とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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第4話 突然の幸福


 土御門より説明を受けること15分、上条は一通り話を聞き終わっていた。
 土御門が上条に説明したのは『増強剤について』と『増強剤によって上条にどんな効果が生まれるのか』の2つである。
 その内容とは…


【増強剤について】
  • 飲むことにより、飲んだ人の性質がランダムに1つ強化される
  • 飲む量により増強剤の効き始めるまでの時間は変化する
  • 効き始めるまでは体調不良になる
  • 増強剤の持続時間は飲む量、又は個人によって異なる


【上条への効果】
  • 上条は『フラグ体質』が強化された
  • よって女性ならば年齢、国籍関係なく上条を好きになる(女性といっても人間のみ)
  • ただし、上条と『直接会話』をしたことがある人限定
  • 男、オカマ、は上条を好きにならない
  • その他、上条のことを好きにならない女の子は
⇒『普段から上条を好きな人(ただし“好きかも”、ではなく“上条が大好き”と言い切れるくらいではないとダメ)』
⇒『上条以外に好きな人がいる場合(同じく“好きかも”、ではなく“この人が大好き”と言い切れるくらいではないとダメ)』
  • 例を挙げると、郭は半蔵のことを好きなので対象外となり、雲川ははっきりと『好き』と言えないため影響を受けた
  • 増強剤の影響を受け上条のことを好きになった女の子は、上条に振られると凶暴化する
  • 上条が治ると同時に、影響を受けていた女の子たちの『上条に惚れていた』という記憶は消える


 以上が土御門の説明だった。

「……怖いなー…」

 上条は呟いた。
 『凶暴化する』というところも怖いが、何より『好きな人がいない女性なら、上条を好きになる』というところが怖い。
 とにかくこの状況を解決するには、自分の体内に入ってしまった増強剤をなんとかしなくてはならないらしい。

「薬の効果はわかったからさ、どうやったら元に戻るんだよ。まさか一生このままって言うんじゃ…」
『それはないから大丈夫ぜよ。けど治し方は今調べてるから、もう少し待つんだにゃー。』
「もう少しか……わかった。じゃあ俺はみs…青ピを探しに行って来るよ。」
『あ、ちょっと待つんだにゃー。もう一つ話があるぜよ。」
「話?なんだ?大事な話なのか?」
『ああ。上やんにとってはかなり重大な話ぜよ。実はだな…』
「実は?」

 以外にも土御門の声は、真剣そうにものに変わった。
 今までのおちゃらけた雰囲気からの急な変わりように、上条にも緊張が走る。
 そして、電話の土御門は上条に真剣な口調で言った。

『イギリスからステイルたちが来てるらしい。さっき“今学園都市に来ているんだがインデックスに会えないかい?”って電話がかかってきたんだにゃー。』
「ステイルが?…インデックスに会いたいって…もしかしてまた事件か何かなのか!?」
『観光だそうだ。』

 上条は携帯を思い切り地面に叩き付けそうになった。

「……勝手に会えって言っといてくれ。ていうか、それのどこが重大な話……ん?“たち”?お前今“ステイルたち”って言ったか?」
『ああ。言ったぜい。』
「まさか…」


 尋常じゃないくらい嫌な予感がする。
 正直これ以上聞きたくなかったが、聞かなければもっと面倒なことになりそうなので、上条は仕方が無く尋ねる。

「それは…他にも来てるってことだな?その、魔術サイドの女の子たちが…」
『ああそういうことぜよ。結構多くの魔術師が来てるみたいだにゃー。しかもほとんど上やんと知り合いだったような…』
「や、やっぱりか…で、誰が来てるんだ?」
『えーと今回学園都市に来てたのは、確か…』

 上条は願った。
 頼むから穏便な人で、魔術とかろくに使えない人が来ていてくれと。
 もしバリバリ攻撃系の魔術が使える人が来てしまっていて、その女の子に会えば多分死ぬ。
 好きだと言われても、美琴以外の女の子と付き合うなど考えられない。
 また偽のデートでさえも美琴以外としたくはないので断ることは間違いないのだか、その際逆上した女の子に抹殺されるだろう。

「誰だ?一体誰なn」

 そこまで言って、上条は携帯電話を耳から離した。
 土御門と話すのがめんどくさくなったからではない。

(今…確かに聞こえたよな。土御門の声じゃなくて…御坂の声が…俺の耳に間違いはないはず。)

 かなり小さい声だったが間違いないはずだ。
 美琴のことを好きになってからの上条の耳は、美琴の声が他の人の声より断然よく聞こえるように特殊に進化していた。
 美琴が近くにいると確信した上条は、声が聞こえた方向へと急いで走る。

