ガシャン、と鈍くも甲高い金属音が響き渡り、グラグラと鉄の檻が揺れる。
観覧車。
遊園地で御馴染みのこの施設に張りつけられるは、鬼の王・鬼舞辻無惨。
観覧車。
遊園地で御馴染みのこの施設に張りつけられるは、鬼の王・鬼舞辻無惨。
奔る痛みに苛立ちを抱き、ほどなくして訪れる襲撃者に向けてギロリと視線を向け殺意を露わにする。
(何故だ。何故こうも愚か者に出くわすことになる?)
鬼舞辻無惨は数舜の間に振り返る。
なぜこうなったか、その経緯を。
なぜこうなったか、その経緯を。
★
仮面の男に殴り飛ばされ、再生を終えた無惨が、行動を再開したまさにその時だった。
気配がした。
隠す気のない殺意が無惨の背筋を凍らせた。
気配がした。
隠す気のない殺意が無惨の背筋を凍らせた。
振り返ると、ソレはそこにいた。
素人目から見ても空気が歪む程に迸る闘気。
分析するまでもなく正気を保っていない螺旋状の瞳孔。
ソレらを証明するかのように、男は高速で迫っていた。
無惨がなにかを言葉に乗せる前に。
本能的に警戒態勢を取るよりも早く。
その姿は視界から消え、まるで瞬間移動したかのように距離を詰め、眼前に現れたと思った瞬間には、その拳が顔面に突き刺さっていた。
メキメキと骨が悲鳴をあげ、肉が拉げ、受け身を取る暇すらなく。
地面を幾度もバウンドしながら遥か彼方へと吹き飛ばされ、50メートルほど離れた家の壁に叩きつけられ、壊れた壁に背中を預け仰向けに転がることでようやくその勢いが止まる。
地面を幾度もバウンドしながら遥か彼方へと吹き飛ばされ、50メートルほど離れた家の壁に叩きつけられ、壊れた壁に背中を預け仰向けに転がることでようやくその勢いが止まる。
突然の襲撃と不意打ち。
鬼でなければ既に死んでいるほどの攻撃に、しかし無惨は恐怖しない。
「会話をするまでもなく二度も襲われるとは...あのオシュトルとかいう男はどれほどの恨みを...いや、もうどうでもいい」
グリン、と上体を起こせば、彼の身体に刻まれた傷もたちまちに修復される。
「邪魔をするな」
右近衛大将・オシュトルを象っていたその姿は、ゴキゴキと鈍い音を立てて変化する。
猫のように鋭い眼。容姿端麗という言葉がよく似合う其の男は『鬼舞辻無惨』。
擬態を止めた本来の彼の姿である。
猫のように鋭い眼。容姿端麗という言葉がよく似合う其の男は『鬼舞辻無惨』。
擬態を止めた本来の彼の姿である。
「今すぐにその膝を折り頭を垂れ、首を差し出せ。私の望みはただそれだけだ」
こめかみにビキビキと筋が走り始める。
怒り。
こんな首輪を嵌めて殺し合いを強制させる小娘共への。
せっかく累の首輪を手に入れたのに脱出の目途すら立っていない現状への。
ここまで出会ってきた参加者たちへの。
そしていま自分を殴り飛ばした愚者への。
こんな首輪を嵌めて殺し合いを強制させる小娘共への。
せっかく累の首輪を手に入れたのに脱出の目途すら立っていない現状への。
ここまで出会ってきた参加者たちへの。
そしていま自分を殴り飛ばした愚者への。
ここに来てからの全てに怒りを抱かずにはいられなかった。
そのたまりに溜まり切った鬱憤は一時的に彼の思考から冷静さを奪い、殺意へと変貌させる。
睨みつける双眸に映るは、雄叫びをあげながら向かい来る破壊者の姿。
その姿に無惨は内心で唾を吐きかける。
理性なき人間など畜生にも劣る。生産性が無いからだ。
その畜生以下の駄物がなぜ私に牙を剥ける。
この男の名前も。出自も。なにもかもがどうでもいい。
興味すら湧かない。
その畜生以下の駄物がなぜ私に牙を剥ける。
この男の名前も。出自も。なにもかもがどうでもいい。
興味すら湧かない。
ただただ殺意に従い、交戦態勢に入る。
