分からない』わ。ていうかアンタがタイプ
    かどうかなんて正直どうでも良いっての」
真実「嘘ー!!!マイナス100ポイント」
美琴「……………………………………」
上条「……………………………………」

 美琴の顔が徐々に赤くなり、顔を思い切り横へ逸らす。
 しかし上条は上条でそれどころではなく、心の中で(え、どっち?どっち??)と苦悩し始めた。
 長い沈黙。

真実「残り20秒」
美琴「えっ!?えーっと」

 美琴はとりあえず自分の側のボタンを押す。おまかせ質問は危なすぎる。

美琴「そ、そーうそう。アンタがくれたあのぬいぐるみ。あれ作るのを手伝ってくれたのは隣の男の人だったわよね。何て人?
    もし出来たらお礼言いたいし」
上条「……………………………」

 上条はいきなり意識を現実に戻され、休む間もなく窮地に立たされる。顔からタラタラと汗が流れてきた。
 目線をギギギギと美琴から外し、心の防御姿勢をとる。

上条「…………………お前の知り合い。土御門舞夏」
真実「真実~!!!プラス100ポイント」
美琴「…………………ほほう」

 上条が恐る恐る美琴の方をチラッと見ると、あからさまに目が座っていた。かなり怖い。
 右手を離して物理的防御態勢を取りたい衝動に駆られるが、離したら離したで色々やばそうなのでどうにかギリギリ耐える。

美琴「アンタ、男って言ったわよねぇ」
上条「……………」

 『厳密には言ってません~』なんて茶化すような雰囲気ではない。

美琴「ていうかそもそも何で土御門がアンタの隣に住んでるのよ…………まさか!アンタあの子にも手を」
上条「ち、違う違う多分何か盛大に誤解してるぞお前!アイツの兄貴が隣に住んでるだけだ。おかずのお裾分けに来た時に、
    作りかけのぬいぐるみを見てもらって、出来があんまりだったからコツを教えてもらったんだよ!」

 そう言えば上条との会話で土御門という単語は何回か出てきたな、と美琴は思い出す。
 しかし重要なのはそこではない。

美琴「で、何でさっき本当のことを言わかなったわけ?」
上条「それは…………」

 何故だろうか。自分でも首をかしげる。
 別に恋人同士でもないのだから、クリスマスプレゼントの作成を女の子に手伝ってもらうくらいどうってこと無いはずだ。美琴が
そこで怒る理由も無いし、きっと今怒っているのも本当のことを言わなかったからだろう。
 それでも自分は言い訳じみた態度を取ったのだ。

上条「なんて言うか、悪かったな。嘘付いて」

 分からないことだらけだったが、分かる部分については謝っておく。

美琴「はぁ。アンタ、結局何も分かってないわけね」

 しかし美琴はお気に召さないようだった。
 上条は更に混乱して、苛立ちをあらわにする。

上条「だから正直に言わなかったのは謝るって」
美琴「…………………」
上条「んで、何でまだ怒ってるんだよ」
美琴「誰が怒ってるってのよ」
上条「お前」
美琴「怒ってないわよ」

 上条はボタンを押す。

上条「怒ってるだろ」
美琴「うっさい、怒ってないっつってんの!!」
真実「嘘ー!!!マイナス92ポイント」
美琴「ッ!?」
上条「…………………………」
美琴「アンタが馬鹿なことになら怒ってる」
上条「はあ?」

 美琴がボタンを押す。

美琴「アンタさ……………た、例えば、私が……もし、誰か知らない男と………町で遊んでたら、どう思うわけ?」
上条「何だそれ?」

 そういえば美琴が他の男性と居る状況に出くわしたことはほとんど無いな、と上条は回想する。

上条(常盤台のお嬢様なら当たり前か)

 試しに想像してみる。
 美琴の隣に男性が居て、二人は笑いあっている。

上条(美琴の電撃ツッコミを防げる奴なんか居るのか?………って、あんなことするのは俺にだけか)

