とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part11

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11.上条美琴


8月31日。夏休み最後の日。

8月21日。絶望の最中にいたわたしは、一転してあの日に人生最高の幸せを手に入れた。
今まで神様なんて信じていなかったけれど、本当はいるんじゃないかな?と
思えてしまうほど奇跡的でドラマチックな一日だった。あの日のことは一生忘れない…

当麻はあの日、夜中までわたしの傍にいてくれたけれど、実はかなり無理をしていて、
わたしの電撃と、アクセラレータとの激闘で体はボロボロだったようだ。だから、今日まで入院していた。

今日は、わたしたちが恋人同士になってから初めてのデート。デートコースは俺にまかせてくれ!と言っていた。楽しみだな…
前にアイツと映画デートした時みたいに私服を着ているわけではない。いつもと同じ格好。
変に飾っていないありのままの御坂美琴で、アイツと今日はデートしたいから。
ありのまま…だから短パンははいてない。さすがに恥ずかしいかも…
アイツはお手製のクッキーが食べたいといっていたので、頑張って作ってきた。アイツおいしいっていってくれるかな?
そんなことを考えていたら、爽やかすぎて、かえって警戒心を抱かせるような声が耳に入ってきた。

海原「御坂さん。今日もいい天気ですね。これからどこかにお出かけですか?」

美琴「げっ…」

アイツ何やってんのよ!また遅刻して!ほんとにわたしのことなんだと思ってるのかしら…
こっちは1時間前から待ってるっていうのに。この海原ってストーカーしつこいんだから…あ、当麻だ!美琴、走り出す。

美琴「ごめーん!待ったー?」

当麻「いてて、タックルしやがって。待ってたのお前の方なんじゃないの?あ、ごめんな、またちょっと野暮用で遅刻…」

美琴「どうせ人助けでもしてたんでしょ。そこがアンタのいいところなんだから、仕方ないよ…許してあげる。
   ね!海原さん!わたしにはこんな素敵な彼氏がいるの!だからわたしのこと諦めなさい!」

海原「…」

当麻「い…いいの?こんな人目のあるところでどうどうと恋人宣言しちゃって?俺は鼻高々だけどさ。」 

美琴「いいの!わたし嬉しかったんだから…アンタの言葉…
   わたしはもう人目なんか気にしないの…今まで人目を気にしすぎて…みんなの模範にならなきゃ!
   って勝手に決め込んで、いろんなものを失ってきたから…わたしはわたしらしく生きることにしたの!
   あの日に美琴センセーは死んだ…だから、もうわたしは新しい御坂美琴ちゃんなんだ!」

当麻「そっか…。じゃ、俺もそれを応援させてもらうよ。」

美琴「わたし、アンタのこと1時間も前から待ってたんだから…どうしてくれるの?わたしの気持ち?お詫びになんかないの?」

当麻「待ち合わせは30分前だろ…1時間前から…かわいいやつ…えーとお詫びか…何がいいかな…俺、金ないし…」

美琴「じれったいわね!」 そういって、美琴は当麻に抱きつき、強引に当麻の唇を奪う。

当麻「むぐ…むぐぐ…ぷはっ。ちょっとここは人目が多すぎだろう…新しい美琴ちゃん積極的すぎ…ハハハ…」

美琴「いいの!10日間も待ってたんだから…さすがに病院じゃまずいかなと思って…ずっと我慢してたんだから…バカ」

当麻「そうか、ごめんな…じゃぁ、今日一日上条さんの体はお前のもんだ!」

美琴「今日一日じゃ嫌…これから何日も…いや、何月、何年も…生まれ変わっても、わたしのものなんだから!」

当麻「ハハハ…美琴にはかなわないよ。こんなかわいいお前に愛されて、俺って幸せもんだよ、ほんと。
   幸せだ…ってなんか語呂が悪いな。不幸だのほうが言いなれてるってのもあるけど。」

美琴「かわいいって…何度言われても嬉しいな(かぁーっと赤面)もっと言ってよ…当麻ぁ…」

行きかう人々「けっ…なんだこのバカップル…リア充、爆発しろ!」

当麻「えーっと、なんか視線が痛いんで…殺されそうなんで…別のとこいこうか!」

美琴の腕を引っ張って、高速で当麻は飛び出した。たどり着いた先は、オープンカフェ。
この場所は見覚えがある。あの時は夜だったから、パラソル、テーブルや椅子は収納技術で地面に格納されていたが…
そうだ!わたしと当麻が初めて出会った思い出の場所だ!不良にからまれていたわたしの手をとってくれた思い出の場所…

