とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part12

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匿名ユーザー

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プール


プールの中心に、巨大な渦ができたのは突然。

その瞬間に動いていたのは4人だった。

「美琴!!」

「アイツ!!」

「クソッ!!」 

「滝壺!!!」

上条と美琴は互いの視線を交差させると、もう一方に同時に視線を向ける。

「「インデックス!!!!」」

その時、美琴や一方通行を始め、LEVEL5の面々は、違和感に気づいていた。

(能力がうまく作用しやがらねェ)

魔術という結論に至ったのは、美琴と一方通行のみである。

(これは……危険ですね)

むやみに暴発させて対応できるメンツばかりがいるわけではない。

さらに、

(流れが急に早くなりやがったな)

すでにほぼ全員が流れに飲み込まれ始めている。
人と人とがぶつかる。
いつ、けが人や溺れる者が出てきてもおかしくない状況だ。

そんな中、必死にインデックスを抱えていた芳川に誰かがぶつかり、インデックスが腕からすり抜ける。

(しまった!!)

流れに飲み込まれ、インデックスと離れていく芳川の瞳に、その赤子を助ける影が見えた。



御坂美琴である。


彼女はインデックスを抱き上げることに成功した。
しかし、

(思ったより流れが速いうえに、人が多くて……)

何人もの人とぶつかった。そしてついに。

(しまっ……!!!)

誰かと背後でぶつかり、水中にインデックスとともに引きずり込まれる。
そして、しばらく水上に上がることなく水流に弄ばれた。

(せめて……この子だけでも)

美琴の息が限界に達しようというその時、ようやく、



あの右手が届いた。

ふと、プールから渦が消え、水面が静かになる。
そしてそこからいくつもの人影が現れた。

「ぷはぁっ!! はぁ、大丈夫か!! 美琴!! インデックス!!」

「はぁ、はぁ、なん、とか」

「う、ぇう、……びぇぇぇ!! ぱーぱ!!まーまぁぁあ!!」

呼吸を整え、ほっと一息つくと、上条は周囲を見回した。

「大丈夫か!! 滝壺!!」

「うん、ありがとう、はまづら」


「ありがとうあなたーってミサカはミサカはここぞとばかりに抱き着いてみる!!」

「もやしに助けられるほどミサカは落ちぶれてないのに、余計なことしやがって」

他のみんなも無事なようだ。
それを確認し、再び視線を2人に戻した、

安易に


「まって、こ、こっちを、見ないで」

そこには、涙ながらにこっちを見つめる美琴がいた。
そして、なにより、

胸の部分の水着がなかった。
両腕とインデックスで隠れてはいるものの……

しばし固まっていた上条は慌てて後ろを向く。

「み、美琴、とりあえず、オレの背中に隠れろ」

「う、うん」

そのまま3人はゆっくりプールの端に移動した。

上条が見回すと、逆方向の端に見覚えのある水着が浮いている。
人とぶつかったときにでも外れたのだろうか。

上条が打開策を探しながら視線を正面に向けると、
ある人物と視線が合った。

一方通行と、浜面仕上だ。

それを見た上条は、もう1度水着に目を向ける。
上条の視線を追った二人がそれを見たとき、二人の行動は早かった。

「おーい、ケガをしたやつ、体調がよくないやつはいないか!!」

そうやって大声を出した浜面に皆の意識が集中した一瞬で、水着が不自然な水流に乗って上条達のところへ届けられた。

「美琴、インデックスをこっちに、それなら、なんとか水着つけられるか?」

「う、うん、大丈夫」

その間、インデックスは、ずっと泣いていた。



ようやく落ち着きを取り戻した皆はプールサイドで上条の言葉に耳を傾けている。

「本当に、すみませんでした!!!!!」

深々と頭を下げる上条に、おずおずと佐天が確認をとった。

「じゃああの大渦はインちゃんの能力ってことですか?」

「ああ、そうだ、みんなを危険な目にあわせてしまった、ごめん!!」

全員の視線がその赤子に向かった。

「魔術は使っちゃだめって言ったでしょ!!」

真剣な瞳で抱っこしているインデックスを見る美琴、

「あう、うー」

「でも、……よかった、インデックスが無事で」

「う、うぅ、ご、ごめーちゃい……ううぅぅぅぅううふえええええええええ」

「よしよーし、キチンんとごめんなさいできたね、いいこいいこ」

会話の内容は聞き取れないが、それを見た周囲は、

「さすが御坂さんのご親戚!!」

「すっごい大きさだったね!!」

「当然といえば当然ですの」

「じゃあ、わたしたちが原因ってことじゃんな」

「まぁ、悪意はなかったけど、そうなるわね」

「そんなことより、小腹がすいたわ、浜面、鮭弁」

「わたしは超喉が渇きました」

「「先生!! 脱がないで!!」」

「しかし、プールの中と違い、ここは暑くて……」

先ほどのことなど、なかったことにしたのだった。

再び上条は深々と頭を下げた。


「「ただいまー」」

「たーい、まー」

帰宅して数十分後。
台所から部屋に戻った上条に穏やかな寝息が聞こえる。

「あらら、御坂さんや、インデックスはおねんねですか?」

「うん、はしゃいでたし、いろいろあったもんね」

一緒にベッドで横になっていた美琴は、静かにインデックスの髪をなでる。
そこに、上条は麦茶が入ったグラスを持っていった。

「ありがと」

「いいえー。そんじゃ先風呂に入るぞ」

「うん、じゃあ、晩御飯用意しとくね」

「おう、サンキュ」

上条は、ようやく、



1人になれた。



ほぼ崩れ落ちるように脱衣所で座り込む。

(グッジョブ!! オレ!! オスカー物の演技だったぞ!!)

