5日目 前編
今思えば、今日は朝から何かがおかしかった。
一方通行からは「おめでとう」とだけ書かれた謎のメール届いていたし、
クラスに空気もピンと張り詰めていて、居心地が悪かった。
男子にも女子にも、終始睨まれている気がした。
おまけに吹寄からは何も言われずに、
自慢のおでこでスーパー頭突き(コマンド入力 : ← タメ → +P ※ 右向き時)をくらわされ、
土御門と青髪からは、顔を両サイドから殴るという、
愛と友情のツープラトン(コマンド入力 : 同じ強さの P+K 同時押し)をくらった。
いつものデルタフォースならば、どつきあいするにも理由がある。
例えばこの前は、
一方通行からは「おめでとう」とだけ書かれた謎のメール届いていたし、
クラスに空気もピンと張り詰めていて、居心地が悪かった。
男子にも女子にも、終始睨まれている気がした。
おまけに吹寄からは何も言われずに、
自慢のおでこでスーパー頭突き(コマンド入力 : ← タメ → +P ※ 右向き時)をくらわされ、
土御門と青髪からは、顔を両サイドから殴るという、
愛と友情のツープラトン(コマンド入力 : 同じ強さの P+K 同時押し)をくらった。
いつものデルタフォースならば、どつきあいするにも理由がある。
例えばこの前は、
「やっぱり愛花タンは最高やね~ 他の二人もええけど、同級生の魅力には勝たれへんわ。」
「分かってないぜい、分かってないぜい! 年下で後輩の凛子ちゃんこそ至高の存在だろうが!!」
「お前らバカじゃねぇのか!? お姉さんキャラで包容力のある、寧々さん一択だろ!」
「分かってないぜい、分かってないぜい! 年下で後輩の凛子ちゃんこそ至高の存在だろうが!!」
「お前らバカじゃねぇのか!? お姉さんキャラで包容力のある、寧々さん一択だろ!」
という口論が喧嘩にまで発展したのだ。 セーブをせずに電源を切るからそんな事になるのである。
結果、数学教師・親船素甘から職員室に呼び出される事になったわけだが、
喧嘩の原因を聞いて、彼女は翌日熱を出したという。
統括理事会のメンバー【ものすごくえらいひと】の娘さんに何してくれてんだ、お前らは。
結果、数学教師・親船素甘から職員室に呼び出される事になったわけだが、
喧嘩の原因を聞いて、彼女は翌日熱を出したという。
統括理事会のメンバー【ものすごくえらいひと】の娘さんに何してくれてんだ、お前らは。
だが今回は違う。 何の意味も無く殴られたのだ。
理不尽極まりない攻撃【イジメ】に対し、当然上条は抗議したが、青髪からは睨み返され、
土御門からは、腹に一物抱えたような笑みを返されるだけであった。
理不尽極まりない攻撃【イジメ】に対し、当然上条は抗議したが、青髪からは睨み返され、
土御門からは、腹に一物抱えたような笑みを返されるだけであった。
そういえば、小萌先生も何かおかしかった気がする。
妙にそわそわしていたし、目が合うと顔が赤面していたように思える。
おまけに宿題が終わらなかったのに、今日は補習も説教もナシだという。
それ自体は喜ぶべきだが、やはり腑に落ちない。
そう、今日は朝から何かがおかしかったのだ。
妙にそわそわしていたし、目が合うと顔が赤面していたように思える。
おまけに宿題が終わらなかったのに、今日は補習も説教もナシだという。
それ自体は喜ぶべきだが、やはり腑に落ちない。
そう、今日は朝から何かがおかしかったのだ。
そして現在は放課後。 上条は教室の一番後ろで正座をさせられている。
それを囲むクラスメイト達は、まるで仁王のような顔で上条を睨みつけている。