鬼の王・鬼舞辻無惨。
対するは、ゲッターの申し子―――否、いまや化身と化した男・流竜馬。
対するは、ゲッターの申し子―――否、いまや化身と化した男・流竜馬。
二匹の狂獣の戦が、いま始まろうとしていた。
☆
ビキビキと筋繊維が張り、無惨の右の触手が竜馬の胴目掛けて横なぎに振るわれる。
切断するつもりで放ったその一撃は、正確に竜馬の胴を捉えるも、しかし両断に至らず。
吹き飛ばされていく竜馬目掛けて、無惨は左の触手を振り下ろし追撃を加える。
バカリ、と音をあげて割れる地面。舞い散る血しぶき。
切断するつもりで放ったその一撃は、正確に竜馬の胴を捉えるも、しかし両断に至らず。
吹き飛ばされていく竜馬目掛けて、無惨は左の触手を振り下ろし追撃を加える。
バカリ、と音をあげて割れる地面。舞い散る血しぶき。
それでも気が済まぬと、更にもう一撃、右の触手を振り下ろす。
再び肉を叩きつけるはずだったそれは、しかし動きを止める。
無惨の意思ではない。
止められたのだ。
受けられた掌で。
無惨の意思ではない。
止められたのだ。
受けられた掌で。
「―――ぅぉらあああああ!!!」
叫びと共に弾かれ、その反動で思わず仰け反る。
信じられなかった。
触手を弾かれた、あるいは斬られたこと自体はある。
アヴ・カムゥを操縦する岸谷新羅やヴライ、ロクロウ・ランゲツやオスカー・ドラゴニアらがそれだ。
だが彼らは何れも支給品だったり技術を活かした場合だったりと、工夫を凝らしたうえでの防御である。
それがこの男はどうだ。
なんの小細工もなしに腕力のみでこの触手を弾いてみせたではないか。
信じられなかった。
触手を弾かれた、あるいは斬られたこと自体はある。
アヴ・カムゥを操縦する岸谷新羅やヴライ、ロクロウ・ランゲツやオスカー・ドラゴニアらがそれだ。
だが彼らは何れも支給品だったり技術を活かした場合だったりと、工夫を凝らしたうえでの防御である。
それがこの男はどうだ。
なんの小細工もなしに腕力のみでこの触手を弾いてみせたではないか。
その驚愕により生まれた僅かな隙間を縫い、竜馬は駆け抜け、瞬く間に距離を詰め、無惨の頭を鷲掴みにし力任せに放り投げる。
またも宙を舞う無惨の身体。
それに追走し、追いついた瞬間に無惨を蹴り上げ上空へと飛ばす。
またも宙を舞う無惨の身体。
それに追走し、追いついた瞬間に無惨を蹴り上げ上空へと飛ばす。
が、その足は自ら地に下ろすことはなく。
太ももの位置から伸びた管に引かれ、上空に向かって引き上げられる。
太ももの位置から伸びた管に引かれ、上空に向かって引き上げられる。
竜馬の蹴り上げが身体に触れた瞬間、無惨は身体から生やした細かい管を集中して足に打ち込み、ブレーキ代わりにしたのだ。
ギシ、ギシ、と触手が鳴る。
高速で引かれた管は、限界まで延びればピンと張り詰める。
無惨はそれを活かし、己の身体を弾とし、戻る反動を活かして高速の体当たりを放つ。
高速で引かれた管は、限界まで延びればピンと張り詰める。
無惨はそれを活かし、己の身体を弾とし、戻る反動を活かして高速の体当たりを放つ。
防御もなく正面からソレを受けた竜馬の身体はミシミシと悲鳴をあげ、後方へと弾き飛ばされていく。
常人なら五体が砕け散っている一撃。
しかし、彼の身体は切断にも破壊にも至らず、未だに健在。
しかし、彼の身体は切断にも破壊にも至らず、未だに健在。
すぐさま体勢を立て直して駆けてくる竜馬を両腕の触手で迎え撃ち、返す拳と戦闘曲を奏でる。
右の触手を振るえば左の拳で返され。
右の拳を振るえば左の触手で返す。
右の拳を振るえば左の触手で返す。
速度と力の拮抗する打ち合いは周囲に鈍音を響かせ、砂塵を巻き上げ、地面に余波を刻んでいく。
