バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

It's My Life(前編)

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kyogokurowa

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主催(かみ)の歌が鳴り止んでも復讐者達の戦いは終わらない。
ベルベット・クラウは冨岡義勇を殺すために戦っている。
冨岡義勇はベルベット・クラウを斬るために戦っている。

己が生き残るために。力なき者たちを護るために。

神殺しが失敗に終わろうとも、二人が争いを止める理由にはならない。

ガキン、という金属音が鳴り響き、二人の身体がそれぞれ別方向へと弾かれるのも何度目だろう。

互いに身体は傷だらけになり、息を荒げ、今にも膝を着きそうになるのを気力で保っている状態だ。
ベルベットは純粋に己を上回る義勇の強さに。
義勇はベルベットの執念に加え、チョコラータ達との戦いで負わされた疲労に。

次が最後の殺り取りになる。
二人は言葉にせずともそれを理解する。

先手を切ったのは―――ベルベット。
その巨大な業爪を振り下ろし、義勇の命を狙う。
義勇はそれを寸前まで見定め、ギリギリで回避。
避けられた爪は義勇の背後にあった木に食い込み、ベルベットがそれを引き抜くまでの『間』を作る。

その隙を突こうとする義勇へと炎の輪が放たれるも、義勇はそれを剣で受け流し、距離を取る。


「ちいっ!」
(確実に決める)



引き抜く動作の『間』に、十分な距離を取った。
ベルベットは舌打ちしながらも、相手の技の発動に近づいての攻撃は間に合わないと判断。
先の炎の輪を数発放つ。



(――全集中)


それを迎え撃つは水の呼吸最大の威力の技。


――水の呼吸、拾ノ型 生生流転


(やっぱりね)

水龍を幻視させるさせるほどの勢いの剣技にもベルベットは焦ることは無い。
やはり同じなのだ。
同じシチュエーションを作ってやれば、義勇も錆兎もやることは変わらないということは。

炎の輪を切り裂き回転ごとに威力を増していこうが、それがベルベットを揺らがせることは無い。

最大の威力をもって放たれる水龍にも迷わず業爪を振り下ろす。

衝突と同時に、パリンと音が鳴る。

炎の輪を切り裂き続け、脆くなった日輪刀を、業爪が折った音だ。

最大威力のはずの技を折られたことに驚愕し目を見開く義勇の腹部にベルベットの右の籠手が繰り出される。

「―――空破」








―――水の呼吸 拾壱の型


瞬間、ゾクリとベルベットの背筋に怖気が走る。
それは死の予感。あの忌まわしき紅い月夜にも突きつけられた、生物の有する根源たる恐怖。
絶好のチャンスだったはずの右籠手を無理やりひっこめ、咄嗟に地を蹴り距離を取ろうとする。

ベルベットの直感は正しい。
もしもこれが義勇と同等の実力を有する水の呼吸の使い手であれば、やはりベルベットはこのまま勝利を収めていただろう。
しかし、相手が義勇だからこそこのままでは死ぬと判断した彼女はこれ以上なく正しかった。

それでもほんの僅かに遅かった。

敗因は散ったことで時間を進められなかった錆兎と、不器用で自罰的ながらもそれでも時間を鍛錬に費やしてきた義勇の差。
放たれるは、彼の生み出した、彼しか扱えぬ独自の技。
型と称しつつ、その型すら捉えられぬ最大の防御。

―――凪。

用途としては防御用の技だが、極端に突き詰めれば剣を振るっているに過ぎない。
故に、刀の届く範囲のもの全てを切り刻む。当然ながら、その範囲内に敵がいれば切り刻まれる他ない。

―――ピッ

数多の線が業魔の腕に、彼女の全身に入る。
数舜遅れて、業魔の腕がざんばらに切り刻まれ、身体からは鮮血をまき散らし、そのままベルベットは仰向けに倒れた。


「か...は...」


ベルベットが踏みとどまったこと。義勇の刀が既に半ばで折れていたこと。
それらの幸運が作用し、ベルベットは一命をとりとめた。
しかし、このままでは確実に殺される。
必死に力を振り絞り、首を持ち上げ義勇を見るも―――彼もまた崩れ落ちた。
折れた刀を握りしめたまま、前のめりに倒れ伏してしまった。