ただ土御門だけは、笑いをこらえて小刻みに震えている。 今は笑ってはいけない。
笑ったら、『デデーン! 土御門ー アウトー』である。
それを囲むクラスメイト達は、まるで仁王のような顔で上条を睨みつけている。
ただ土御門だけは、笑いをこらえて小刻みに震えている。 今は笑ってはいけない。
笑ったら、『デデーン! 土御門ー アウトー』である。
「さて上条。 貴様にひとつ聞きたい事がある。」
仕切り屋の吹寄が尋問を始めた。
いや、上条の態度しだいでは拷問になるかもしれないが。
いや、上条の態度しだいでは拷問になるかもしれないが。
「単刀直入に聞くが、これは何かしら?」
吹寄は「この紋所が目に入らぬか」といわんばかりに、ケータイの画面を上条に見せ付ける。
するとそれを起爆剤に、クラス中の人間が、次々とケータイを取り出した。 もう、格さんだらけである。
そしてその全てのケータイに、例の写真が写っている。
するとそれを起爆剤に、クラス中の人間が、次々とケータイを取り出した。 もう、格さんだらけである。
そしてその全てのケータイに、例の写真が写っている。
(やっぱりこれか……)
上条は滝のように冷や汗を流してはいるが、特に驚いた様子は無い。
正座をさせられたときから、うすうすは気付いていたのだ。これから公開処刑が行われることを。
正座をさせられたときから、うすうすは気付いていたのだ。これから公開処刑が行われることを。
(おかしいと思ったんだよなぁ~! あの土御門が大人しくしてるわけがねぇんだよ!!
しかもこっそり隠し撮りなんかしやがって~~!!)
しかもこっそり隠し撮りなんかしやがって~~!!)
ヘビの大群に睨まれたカエルの上条。
だが彼は、数々の修羅場を潜り抜けてきたヒーローだ。 こんなときの対処法も心得ている。
だが彼は、数々の修羅場を潜り抜けてきたヒーローだ。 こんなときの対処法も心得ている。
「すいませんでしたーーー!!!」
流石は上条の血筋というべきか、彼は刀夜直伝、「めっちゃ土下座」をくりだした。
これは怒り狂う敵の前で、深々と謝罪する事で、敵の戦意を消失させるという立派な技である。
無差別格闘早乙女流では、これを「猛虎落地勢」といって、奥義にもなっている程である。
これは怒り狂う敵の前で、深々と謝罪する事で、敵の戦意を消失させるという立派な技である。
無差別格闘早乙女流では、これを「猛虎落地勢」といって、奥義にもなっている程である。
普段なら、大抵これでなんとかなる。
しかし吹寄は許してはくれなかった。
しかし吹寄は許してはくれなかった。
「質問に答えろ! こ・れ・は・な・に・か・し・ら!?」
土下座したままの上条に、吹寄は容赦なく、持っているケータイを上条の左頬にぐりぐりと押し付ける。
「何と聞かれても…事故としか……ていうかぐりぐりすんのやめて………」
「……恋人ではないの?」
「ではないです…はい。 あとぐりぐり痛い……」
「……恋人ではないの?」
「ではないです…はい。 あとぐりぐり痛い……」
それを聞いてクラスの女子達は、心の中で「なんだ、いつものフラグか」と、安堵の息を吐く。
その辺の理解力は流石に早い。 伊達に上条と一年近くも同じ教室だったわけではないのだ。
吹寄もなぜかホッとしていた。
これにて一件落着――
その辺の理解力は流石に早い。 伊達に上条と一年近くも同じ教室だったわけではないのだ。
吹寄もなぜかホッとしていた。
これにて一件落着――
「…でも。デートはしたんでしょ。昨日。上条君そう言ってた。」
――しかけた空気を、姫神の一言が再び悪化させた。
「い、いや! デートっつってもそんな大したモンじゃないし!