 二人でショッピングしたり、喫茶店でおしゃべりしたり、ゲームセンターで遊んだり、映画を見たり、カラオケしたり……

上条(………やめた)

 そこら辺で考えるのをブツリと止めてしまう。
 一瞬、胸の底から何やらドス黒いものが顔を覗かせた気がする。それが少し怖かった。
 しかし上条にはそれが一体何なのか分からない。
 とは言っても初めて体験する感情なんてよくあることだからさして気にすることでもない。上条は記憶喪失なのだ。
 そうだ。考えてみれば美琴が訳が分からないのは毎度のことである。
 ならいつも通り、軽口で適当に答えれば良い。

上条「別に何とも思わねえよ。あーでも、そいつの身の安全が心の底から心配ですなー」
真実「真実~!!!プラス42ポイント」
美琴「…………………へぇ。そっか」


 目線を下に落し、俯き気味に答える。
 ある程度予測はしていたものの、その返答と結果は美琴の気持ちを重く沈めていった。

美琴(……………そうよね)

 口の中で自嘲気味に笑う。
 いつもは自分から逃げてばかり居る上条だって、今日は楽しいと言ってくれた。
 そりゃぁそうだ。上条が嫌がると思ってビリビリを封印し、上条が素直に楽しめるように不幸を取り払い、罰ゲームでもない
のにこの自分がお願いだって聞くというのだ。
 でも、それでも、多分そこまでなのだった。
 空想上の第三者にすら嫉妬してくれない。せいぜいよく喧嘩する友達か腐れ縁くらいにしか思われてないのだろう。

美琴(……………何だ、馬鹿みたいだ。私)

 お願いを聞くと言えば、ひょっとしたら『付き合ってくれ』なんて言ってくれるんじゃないかという打算もあった。
 昨夜バスタブの中でニヤニヤしながらそんなことを考えていた自分を呪いたくなってくる。

美琴(当たり前か。私、素直じゃないし、ビリビリ攻撃するし………)

 上条は美琴が一人で暗くなっている様子が気になったが、理由を考えたところでどうせ答えは分からないだろうと予想する。
 だからまた軽口でも言って、言い合いにでもなれば元気になるだろうと踏んでボタンを押した。

上条「なんだー?好きな奴でもできたのかい?相談にのってあげるから当麻お父さんに言ってみなさい。つっても記憶無いうえ
    に俺はそういうの専門外だから全然役に立たねえだろうけどなー。あっはは」
美琴「…………………………別に居ないわよ」
真実「嘘ー!!!マイナス98ポイント」
上条(……………………え?)

 上条は虚を突かれたように呆然とする。

上条(ってことは本当に好きな奴が居るってことで良いのか?)

 美琴としては上条が『好きな人が居る』を『自分かもしれない』のだと薄々気付き、その事を意識してくれるのではないかと
少し期待したが、上条はそんな都合の良い幻想を抱こうとは決してしない。

上条(一体どこのどいつに?どんな奴に?)

 美琴が好きな男―――強くて、優しくて、ハンサムで、常盤台のお嬢様に似合うような上流貴族の如き完璧超人を上条は
思い浮かべた。
 更につっこんだことを尋ねたみたくなるが、美琴が否定しているならば言いたくないのであろうと思い踏みとどまる。

上条「へ、へぇ…………そっか」

 気付くと、自分の表情が砂を噛んだような苦いものになっている。
 胸周辺が熱くギリギリと痛むのだ。その上気持ちの悪い汗も出てきた気がする。
 しかしやっぱり上条にはそれらが何を意味するのか解からない。
 チッ、と上条は心の中で舌打ちをした。

上条(どうせ体調不良か何かだ。やっぱあのケーキ、ヤバイもの入ってたんじゃねえだろうな………)