思いがけぬ光景にベルベットは呆気にとられる。
最後の型で気力を使い果たしてしまったのだろうか。
なんにせよ、これは思いがけぬチャンスだ。
確実にトドメを刺すために起き上がろうとするが―――すぐに彼女の意識も闇に落ちた。

「ま、喧嘩両成敗ってところね」

そんな二人を少し離れたところから眺めながら、ポツリと呟いたのは夾竹桃。
彼女が手にしていたのは睡眠ガスの詰まった使い捨ての缶詰だ。

夾竹桃が辿り着いた時には、二人の戦いは既に苛烈を極めていた。
このままでは口で言ったところでどうしようもなく、どちらかの死でしか終わらないだろう。

本来ならばベルベットに手を貸し、共に義勇を始末するところだが、まだ隼人からゲッターの情報について聞き出していない以上、彼と敵対する訳にはいかない。
そう判断した彼女は、周囲が火勢で己の気配を消されているのをいいことに、睡眠ガスを漂わせることで仲裁を図ったのだ。
本来ならば運任せになるところだが、毒の達人である彼女にとって催眠ガスという初歩的な『毒』を正確に効果的に撒くなど容易いことだった。

(それにしても、本当に彼女の言う通りだったわね)


ベルベット達のもとに辿り着く前に遭遇したアリアと、その連れの岩永琴子。
彼女に大方の説明をした後、ベルベットがどこにいるかを尋ね、争っている男女がいるのを見かけたというアリアの指示に従ったのが経緯だ。
一応、別れる際に主催の追手が来るかもしれないことを伝えると、琴子は言った。

『参加者同士で小競り合いしているところには主催は来ないと思いますよ』と。

その通りだった。
念のために警戒しながら進んできたが、先の風の罠のようなものはなく、骸骨のような追手の姿もなく。

拍子抜けするほどにあっさりと夾竹桃はここまで辿り着いてしまったのだ。

(あれは適当なことを言っているようには思えなかった。彼女には彼女なりのなんらかの根拠があるように見えた)

琴子は戦闘タイプではない夾竹桃からしても弱者の部類に入るようにしか見えなかった。
その彼女が果たして何を掴んでいるというのか。
主催達のもとへ向かった彼女たちはなにを見せてくれるというのか。

「お手並み拝見、と言ったところね」






鋼人七瀬の時とは違い時間は限られている。

不特定多数の匿名意見を募ることもできない。

此方に出来るのは追及という名の一方的な一人相撲だけだ。

導き出した結論というカードは全て虚構。しかし、これらを真実に近づけることでこの狂宴解決の糸口を掴めるかもしれない。

さあ、そんな与えられた条件の中で、私は、知恵の神はどうやって切り込むか―――。

カツン。







『違和感を覚えたのは他参加者との接触からでした』

琴子の言葉はアリアの本来のバーチャドールの機能を使い、マイクを通し彼女の声帯を借りてμ達へ向けて出している。
マイクを通じた琴子の声がアリアを通してμへと語られる。
まるでドキュメンタリー番組のナレーションのように、焦らず、しっかりと。

―――ある者は言った。自分は【Dゲーム】という殺し合いに巻き込まれている最中だと。ある者は言った。【武偵】という国際規模で活躍している組織の人間だと。
ある者は見せた。【スタンド能力】という精神を具現化させる能力を有していると。ある者は見せた。【ゴーレム】という異形の精を使役できると。

しかしその誰もがそれを知ることなく、しかし誰もがそれらを疑うことが出来なかった。当然だ。なんせ殺し合いの中で嘘を吐くとしても、こんな意味のない嘘を皆が吐くなんてある筈がないから。嘘を吐くなら共通して知っていることを話さなければ意味がないから

しかし記憶違いやそれに類する例もなく、特に武偵は訓練学校もありテレビでも政治家並に報道されるため、知らない者がいるはずがない。にも関わらずそれを伝えた者は誰一人として知らなかった。