体育座りのように体を縮め、頭をガシガシとかいた。

理解して(わかって)いた。でも納得して(わかって)いなかった。

彼女は……

腕で目の部分はおおわれているため、上条の表情はうかがえないが。
頬は、赤い。

上条の頭は何度目になるかわからない回想に使われていた。



『まって、こ、こっちを、見ないで』


すらりと伸びた足。
水着からやや上のくびれ。
インデックスや、腕では隠しきれていない白い肌。
鎖骨。
細い腕
水の滴る髪。
潤んだ瞳。
鮮やかな唇。


理解して(わかって)いた。でも納得して(わかって)いなかった。

彼女は……

御坂美琴は……









異性(おんな)だ。


「おーい、一方通行、上条が何か菓子折りくれたじゃんよー」

翌日、黄泉川家にのどかな声が響く。
いちいちオレに報告する必要ねェだろ、という感情を口にしないよう踏ん張る。
ソファでの快適な時間を削ることを率先してする必要もないだろう。

「おや、まだ寝てるのか」

しっかし、なんだろうなこれーと悩む黄泉川をほっといて一方通行は考える。
おそらくあの律儀な奴らのことだ、チンピラのほうにも行ったのだろう。

「……引越しのご挨拶かなンかじゃねェの?」

起きていることを知られた一方通行は買い物に駆り出されるのだった。



聖ジョージ大聖堂。
そこに二人の人影があった。

「じゃあ、よろしく頼みにけり」

静かに、一方の気配が消える。

「さてさて、いったいどうしておりしかしら」

金髪が、その笑顔に誘われるように揺れた。







おまけ!!


さんさんと、日光が彼をあざ笑うかのように降り注ぐ。

「了然、どうにもならないことは、わかっている」

以前、記憶を取り戻すカギを見つけた男は、その直後にそのカギの保護者二人によって意識を奪われてしまった。

「断然、動揺していたとはいえ、あのように声をかけたら、攻撃されても文句がない」

しかし、もう一度チャンスがあるならば……。
だが、奇跡は何度も起こらない。
ため息を吐く彼の耳に、正面から複数の声が届いた。

「いつまでついてくんのよアンタたち」

「わたしたちの目的地もこっちなのだーってミサカはミサカは全速前進!!」

「それは、超わたしたちのセリフでもありますよ、超第3位」

聞き覚えのある声があった。
そして、その集団の中に、その子はいた。
神はもう一度、その機会を与えてくださった。

「卒然、また会えたな。改めて自己紹介をしよう。私はこういうものだ。当然、記憶喪失のため、その名刺に書かれた名は本名ではないが、怪しいものではない証拠にはなるだろう。依然、よければ、その真珠のような赤子を抱かせてほし「フン」ごっがあああああああああ!!!」

比喩表現ではなく飛んでいった。
ベクトル操作ってすごいのだ。

「なンだあの変質者は?」

「大将の知り合い?」

「なんでなんの迷いもなくオレに振ったし!!?」

プールまでまだまだ遠い。








おまけ!!


上条当麻が脱衣所に入ったことを確認すると、
御坂美琴はようやく一息入れ、麦茶を飲みほす。
が、まだやることはある。

その後の彼女は神がかった動きで二人分のごちそうを作り終えた。
残像が見えるほどのスピードである。
そして、ようやく一息つくと、
ソファに飛び込みもだえ苦しんだ。

(ろ、漏電だけはしちゃだめ!!!)

うつぶせのため、表情は見えない。
が、頬から耳、というか肌の見える部分すべて真っ赤である。

アイツが自分をそういうふうに思っていないのは知っている。

『妹とプールに来るとこんな感じなんだろうな、今日は存分に遊びたまえ妹よ!!』

しかし、

『大丈夫か!! 美琴!! インデックス!!』

あの時のことが頭から離れない。

たくましい脚。
鍛えられた腹筋。
傷だらけだが、しっかりとした胸板。
太い腕。
水の滴る黒髪。
鋭い眼光。

なにより、

(水上に出る時に、だ、だ、抱きしめてくれたし~~~~//////)

この感情を1人になるまでよく我慢したものだ。

(わたしって、アカデミー主演女優賞もらえるんじゃないかしら!!)

主演男優はもちろんアイツで、内容はラブロマンスの、
と、彼女の妄想は続いていった。




















「なあ、御坂さん、なぜかご飯が冷めてるんですが」

「そ、そうね」

「確かに今日はオレも長風呂だったけどさ」

「じゃ、じゃあしかたなくない?」

「まるでオレが脱衣所に入って5分後にできあがったような感じですが」

「き、気のせいよ」

「……まあ、うまいんだけどな」

「……う、うん、ありがと」//////////











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