互角。彼らの戦いを見ている者たちがいればそう評価するだろう。
それでもなお、無惨は己の勝利を確信している。
その理由は先のやり取りで攻撃の際に竜馬に撃ちこんだ鬼の血だ。
無惨の血は適正量を与えることで人間の身体を鬼へと変化させることができる。
しかし、この血は人体においては毒物に近い。
適性の量を越えた身体は崩壊し、受けた者を死に至らしめる。
しかし、この血は人体においては毒物に近い。
適性の量を越えた身体は崩壊し、受けた者を死に至らしめる。
無惨は竜馬の攻撃を受けながらも、彼の身体と己の触手が触れる度に毒を流し込んでいた。
そしてそれはいまも。
無惨は攻撃を捌くついでに毒を注入している。
そしてそれはいまも。
無惨は攻撃を捌くついでに毒を注入している。
打ち合う打撃が100を超えたあたりだった。
―――ゴポリ
竜馬の口から血が溢れ、その膝ががくりと折れる。
生まれた勝機。
これを逃す手はないと、無惨はその頭部を弾けさせる為に触手を振り下ろす。
生まれた勝機。
これを逃す手はないと、無惨はその頭部を弾けさせる為に触手を振り下ろす。
頭蓋骨を破壊し脳髄を撒き散らすはずだったその一撃は、しかし頭突きで返され不発に終わる。
そして、振るわれる拳が顔面に突き刺さり、再び後方へと吹き飛ばされる無惨の身体。
そして、振るわれる拳が顔面に突き刺さり、再び後方へと吹き飛ばされる無惨の身体。
その一撃を受けた無惨に、さしたる驚きはなかった。
鬼殺隊の柱くらいの実力があれば、致死に至る毒を受けても数回程度は反撃できてもおかしくない。
だから、この一撃も最後の悪あがきにすぎない。
鬼殺隊の柱くらいの実力があれば、致死に至る毒を受けても数回程度は反撃できてもおかしくない。
だから、この一撃も最後の悪あがきにすぎない。
じゅくじゅくと肉片が蠢き、潰れた顔面を再生させ視界を取り戻す。
途端に、無惨の目が見開かれる。
再び迫る竜馬は、瀕死などではなかった。
既に出血は止まっており、息切れすらない有様だ。
既に出血は止まっており、息切れすらない有様だ。
たまたま毒を解除できる道具でも持っていたか。否、あったとしてもそれを使う素振りすらなかった。
(まさか、自力で私の毒を消したというのか?)
過程こそ伴わぬにせよ、その結論に辿り着く。
竜馬の身体に注入された毒を消したのは、その身に迸るゲッター線の影響である。
情報を、命を、生物を喰らい進化し続けるゲッター線。
ゲッターは鬼の血という毒を喰らい、理解することでそれへの抵抗力という形で進化を果たした。
この会場で魔王ベルセリアの業魔の力を覚えたのと同じように。
情報を、命を、生物を喰らい進化し続けるゲッター線。
ゲッターは鬼の血という毒を喰らい、理解することでそれへの抵抗力という形で進化を果たした。
この会場で魔王ベルセリアの業魔の力を覚えたのと同じように。
故に、無惨の毒はいまの竜馬にはさしたる脅威にはなり得なかった。
再び腹部に走る衝撃と共に吹き飛ばされながら、無惨の思考は冷静さを取り戻す。
己と同等の身体能力。
言葉も介せない異常性。
再生能力と鬼の血すら打ち消す自浄力。
言葉も介せない異常性。
再生能力と鬼の血すら打ち消す自浄力。
これらを相手にするのは―――割に合わない。
無惨は吹き飛ばされながらも宙返りをしつつ、足に力を込め始める。
ビキビキと筋が張り、はち切れんばかりに肥大化した太腿が地に着いた途端。
それを解放するかのように、彼は駆け出す。
吹き飛ばされた勢いを利用して距離を稼いだ無惨は、そのまま背を向けて全力で走り始めた。
ビキビキと筋が張り、はち切れんばかりに肥大化した太腿が地に着いた途端。
