とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



0日目あるいは序章


 学園都市の空の玄関口である第23学区の隅にあるマンションの一室では、4人の男女による熱い議論が繰り広げられていた。
「暗部の仕事に拒否権はないのよ。それは貴方が一番良く知ってるでしょ、一方通行」
 赤毛をツインテールにまとめブレザーをマントのように羽織った少女が、真っ白な髪の毛に煌々と輝く赤い瞳を持つ少年・一方通行に問いかける。
「ンなことなんざァ、百も承知なンだがよォ」
「やはり貴方としては打ち止めを置いて海外へ出ることはしたくない……というわけですね」
 一方通行の言葉を補足するように隣にいた爽やかな青年が、自身の想い人の幼い頃にそっくりな少女を思い出しながら問題点を明らかにする。
「黄泉川は学校の出張で1週間ほど学園都市の外、あのニート独りでは生活は厳しいンだよォ」
 一方通行はじゃんじゃん爆乳教師と元研究者現ニートの保護者二人組の顔を忌々しそうに思い出す。
「となると、打ち止めは誰かに預けるしかないってことになるわね」
「ですが、それは一方通行が納得しませんね」
 赤毛の少女――結標淡希と爽やか青年――海原光貴は、この重度な過保護である意味子煩悩とも言える一方通行の性格をよく理解していた。
「連れて行くっつゥ選択肢はねェからな」
「わかっていますよ」
 今回の任務は海外における大規模な掃討作戦である。『グループ』の主力で学園都市第1位の超能力者である一方通行の力は必要不可欠であった。
「なぁ、一方通行」
「なンだよ、土御門ォ」
 今まで議論を黙って聞いていた金髪グラサンアロハシャツの男――土御門元春がゆっくりと顔を上げる。
「お前の言い分はこうだ。任務に打ち止めは連れていけない。保護者がいないから学園都市に置いておくこともできない。だから任務に行くのをためらっている」
「要約するとそォいうことになンなァ」
「だったら、お前が信頼出来る奴に打ち止めを預ければいい」
 土御門の提案に一方通行は露骨に不快だと表情を歪める。
「一方通行にその条件を満たす人物はいないと思いますが?」
 そうこの問題は一方通行が信頼して打ち止めを預けることができる人物がいないからこそ起きているのだ。海原は土御門の言葉に疑問で返す。
「確かに、一方通行の知人でその条件を満たす人物はいない」
 あんまり友達いないしにゃーとからかう土御門に、一方通行は青筋を浮かべ、歪みに歪みきった笑みさえ浮かび始める。
「だが、その条件に当てはまる人物をオレは知ってる」
「どこのどいつなンだよォ、ソイツはァ! もしくっだンねェ奴だったらテメェは血祭りだからなァ!」
 本格的にキレそうな一方通行の姿に結標はまた始まったよとでも言わんばかりに肩をすくめる。
「オレは一方通行がいない学園都市で、最も打ち止めの面倒を見るにふさわしい人物だと思うがな」
「なるほど、自分にはそれが誰か予想がつきましたよ。確かに彼女なら適任だ」
 土御門の言葉に海原は人好きのする笑みを浮かべて自身の想い人のことを考える。
「ここまで言ってわからないの?」
 結標も予想が付いたらしく、まぁそれならいいんじゃないと言わんばかりだ。
「で誰だ」
「打ち止めのオリジナル――『超電磁砲』だ」



 海外へ出発する前日、一方通行のテンションは果てしなく低かった。打ち止めにしばらく会えなくなることもそうだが、土御門がサングラス越しにニヤニヤしながら語ったプランとやらがどうにも引っかかったからだ。
 とはいえ、グループはそれぞれの護りたいもののために力を使うことを誓った組織だ。土御門もそういう人物だし、打ち止めに危険が及ぶことはないと断言してもいい。ただ何かを企んでいる……そんな気はする。
 とはいえ、一方通行に選択肢はない。個人的にいけ好かない超電磁砲ではあるが、『妹達』のオリジナルである彼女が打ち止めの面倒を見ないことはないだろう。それに家族を心のどこかで求める一方通行だからこそ、実の姉といってもいいオリジナルと打ち止めに姉妹として生活するという経験があってもいいのではないかと考えたのだ。
 黄泉川のマンションにいつの間にか辿り着く。杖をカツカツと鳴らしながら、扉まで近づくといきなり小さな影が一方通行に飛びついてくる。
「おっかえりーってミサカはミサカはあなたに抱きついてみる」
 チッと軽く舌打ちを打つ一方通行だが、その表情は満更そうでもなく、抱きついてきた打ち止めを離して、ポンと頭に手を置く。
「黄泉川のやつはどうしてる?」
「明日の準備をしてるよってミサカはミサカは暗に誰も相手をしてくれなくて寂しいって伝えてみる」
「そォか」
 打ち止めを連れ立って慣れ親しんだリビングへと向かう。コンビニで買ってきた打ち止めの好きな駄菓子を与え、一方通行はソファーに座るように促す。
「そういえば明日から海外に行くんだよねってミサカはミサカは一緒にいきたかったなと心の中を語ってみたり」
 駄菓子を開封することなく打ち止めは少し寂しそうに一方通行を見上げる。
「そのことについてなンだが、打ち止め。明日からおまえ、オリジナルンとこへ行け」
「え、お姉様のところ?」
「あァ」
 一方通行の予期せぬ言葉に思わず言葉を失っていた打ち止めだったが、彼の言葉を理解するとぱぁっと先程までと打って変わって表情が明るくなる。
「イェーイってミサカはミサカは予期せぬサプライズで戸惑いつつもお姉様と遊べることに喜びを爆発させてみたり」
 打ち止めは学園都市に住む他の妹達に比べてオリジナルと接する機会が少ない。だから彼女と接することができるのが嬉しいのだろう。
 そんな打ち止めの様子を眺める一方通行の心境は嬉しくもあり寂しくもあり複雑なものだった。
 だが、打ち止めを護るならこれが一番いいのだと割り切り、一方通行は良かったなと言わんばかりに優しく打ち止めの頭を撫でる。
「でもあなたと会えないのは寂しいなってミサカはミサカはしょげてるアクセラレータに早く帰ってきてねと暗に伝えてみる」
「クソッタレな仕事なんざさっさと終わらせてやンよ」








ウィキ募集バナー