当麻「ふー。走って疲れたな。病み上がりの体にはきついぜ。ちょっと休んでいこうぜ。」

美琴「この場所…アンタは覚えていてくれた?思い出の場所なんだけど。」

当麻「ああ…覚えている。お前との出会いをくれた場所だからな。この場所には感謝しないと。
   でも…俺は、入院費がきつかったんで何も頼めない…トホホ…水でも頼むか…。」

美琴「まったく…しょうがないわね。わたしがおごったげるわよ…アンタへの貸しはこんなもんじゃ安すぎるくらいだし…」

当麻「いいって、そんなこと気にするなよ、お前らしくもない。でも、飲み物はほしいな。」

美琴「そうね!それじゃ…これたのもーっと♪トロピカルミックスジュースの大サイズ1つ!」
そういったあと、店員に何かゴニョゴニョささやいている。

当麻「え?1つ?俺の分は?走り回ってこんなに喉かわいてるのに。ひどいよ美琴…」

美琴「ふん!1時間も待たせた罰よ!」 注文した品が届いた。ストローが二つささっている。

当麻「えーっ!これってバカップル丸出しじゃないか!俺は恥ずかしいな…」

美琴「いいの!さ、お飲み!」

キスをした二人にとっては、さほどのイベントではないが、キスのときはお互いの顔が近すぎてよくみえなかった。
しかし、グラスを挟んで見つめ合う二人の距離は絶妙だった。また新鮮なドキドキ感が二人をおそう。

当麻「(ほんとこいつってかわいいよな…目はキリっとしていて、力が漲っているけど、大きくて二重で。
    見つめられたらどうにかなっちゃいそうだ。あ、頬が赤くなってきた。かわいい…
    ジュースを吸い込む唇、桜色で色っぽいな…)」

美琴「(コイツってタレ目よね。優しい目…大好き…。でも、時折、マジメになったとき、わたしを守ってくれる時って
    キリっとした凛々しい顔になるのよね。あの顔、想像しちゃうと…わたし、わたし…)」

佐天「なにやってるんですか?御坂さん?」

上琴「うわわーっ!!」いきなり、現実に戻された二人は取り乱す。

佐天「うひひ…みちゃいましたよ。お二人のラブラブ空間。何人も寄せ付けないピンクのオーラが漂ってました(笑)」

美琴「ふーっ。ちょっと涙子。いきなり現れてびっくりさせないでよね。」

当麻「この子達、お前の友達?」

美琴「ええ、そうよ。達…って。黒子に、飾利も。」

黒子「おねえさば…わたくしは上条さんのことは認めましたが…実際にそのいちゃつきぶりを目の当たりにすると…
   自分の中の暴れまわる衝動をおさえられそうにありませんの!ギエーッ!!!ガンガンガン(顔ドラム)」

初春「ちょっと…白井さん。わたしが白井さんおさえときますね。ハハハ…」

佐天「やっぱり、お二人って恋人同士なんですか?」

美琴「そう!コイツは上条当麻っていってね。わたしの最愛の恋人なの!」

当麻「どうも~美琴の恋人の上条当麻です…ハハハ…」

黒子「ギャヒーッ!!!最愛!最愛って!!!」

佐天「そっか…前にもみたけど、やっぱり恋人同士だったんですねっ。でも、御坂さん本当に幸せそう!
   そんな御坂さんたちをみてたら、あたしたちまで幸せになっちゃう!」

初春「そうですね~。お二人のラブラブ空間、最高です~。とろけちゃいそう…
   このお二人の様子は今作ってる同人誌のネタにつかえそうです…メモメモ…」

佐天「でも、ほんとに御坂さん、前とキャラクター違いますよね。前だったら、なに勘違いしてんのよ!って
   素直じゃなかったと思うんですが今は自分の気持ちにとても正直。
   それに今まで以上に元気になって。生き生きとしていてすごくかわいい!」