それを解放するかのように、彼は駆け出す。
吹き飛ばされた勢いを利用して距離を稼いだ無惨は、そのまま背を向けて全力で走り始めた。
背を向けての逃走。強者ならば選びえない選択肢。
鬼舞辻無惨は生きることだけに固執する生命体。
己の武を誇る武士や世界を滅ぼす魔王のような強者としての意地や矜持、使命などないため、逃走にも一切の抵抗が無い。
己の武を誇る武士や世界を滅ぼす魔王のような強者としての意地や矜持、使命などないため、逃走にも一切の抵抗が無い。
その遠ざかっていく背中を見逃す謂れもなく。
竜馬はその背中目掛けて全力で駆けていく。
迫りくる気配に無惨は舌打ちをする。
(異常者め。私に戦う気がないのもわからんのか)
無惨は苛立ちはすれど、恐怖は抱いていない。
彼は真の脅威というものを識っているからだ。
彼は真の脅威というものを識っているからだ。
継国縁壱。
かつて相対したその剣士はひどく弱く見えた。
覇気も闘気も憎しみも殺意も感じない、撫でれば折れる稲穂のような貧相な男だった。
その男が繰り出した赤い刀の斬撃は何よりも鋭く、忌々しいほどに美しく、そして実際に太陽のように何百年もの間この身を焼き続けてきた。
かつて相対したその剣士はひどく弱く見えた。
覇気も闘気も憎しみも殺意も感じない、撫でれば折れる稲穂のような貧相な男だった。
その男が繰り出した赤い刀の斬撃は何よりも鋭く、忌々しいほどに美しく、そして実際に太陽のように何百年もの間この身を焼き続けてきた。
アレに比べれば、流竜馬などただの厄介な狂獣。
気配を隠すこともできず。
己の意思すらなく。
技術の伴わないただの力任せ。
そんなもの、あの真の怪物には遠く及ばない。
気配を隠すこともできず。
己の意思すらなく。
技術の伴わないただの力任せ。
そんなもの、あの真の怪物には遠く及ばない。
ただ、相手をするのが酷く面倒であった。
だから逃げる。
勝手に野垂れ死ねと砂をかけて放棄する。
だから逃げる。
勝手に野垂れ死ねと砂をかけて放棄する。
そんな、見逃される己の幸運に気づかない愚者だからこそ、無惨は苛立ちを抱く。
だがそんな無惨の内心など知ったことではなく、10分以上かけて竜馬と無惨の距離が縮まった。
無惨はそこで振り返り、腿から触手を放ち迎撃するも、微かに遅し。
竜馬は懐に入り込み、無惨の腹部を蹴り上げ吹き飛ばす。
竜馬は懐に入り込み、無惨の腹部を蹴り上げ吹き飛ばす。
三度、宙を舞う無惨の身体。
向かう先は、B-7エリア、遊園地。
向かう先は、B-7エリア、遊園地。
―――そして、時間は冒頭に至る。
★
ガシャン、と音を立て、無惨の張りつけられるゴンドラが今にも吹き飛ばされそうなほどに揺れ動く。
流竜馬が天井に飛び乗ったのだ。
相も変わらず狂った笑みを浮かべて見下ろしてくる竜馬に、無惨の歯がギリ、と鳴る。
(なにが嬉しい。なぜ貴様は止まらない)
張りつけられた己の肉体を剥がし、落下すると同時にゴンドラを蹴り上げる。
竜馬の着地には耐えたゴンドラもついには音を上げ、彼方へと吹き飛ばされれば、竜馬もまた無惨へと飛び掛かり、共に落下していく。
竜馬の着地には耐えたゴンドラもついには音を上げ、彼方へと吹き飛ばされれば、竜馬もまた無惨へと飛び掛かり、共に落下していく。
無惨は背中の触手を攻撃ではなく、前方に束ねて盾のように構える。
竜馬は構わず拳をソレ目掛けて振るうが、しかし触手は壊されず、竜馬の腕は触手の束に沈みこむ。
触手の盾は硬度よりも柔軟性を優先している。
その柔軟性を以て、トランポリンのように竜馬の身体を弾き飛ばし先に地上へと叩き落とす。
竜馬は構わず拳をソレ目掛けて振るうが、しかし触手は壊されず、竜馬の腕は触手の束に沈みこむ。