つーか異性の友達と遊びに行くなんて、よくある事だろ!?」
つーか異性の友達と遊びに行くなんて、よくある事だろ!?」
上条のふざけた意見に、男子共がブーイングを始める。
「無いわボケッ!!アホッ!!カスッ!!コラッ!!」
中でも青髪のひがみはハンパない。 お前ならしっとマスクになれるかもしれん。
吹寄も男子に混ざり、上条を罵倒していたが、
吹寄も男子に混ざり、上条を罵倒していたが、
「よくあるだと!? だったら何で私は誘ってくれないのよ!!」
という一言でブーイングが止まる。
言った本人と鈍感な上条は気付いていなかったが、それは明らかにジェラシーが込められた言葉だった。
言った本人と鈍感な上条は気付いていなかったが、それは明らかにジェラシーが込められた言葉だった。
「う、うそや…カミジョー属性完全ガードが……A.T.フィールドが破られてもうた~~~!!!」
青髪をはじめ、数人の男子が次々と崩れていく。 おそらく、密かに吹寄を狙っていた連中だろう。
女子達からも、「吹寄さんもやっぱり……」と、ひそひそ声が聞こえてくる。
状況が飲み込めていないのは、上条と吹寄の二人だけだ。
絶対にフラグが建たない女性【ふきよせ】対、どんな女性にもフラグを建てる男【かみじょう】の、ほこ×たて対決は、
どんな女性にもフラグを建てる男に軍配が上がったらしい。
女子達からも、「吹寄さんもやっぱり……」と、ひそひそ声が聞こえてくる。
状況が飲み込めていないのは、上条と吹寄の二人だけだ。
絶対にフラグが建たない女性【ふきよせ】対、どんな女性にもフラグを建てる男【かみじょう】の、ほこ×たて対決は、
どんな女性にもフラグを建てる男に軍配が上がったらしい。
グダグダな空気に染まりかける中、姫神が吹寄に代わって上条の尋問を続けた。
「上条君。恋人じゃないって言ってたけど。今。付き合ってる人はいる?」
当然いるわけが無い。 上条の鈍感力が折り紙つきなのは、姫神だって知っているはずだ。
それでもやはり、上条の口から直接聞きたかったのだろう。
それでもやはり、上条の口から直接聞きたかったのだろう。
「いや、いねぇけど……」
「じゃあもし。上条君のこと。好きな子がいたら。上条君はどうする?」
「そりゃもちろんうれしいさ。 けどそんな人、世界中探してもいるかどうか……」
「じゃあもし。上条君のこと。好きな子がいたら。上条君はどうする?」
「そりゃもちろんうれしいさ。 けどそんな人、世界中探してもいるかどうか……」
おかしい。 姫神の尋問は、上条を追い詰める類のモノではない。
むしろこの会話の流れは―――
むしろこの会話の流れは―――
「……だったら私が。上条君のこと…す。好きだったら……付き合ってくれる?」
は い ?
完全にクラスの空気が止まった。
姫神は基本的に無表情だが、ほんのり紅色に染まった頬と、かすかに震える両手から、かなりの勇気を振り絞ったことが伺える。
流石の上条でも、今のが告白だというのは理解できたはずだ。
だが、自分はモテるわけがないと頑なに信じ込んでいる上条にとって、
なぜ突然、姫神が告白してきたのかまでは理解できなかった。
姫神は基本的に無表情だが、ほんのり紅色に染まった頬と、かすかに震える両手から、かなりの勇気を振り絞ったことが伺える。
流石の上条でも、今のが告白だというのは理解できたはずだ。
だが、自分はモテるわけがないと頑なに信じ込んでいる上条にとって、
なぜ突然、姫神が告白してきたのかまでは理解できなかった。
なにか言わなきゃと上条が口を開いた瞬間、「ちょっと待ったー!」と、ねるとんのような掛け声が響く。
「あ、あたしも上条君、好きだよ!」
クラスの女子のひとりだった。 だがそれで終わりではない。
彼女に負けじと、「私も、私も」と、次々に手を上げる女子達。
ダチョウ倶楽部の「俺も、俺も」に似ているが、決定的に違うところがある。「どうぞ、どうぞ」が無いことだ。
彼女に負けじと、「私も、私も」と、次々に手を上げる女子達。
ダチョウ倶楽部の「俺も、俺も」に似ているが、決定的に違うところがある。「どうぞ、どうぞ」が無いことだ。
いつもならあり得ないこの光景に、上条は慌てるどころか、むしろ冷静になっていた。
そして彼の灰色の脳細胞は、フル回転することで、ある結論を導き出した。
そして彼の灰色の脳細胞は、フル回転することで、ある結論を導き出した。
(これはまさか……精神操作系の魔術!?