美琴「うん…わたしはコイツと出会って生まれ変わったんだ…愛の力ってすごいね。人の心を変えちゃうんだから。」

佐天「かわいい!今の元気になった御坂さんて、あたし達をひっぱってくれるリーダーの御坂さんっていうより、
   一人の女の子の美琴ちゃんって感じですね。今度から美琴ちゃんって呼んでいいかな…?」

美琴「うん!喜んで!黒子も、飾利もそう呼んでね!」

黒子「よろしいのですか?お姉さま…ではなくて、美琴ちゃん?」

初春「美琴ちゃん…なんか親しみがあっていいですね!
   以前は、そうさせない雰囲気が美琴ちゃんにはあったんですが、今はそれがないみたいです。自然体って感じですね。」

当麻「お前、ほんとに元気になったよな。これっていい傾向だな。そうやってどんどん人に心を開いていってくれると俺も嬉しい。」

佐天「上条さんって、優しいんですね。なんていうか…娘を見守る優しいお父さんって感じがします。
   美琴ちゃんが惚れちゃったのもわかるな。で、二人のなれそめは…?」

美琴「わたし達が出会ったのはちょうどこの場所…ここって思い出の場所なんだ。
   当麻ったら、わたしがレベル5の超能力者だってわからなかったらしくて、不良達に絡まれてるとおもって助けにきたのよ。」

当麻「そうそう。そうだったなあ。あの時はいきなりお前がビリビリして、不良達を薙ぎ倒したからビックリしたよ。」

美琴「そしたら、当麻だけ全く電撃がきいてなくて…それから、レベル5の超能力を無効化するコイツに勝ちたくて、
   何度も追っかけまわしているうちに、コイツの優しさとか、強さとかに惹かれていって…今みたいになったわけ。」

佐天「そんなことがあったんですね。不良たちからお姫様を救い出す勇者って感じかー。あたしもそんな勇者様と出会いたいな…」

当麻「勇者って…俺はただのレベル0だぜ。」   

佐天「!!!そうなんですか!!!あたしもレベル0なんですが、それなのに美琴ちゃんのハートを鷲づかみにしちゃうなんて…
   なんだか、あたしも上条さんに興味がわいてきちゃった。」

美琴「だめーっ!!!当麻はわたしだけのものなんだから…」涙目になる美琴。

佐天「冗談、冗談。涙目の美琴ちゃん、かーわいいっ。」

当麻「ハハハ…こいつとんでもない焼き餅焼きだから…安心しろって、俺は美琴以外の女の子に心奪われることはないよ。」

美琴「嬉しい…その…それを再確認させてほしいから…今、ここでキスしてにゃん?」

黒子「ベーゼ!ベーゼ!なんてことですの!ぎゃわわぁぁあばば…ガンガンガン!」

初春「美琴ちゃん…積極的すぎます…あああ~。お二人のこれからを想像しちゃうと、わたしも…あああ~。」

当麻「お…おい!ダメだこりゃ、猫化がはじまってる…漏電するー!!!それじゃ、俺達はそろそろいくからー!!!」

佐天「それじゃ、二人ともがんばってくださいね!結婚式にはかけつけますんで(笑)」

当麻、美琴の手をひっぱり、周囲に被害がでる前に店外へと駆け出した。テーブルに顔を打ち付けていた黒子も正気にかえる。

黒子「でも…ほんとよかったですわ。お姉さまがまた元気になられたので。
   上条さん…あなたがお姉さまにどんな魔法をかけたのか知りませんが…あなたには完敗ですわ。
   わたくしのお姉さまを、誰とでも打ち解けることのできる素直な御坂美琴ちゃんにするという使命も
   あなたが果たされてしまうのでしょうね…でも、これで肩の荷が下りましたわ。
   わたくしも素敵な恋人の出会いを探すこととしましょうか…いえ!まだまだですわ!
   お姉さま…いえ!美琴ちゃんの愛人の座はわたくしのものですの!!!」

新たな目標に燃える黒子だった。

走り出した二人の次なる目的地は、鉄橋の下の川原。二人で川原の坂道に寝そべる。

当麻「ふーっ。疲れた。ここなら人がいないから、美琴が漏電しても大丈夫だろう。」

美琴「漏電ってなによ…人のこと、力の制御のできない自制心のない人間みたいな言い方して…フンだ。」

当麻「お前、気づいてないの?まぁいいか…ごめん。俺、入院費のせいで金がないから、ろくなデートプラン立てられなくて…
   こんな金を使わない場所しかこれなくて。でも、ここってさ。お前との思い出にあふれてる場所だよな。」

