うちの子
「久しぶりでありけるわね、元気だったりしか? インデックス」
黄金の絹のような髪は身長の二倍はある。
宝石のような青い瞳。
見た目は18歳くらいの少女。
その表情は
宝石のような青い瞳。
見た目は18歳くらいの少女。
その表情は
青ざめていた。
「うぅっぷ、わたしのほうはひどい状態たりし、科学側がまさかこんな罠を用意していようとは……」
「えーと、アンタの知り合い??」
「ん? イギリスのクーデターの時いたようないなかったよう「見つけたぞ!!」ん?」
走りこんできたのは。
「なんだ?土御門?」
「え? 土御門?」
「カミやん!!……やっぱりお前の目的はこれか」
「あら、土御門、元気そうで何よりであり」
「知り合いか?」
「……ローラ=スチュアート、イギリス清教最大主教だ」
「なに!!?」 「なんですって!!?」
(ということは……こいつがあの首輪をインデックスにつけた張本人!!)
「あら、そういえば自己紹介するのを忘れておりしな、と、その前に……」
視線が、烏角に向かう。
「中国の崑崙山本部にも確認済みでありけり、お前はもうあそこから追放されているらしきね、そして……」
関係ない美琴までが息をのむほど、重たいプレッシャーが烏角を襲う。
「異端を裁くのがイギリス清教の仕事、言いし意味が分かりけるかしら?」
その直後、烏角の姿が消えた。
「……逃げ足の速きこと、さて、土御門、さっさと追いたれよ」
「なっ!! しかし……」
「私は飛行機酔いでそれどころでなしたりよ。
それとも、こんな状態の一番トップの人間に、働けとでもいいけるのかしら?」
それとも、こんな状態の一番トップの人間に、働けとでもいいけるのかしら?」
口調はふざけていたが、土御門の脳裏には、なぜか、妹の笑顔が浮かぶ。
「……行けよ、土御門」
「カミやん!!」
「とりあえず、こっちは大丈夫だ。むこうは目的が何にしろ力ずくでもできたはずだ」
「……」
「しかし、それをしなかった。目的が何かははっきりしないが話し合うつもりなんだろう」
「……わかった、できるだけ早くもどる!!」
走り去る土御門の背中をローラは笑顔で見送った。
「さーて、本題に入りけり!!」
上条は美琴にインデックスを預け、一歩前に出た。
「そんなに警戒せずともよきにけらん」
「それを判断するのはこっちだ」
「あら、まあよきにつき。さて、私は」
ローラは右手の手のひらを上にして上条達に向けた。
「インデックスを返してもらいに来たりしよ」
二人に動揺が走る。
「聞いているとは思えども、いつ、その子が元に戻れるかも、わからないのが現状でありし」
ローラは二人の反応を無視して淡々と続ける。
「その彼女をあなた一人でどうやって面倒を見れたるの? 学校がある日は赤子をうちに放置していくつもりでありけしか?」
一歩ずつ一歩ずつ距離が詰まる。
「更に首輪が完全に外れ、先ほどのように自由に魔術を使えるようになったインデックス、それがまだ自我を確立させていない。それがどれほど危険かわかっておりしかしら?」
そう、先ほど烏角が懐から出した霊装を破壊したのは、インデックスだった。
気づけばローラは上条の目の前に立っていた。
「その力で、いったいどんな悲劇が起こるかも、またそうなったとき誰が苦痛を背負うのかも、あなたはわかっておりけりしか?」
「っ!!!!!」
「安心してよきにつき、こちらももう新しい首輪をつけようとも思わざりきよ。
こちらならそれ相応の結界を準備できたもれば、彼女が元の年齢まで戻った際に会えばよからん?」
こちらならそれ相応の結界を準備できたもれば、彼女が元の年齢まで戻った際に会えばよからん?」
上条は、反論できない。
『さあ、インデックス』
変な日本語ではなく英語でインデックスに話しかけるローラ。
つまり、もう上条に話すことはないということ。
つまり、もう上条に話すことはないということ。
「だう?」
インデックスは美琴の腕の中で、ぼーっとローラを見ている。
『インデックス、帰りましょう』
ローラの手が、インデックスに触れた。
上条には、何も、できない
「やっ!!!!」
しかし、インデックスがローラの手をはじいた。
ほかの三人が動きを止める。インデックスに視線が集中した。
「いやっ!!やっ!!まーま!!まーま!!」
インデックスは、美琴に縋り付いた。
だから、決意ができた。
「あの、私は、ソイツから、いろいろと事情を聴いています」
その瞳はまっすぐにローラを見据えた。