 そんなことを思っているうちに、美琴の右手がボタンに伸びた。その手には勢いがない。

美琴「アンタこそ、あのちっこいシスターと一緒に住んでるんじゃないの?」

 鎌かけ。
 今まで色んな女の子が上条と一緒にいるのを見たが、一番多かったのはあの銀髪のシスターだ。その他の色んな言動も加味
して二人が同棲していることは十分予想できたし、それを何度も案じてきた。そんな日は決まって眠れなかった。
 若干自暴自棄になってそれを質問したのだが、時間が経つにつれ徐々に後悔の念でいっぱいになってしまう。現在進行形で
仲良く同棲しているだなんて言われたら自分の心がどう反応するかなんて分かりそうなものなのに。
 思考がボロボロだ。こんなにも近くに居るのに息が苦しい。

上条「いいえ」

 上条はそれに臆さずに答える。

真実「どちらでもないようじゃ。プラス33ポイント」
上条「あれ!?これってどんだけずば抜けた精度してるんだよ。深層心理まで読み取ってるとしか思えねえ」
美琴「……………………………」

 そこまで言ってから上条はしまった!という顔をする。
 美琴は顔を俯けたままで責めるように上条を見つめた。
 その無言の上目遣い攻撃に上条は居心地が悪くなる。

上条「い、いや。正直に申上げますと、最近までアイツが居候してたわけです。でも色々あって今は別のところに住んでいるの
    ですよ。だから多分『どちらでもない』にされたんじゃないかと…………」
美琴「……………………………」
上条「あ、もちろん変なことは一度も無かったぞ。この上条さんの鋼の精神の前ではどうってこと無い!夜はわざわざ一人で
    バスタブに寝てたくらいだしな!!」
美琴「……………………………」
上条(って、だから何で俺は言い訳ばっかしてるんだ??)

 その言い訳を一通り聞いて、美琴は半分安堵、半分怒りを覚えた。
 危うく心が砕けそうになるのを回避したことで思わず笑いが漏れる。

美琴「プッ、ハハ……なんだ、アンタ捨てられたんだ」

 意地悪そうに言うその表情はぎこちないものだったが、慌てる上条は気付かない。

上条「なんつうひでぇ表現だ。俺は平和的にアイツを送り出しただけだ。心情的には母親みたいなもんです」
美琴「母親ねぇ……………アンタって無意識に結構酷いこと言うわよね」
上条「え?何かおかしいか?」

 美琴は上条が誰に対しても鈍感であることに呆れ溜息を付く。

美琴(同棲までしてそれって、さすがにちょっとあの子に同情するわね。その後どうなったかは知らないけどさ)

 上条は未だよく分からないと言う表情をしている。

美琴「おかしいのはここだド馬鹿!!」

 上条がよく分からないと言う表情で美琴の顔を見つめてきたので、美琴は心中を気取られないために無理矢理テンション
を上げて頭にチョップを食らわす。
 上条はその痛みを気にする余裕もなく、更に混乱する。全くテンションがコロコロ切り替わる中学生だ。

上条(毎度のことながら意味分からねえ。それとも本当に俺の頭が変なのか?)

 記憶喪失だからか、そこら辺の感覚がよく分からない。
 最大の謎は美琴が自分に対してどう思っているかだった。最初の頃はビリビリ攻撃ばかりしてくるから相当嫌われてるのだと
思っていた。しかしあの夏から色々なことがあって、何度かは自分の代わりに戦ってやるなんて言われた。嫌われてはいないの
だろうと思う。でも好かれている訳でもなく、きっと記憶喪失であることを同情しているんだと勝手に決めつけていた。
 それが今日一日で崩れかかった。

上条(サンタになって俺を幸せにしたい。なんて、普通同情で言うもんじゃねえしな)

 柄にもなく、ひょっとしたら美琴は自分に好意を持っているのではないかというのが頭をちらついた。

上条(でも……)

 先程の質問の回答で膝から崩れ落ちるような感覚を味わった。美琴に誰か好きな人が居るなんて今まで考えもしなかった。
 思い起こしてみれば、夏に頼まれた恋人ごっこなんかもそれが原因だったのかもしれない。
 上条は再びその事を考えてイライラし始める。半ば無意識にボタンを押していた。

上条「お前にド馬鹿とか言われたくねえっつの。お節介なことかも知れないけどな、想い人が居るならクリスマスイブに
    何で俺なんかとこんなことやってんだよ、そいつと過ごすべきだろばっかやろうが!」

 そんなことを言わなきゃいけない自分が情けない。美琴の目は見ない。
 しかし数秒後にそれを反芻して、普段の自分では言わなさそうなその内容に今度は戸惑い出す。

上条(御坂は今日色々頑張ってるじゃねえか。何で俺はそれを拒絶してるんだよ??)