触手の盾は硬度よりも柔軟性を優先している。
その柔軟性を以て、トランポリンのように竜馬の身体を弾き飛ばし先に地上へと叩き落とす。
それだけでは終わらない。
無惨は背中の触手をまだ壊れていないゴンドラへと伸ばし、接合部を切断。
そのまま竜馬目掛けてゴンドラを雨あられと投げつける。
重量100kgを優に超える鉄の塊を高速でぶつけられて平気な生物はそうはいない。
無惨は背中の触手をまだ壊れていないゴンドラへと伸ばし、接合部を切断。
そのまま竜馬目掛けてゴンドラを雨あられと投げつける。
重量100kgを優に超える鉄の塊を高速でぶつけられて平気な生物はそうはいない。
竜馬が地面に叩きつけられるなり、明確な殺意を以て放たれるソレは派手な音を立てて血しぶきを舞い上げコンクリート仕立ての地面にすら亀裂を入れさせる。
「......」
無惨は観覧車の支柱にへばりつきながら、地上を無言で見下ろす。
普通ならばこの時点で全身を潰され決着がついている。
例え害虫の如きしぶとい鬼殺隊の柱達でも追いすがることすらできないだろう。
だが、無惨にはどうにもこれで終わったようには思えなかった。
普通ならばこの時点で全身を潰され決着がついている。
例え害虫の如きしぶとい鬼殺隊の柱達でも追いすがることすらできないだろう。
だが、無惨にはどうにもこれで終わったようには思えなかった。
それに応えるように奔る一筋の閃光。
鉄くずと化したゴンドラの群れの中心から、緑色の光線が無惨目掛けて放たれ、その身体を支柱から弾き落とす。
「チィッ!」
ぐしゃり、と着地の際に潰れ、損傷した肉体を再生させながら、無惨は追走を逃れるべく駆け出す。
ボン、となにかが弾けたような音と共に鉄くずの山から姿を現した竜馬を後ろ目で見ながら、無残が向かう先は古めかしい外観の洋館―――お化け屋敷。
ボン、となにかが弾けたような音と共に鉄くずの山から姿を現した竜馬を後ろ目で見ながら、無残が向かう先は古めかしい外観の洋館―――お化け屋敷。
『いらっしゃ――』
受付嬢の恰好をしたμを模した人形にも構うことなく、無惨は暗がりの中を突き進んでいく。
入り組んだ道。
狭い通路。
視界を塞ぐ暗がり。
反響する足音。
時代柄、遊園地の造詣を持たないため適当に入った無惨だったが、こうも身を隠すのに向いた施設を目の当たりにすれば一息もつきたくなるというもの。
如何に鬼に疲労の概念が薄いとはいえ、獣に構われれば肉体的にも精神的にも疲労はするのだ。
入り組んだ道。
狭い通路。
視界を塞ぐ暗がり。
反響する足音。
時代柄、遊園地の造詣を持たないため適当に入った無惨だったが、こうも身を隠すのに向いた施設を目の当たりにすれば一息もつきたくなるというもの。
如何に鬼に疲労の概念が薄いとはいえ、獣に構われれば肉体的にも精神的にも疲労はするのだ。
だが、彼は知らない。お化け屋敷とは決して人が休まる為に作られたものではないことに。
―――ガラン
「ッ!?」
突如降ってきたナニかに無惨は咄嗟に腕を振るい迎撃する。
無惨の腕に掃われたソレの正体は、等身大の骸骨のレプリカだった。
無惨の腕に掃われたソレの正体は、等身大の骸骨のレプリカだった。
「...???」
呆気にとられる無惨が数歩動き、それに反応しまた別の仕掛けが作動する。
『ィヤアアアアアアアアアア!!!!』
「!?」
「!?」
絶叫と共に壁から飛び出た白い腕に、無惨はまたも反射的に腕を振るう。
パキャリ、と音を立てて落ちるソレはやはり玩具で。
ますます無惨の表情は困惑に包まれる。
パキャリ、と音を立てて落ちるソレはやはり玩具で。
ますます無惨の表情は困惑に包まれる。