しかもこれだけ大勢の人間を一度に操るってことは、
「御使堕し」やヴェントの「天罰」みたいに、広大な術式が組まれてんじゃねぇか!?
くそっ!! あの様子じゃ、頼みの綱の土御門までやられちまってるみたいだし、俺が何とかするしかねぇってことか!!
それにしても敵の目的が読めねぇ……姫神たちにこんなことさせて、一体何を企んでやがるんだ!?)
しかもこれだけ大勢の人間を一度に操るってことは、
「御使堕し」やヴェントの「天罰」みたいに、広大な術式が組まれてんじゃねぇか!?
くそっ!! あの様子じゃ、頼みの綱の土御門までやられちまってるみたいだし、俺が何とかするしかねぇってことか!!
それにしても敵の目的が読めねぇ……姫神たちにこんなことさせて、一体何を企んでやがるんだ!?)
と、上条の思考はとんでもないところに着地した。
そんな役に立たない脳みそならば、三分割されてネバネバした液体の入った容器にでも入れられてしまえ。
そんな役に立たない脳みそならば、三分割されてネバネバした液体の入った容器にでも入れられてしまえ。
とりあえず上条は姫神の頭に触ってみる。 相手が魔術なら、彼の右手が活躍するはずだ。
だが反応は無い。
今度は十字架に触れないように気をつけながら、姫神の全身をくまなく触ってみる。
だがやはり反応は無い。 当然である。
だが反応は無い。
今度は十字架に触れないように気をつけながら、姫神の全身をくまなく触ってみる。
だがやはり反応は無い。 当然である。
告白直後の女性に、返事もせず、ただただ体中をまさぐるという上条の奇行に、シュールすぎて誰もツッコめずにいた。
だが、姫神本人はさすがにたまらないので、仕方なく彼女がツッコんだ。
だが、姫神本人はさすがにたまらないので、仕方なく彼女がツッコんだ。
「あの…上条君。 その……やめてほしい。」
(やっぱりこの様子じゃあ、姫神たちは、自分がおかしくなってることに気付いてないみたいだな……
まずは「俺の事が好きだ」って錯覚を何とかしなくちゃいけないけど、
幻想殺しが効かないなら、術者本人を叩くしかないな。
けど、この場はどう治めるか……)
(やっぱりこの様子じゃあ、姫神たちは、自分がおかしくなってることに気付いてないみたいだな……
まずは「俺の事が好きだ」って錯覚を何とかしなくちゃいけないけど、
幻想殺しが効かないなら、術者本人を叩くしかないな。
けど、この場はどう治めるか……)
再び彼の脳は、ろくでもない結果をはじき出す。
(とりあえずは、諦めてもらう事が先決だ。
そのためには恋人をでっち上げるしかねぇ!!
インデックス……はダメだ! 敵の狙いが魔道書とも限らない!
この場にいなくて、敵が来ても対処できるほどの能力者で、魔術の知識が多少はあって、すぐに会って説明できる人物……)
そのためには恋人をでっち上げるしかねぇ!!
インデックス……はダメだ! 敵の狙いが魔道書とも限らない!
この場にいなくて、敵が来ても対処できるほどの能力者で、魔術の知識が多少はあって、すぐに会って説明できる人物……)
上条は、呆然としている吹寄のケータイの画面が目に入る。
そこに写っている写真。 上条が無理やり押し倒し、強引に唇を奪っている(ように見える)人物。
そこに写っている写真。 上条が無理やり押し倒し、強引に唇を奪っている(ように見える)人物。
(すまん!! 美琴!!)
追い詰められて花が咲く。あとは勇気とタイミングである。
「み、みんな聞いてくれ!
さっきは恥ずかしくて、つい、いないなんて言っちまったけど……本当は彼女いるんだ!!
黙っててごめん!!」
「……誰? 貴様の彼女って………」
さっきは恥ずかしくて、つい、いないなんて言っちまったけど……本当は彼女いるんだ!!