「確かこっちのほうから……」

 声がしたと思われる場所できょろきょろ辺りを見回し、真剣に美琴を探す。
 すると、その先の木の陰からひょこっと顔を出したのは

「わわっ…」
「おお!!やっぱり御坂!!」

 本日2度目の遭遇。
 上条が探し求めていた少女、御坂美琴だ。
 ようやく会えた。
 これで青ピの魔の手から守ることができる上、結標と付き合っているという誤解が解けると思い、上条は歓喜したが

「ん……どうした御坂?具合悪いのか?」

 美琴の様子がおかしい。
 普段のように元気が無く、もじもじしているし、顔も少し紅く染まっている。
 上条は美琴が重大な病気にかかっているのでは、と思ったがすぐに別のことを考えついた。

(そ、そうか!よく考えたら御坂も薬の影響を受けるんじゃないか!!)

 ここにきて、上条はようやくそのことに気がついた。
 もっと早く気づけと言いたい。
 もし美琴が影響を受けているのならば、今にも告白してくるだろう。

(……それはそれで嬉しいような…そういえばさっき会った時は…いつも通りだったっけ?いや、でもちょっとしか話してないしわかんねーな…)

 果たしていつも通りなのか、それとも増強剤の影響で告白してくるのか。
 もし、美琴がいつも通りなら、それは美琴に誰か好きな人がいるということ。
 もし、美琴が上条に惚れているような反応を見せれば、それは普段美琴は上条のことを何とも思っていないということ。
 ここで上条は重大なことに気づいた。


(……あれ?これって、御坂がどんな反応してもダメなんじゃ…?)

 相変わらず鈍感な上条は『美琴が自分のことを好きで、いつも通りの反応をする』という選択肢が抜けていた。
 なんでだ、どうして自分にチャンスがないんだ、俺が不幸だからか、などといろいろ考えていると、目の前の美琴が

「あの…えと………と、とぅまぁ…」

  • 『みことのこうげき。みことははずかしそうに、かみじょうをなまえでよんだ。
  かみじょうに1000000000のダメージ。かみじょうはみことからめをはなせなくなった』

 上目遣いで繰り出された美琴の攻撃は、上条の鉄壁の理性を簡単に崩壊させるほどの圧倒的破壊力を持っていた。
 今、上条のハートには美琴から放たれた矢が100本くらい刺さっている。

(……だ、抱きしめてもいいだろうか…)

 もう胸が苦し過ぎる。
 美琴が可愛過ぎて抱きしめたい衝動にかられたのだが、付き合ってもいないのに女の子を抱きしめるのはどうかと思い、上条の両手は宙をさまよっていた。
 端から見ればただの変人だ。
 目の前の美琴も『え…何コイツ?』みたいな表情をしている。

(…ていうか名前で呼ばれたし、いつもと反応が違うってことは、増強剤の影響を受けてるってことか…それって普段俺のことなんとも思ってないってことだよな…)

 それを考えると上条は急に悲しくなってきた。
 宙をさまよっていた手も下がり、これからどうしようかと思った時だった。

「ッ!!?え、ちょ、お、おい御坂!!」

 上条は美琴に抱きつかれていた。
 美琴の腕は上条の背中に回され、密着した状態だ。

「み、御坂さん!?あの、ここ人前なんですけど、ああでも離れてほしくない。ちょ、これどうするべき、なあ土御門……って電話切れてるし!!」

 抱きつかれたことにより、上条の幸せメーターは一気に上昇。
 どうしていいかわからず、電話の向こうの土御門に意見を求めようにも切られていた。
 大好きな女の子に抱きつかれているのだ、当然上条は盛大にパニクる。

(こ、こここっこここっこここれはマジでどうするべきだ!?だ、だだだ抱きしめていいのか!?いいよな!?いいんだよな!?)

 美琴の感触や匂いにより、上条は我慢の限界が近づいていた。
 このまま抱きしめてさらってしまおうか、とか危ない思考にまで達してしまっている。
 本当にどうすればいいのか。
 上条は一旦美琴から視線を外し、周囲を見回す。

(周りにかなり人がいるけど…上条さんはもうこれ以上我慢できません!!!)