ではこの矛盾はなんなのか。そこで導き出された一つの答えが

【この殺し合いの参加者は平行世界を軸に集められている】

『己の知る世界の常識でも交わることなく進み続ける世界の常識があるとは限らない。【武偵】が基盤となる世界では【Dゲーム】などは存在せず、その逆も然り。
つまり違うルールの敷かれた世界の住人たちを集めた結果が先の認識のズレである―――これが一つの解です』

言葉を一旦切り、相手方の様子を伺う。
反応は―――誰もしない。

「駄目だな、あいつらがなにか言ってくれねえと俺の嘘発見器は効果が出ない」
「...そうですか」

アリアにも小型のマイクを持たせているため、μ達の声もこちらまで届かせることが出来る。
そこでリュージが双眼鏡越しに彼女たちを見て嘘発見器で嘘を吐いているかどうかを判断し情報を得ようというのが琴子たちの作戦だ。
言葉が無ければ嘘も真もないため、こうして己の見出した考えを伝えているのだが

「まあこれも想定内です。最初からこれで何かを貰おうなんて期待はしていません」

やはりこの一枚目のカードでは弱い。当然と言えば当然だ。
この解は時間が経過すればハッキリとした言葉に出来なくとも、感覚であれば多くの参加者が自力で辿り着けるもの。
もちろん、主催側もその程度の事態は織り込み済みであり、判明したとしても殺し合いを続ける上ではなんら問題ない。
ならばもう一枚のカードを切るとしよう。そう判断し、琴子は見解を続ける。



―――しかしこの解を成立させる為には幾つかの高い壁を越えねばならない。平行世界への干渉というのは言葉にするほど容易い事象ではない。

タイムパラドックスによる時間軸の消滅、干渉を成功させるのと引き換えに命を落とすくだん、干渉する際に必要なエネルギー...考えられる例はいくらでもある。

平行世界から人ひとり、それを見せしめの二人含めた77名も拉致しようというのだから、当然、その代償はすさまじいものになるだろう。

μ本人には平行世界を股にかけるような力が無いとすればテミスが用意したと考えるべきだが、こんなものテミス一人で達成できるとは到底思えない。ならば、協力者―――それも強大な力を持った者が単数、あるいは複数いると考えるべきだろう

その者たちに代償を賄うだけの支援をしてもらえば、この平行世界を巻き込んだ殺し合いを開くことも不可能ではない。なら、そもそもこの殺し合いを運営するテミスの狙いはなにか?



【平行世界を股に掛けたビジネスを開催する】



『セレモニーの司会進行の様子を見た時、私は「随分板についているな」と思いました。淀みのない解説、主催側の奴隷の立場にある参加者たちにもわかるような丁寧な言葉遣い。
そして、如何な場合においても絶やさぬ笑顔。これらの手慣れた振舞から、私は彼女をオークションやギャンブルの支配人の立場にある者だと推測しました』

では彼女がなぜ複数の黒幕の手を借りてまで殺し合いを開いたのか―――あくまでもビジネスの一環だろう

ビジネスとはなにもそれ一本だけに終始する訳ではない。食品を取り扱うところから始まった企業がスポーツクラブを経営することや、家電を扱っていた企業が古本を扱うようになることも珍しくはない光景だ

たまたま私たちが巻き込まれたのが殺し合いという場であっただけで、本来は多岐に渡る分野があるのかもしれない。

例えば複数世界の人間が集まり殺し合いではなくその様を眺めるだけの催しだったり、あるいは憧れの世界の〇〇に会える!という握手会にも似た催しをしたり。もしもこれが叶うならば数多の世界から資金を巻き上げられる、と狙いをつけてもおかしくはない。


(俺としちゃこの説で合っててほしいもんなんだがな...)