黙っててごめん!!」
「……誰? 貴様の彼女って………」
吹寄は搾り出すような声を出す。 自分でも驚くほど口が渇いていた。
そんな様子に気付くわけも無く、上条はあっさりと答えた。
そんな様子に気付くわけも無く、上条はあっさりと答えた。
「だからその写真に写ってる娘。
美琴っつって、常盤台のお嬢様なんだぜ? …って、制服見りゃ分かるか。」
美琴っつって、常盤台のお嬢様なんだぜ? …って、制服見りゃ分かるか。」
上条の言葉を聞いて、泣き崩れる女子が数名。
ひどい者は、教室から駆け出す子もいた。
ひどい者は、教室から駆け出す子もいた。
(うぅ……操られているとはいえ、やっぱ心苦しいモンがあるな………)
教室中ドエライ空気になったが、とりあえず収拾はついた。
上条はこのままフェードアウトしようと、そーっと教室を出ようとする。
だがそこに立ち塞がる者達がいた。
上条はこのままフェードアウトしようと、そーっと教室を出ようとする。
だがそこに立ち塞がる者達がいた。
「カミやん……どこ行くねん、ワレェ……」
忘れていた。青髪を筆頭とする男子軍団だ。
どうも大人しいと思ったら、彼らはモップや箒など、各自それぞれ武器を調達していたらしい。
青髪などは、わざわざ野球部の部室から、金属バットをお取り寄せしている。
本気だ。彼らは本気で上条を殺しにきている。
だって、目が尋常じゃなく赤いもの。
背中に「天」とか「滅」とか浮かび上がっているもの。
殺意の波動に目覚めた青髪たちは、一斉に上条へと襲い掛かる。
上条はデビルバットゴーストで彼らをかわしながら、必死で逃げた。 そう、生き残る為である。 生存戦略、しましょうか。
どうも大人しいと思ったら、彼らはモップや箒など、各自それぞれ武器を調達していたらしい。
青髪などは、わざわざ野球部の部室から、金属バットをお取り寄せしている。
本気だ。彼らは本気で上条を殺しにきている。
だって、目が尋常じゃなく赤いもの。
背中に「天」とか「滅」とか浮かび上がっているもの。
殺意の波動に目覚めた青髪たちは、一斉に上条へと襲い掛かる。
上条はデビルバットゴーストで彼らをかわしながら、必死で逃げた。 そう、生き残る為である。 生存戦略、しましょうか。
遠くで爆笑している土御門を見て、魔術で操られているとか関係なく、ただ純粋にぶん殴りたいと思ったという。
上条は、命からがらハンター達から逃げ出した。
この逃走中は、捕まると賞金が無くなるどころか、命が無くなるという危険なルールである。
この逃走中は、捕まると賞金が無くなるどころか、命が無くなるという危険なルールである。
気が付けばここは、いつも御坂とよく会う例の公園だ。
必死に走っていたら、こんなところについていたらしい。
全速力で走ったせいで、口の中はカラカラだ。 指先がチリチリして、目の奥も熱い気がする。
上条は自販機に小銭を入れ、比較的まともな、ヤシの実サイダーのボタンを押す。
が、忘れてはいけない。 彼は不幸体質なのだ。
出てきたのは、あったか~いいちごおでんだ。
この寒い季節には、やはり温かい飲み物が欲しくなる。
しかし考えてみて欲しい。 冬にマラソンした後、はたしてコーンスープやおしるこに手が伸びるだろうか。
上条は無言のまま、いちごおでんをポケットにしまった。 帰ったらインデックスにでもあげよう。
必死に走っていたら、こんなところについていたらしい。
全速力で走ったせいで、口の中はカラカラだ。 指先がチリチリして、目の奥も熱い気がする。
上条は自販機に小銭を入れ、比較的まともな、ヤシの実サイダーのボタンを押す。
が、忘れてはいけない。 彼は不幸体質なのだ。
出てきたのは、あったか~いいちごおでんだ。
この寒い季節には、やはり温かい飲み物が欲しくなる。
しかし考えてみて欲しい。 冬にマラソンした後、はたしてコーンスープやおしるこに手が伸びるだろうか。
上条は無言のまま、いちごおでんをポケットにしまった。 帰ったらインデックスにでもあげよう。
そんな事を考えていると、向こうから人影が近づいてくるのが見えた。
追っ手かと思い、上条はサッと身を隠すが、どうやらクラスの男子ではないらしい。
常盤台の制服に、短めの茶髪。
上条がこれから会おうとしていた人物。 御坂美琴だ。
探す手間が省けたとばかりに、上条は御坂に駆け寄った。
だが御坂は、上条の存在に気付くやいなや、即座に踵を返し逃げようとする。
やはり、あの一件で相当嫌われたらしい。
上条は、御坂の腕をガッと掴み、逃げられないようにしてから話しかけた。
追っ手かと思い、上条はサッと身を隠すが、どうやらクラスの男子ではないらしい。
常盤台の制服に、短めの茶髪。
上条がこれから会おうとしていた人物。 御坂美琴だ。
探す手間が省けたとばかりに、上条は御坂に駆け寄った。
だが御坂は、上条の存在に気付くやいなや、即座に踵を返し逃げようとする。
やはり、あの一件で相当嫌われたらしい。
上条は、御坂の腕をガッと掴み、逃げられないようにしてから話しかけた。
「すまん美琴!! この前のは、俺が全部悪かった!!