 本当に限界だった。
 思い切り抱きしめてしまおうと思い、抱きついている美琴に視線を移したのだが、美琴は顔を上条の胸に埋めているため表情がわからなかった。
 だが、それが逆に上条を冷静にした。

(……だよな。俺のことなんて…普段はなんとも思ってないよな…)

 冷静になった上条は今、美琴に抱きつかれているのは『増強剤』の影響だと再認識した。
 もし幸せそうな美琴の顔を見てしまっていたら、そのまま意味もなく美琴を抱きしめ、上条は青ピのように暴走してしまっていたかもしれない。

 そして上条は抱きついている美琴を自分から引き離した…かと思いきや、逆にギュッと抱きしめていた。
 その状態で、上条は美琴に告げる。

「こうしたことも記憶からなくなるんだよな……でもな、みさ…いや美琴。言っとくぞ。俺はお前が大好きだ。だから俺は絶対にお前を好きにさせてみせるぞ。」

 こう言っても増強剤の影響を受けているのだから、意味がないことくらいわかっている。
 薬の効果が無くなれば、美琴からは『上条に惚れていた』、という記憶も無くなるのだ。 
 それでも上条は言っておきたかった。
 これは上条の決意だ。今の騒動が解決したら振られることなど恐れずに、想いを伝えるということだ。

「……ん?」

 と、腕の中の美琴が何やらもぞもぞと動いている。
 なんだ?と思い、抱きしめる力を少し弱めると、上条の胸に埋まっていた美琴が真っ赤になった顔を見せ、下から見上げていた。

(う…可愛い…)

 せっかく落ち着いたはずの理性が削り取られるほどの可愛さだった。
 そんな上条に、美琴は震えるような声で言った。

「あ、あのね、わ、わた、私も!ア、アア、アンタのことが、だ、だだ、大好き、だよ?」
「ッッッ!!??!?…………お、おう。」

 美琴が可愛過ぎる。
 顔を真っ赤にして、上目遣いでこちらを見てくる彼女とまともに目を合わすことができない。
 上条は美琴の顔が見えなくなるように、美琴を自分の胸に押し付けギュッと抱きしめた。

(ち、違うぞ上条当麻。御坂は薬の影響を受けてるだけなんだ。だから意識すんな俺!!)

 その通り。
 意識してはならない。
 美琴の言葉は本心ではなく、薬に影響されたまやかしの言葉なのだから。

(よし、落ち着いたしそろそろ離そうかな……い、いやもうちょっとだけ…)

 自分の決意を言うだけ言ってすぐに離すつもりだったが、あまりに美琴の抱きしめ心地がよかったので誘惑に負けてしまった。
 さらに抱きしめる力を強めたのだが、その際美琴の様子が何やらおかしいことに気づいた。

「……御坂?どうした?力が抜けてきてるみたいだけど…」
「…ふにゃー」
「ええええええええええ!!??!?ど、どうした急に!?だ、だだだ大丈夫か!!?」

 美琴は急に全身の力が抜けたように崩れ落ちかけ、上条が慌てて抱きかかえる。
 美琴は上条の腕の中で、気絶してしまっていたのだ。
 その顔はとても幸せそうだった―――――


 ♢ ♢ ♢


 上条達がいる場所から数キロ離れた地点に、とある集団が街を徘徊していた。
 目立つ服装や格好の者が多く、通行人からなかり視線を浴びていたのだが、集団は特に気にする様子を見せない。
 そんな集団の先頭に立っているのは、長身で赤髪の神父。

「全く…あのバカはなんで迎えにこないんだよ。」

 そうため息まじりに言うのはイギリス清教の魔術師、ステイル=マグヌスだ。
 “あのバカ”とは土御門のことであり、ステイルはタバコをふかしながら、ぶつぶつと愚痴を呟く。

「まあそう言うなよ。自由に動ける分、楽でいいじゃないのよ。」

 と、ステイルに後ろから声をかけるのは、天草式十字正教の一員である、建宮斎字だ。
 今回はアックアもいないし、思う存分学園都市を観光できるということで、かなりテンションが高い。
 そんな建宮にステイルが振り返って言う。

「まあ…そう言われると気も楽になるけど…………一つ聞いていいかい?」
「ん?何なのよ?俺の答えられる範囲ならなんでも答えるのよな。」
「じゃあ遠慮なく質問させてもらうよ。さっきまでここにいた、女性陣はどこへ行ったのだい?」
「へ?」

 そう言って建宮の後ろを指差すステイルに、建宮は後ろを振り返る。
 ……いない。
 女性が誰もいない。
 神裂も、五和も、レッサーも、オルソラも、アニェーゼも、その他の女性も、とにかく一緒に来たはずの女性は消え去っていた。 
 残っているのは、野郎だけである。
 建宮の顔から血の気が引いていった。

「浦上と対馬もいない!?う、牛深、香焼、野母崎、諫早!お前ら何が起こったか見てなかったのか!?」

 残っている天草式十字正教のメンバーに尋ねると

「い、言いづらいんすけど……全員街中へ行っちゃったっす。」
「それもかなりの勢いで…」
「俺の考えだと、みんな上条当麻に会いに行ったんじゃないか?」
「いや浦上とか対馬とかシェリーは違うだろ。買い物に行った人もいるのでは?」

 彼女達の目的はともかく、全員が勝手にどこかへ行ってしまったらしい。

「………い、一大事なのよーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」






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