(...まあいい。くだらない遊戯とはいえ、仕掛けがあるならば奴の接近もわかりやすくなるというもの―――)
刹那。
地響きがしたかと思えば、轟音が迫り、無惨の眼前の壁を壊しナニカが暴風を伴い通り過ぎていく。
それがナニかを考える意味もない。
地響きがしたかと思えば、轟音が迫り、無惨の眼前の壁を壊しナニカが暴風を伴い通り過ぎていく。
それがナニかを考える意味もない。
流竜馬が、高速で何枚もの壁を突き破ってきたのだ。
「いい加減にしろ」
無惨の目元にビキリと筋が走り、先ほど落ちてきた骸骨のレプリカを竜馬へと投げつけ、その隙に今しがた空けられた穴に飛び込みお化け屋敷から脱出する。
追いかけてくる気配を感じながら無惨が目指すは、ゴンドラの全て落ちた観覧車の支柱。
無惨は支柱の根元に両腕の触手と背中の管、更には太腿の管までを総動員して突き刺し、内部から破壊する。
すると支柱はたちまちに傾き始め、竜馬目掛けて落ち始まる。
雨あられであったため実際に当たった数は少ないゴンドラとは違い、支柱はその全ての重量が詰められている。
これに圧し潰されれば如何な怪物とてただでは済まない。
無惨は支柱の根元に両腕の触手と背中の管、更には太腿の管までを総動員して突き刺し、内部から破壊する。
すると支柱はたちまちに傾き始め、竜馬目掛けて落ち始まる。
雨あられであったため実際に当たった数は少ないゴンドラとは違い、支柱はその全ての重量が詰められている。
これに圧し潰されれば如何な怪物とてただでは済まない。
だが竜馬は臆せず立ち向かい、そのまま跳躍。
厚さ数メートルもある支柱を殴りつければ、たちまちに軌道は変わり、支柱は明後日の方向へと倒れ込み、傍にあったメリーゴーランドやティーカップ乗り場が無残に潰される。
轟音と共に地面が陥没し、暴風が荒れ狂い、周囲の施設も被害を被っていく。
厚さ数メートルもある支柱を殴りつければ、たちまちに軌道は変わり、支柱は明後日の方向へと倒れ込み、傍にあったメリーゴーランドやティーカップ乗り場が無残に潰される。
轟音と共に地面が陥没し、暴風が荒れ狂い、周囲の施設も被害を被っていく。
無惨はそんな惨状を顧みることもなく、傍にあった駅施設・池袋駅へと向かい電車を探す。
如何に竜馬が早かろうと所詮は人間。最高速度に達した電車に追いつけるはずがない。
そして電車も、一度は大破したものの、新たに設置したと1回目の放送で言われていたのであるはずだ。
そう考え駅に入ったのだが、しかし。
如何に竜馬が早かろうと所詮は人間。最高速度に達した電車に追いつけるはずがない。
そして電車も、一度は大破したものの、新たに設置したと1回目の放送で言われていたのであるはずだ。
そう考え駅に入ったのだが、しかし。
「電車が...ない、だと?」
無惨の目の前にあるのは、がらんどうとした線路だけ。
そこには電車は影も形もなかった。
そこには電車は影も形もなかった。
μが新たに作った電車が走っているのは渋谷駅からの発車の便だ。
本来ならば、それでもとうに池袋駅まで着いていてもおかしくはないのだが、放送前に王が切った線路は直されずそのままであるため、電車はスパリゾート高千穂までしかたどり着けなかったのだ。
本来ならば、それでもとうに池袋駅まで着いていてもおかしくはないのだが、放送前に王が切った線路は直されずそのままであるため、電車はスパリゾート高千穂までしかたどり着けなかったのだ。
「ふざけるな...!」
なにもかもがうまくいかない。
まるで神が今更になって自分に罰を与え始めているかのように。
そのフラストレーションは無惨の顔を真っ赤に染め上げ、文字通り怒り心頭という言葉がピッタリの様相を呈していた。
まるで神が今更になって自分に罰を与え始めているかのように。