琴子の第二の解を聞くリュージは内心で思うが、しかしそれはないだろうと思いなおす。
なぜならば、この解を成り立たせようにもいともたやすく瓦解してしまうからだ。


―――だがこの解には無視できぬ問題点がある。それは【平行世界の資金を一律に調達することは不可能である】ということだ

『同一世界においても異国共通で使えるお金はありません。日本では流通している【円】にしても他国で使う場合は【ユーロ】や【ドル】に変える必要があります。
物品単価にしてもそう。一つのパンにしてもそれがどのくらいの価値になるかは国によって異なります』

その規模を平行世界に置き換えればどうだろうか?A・B・Cの世界において、Aの世界で流通している貨幣でもB・Cの世界では使用できなければ、それだはただのA世界における貨幣でしかない。

三つの世界で共通しているとしても、貨幣の価値が全く同じでなければならず、且つ札の印番号・媒体までもに綻びが一つでもあれば、結局は一つの世界でビジネスをしているのと何ら変わりない。



『それをテミスが理解していない筈がない―――よって、この解答2は成り立ちません。同時に、黒幕から力を借りる理由も黒幕が支援する理由も消える為、平行世界から参加者を集めたという解にも疑問が湧きますね』

「オッ、オメ~、なんで、自分が言ったことを、自分で否定してんだよぉ~!?ワケわからねえぞおまえェ!?」

一方的に与えらえる琴子の考察に痺れを切らしたセッコが堪らず切り出すと、琴子はそれを待っていたかのように薄い微笑みを浮かべた。

『もちろん必要なことだから話したのです。...平行世界から集められたとしか思えない参加者たち。しかし主催側から代償を払ってまで異世界間の殺し合いを招く必要性を感じない。
ならば、平行世界から参加者を直接集めるような真似はしていないというのが妥当でしょう』
「だっ、だから、おめ~の言ってることおかしいだろぉ!?えっと、こういうのなんだっけ...ジョンレノンじゃなくて...無重力...えっと、えっと...」
『矛盾ですか?』
「~~~~~ッ、知ってんだよォォォォッ!国語の教師か、おっ、おっオメ~はよォォォ」

嘘     嘘   嘘

   嘘          嘘

セッコの周囲に浮かぶ『嘘』の文字に、リュージはニヤリと口角を釣り上げる。

「よし。双眼鏡越しでもちゃんと嘘発見器は使えるぜ」
「我慢の利かない男がいて助かりましたね。彼らに沈黙の一手をうたれては元も子もなかったので」

カツン。

空気を切り替えるために杖で地面を叩き、再び彼女の考えを口にする。

くだんという、命と引き換えに近い未来を確定するあやかしがいる。彼らが命を落とすのは未来確定という平行世界への干渉を行ったために代償を支払うからだ。
けれど彼らにも死ななくて済む方法がある。それは―――未来を確定しないこと

もしも未来という平行世界を観測しただけで死ぬのならば、くだんは未来を確定することなく死に至らなければならない。しかし彼らは数ある中で災いの未来を確定することで死に至る。
未来を見るだけならば死ななくてもいいとも言いかえられるだろう。

『ではこれを数多の世界の参加者に当てはめてみましょう。平行世界の観測者は無難にテミスとしましょうか』


―――テミスは異世界から岩永琴子を連れてこようと思った。しかし直接彼女を引っ張ってこようとすれば代償は逃れられない。ならばどうしようか―――そうだ、岩永琴子をこちらの世界で作ればいい

―――彼女の動向を把握して、情報だけを持ち帰ろう。ただこの娘の死にざまとかはいらないから鋼人七瀬の事件を解決した後まででいいや。その情報をそのままコピーする。これで岩永琴子をこちらの世界に落とし込むことが出来た。

『これを他の参加者の分も同様に行えば、平行世界間の参加者同士の接触に必要な素材は揃います。しかし素材だけではどうにもなりません。そこで必要なのがμ、あなたです』

μを名指しすると共に琴子の喉がゴクリと鳴った。
柄にもなく緊張―――いや、恐れていると言った方が正しいと彼女は自覚する。
それほどまでにこの説は確定してほしくないものなのだ。
けれど。
それを否定するにはあまりにも条件を満たしすぎた。

この世界がメビウスに限りなく近い環境にあること。

リュージが楽士のカタルシスエフェクトとほとんど同じ道具を持っていたこと。

まるで当然だと言わんばかりに異国の参加者が母国語でなんら問題なく会話していたこと。

滝壺理后と少年ドールがただ見せしめとして殺され、死者蘇生を唄いながらその実演が無かったこと。

『stork』や『リュージ』のように本名ではなく、参加者本人が親しんでいる名前が名簿に記載されていること。

μが既に願望という情報から人間の肉体変化や記憶操作を成功させていること。

不死身である九朗を殺し合いに巻き込み、不死身の生物すら殺す首輪が存在していること。

テミスが『程度の能力』と思しき力を行使しているかもしれないのも、含まれているかもしれない。

―――そして、岩永琴子が巨乳になることを願いながらその身体は本来のままであること。


だから岩永琴子は解等を提示する。
平行世界間の殺し合いという世界の秩序の崩壊を食い止めるために。
公平公正に。
虚構で真実を象るのではなく、虚構から真実を掴み取る為に。
己にすら容赦なく、裁定の木づちを振り下ろす。

