とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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子守唄



日差しが暑い。
自身の寮の部屋の前で上条は顔をしかめながら重い口を動かした。

「あー、夏だねぇ、暑すぎて俺の頭もいかれたらしい」

「いや、カミやんの頭はもとから素晴らしい感じにぶっ壊れてるぜよ」

「やかましい!! とりあえずこの惨状の説明をもう一回しろってんだ!!」

「魔術師に攻められた~~」

「それだけで済ます気か!! まず、この部屋は!!?」

失礼、先ほどの表現を修正せねば、もうこれを『寮の部屋』と表現するには無理がある。

「ただのボロボロ黒ずみ空間になっているじゃあーりませんか!!!!」

「イッツ、マジックイリュージョン!!!」

「だからやかましい!!! もういいよ!!!」

実は、彼にとって部屋の問題は 二の次だった。



「……もう一度聞く、インデックスはどうなった」



魔術師の目的、
おそらくは、インデックス、『禁書目録』。
静かな空間が生まれる。
土御門は表情を殺し、自室に戻ってそれを抱えてきた。
それを見て上条は言葉が発せられなくなる。
現実を受け入れることができない。
土御門の発言を聞き、バカらしいと一蹴した事実が、
そこに、存在していた。









「だぁ~~~~~ぶ~~~」

赤ちゃんがいた。
銀髪碧眼のかわいらしい女の子がいる。

「だぁああああかぁああああらぁああああ 
 どうしてそうなったんだよぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「その魔術師と同じ組織の奴がイギリスの遠隔制御霊装に細工したんだぜい。
赤ちゃんなら持ち運び楽だしにゃー、
 扱いやすさもピカイチ。
拷問の末に自殺、なんてこともおこりえないからにゃ~」

「どうすんだよこれ!!!」

「まぁ、魔術師はステイルと神裂がフルぼっこにしたから心配ないぜよ!!」

「部屋の惨状は奴らの仕業か!!!!!」

「ほれ、パス。じゃあな、パパさん!!」

「ほれ、パス、じゃねーよ!!
パパじゃねーよ!!
 ああ、よしよし泣かない泣かない
 って待て!!! 土御かd「バタン」……不幸だ」

日差しが暑い。



日差しが暑い。

「寮の……改修、ですか」

「ああ、そうだ」

常盤台の寮の前で御坂美琴は寮監から説明を受けていた。
クレーンや大型の機械の音が蝉の鳴く音とともに耳に響く。

「お前や白井は、確か風邪かなにかで入院していたな。
 ならば知らなくても仕方あるまい」

寮監はメガネをあげながら説明する。

「一週間ほど前に木原と名乗る人物がここを襲撃して来てな。
 科学だとか魔術だとか神浄だとか言っていたがよくわからん」

聞けば、その際大きな損害を受け、いっそのこと全部改修することになったらしい。
そういえばその日は世界各国で混乱が起こっていたな。
などと不思議そうに話す寮監の横で、美琴はぎこちない笑顔だった。

(い、言えない。ここや世界中の混乱の原因が当時の統括理事長で、
 さらにはそいつと対立した陣営にわたしもいて、
 そいつとの決戦に赴くため妹に影武者になってもらってたなんて、
 口が裂けても言えない!!!)

「まぁ、そんなこんなで寮はこのありさまだ。
 とりあえず修繕されるまでは各自で部屋を見つけて貰い、
 家賃をこちらで寮費分負担するという形になった」

迷惑をかける。という言葉に美琴はそんなことはないと返す。

(とりあえず、早くいい部屋を探さないと……)

なんといっても夢の独り暮らしだった。



夕方になり、そろそろ家路に就きたい時間。
美琴は鼻歌を歌いながら公園を進む。

(いい部屋見つけたし、これから楽しみ!!)