謝ってすむ問題じゃないけど、とにかくゴメン!!」
「べべべ別にいいわよ!!! あ、あれは事故だって分かってるし!!」
謝ってすむ問題じゃないけど、とにかくゴメン!!」
「べべべ別にいいわよ!!! あ、あれは事故だって分かってるし!!」
とりあえず許しは得た。 目を合わせないところを見ると、完全に許してもらったわけではないらしいが。
だが問題はここからだ。
謝った直後に頼みごとをするというのは、いくらなんでも都合がよすぎるし、相手が了承しないかもしれない。
しかしこちらとしても悩んでいる時間は無い。
一刻も早く、精神操作系の魔術師(笑)を倒さなければならないし、
早急に彼女役も見つけなければならない。
だがその前に、御坂も魔術に掛かっている可能性があるので、上条は一応確認してみた。
だが問題はここからだ。
謝った直後に頼みごとをするというのは、いくらなんでも都合がよすぎるし、相手が了承しないかもしれない。
しかしこちらとしても悩んでいる時間は無い。
一刻も早く、精神操作系の魔術師(笑)を倒さなければならないし、
早急に彼女役も見つけなければならない。
だがその前に、御坂も魔術に掛かっている可能性があるので、上条は一応確認してみた。
「美琴、ひとつ聞くけど……お前、俺のこと好きか?」
「バッ!! ババババカじゃないのっ!!!?
そそそんなことあるわけないじゃない!!! バカじゃないの!!?
あ、あ、あたしが何でアンタのこと、す、すすすす好きじゃないといけないのよ!! バカじゃないの!!?」
「バッ!! ババババカじゃないのっ!!!?
そそそんなことあるわけないじゃない!!! バカじゃないの!!?
あ、あ、あたしが何でアンタのこと、す、すすすす好きじゃないといけないのよ!! バカじゃないの!!?」
思いっきり拒否られた。 普通「バカじゃないの」は一度に三回も言わない。
どうやら美琴は魔術には掛かっていないらしいが、これだけハッキリ断られると、それはそれで傷つくものだ。
だが同時に安心もした。 これで頼みごとができる。御坂が断るかどうかは別として。
どうやら美琴は魔術には掛かっていないらしいが、これだけハッキリ断られると、それはそれで傷つくものだ。
だが同時に安心もした。 これで頼みごとができる。御坂が断るかどうかは別として。
それは御坂にとって、とんでもない要求だった。
「頼む美琴!! (事件が解決するまで)俺の恋人(役)になってくれ!!
俺(がこの件を何とかする為)にはお前(の力)が必要なんだ!!」
俺(がこの件を何とかする為)にはお前(の力)が必要なんだ!!」
御坂がその言葉を理解【ごかい】するのに、たっぷり30秒はかかったという。
上条が焦って言葉をはしょってしまったが為に、事態はさらにややこしく、混沌としていくのであった。
上条が焦って言葉をはしょってしまったが為に、事態はさらにややこしく、混沌としていくのであった。