美琴「そうね。ここで何度もアンタと戦ったわね。アンタのこと、すごい能力者だと勘違いしていて、絶対に勝ちたくて!
   アンタとやりあっていた時って、いつもの日常じゃ味わえない楽しさやドキドキ感がわたしを包んでいてくれたんだ。
   でも、今思うとあれって恋心の芽生えだったんだとおもう。」

当麻「それってツンデレってやつ?」

美琴「ツンデレいうな!ツンデレじゃないもん…デレデレだもん…」

当麻「今思うと、お前の言動ってツンデレ語?ってやつだったんだよな。バカ=好き。
   勘違いしないでよね=その通りだけど、恥ずかしい。みたいな感じ?プププ、おもしれえ。」

美琴「このバカ!か…勘違いしてんじゃないわよ!」

当麻「ハハハ…直球すぎる反応どーも。ところで、さっきの子達、いい子だな。
   絶対能力進化実験の時、白井はお前のこと本気で心配してくれていたんだぜ。目を真っ赤にはらして、泣いちゃって。
   それと、お前が涙子っていってた子。お前の心の扉を少しこじあけてくれた気がする。
   お前、俺の前では無邪気な子供って感じがしたけど、同年代の子たちの間では、肩肘はってわざと自分を作って接してたんだろ?
   レベル5の責任感とか、使命感とかがそうさせていたと思うんだけど、そういうのはもういいと思うんだ。
   レベル1から5になったってことは、小さい頃からそうとう頑張ってきたんだと思う。
   だからさ…もう自由になっていいと思うんだ。自分の思い通りに生きていいんだよ。」

美琴の瞳から一筋の光が頬を伝う。
美琴「…ありがとう…ぐすっ、ぐすっ、当麻先生の説教、大好きだよ。…でも、言われなくてもわかってる…
   もうわたしは素直な美琴ちゃんなんだから。それで、わたしの今やりたいことは…これ!」

美琴は、作ってきたお手製のクッキーを取り出し、自分の口に半分くわえる。

美琴「クッキー食べて…アンタがお手製クッキー食べたいって言うからわざわざ作ってきたのよ…」

当麻「えーっと…ありがとう。でも、お前。よくそんな恥ずかしいことできるな。ほんとオコチャマなんだから…
   まぁ、でも俺もお前がお前らしくいられるように協力するっていったしな。そんじゃ、いただくよ。もぐもぐ。」

当麻が歯でクッキーを割って、恥ずかしさから美琴から顔を離そうとした時、美琴は当麻に無理矢理、唇を押し付ける。

美琴「だーめ!離さないんだから!うふふ。わたしの唇味のクッキーどう?とびっきりの味でしょ!?」

当麻「あ…ああ、うますぎるよ。不思議な味がする。甘い匂いも…これってクッキーじゃなくて、美琴の匂いかな?ドキドキする…」

美琴「わたしもよ…ねぇ、クッキーだけじゃなくて、わたしのことも食べてぃぃょ(小声)」

当麻の優しい言葉で感涙したばかりの美琴の瞳はこころなしか潤んでいて、
当麻の男心に深く訴えかけてくる妖しい雰囲気をかもしだしていた。
そして、小声で囁いた爆弾発言を当麻は聞き逃すことができなかった。
こいつは黙ってれば、大人びて見えるから普通に高校生くらいにみえる。同い年くらいにみえる。
でも、実際は中学生。あんなこと、こんなことしたら犯罪だろーーー!!!
当麻の中で大きな葛藤があったが、ここは聞こえないふりをして、坂道を転がることにした。

当麻「ぐわあああああああああああああああ。クッキーの中に変なものが入ってたーーー!!!なんじゃこりゃーーー!!!」

美琴の生体電流を通して、心を読む能力はまだ不完全、かつ当麻の右手の力もあるので、
心を完全に読まれることはないが、今、心を読まれたら、二人はもう戻れない階段を上ってしまうと思ったので、
当麻は心を無心にして、ピエロを演じることにして坂を転がった。そのまま、川へとつっこむ。
怒りにふるえる美琴の声がきこえる。