彼女は家具なども注文し終わり、家路についていた。

夢の独り暮らしである。
かわいいパジャマでも幼稚だと言われない。
夜更かししても怒られない(一応しないようには言われているが)
ゲコ太も置き放題。
そしてなにより

(アイツを、家に呼べるかも……)

家に呼んで、料理作って、外が土砂降りになっていて、
アイツが泊まることになって、お風呂に入って、いい雰囲気になるところまで妄想した。

(あわわわわっわわわわわわ……)

顔を赤くして一人焦り始めた美琴の目があるものを捉える。

先ほどの妄想に登場したツンツン頭だ。

(まだ心の準備が!!!!!!!…………ん?)

アイツの手元にあるのは何だ?
どう見ても赤ちゃんだ。
うん、OK。
そして、どことなくあの子を連想させる。
それをアイツが抱っこしてるということは……

「よう、御坂こんなところで……なんで泣いてるんです!!?」

「ああ、グスッ うん、おめでとう、ヒグッ 二人が、エグッ そんな仲に、
 なってたなんて、ヒック 知らなくて、グスッ ご出産、おめでとう、ございます」

「なに訳のわからないこと言ってくれてんのこの子?」

「この子、あの子とアンタの子でしょ? お母さん似ね……」

「なんでそうなるの!!! そうじゃないよ!! どうしてそうなったの!!!!?」

「違うの?」

「違います」

「……」

「……」

「早く言いなさいよ!!!!!!!」

「言ってたじゃねーか!!!!!!」

「びぇぇぇぇえぇえええええええええん!!!!!!」

「おい!! お前が大きな声出すから起きちゃっただろ!!」

「あっ、ごめん」

「よしよーし」

上条がいくらあやしても赤ちゃんは泣きやみそうにない。

「ちょっと、そんなに乱暴にしても泣きやむわけないでしょ。
 こっちに渡しなさい」

途方に暮れていた上条は、他にいい案も思いつかないため美琴に預ける。

すると美琴は、やさしく、「きらきら星」を歌いはじめた。

上条はその光景に見とれていた。
インデックスが次第に泣きやんでいく。

上条当麻は記憶喪失だ。
幼少時、母から愛情を受けた記憶などない。
しかし、それでも上条は、この光景に母の優しさを感じていた。



「よかった、泣きやんでくれて」

「……」

「どうしたの?」

「へ? いや、なんでもねーよ」

「で」

「ん?」

「説明してもらえる?」

いっつのまにか母の優しさは消えさり、雷神の尋問が始まっていた。

「ああ、インデックスの従兄弟だとさ。ちょっと預かることになってな」

「……」

「なのにアイツがイギリスに呼び戻されてさー、参ってたんだよ」

「……」

「ホントに、まったくさー」

「……」

「……」

グレムリンとの戦いの後、美琴とインデックスはこういうことをやりだした。
無言の圧力である。
上条が嘘をつくと無言で睨みつける。
周りを巻き込まないよう嘘をついていた上条だが、
これをされると折れるしかなかった。
今回も、折れたのは上条の方だった。
ため息を吐き、一部始終を説明する。





「魔術って、なんでもありね」

「これで、オレの子じゃないってわかってもらえました?」

「まーね」

「で、なんでお前泣いてたの?」

「う、うるさい!!」

「理不尽!!!」

「まーま、まーま」

「へ? なんでわたしがママなのよ?」

「……おれも一瞬そう思ったぞ」

「は?」

「さっき歌ってる時の美琴、ほんとに優しかったし、
 いいお母さんになれるな」

「でも、この子にそう言われてもねー」

なんたって恋のライバルなのだ。
それにママと呼ばれても複雑である。
とりあえず話題を戻す。

「で、この子が今まで以上に狙われやすくなったのに、
 家は真っ黒焦げの千切り状態だったと。」

「そうなんです。どうしたもんかね?」

「ぱーぱ?」

「大丈夫だインデックス。なんとかなるさ」

彼らの事情を真に知る物は少ない。
これから、どうすればよいのか。
そう考えて、美琴はついついこう言ってしまった。

「うちに来る?」










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