そのフラストレーションは無惨の顔を真っ赤に染め上げ、文字通り怒り心頭という言葉がピッタリの様相を呈していた。
そして、その怒りの矛先は、目下己が逃げていた男へと向けられる。
数多の触手が竜馬に襲い掛かり、竜馬はそれを嬉々として迎え撃っていく。
つい先ほども交わされた攻防に、周囲のモニュメントが破壊されていく。
つい先ほども交わされた攻防に、周囲のモニュメントが破壊されていく。
電光掲示板が地面に落ちガラスがぶちまけられ。
ベンチは叩き折られ。
ゴミ箱は両断され中身を撒き散らし。
駅員室は横なぎに両断され、中身を撒きあがらせ。
ベンチは叩き折られ。
ゴミ箱は両断され中身を撒き散らし。
駅員室は横なぎに両断され、中身を撒きあがらせ。
荒れ狂う拳打の嵐の中、ひらひらと舞う一枚の紙は、竜馬の眼前にまで飛んでいく。
微かに視界が塞がれるが、今の竜馬にはさしたる意味はない。
いまの彼の欲求は強者を屠り食らい、高みに昇ることのみ。
だから、たかだか紙一枚が泳いだところでなんの意味ももたらさない―――はずだった。
微かに視界が塞がれるが、今の竜馬にはさしたる意味はない。
いまの彼の欲求は強者を屠り食らい、高みに昇ることのみ。
だから、たかだか紙一枚が泳いだところでなんの意味ももたらさない―――はずだった。
『北宇治高等学校にて待つ 武蔵坊弁慶』
その文字が目に入った瞬間。
その一瞬だけ、竜馬から笑みは消え、微かに動きも止まる。
その一瞬だけ、竜馬から笑みは消え、微かに動きも止まる。
刹那。
無惨の触手が横なぎに振るわれ、その紙ごと竜馬を彼方へと吹き飛ばす。
「...?」
竜馬の動きが急に緩んだことを疑問に思う無惨だが、この機を逃す彼ではない。
完全に自分が視界から外れている今が好機だ。
完全に自分が視界から外れている今が好機だ。
(理性なき野獣が。これ以上私に関わらず何処で野垂れ死ぬがいい)
無惨は脇目もふらずに線路を駆け出し、闇夜にその姿を消していった。
☆
無惨に吹き飛ばされた先で、何度も地面を跳ね、ようやく止まった竜馬は直ぐに顔を上げる。
その顔には既に狂気の笑みが戻っており、変わらず殺戮機械として動き出す。
その顔には既に狂気の笑みが戻っており、変わらず殺戮機械として動き出す。
ゲッターに呑まれた彼は考えない。顧みない。
なぜ一瞬、武蔵坊弁慶という名を見ただけで止まったのか。
そこに何の意味があったのか。
破壊の権化がその答えを識ることはないだろう。
【B-7/夜中/一日目】
※遊園地の観覧車やお化け屋敷をはじめとした多くの施設・池袋駅のホームが破壊痕でかなり荒れ果てています。
※遊園地の観覧車やお化け屋敷をはじめとした多くの施設・池袋駅のホームが破壊痕でかなり荒れ果てています。
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(極大)、全身ダメージ(大)、デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、麗奈の回復スキルにより回復力向上、苛立ち(絶大)
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3、累の首輪、鈴仙の首輪、オスカーの首輪
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:まずはあの獣(竜馬)から離れる。そして麗奈を確保する。
1:麗奈確保の為の人員として、他人の姿で他の参加者を利用する。
2:太陽克服のカラクリを究明するため、ウィキッドから『デジヘッド』の情報を吐かせる。
3:私は……太陽を克服したのか……?