美琴「ねぇ…わたし今かなりの決意をこめて、勇気のあるセリフをいったつもりなんだけど…何やってんのよ、バカ…
   ほんとアンタってバカなんだから…人の心のこもったクッキーをけなしやがって!待ちなさい!
   わたしの唇味クッキー、もっと食べさせてやるんだから!おいしいっていうまで食べさせてやるんだから!」

二人は楽しげにジャブジャブと浅瀬で追いかけっこを繰り広げる。
こういうのって憧れだったんだ…小学生の頃は、勉強ばかりしてたし、中学生にあがってからは、
レベル5、模範生として、こんな子供っぽい一面をみんなに見せるわけにはいかなかったし…
こんな楽しい時間をくれる当麻…ほんとに感謝してる。大好き。キャッ!アイツ水かけてきた。やったわね!

当麻「(ふーっ、さっきの色っぽすぎるだろ。反則すぎ。でも、怒りでまたオコチャマな美琴に戻ったみたいだな…)
   はっはっは。びしょびしょだな、美琴!あれ?怒った?」

美琴「こら!今日…わたしスカートの下に短パンはいてないんだから…動きづらいな…水着とかあればいいのになぁ。」

当麻「ドキッ!短パンはいてないの…(ダメだ!当麻、想像しちゃダメだ!)
   えーっと…お前の水着姿みてみたいな。きっとかわいいんだろうな。あ!俺、お前の水着姿みたことあるぞ!
   巨大ビジョンでなんか水着ショーみたいのやってただろ!子供っぽい水着きてキャッキャとはしゃいでたっけ?ププ。」

美琴「えーーーーーーーーーー!!!あれアンタみてたの!!??ダメ…顔から火がでそう…」

当麻「ハハハ…水着の趣味も子供っぽいんだな、お前って。」

美琴「なんですって!待ちなさい!」

当麻「追いつけるもんなら、追いついてみろって。上条さんの逃げ足に追いつけるヤツなんていないんだぜ?」

美琴「いったわね!この地形でわたしから逃げようったってそうはいかないんだから!」

当麻「げっ…飛びやがった。うわわー!!!」

当麻は能力を使って飛んだ美琴に上から押し倒される。水に塗れた当麻の髪型が変形する。

美琴「つーかまえたっ!!!あ…アンタの、ツンツンしてない髪型はじめてみたかも…意外とカワイイ…
  (また新しいコイツの一面、発見しちゃった。かわいい!)」

当麻「いててて…飛ぶのは反則だろ…ん…お前の濡れて乱れた髪形も…大人っぽいな…」

美琴「うーれしい!いつもアンタはわたしのこと、子供扱いするんだから…今だと立場が逆みたいね、うふふ。」

もともとお姉さんタイプ好きの当麻にとって、これはかなり心を揺さぶられるシチュエーションだった。
かわいいもの好きの美琴にとっても、同じ。見つめ合う二人の顔が赤くなる。

当麻「美琴、綺麗だよ…」

美琴「な…なによ…いきなりマジ顔になって…バカ…こういうのが好きなら、いつだってしてあげるわよ…
   わたしの心はもう…全部アンタのものなんだから…アンタの望むことならなんだってしてあげる…」

オープンカフェから川原まで走ってきたとき、美琴は暑いといって、サマーセーターを脱いでいた。
水に濡れた美琴のブラウスは、下着と中の膨らみを透き通らせていた。
当麻はそれを見ないようにしていたが、上から組み付かれた状態では、目線をはずすわけにはいかなかった。
どうせ子供っぽくて、色気もくそもない下着だろうとたかをくくっていたが、想像とは正反対のものを美琴は着用していた。

当麻「だああ!俺、どうにかなっちゃいそう…」

美琴「どこみてんのよ!バカ!って、いいよ…アンタがみたいなら。アンタだけなんだからね、わたしがこんなことするのは…
   きょ…今日のために、黒子のいつも使ってる通販の下着カタログ調べて注文したんだから。
   こんなに光栄なことなんてないんだから…この幸せ者がぁ。さ、クッキー食べてよ…」

クッキーをくわえた美琴の唇が当麻の唇に接近してくる。

当麻「は…はい…美琴姫。でも、この状況、上条さん…狼になっちゃいそうです。」

美琴「わたし悔しかったんだから…ケンカじゃ勝てないし、なんかあったらすぐ子供扱い…
   レベル5のプライドなんてアンタの前じゃボロボロ…たまにはわたしにも勝たせてよ…
   わたしだって…もう子供じゃないんだからね…
   今日は短パンもはいてないの…これどういう意味かわかる?こんなことまで言わせないで。バカぁ…」