 美琴のことを想って優しさでそんなことを言った、なんて絶対に違う。ただ胸の中にある黒い物が怖いからと自分勝手に美琴へ
ぶつけただけだ。

上条「わ、悪い」

 何か先に言われるのが怖くて、慌てて謝る。

美琴「………………」

 場が静まりかえる。
 美琴は、上条がどうやら自分自身が好かれているということを一切想定していないらしい、というのに気付いた。だがもはや
その誤解を解く気力も起きないし、それを上手く解く方法も見あたらない。
 結局上条が自分と一緒にいることを優先にするほど、二人の距離は近くないと言うことだろう。もしかしたら、一緒にいること
が苦痛にすら思われていて、仕方がなく付き合ってやってるだけなのかもしれない。今日までの二人の関係と、上条の性格を
考えればそれも自然の道理だろう。

美琴(さっきから考えれば考えるほど悪い方向へ進んでる気がする……)

 やや沈黙。壁のディスプレイの数字が徐々に少なくなっていく。

美琴「ま、そうかもね。私もそう思うわ」
真実「真実~!!!プラス100ポイント」

 今実際にそうしているんだからそうなるだろう。
 しかし上条は自分で聞いたくせに、その返答に心をざわつかせた。
 上条は美琴と別の想定をしているため、上条にとってそれは今日の全否定に繋がる。
 美琴の手がボタンに伸びる。

美琴「でもさ」
上条「?」

 美琴は完全に俯く。顔を見られたくないし、上条を見るのも怖い。

美琴「アンタは…………………それで良いの?」

 美琴も、上条が勘違いをしていることは分かっている。
 だからこの質問の意味は『今日の出来事を別の誰かと過ごしても良かったの?』だ。

上条「良くねえよ!!!」
真実「真実~!!!プラス100ポイント」

 考えるより先に言葉が出た。
 遅れてそれを理解する。
 美琴が自分以外の男と手を繋いで町を歩くのも、手を繋ぎながらケーキを食べるのも、ヘンテコなプリント機であんな写真を
撮るのも、こんな言い合いするのも、そばに居て幸せにするなんて言うのも嫌なのだ。
 それらは全て自分へ向けられて欲しい。

上条(ああ、そっか…………)

 上条は自分の中の何かをやっと理解した気がした。
 何故かなんて理由は分からない。ただ、その衝撃に手で口を覆う。
 気付くと美琴が顔を上げてポカーンとしていた。
 上条は慌てて先を繋げる。

上条「だから最初にも言ったけどさ、俺は嬉しいんだって。今日は一人の予定だったからな。俺の不幸を案じてくれるってのも
    助かるし…………あ、お前がサンタのコスプレしてきたら完璧だったけどな」
美琴「………あ、アンタは相変わらず私にどんなキャラ期待してんのよ」
上条「いや冗談冗談……………でもさ、俺を幸せにしておいて、お前が不幸になってちゃ意味ないだろ?」
美琴「私は、…………………………」
上条「一つだけ聞いて良いか?」
美琴「何よ」

 上条は最後のボタンを押す。

上条「何だって、今日はこんなに良くしてくれんだよ。変な勘違いされても知らねーぞ、ホント」
美琴「別に………そんな意識無いわよ。ただ、アンタが不幸だ不幸だ言ってるのが気にくわないだけ。私を打ち負かしておいて
    不幸とか、ふざけんなってことよ」
真実「真実~!!!プラス78ポイント」
上条「そっか」
美琴「そうよ」

 二人はそれ以上何も言わず。小部屋を後にする。


 勝負結果:422ポイント対61ポイントで、上条の勝ち。




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