「だから、私も手伝います!!」
「……美琴?」
「確かに、アイツ一人じゃ難しいでしょう。でも、私が手伝えば、何とかなると思うんです!!」
言葉は止まらない。
「学校が始まるまでに魔術を使わないようきちんと教育します!! そうすれば誰かに預けることもできます!! だから!!! お願いします!!!!」
ステイル達がみたのなら、驚いたであろう。とても、静かな表情で、ローラは美琴の言葉を聞いていた。
そして、
「……あなたは、その子にママと、そう呼ばれておりしね」
伸ばしていた手を、下げる。
「はい」
「よきにけり、あなたが、学園都市LEVEL5序列第三位の御坂美琴が、協力してくれるのなら、上条当麻にインデックスを預けたままにせしよ」
上条が静止しようとするも、先にローラが口を開いた。
「ただし、条件がありけり」
その時のローラはいつもの口調、表情だった。
「あなたもインデックス達と暮らすこと、これが飲めないなら、インデックスは連れて帰りしよ」
「……わかりました」
「おい、美琴!!」
「確かに約束せりよ!! では、私は帰らん!!」
「ちょっと待ってく「ぱーぱ!!」?」
インデックスが、上条の裾を握りしめる。
「……ぱーぱ……まーま……」
力が抜けていくのがわかる。
もう、ローラの姿はない。
もう、ローラの姿はない。
「美琴、おま「言わないで」……はぁ」
美琴はうつむいている。
上条はいったん空を見た後、いつもの表情で言った。
上条はいったん空を見た後、いつもの表情で言った。
「ありがとな」
少し、時間を遡る。
まさに、上条達とローラが話していたその時、烏角の前にある人物が立ちはだかった。
まさに、上条達とローラが話していたその時、烏角の前にある人物が立ちはだかった。
「ば、ばかな、何故……」
その人物が、何故ここにいるのだろうか?
いや、何故いられるのだろうか?
いや、何故いられるのだろうか?
「何故ここにお前がいるんだ!!」
それは、怪しく微笑む。
「ローラ=スチュアート!!!」
「別に、貴様に教えてやる必要はなきにつき」
烏角は知る由もないが、今まだ上条達はローラとの会話を続けている。
「……しかし、私とて退くわけにはいかぬのだ!!」
「……」
「貴様たちの思い通りにはさせぬぞ!!!」
烏角は再び幻影を生み出し、叫ぶ。
「覚悟しろ!! アレイスターの遺物め!!!!」
叫ぶ、が、
「……こいつがどこまで知っていたのかは、興味を持ちたれど」
その時、烏角は消えていた。
しかし、先ほどと違うのは本人の意思ではないことだろう。
しかし、先ほどと違うのは本人の意思ではないことだろう。
「まあ、よきにけり……今は、その状況を楽しみたもれ、インデックス……」
帰宅。
長い一日だった。
長い一日だった。
「ふぁーあ、疲れたな、すっげー眠い」
「……」
「おーい、ここおまえんちだぞー、早く玄関から奥に入れよー」
「……二人とも、ごめんね」
「……なにがだ?」
「あの話に、私は、関係なかった……あそこで判断するべきだったのは……」
美琴はうつむいたまま顔を上げない。
「……アンタじゃない……」
沈黙がその場を支配する。
しばらくして上条は、無表情で美琴に近づき、
美琴の頭にチョップした。
「痛った!! なにすんの……」
そこにあったのはやさしい笑顔だった。
「ありがとうっていったろ? あそこでインデックスがあんなに嫌がっていたんだ。渡さないほうがいいに決まってる」
「で、でも……」
「でも、じゃないんだよ。あそこでインデックスをさ、救ってくれて、ありがとな」
美琴は静かに視線を下げる。
そこには、すやすやと眠るインデックスが、自分の腕に抱かれていた。
「…………うん……」
「さて、俺たちも寝よう……って!!」
インデックスから虹色の何かが出てきていた。慌てて上条がインデックスに触れる。
もちろん何かを打ち消した感触が手のひらに伝わった。
もちろん何かを打ち消した感触が手のひらに伝わった。
二人は変な汗が伝わるのを感じながら、
同じタイミングで視線を合わせ、同じタイミングで言葉を口にした。
同じタイミングで視線を合わせ、同じタイミングで言葉を口にした。
「「……また一緒に寝なくちゃダメなの?」」
夜は更ける。
二人は知らない。
自我が確立していない魔道図書館と過ごす日常が、どれほど大変なのかを。
二人は知らない。
自我が確立していない魔道図書館と過ごす日常が、どれほど大変なのかを。