美琴は、唇を合わせたまま、ぐるりと体を回転させ、当麻の下になる。
そして、目をつぶって、何かを期待しているような表情をしている。
我を忘れた当麻の手が美琴の胸にふれようとした時、当麻は自制心を取り戻し、クッキーを噴出す。

当麻「ぶはっ、ゲホ、ゲホ。ええええーーーーっととと、しっかりしろ!うろたえるな俺!
   俺はお前に素直な美琴ちゃんになってほしい、心を開いてほしいって言ったけどさ…こういうのって、違うと思うんだよね。
   お前のツンデレ語じゃないけど、勘違いしてんじゃないわよ!ってことだ!
   以前のお前なら、俺がよこしまな考えを浮かべたら、照れながらエロ野郎!って殴りかかってきたじゃんか。
   こういうことをするのも、もっとロマンチックな時と場所じゃないとダメって以前のお前ならそう思っていたんじゃないか?
   まぁ、心の壁があつすぎて、いろんなものを拒絶してた以前のお前より、今の自然な笑顔で笑ってくれる
   お前のほうが俺は好きだけど、自分をさらけ出すってことと、こういうことって違うんだと思う。
   自分が子供じゃないってことを証明するためにこんなことをするんだったら俺はお前を叱るしかない!   
   俺たちはまだ恋人になったばかりだろう?お前のことは大好きだ。
   大好きだからこそ、もっとこういうことは大切にしたいんだよ!」

美琴「…ごめんね。そこまでわたしのこと、思ってくれているなんて…当麻…もっと大好きになっちゃった…!!!」
そういって、瞳を潤ませ、新しいクッキーを口移ししてくる。当麻は照れて視線をはずす。

当麻「もぐもぐ…わかってくれりゃいい。また説教しちまったな。でも、お前って変に常識はずれなところがあるよな…
   自分に厳しすぎるかと思ったら、異様に甘えてきたり、俺に相手にされなかったら電撃うってきたり、
   子供っぽいものが大好きだったり…病院でお母さんの話はよく聞かせてもらったけど。
   お前の話だと、お前の母さんって随分積極的みたいだな…ハハハ…さっきのお前の色仕掛けもお母さんの入れ知恵?」

美琴「うん…ママはすごく優しくて、今の当麻みたいにわたしを大切にしてくれたんだ。」

当麻「ふーん。病院で話していた様子だと、お前ってほんとにお母さんのことが好きだって伝わってきたよ。
   お母さんもお前のことをすごく愛してくれたってのも伝わった。
   あれなら、俺が頑張らなくても、誰からも愛されるかわいい御坂美琴ちゃんになれると俺は思うんだけどな。」

美琴「わたし、小学1年生からずっと学園都市で一人で頑張ってきたの…
   ママと離れるのってすごく辛かったんだから…あ、ママの話ばかりだけど、パパのことも大好きよ。
   でも、パパはいつも仕事で家にいなくって…忙しい人だから…」

当麻「そっか…一番、甘えたい頃にお母さん、お父さんに甘えられなかったんだな…
   わかったよ。俺がお父さんのかわりもやってやる…お前が間違ったことをしたとき、叱ってやる。
   正しいことをしたときは、抱きしめてやる。それでいいだろ?」

美琴「うん…ありがとう…うれ…嬉しすぎて、また涙がでちゃうよぉ…」
クッキーを口移ししたまま、美琴はぎゅっと当麻に抱きついてくる。

美琴「わたし、当麻の説教好きだよ!わたしを叱ってくれる人ってほとんどいないから…
   先生達もわたしのことを少し怖がっていたみたいで本気でぶつかってくれなかったし。
   だから、自分で自分をいつも叱咤激励してきたの。このバカ、このバカ!もっと頑張れ!ってね。」

当麻「それで、絶対能力進化実験の時に必要以上に自分を追い込んでいたのかもな…。
   もう忘れろよ。あんな辛かったことはさ。自分を追い詰めるのはもうなし!
   これからは楽しいことだけを考えていけばいいさ。
   な、笑ってくれよ。悲しい顔はもう俺が許さない!お前は笑ってないとダメ!」