4:麗奈は徹底的に利用する。まずはこいつの能力の詳細を確認し、太陽克服のカラクリを探る。問題ないようであれば、麗奈を吸収することも視野にいれる。
5:昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
6:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
7:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
8:『ディアボロ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。よくも私に嘘をついたな。ただでは殺してやらない。
9:垣根、みぞれ、オシュトル、ロクロウ、臨也は殺しておきたいが、執着するほどではない。
10:あの獣共(ヴライ、竜馬)とは、二度と関わらない。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
※ 『危険人物名簿』に記載されている参加者の顔と名前を覚えました。
※再生能力について制限をかけられていましたが、解除されました。現在の再生能力は麗奈の回復スキル『アフィクションエクスタシー』の影響で、太陽によるダメージを克服できるレベルのものとなっております。
※蓄積したストレスと、デジヘッド化した麗奈の演奏の影響をきっかけに、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した麗奈からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、麗奈と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読み、「自分たちが作られた存在」という可能性を認識しました。
※ 『覚醒者』について纏められたレポートを読み、覚醒者『006』が麗奈、『007』が無惨であることを認識しました。
※ 攻撃強化スキル『ロジックマイト』を発動できるようになりました。無惨自身の生命が脅かされ、それによるストレスが蓄積された状態になると、無自覚に発動します。
※ 太陽光によるダメージで、身体の一部が炭化し、消失しました。
その影響で全身にダメージを負っています。
現在は麗奈との距離が縮んだおかげで、陽光を浴びてもダメージは受けませんが、消失によるダメージを回復するために、人間の血肉を食らう必要があります。
[状態]:疲労(極大)、全身ダメージ(大)、デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、麗奈の回復スキルにより回復力向上、苛立ち(絶大)
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3、累の首輪、鈴仙の首輪、オスカーの首輪
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:まずはあの獣(竜馬)から離れる。そして麗奈を確保する。
1:麗奈確保の為の人員として、他人の姿で他の参加者を利用する。
2:太陽克服のカラクリを究明するため、ウィキッドから『デジヘッド』の情報を吐かせる。
3:私は……太陽を克服したのか……?
4:麗奈は徹底的に利用する。まずはこいつの能力の詳細を確認し、太陽克服のカラクリを探る。問題ないようであれば、麗奈を吸収することも視野にいれる。
5:昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
6:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
7:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
8:『ディアボロ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。よくも私に嘘をついたな。ただでは殺してやらない。
9:垣根、みぞれ、オシュトル、ロクロウ、臨也は殺しておきたいが、執着するほどではない。
10:あの獣共(ヴライ、竜馬)とは、二度と関わらない。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
※ 『危険人物名簿』に記載されている参加者の顔と名前を覚えました。
※再生能力について制限をかけられていましたが、解除されました。現在の再生能力は麗奈の回復スキル『アフィクションエクスタシー』の影響で、太陽によるダメージを克服できるレベルのものとなっております。
※蓄積したストレスと、デジヘッド化した麗奈の演奏の影響をきっかけに、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した麗奈からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、麗奈と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読み、「自分たちが作られた存在」という可能性を認識しました。
※ 『覚醒者』について纏められたレポートを読み、覚醒者『006』が麗奈、『007』が無惨であることを認識しました。
※ 攻撃強化スキル『ロジックマイト』を発動できるようになりました。無惨自身の生命が脅かされ、それによるストレスが蓄積された状態になると、無自覚に発動します。
※ 太陽光によるダメージで、身体の一部が炭化し、消失しました。
その影響で全身にダメージを負っています。
現在は麗奈との距離が縮んだおかげで、陽光を浴びてもダメージは受けませんが、消失によるダメージを回復するために、人間の血肉を食らう必要があります。
【流竜馬@新ゲッターロボ】
[状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(大、再生中)、ゲッター線同化による暴走、自我消失。
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本方針:全てを壊す。
0:強者を喰らい進化する。
[状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(大、再生中)、ゲッター線同化による暴走、自我消失。
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本方針:全てを壊す。
0:強者を喰らい進化する。
[備考]
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。
※早苗、ブチャラティ(ドッピオ)、カナメ、霊夢と情報交換してます。
※琴子、あかり、ドッピオ、メアリ、竜馬の五人でこれまでの経緯と、生存者についての情報を交換しました。
※ゲッター線に呑まれて暴走しており、身体能力が増大しています。
※ゲッター線の共鳴により、肉体再生の付与、魔王ベルセリアの能力を引き継いでいます。
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。
※早苗、ブチャラティ(ドッピオ)、カナメ、霊夢と情報交換してます。
※琴子、あかり、ドッピオ、メアリ、竜馬の五人でこれまでの経緯と、生存者についての情報を交換しました。
※ゲッター線に呑まれて暴走しており、身体能力が増大しています。
※ゲッター線の共鳴により、肉体再生の付与、魔王ベルセリアの能力を引き継いでいます。
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