とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



第3話 不幸続き


 上条が土御門のせいでとんでもない騒動に巻き込まれている時、上条の寮では一人の少女がお腹をすかせていた。

「も、もうダメかも…とうま、今日はお昼までに学校が終わるらしいから早く帰ってくると思ってたのに、遅いんだよ…」

 彼女の名前はインデックス。
 上条の部屋に居候するイギリス清教の大食いシスターだ。
 上条は美琴のことが大好きになったのだが、今でもインデックスとは同居している。
 いくら上条が美琴以外の女の子と2人きりになることを嫌っていても、インデックスを追い出すほど鬼ではない。
 上条はあくまでも、『インデックスの保護者』として、同居を続けているのだ。

「…もう限界かも…冷蔵庫には何もないし、どうしよう…」

 インデックスは相当お腹が空いているのか、床にゴロリと寝転がったまま、ほとんど動くことができていない。
 このままでは餓死する。
 そんな危機的状況に置かれている彼女だったが、ここで一つ閃いた。

「そうだ!とうまを探しに行くついでに、何か食べ物を買うんだよ!確かここにお金が……」

 明らかに出かける目的が『上条を探す』ではなく、『食料確保』だ。
 以前、上条からもらった千円札を握りしめ、インデックスは上条の寮を後にした。
 この後の騒動に巻き込まれるとも知らずに―――――


 ♢ ♢ ♢


 場面は変わって、こちらは今回の被害者である上条当麻。
 相変わらず結標に追いかけられている…
 かと思いきや彼は今、映画館で映画を見ていた。

「どうして…こうなった……」

 上条はスクリーンに映し出されているそれほど面白くもないSF映画を見ながら、小声でつぶやいた。
 当然、上条自らの意志でこの映画を見ようと決めたわけではない。
 強引に見せさせられているのだ。
 今、上条の隣にいる一人の少女によって。

「ちょっと、ちゃんと見てるんですか?せっかく2人っきりなんだから、超楽しまないと。」
「お、おう…わかってるよ、絹旗…」

 そう、『アイテム』の一員でB級映画マニアである、絹旗最愛だ。
 彼女は映画を見ながら強引に上条の右腕を両腕で掴み、寄り添おうとしている。
 普通の男子からすれば相当嬉しい状況なのだが、上条にとっては全くもって嬉しくない。

(なんでだ…御坂を探してたはずなのに、なんで絹旗と一緒に映画を見てるんだ…)

 そもそも上条が映画館に入った、結標から逃げ切るためだった。
 映画館前で絹旗と出合い、状況を察した絹旗により映画館へ連れられ、一件落着かと思いきやいつの間にかこんなことになっていたのだ。
 一体どこで選択肢を間違えたのだろうか。
 上条にわかるわけもなく、今わかることと言えば、絹旗が例の薬の影響を受けていることくらいだ。

(ダメだ…頭の悪い上条さんではどうしてこうなったのかわからん。ていうかいつまでもこんなことしてる場合じゃないんだけど…それに御坂以外の女の子とデートするなんて…)

 こうやって暢気に映画を見ている間にも、美琴に青ピの魔の手が迫っているかもしれないし、先ほど与えてしまった誤解が深まっているかもしれない。
 だから一刻も早く、美琴を探し出さなければならない。

(結標はもうこの辺りにはいないよな。………行くか。)

 上条は脱出を決意。
 しかし今の絹旗に『御坂を探しに行く』、と言えばこのまま強制的に映画を見せさせられ続けることくらい、上条にもわかるので

「あ、あのさー絹旗、俺ちょっとトイレ行ってくるよ。数分で戻るから待っててくれ。」

 と、簡単なウソをついた。
 まあさすがにこれくらいでは腕を離してもらえないか、とも考えていたが、

「超了解しました。早く戻ってきてくださいね?」
「…お、おう……」

 絹旗は以外にも簡単に納得してくれた。
 そして上条は腕を離してもらい、席を立ちロビーへと移動。

「よし…結標はいないし、絹旗も追ってきてないな?」 

 まるで何物かに狙われてるターゲットのように、周りをぐるぐると見回す。
 さらに映画館から出る際には、辺りに結標がいないか入念に確認する。
 この映画館は人通りの多い大通りに位置するので、人ごみに結標がまぎれていないかが心配だったが、今のところ姿は見られない。
 上条はホッと一息ついた。