美琴「あはは…ありがとう。どうこの笑顔?」
感涙でボロボロの顔をとりつくろいながら、一生懸命な笑顔を美琴は作ってみせた。

当麻「今の笑顔かわいい。反則…。そう、お前はそうやって笑っていればいいんだよ。
   でも、俺もいつまで自分を保っていられるかわからないな…
   こーんなかわいい美琴ちゃんがさっきみたいなことしたら、俺はもう我慢できないかもしれない!」

美琴「当麻のスケベ…でも、いつでもいいんだからね。待ってるんだから。
   わたしももっと自分を磨いてアンタをドキっとさせてやるんだから!」

当麻「ハハハ。期待してるよ。」

二人は浅瀬でお互いを抱きしめあっていた。何時間も…辺りはすっかり夜になった。

当麻「そうだ…お前の夢をきかせてくれよ。」

美琴「わたしの夢…そんなの言うまでもないじゃない…アンタのお嫁さん。まだ結婚できる歳じゃないから夢なんだけどね!
   他にも夢はいろいろあるんだけど…そういうアンタの夢は?」

当麻「俺の夢は誰もが笑って過ごせる未来を作るってことだな…」

美琴「素敵な夢ね。それでこそ、わたしが惚れた男!でも、ちょっと漠然としてるかな?」

当麻「いや、具体的にやりたいこともあるさ。21日にも言ったけど、俺はこの学園都市が大好きだ。
   美琴との出会い、他のいろんな人との出会いをくれたこの街が。
   でも、この前みたいな悪夢の実験…人の尊厳を踏みにじるような実験をして、
   この学園都市を食い物にしてどこからか笑っているヤツらが許せない。
   そいつらを学園都市から追い出すんだ。そうしたら、お前の妹達だって救われるだろ…」

美琴「そうね!妹達には絶対に幸せになってもらわなくっちゃ!そのためにも、わたしはレベル6になる!」

当麻「無理する必要はないんだぜ?」

美琴「わかってるって。アンタの夢は、わたしの夢。わたしがやりたいんだからやるの!
   アンタがダメっていったって、聞かないんだからね!レベル6かぁ。
   生体電流を操って心にふれる練習。電撃キャッチボール。アンタじゃなければ練習できないんだから!」

当麻「ひーっ。殺さないでくれよ…」

当麻から愛のエネルギーをもらった美琴は、当麻と接している時のような
素直で元気で明るい御坂美琴ちゃんとして、だれとでも接することができるようになった。
当麻が各地で人助けすることによってできた上条勢力。
それに加えて、美琴の優しさ、愛情にふれた人たちも集まってきて、上琴勢力が形成された。

当麻の愛を受けた美琴は、今まで以上に努力できるようになった。
その努力の結果と当麻の協力、絶対能力進化実験の際につかんだヒントを利用して、4年後にレベル6に覚醒した。
レベル6は神ならぬ身にて天上の意思にたどりつくレベル。その力を利用して、不治の病とされていた難病の克服法を解明した。

上琴勢力の二人のレベル5テレポーター、白井黒子と結標淡希の協力で決戦の舞台へとおもむく日がきた。
さすがにレベル6の力を持ってしても、同じく神のごとき力をふるい、
魔術と科学を極めた学園都市の支配者アレイスターには分が悪かった。

しかし、当麻の協力と、美琴が皆に心を開くことによって形成された上琴勢力の皆の力で解決できた。

全てを成し遂げた上琴にもう自分たちを制限するものは何もなかった。

当麻「俺たちの夢…かなったな!これで妹たちも本当に自由だ。きいてくれ…美琴。今なら言える。」
美琴「当麻…ずっと待っていたんだから…プロポーズの言葉でしょ?あなたの心は手に取るようにわかるけど、言ってほしい…」
当麻「ああ…よく頑張ったな、美琴。いろいろ辛いこと、苦しいこともあったけど、あれは全部幻想だったんだよ…
   でも、俺の右手とお前の愛の力で、そんな幻想は粉々にぶち壊してこれた…
   これからは未来にむかって、二人で壊れることのない俺たちだけの現実を作っていこうぜ!」
美琴「うん!ずっとずっと…これからもずっと愛してる!当麻!」

その日、上琴勢力の皆に祝福され、御坂美琴は上条美琴になったのだった。



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