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ポケット瓶

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ポケット瓶 03/02/15

  ポケット瓶というものがある。

  ハードリカーを隠し持つ為のクォーターボトルで発祥は禁酒法時代のアメリカだと言われている。一度ぐらいは映画で目にしたことがあるだろう。手のひらより少し大きめの緩やかに彎曲したあれだ。酒を手放せない酔っ払いを示す小道具として欠かすことは出来ないものだ。

  元々隠し持つ為に太腿に密着させるべくあのような形になったもので凹んでいる側と膨らんでいる側があり、それが色気を際立たせている。今では隠し持つ必要はないのだが、その際立つデザインと鋭い色気がいわば完成されたデザインとして、現在もその形を受け継いでいる。

  これはキャップに少しずつ注いでちびちび飲むのは貧乏臭い田舎者のやることであって、洗練された飲み方としてはやはり鷲掴みにして呷らなければいけない。

  まず、凹んでいる側を親指側に、膨らんでいる側を人指指と中指及び紅差指で包み込む。その際小指は瓶の底にあてがう。小指を瓶の底にあてがう以上並びの三本は瓶の表下半分に寄る。気分としては卓球のペンシルラケットを持っている感じだ。それでその手を右手と仮定するが、出来るだけ内側に折り畳むようにする。指先を肘の内側に届かせようとする具合に。同時に同じ形をした左手の人指指をキャップに巻き付け、親指で支えながら一気に折り畳んだ手首を解放するとキャップが外れる。キャップが外れた瞬間の右手を上から見ると瓶は膨らみを上に左上から右下に45度の角度で口を開けて中の酒が揺れている筈だ。

  それを零さないようお上品に飲もうとすれば見苦しくなるので、下唇を瓶の口下側に当てがい、上唇は軽く瓶の口上に添えるだけ、唇の両端は零さないようになどと考えて閉めたくなるが、閉めてはいけない。瓶の中の酒が口に流れ込む時の瓶の中に吸い込まれる空気の吸入口として必ず開けておかねばならない。でなければ、哺乳瓶をくわえているようなみっともない形の口になるし、何より舌が瓶に吸い込まれてしまう。さて、唇の両端を開けて流し込むのだが、ここでも零す心配などしてはいけない。最初のうちは零すかもしれないが馴れてくると瓶の重さと手の動きが一致して必要なだけ口の中に流れ込んでくる。

  この流し込む量は人それぞれであろうが、まず標準は「コポコポコポ」の三拍だ。そしてそのまま飲み込むと必ず咽せるから一旦口の中に駐留させ、舌がいい具合に痺れた瞬間一回で飲み下す。

  ポケット瓶などアル中しか飲まないなどと言う勿れ。これは美学の問題だ。物事にはそれぞれ正しいやり方というものがある。かつてアル中と呼ばれた手前が断言する。ポケット瓶は男の美学だ。

  とは言いつつ彎曲のない文庫本の如きチタニウム合金のスキットルにウォトカを詰めて寂れた駅のホームで呷る寂しさを漂わせた虚勢に、今日は酔いが回るのが早い。今日は何か大きなイベントでもあったのか?俺は何も知らないぞ。知らない方が幸せかもしれない。

 
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