「ふぅ……なんとか出て来られたか。それにしても結標や絹旗が俺のことを好きになるとは…恐ろしいなあの薬…」

 ネットで簡単に買える物なのに、この尋常ではない効果。
 吹寄や結標、絹旗が普段とは全く違う態度だったことを思い出すとゾッとする。

「まあ会ったのが絹旗でよかったほうか。もし打ち止めとか滝壺にあって好きになられたら、一方通行と浜面にぶっ殺されるからなー。」
「ミサカがどうかしたの?ってミサカはミサカは突然名前を呼ばれたので声をかけてみたりっ!」
「………え?」


 上条は今後ろから聞こえた声にかなり聞き覚えがあり、ものすごーく嫌な予感がした。
 頼むからウソであってくれ、と思いながら左を向いてみると

「なンかよォ、今俺ら名前を呼ばれた気がするンだが気のせいかァ?」
「や、やっぱり……」

 上条を見て立っていたのは、小さな女の子と、白髪で杖をついた少年。
 もうわかると思うが、少女は『妹達』の上位個体である、打ち止め。
 そして少年は学園都市最強の超能力者、一方通行だった。
 タイミング悪く、どうやら2人は映画を見に来たらしい。
 上条はその場で凍り付いた。

(打ち止めだけならまだしも……一方通行までいるとか…上条さん今度こそ終わった…)

 今から訪れる出来事。
 きっと打ち止めで抱きつかれたりして、一方通行の背中からは黒い翼的なものが噴出するだろう。
 そして上条は自分の人生が間違いなく終了すると理解できた。
 だが、

(御坂と結ばれるまでは死んでも死にきれん!!!なんとかしないと!!)

 上条は自分が死んだ後に、美琴が別の男と付き合ったりするなんて考えたくもなかった。
 ではどうすれば、この危機的状況を回避することができるのか。
 上条は今まで戦場で得てきた経験をフル活用し、この場から脱出を図ろうとした。
 したのだが…

「あ、上条。それに一方通行に打ち止めまで。」
「みんな久しぶり。」
「……浜面と滝壺まで…不幸だー…」

 上条の不幸、健在。
 一方通行、打ち止めと反対方向から歩いてきたのは、浜面仕上と滝壺理后の2人。
 尋常ではないくらい、タイミングが悪い。

(や、ヤバい。これは冗談抜きでヤバい。打ち止めと滝壺が薬の影響受けたら……上条さん抹殺されちゃう…)

 まさに絶対絶命、これは本格的に人生が終わった、と感じている上条に滝壺が声をかける。

「かみじょうくん?どうかしたの?」
「い、いい、いや!どうにもしてないぞ!?上条さんはいつも通りですことよ!?」
「ならいいけど…あ、はまづら。もう映画始まっちゃうよ?」
「お、もうそんな時間か。悪いな上条、俺らだけ見せつけちまって。じゃ、またな。」
「またね、かみじょう君。」

 浜面と滝壺は上条の前を通り、先ほどまで上条が絹旗と映画を見ていた映画館へ入って行った。
 …おかしい。

「…あれ?何ともない…?」
「あァ?なンかあったのか?さっきから何か警戒してるみてェだがよォ。またやっかいな事件にでも巻き込まれてンのか?」
「だったらこの人にお願いしてみたら?ってミサカはミサカはナイスな提案をしてみたり!」
「あ、いや………???」


 滝壺に続き、打ち止めにも変化は見られない。
 いつも通り一方通行にくっついており、上条に惚れてはいないようだ。
 と、一方通行ははっきりしない上条を見て、若干苛ついた感じで言う。

「なンだ?結局何かあったのか、なかったのかどっちなンだ!!?」
「い、いや!なんでもない!!俺の気のせいだったみたい!!だから怒らないでください!!」

 声を荒げる一方通行に対し、上条は顔を引きつらせ平謝りをする。
 これ以上不幸な出来事を起こすわけにはいかない。
 結構マジで謝っていると

「あー!!見て見て!!あのお店に可愛いぬいぐるみが売ってる!ってミサカはミサカは思わず目を輝かせながら指を指してみたりっ!!!
「ぬいぐるみだァ?……まあ映画が始まるまで時間はあるけどよォ…………行くか?」
「うん!!もちろん!!あ、じゃあミサカたちはあっちのお店に行くからバイバーイ!ってミサカはミサカは元気にお別れの挨拶をしてみたりっ!」
「お、おう!またな!」