『つまりこの殺し合いの参加者77名は』







【μにより平行世界の人間の情報をインストールされた同一世界の人間である】


ポオ―――――ッ

琴子の裁定をかき消すかのように列車の汽笛が鳴り、μ・骸骨・リック・セッコの四人の身体が正方形の透明な箱に包まれる。

「転送だと!?」

その光景に真っ先に反応したのはリュージだった。
見覚えがあったからだ。ダーウィンズゲームの最中、嫌になるほどなんどでも。
それでも双眼鏡の先のμたち四人から目を離さずにいたが―――嘘も真も浮かばない。

(クソッ、転送中でも効果は発揮するんだが、あいつらがなにかしら話してくれねえと意味がねえんだよ。ほんと肝心なところで役に立たねえクソ異能(シギル)だぜ!)

「μ!!」

琴子からの通信を切ったアリアが、消えていくμに再び呼びかける。

「教えてよμ!!こんなことをして...ううん、これからみんなになにが起こるの!?」

アリアの必死の呼びかけに、μはほほ笑む。
嘲ることもなく、罵るのでもなく。
ただただ慈しむように。悟りきった仏のように。



「すばらしいことだよ」

真    真    真


消えていく寸前のその一言を、『嘘発見器』は確かに見逃さなかった。







「行っちまったな...クソッ、何にも掴めなかったぜ」
「まあこんなところでしょう。最初からここで全てを解決できるとは思っていませんでしたし」
「にしてもツイてねえな...まさかあんなタイミング悪く汽笛が鳴るなんてよ」
「...そうですね」

リュージの言葉に同意を示しつつも琴子は考える。
―――本当にあれは偶然だったのか?
確かに列車の整備終了時間は定まっていなかった。
しかし、あれは自分の裁定をかき消すために鳴らしたのではないか?
μたち四人にも知られてはならなかった為に、無理やりにでも止めたのではないか?
いや、そう思わせてあの説が正しいといい気にさせておいて自分たちを嘲笑う為かもしれないが。

(...今は置いておきましょう)

テミスの人となりまでは知らない現状、これ以上は虚構にすらならない妄想でしかなくなる。
それに捕らわれて脳細胞を消費するよりも優先すべきことがある。

「動くな」

カチリ、という音と共になされる警告に、二人は動きを止める。

「そのまま答えてもらおうか。お前たちは何者だ。参加者か?それとも奴らの仲間か」
「参加者だ。証拠に首輪も付いてるだろ?」
「先ほど、夾竹桃と同盟を組んだと言えば信用してくれますか?」
「...そのままガキの方だけこっちを向け」
「ガキとはなんですか!私はれっきとした大学生ですが!?ちゃんと破瓜の痛みも経験している淑女を捕まえて失礼でしょう!」
「余計なことはしゃべるな」

カチリ、と再び回されるシリンダーの音に、琴子はしぶしぶと振り返る。
そこには、気絶するクオンを肩に担ぎながら銃を構える神隼人とその隣で警戒心を露わにするビルドがいた。
その怪我や擦れの様からして、彼らもまた主催に抗った者たちだと判断して琴子はコホン、と一つ咳ばらいをしてみせる。

「初めまして。私は岩永琴子と申します。隣にいる男性はリュージさん。貴方たちの名前をお伺いしても?」

ここで狂宴を終結に導くことはできなかった。
しかし得るものが、得られるものが何もないわけではない。
起きた事象から拾えるものがあればなんでも利用する。
それが岩永琴子の戦い方である。

その為に、目の前の男たちの信頼を得る為に琴子は恭しく、礼儀正しくぺこりと頭を下げた。

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