 こうして打ち止めと一方通行とも別れ、ある意味助かった上条は額の汗を拭った。
 とりあえず危機は回避できた、だが上条には疑問が大量に生まれていた。

「どういうことだ…?なんで打ち止めと滝壺はなんともなかったんだ?それにどんな基準で俺のことを好きになっちまうのかよくわかんねーな…」

 と、いうのも現時点でわかっているのは『女性は上条のことを好きになってしまう』と、いうことだけ。
 だが、これだと今周りを歩いている女性が全員上条のことを好きになってしまうのだが、周りを見回しても誰もそんな素振りを見せてはいない。

「年齢で影響を受けるかどうか変わってくるのか?それとも時間差……わからん。全くわからん…とりあえず御坂を探すか…誤解を解かなきゃいけねーしな。…そうだ!携帯の充電器買って御坂に電話してみよう!!」

 携帯の充電器。
 上条は生活が苦しいため、普段絶対に買わないような代物だ。
 だが、美琴のためならどんな出費でも惜しまない。それに惜しんでいる場合ではない。
 美琴を探し出すため、上条は街の中を走り出した―――――


 ♢ ♢ ♢


 一方そのころ、全ての元凶である土御門元春は自分の部屋で『増強剤』について調べていた。
 イスに座り、机の上に置かれたノートパソコンで情報を調べつつ、手に持った1枚の紙に目を通していた。
 その紙には増強剤がどのような効果を生むのかが、記されている。
 つまり説明書である。

「なるほど…そういうことか。」

 土御門は独りでに納得する。
 彼は『増強剤』がどういうものなのか完全に理解することができていた。
 きっとこの場に上条がいたらこういうだろう。『それを読んでから、増強剤とやらを学校に持ってこい』、と。

「でも青ピは薄めたものを飲んだからまだいいけど、上やんはちょっとまずいかにゃー…」

 そう言って土御門は紙を机の上に放り投げた。
 彼の言う『まずい』が、どのくらいまずいのかはわからない。
 とにかく、『増強剤』がどのような効果をもたらし、上条がどういう状況にあるのかを認識した土御門は、この騒動を一刻も早く終わらせようと…

「いや~……本当に面白いことになったな。上やんのことだから何か起きるとは思ってたけど、まさかみんながみんな惚れだすとは。ヤバい、にやけが治まらん。」

 していなかった。
 土御門はこの状況を楽しんでおり、その言葉通り顔から笑みが消えることがない。

「そうだ。やっぱり舞夏は上やんに会わせるべきじゃないな。電話でここに呼ぶか…えーと携帯は…」

 ポケットに入っていないことを確認してから、そこそこ散らかっている部屋を見回す。
 さっき帰ってきてからどこに置いたっけ、と考えていると

「ん?着信音?誰からだ?」

 室内に着信音が流れた。
 音が鳴っているのは机の上、土御門は机の上に置いてあった携帯電話を手にし、開く。
 液晶に映し出されていた名前はというと

「非通知…?舞夏や上やんが非通知でかけてくるわけはないし…一体誰だ?」

 電話の相手は全く検討がつかない。
 出るべきか出ないべきか。
 土御門はしばらく携帯の画面を眺めていた後、

「ま、いいや、出るか。もしもし一体誰だにゃー?」

 その電話の向こうから聞こえてきた声とは

『もしもし?土御門かい?』

 ♢ ♢ ♢


 場面は再び上条に戻る。
 先ほど一方通行と打ち止めと別れてから30分が経過、彼が今どうなっているかというと

「もう無理…上条さん死ぬって…冗談抜きで…」

 上条は以前偽デートで美琴と訪れたことのある、フランクフルト屋の前に設置されているイスに座り、ぐったりと机に倒れ込んでいた。
 それもそのはず、上条は30分間女の子たちに追いかけ回されていたのだ。
 この30分のうちに上条が出会った女の子とは、雲川、郭、黒夜、風斬、そして吹寄の5人だ。
 その5人のうち、上条を好きにならなかったのは郭のみ。
 郭以外の女の子は、全員上条に猛烈アタックをしてきた。

(な、なんでだ?なんで俺が歩くたびに知り合いの女子に会うんだよ…しかも例のごとく断れば怒って追いかけられるし…) 

 特に黒夜はヤバかった。
 会ってすぐに告白され、好きな人がいると言って断ったら『窒素爆槍(ボンバーランス)』を使い、抹殺されかけた。
 命からがら逃げ出すのが精一杯で、美琴を探す余裕など一切なかった。

(これって…フラグ体質とやらだけじゃなくて、不幸体質も増強されてるんじゃ…?)

 だとしたら笑えない。
 ただでさえ不幸なのに、いつも以上に不幸な出来事が起きれば人生やっていられない。

「と、とにかく、これからは慎重に行動しないと。このままだといつまで経っても御坂に会えないしな。」

 これ以上、無駄な時間を食うわけにはいかない。
 この状況を打破するために何か方法はないか、上条はおもむろにポケットから携帯を取り出した。

「御坂からの返信は…やっぱり返信はないか。電話も出てくれないしどうなってんだ?」

 上条は美琴を探すことは失敗していたが、携帯の充電器はなんとか買うことができていた。
 充電が完了した際、美琴から『今日ヒマ?』と、メールが来ていたことに感動したのは言うまでもない。
 だが、メールを送っても返事は来なかったし、電話をかけても一向につながらない。

「…冷静になって考えてみると……御坂に何かあったんじゃないだろうな。急ぐか…でも場所もわからないのに探しても見つかる可能性は低いよな…」 

 美琴が結標に飛ばされた時と違い、冷静になった上条は頭を抱える。
 メールも返ってこない、電話もつながらない、そもそも飛ばされた場所が第7学区内かどうかもわからないのだ。

(…何かいい方法は………ないか…)

 結局のところ適当に探し歩くしか方法は無い。
 走り回って消耗していた体力も回復してきたので、美琴と青ピを探しに行こうと思い立ち上がろうとした時


「ん?電話か。誰だろ。」

 手に持っていた携帯電話が鳴った。
 “御坂か!?”と思い、携帯を開いてみると

「ちっ…なんだ土御門かよ…テンション下がるな……」

 地味にひどい。
 しかし出ないわけにもいかないので上条は通話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てる。

「もしもし土御門か?何の用だ?」

 上条はあからさまに不機嫌な声でそう言った。
 土御門のせいで、こんなめんどうなことになっているのだから、不機嫌になるのも無理は無い。
 しかしこの電話、上条にとっては以外と助けになるものだった。

『おいおい上やん。人がせっかく『増強剤』について教えてやろうと思って電話したのに、“何の用だ”はないんじゃないか?』
「!?ほんとか!?ほんとにわかったのか!?」
『ああ。しかも増強剤の効果だけじゃなく、どんな人が上やんに惚れるのかってことまでわかったぜよ。』
「おお…よく調べられたな。」
『実は上やんみたいに、普段なんともない女の子から好かれるって前例があったんだにゃー。なんでもどっかの国で日本の会社員が、同じ症状になったとか。確か外資系企業の証券取引の仕事をしてる人だったとか…』
「……ん?」

 そこまで聞いた上条には、自分と同じことになったという会社員に、ものすごく心当たりがあった。

(……その会社員ってまさか父さん…いや気のせいだよな。そこまで世界は狭くないはずだよ…な?)

 上条の心当たりとは実の父、上条刀夜だ。
 彼もまた、上条に負けないくらいのフラグ体質の持ち主であり、それが災いして妻である詩菜に怒られることが多い。
 上条は“気のせい”と否定するも、今の土御門の説明を聞く限りほぼ100%父で間違いないだろう。

「ま、まあ俺と同じことになった人の話はいいからさ、薬の効果について教えてくれよ。」
『ああすまん。じゃあ説明するけど…結構長くなるからメモをとった方がいいと思うぜよ?』
「メモか。えーと……ペンはあるけど紙が……あ、レシートの裏使えばいいか。」

 上条は財布の中から長めのレシートを取り出し、メモを取る準備をする。
 レシートは以外と便利なものである。ちなみに作者も利用したことあります。

「よし、これでOKだな。土御門、説明を頼む。」
『了解!まず『増強剤』の効果なんだが―――――」







タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー