「殺し合い、ですか……」
この殺し合いの場の南の平原において、半人半霊の少女、魂魄妖夢はそう呟いた。
この殺し合いの場の南の平原において、半人半霊の少女、魂魄妖夢はそう呟いた。
殺し合いの場に呼ばれた後、まず妖夢は『自分がどうするべきか』を考えた。
ひとつ。殺し合いに乗る。
──論外だ。そもそもあのテミスやμとやらが優勝したところで願いを叶えてくれるなんてそうそう思えないし、何よりもこの殺し合いの場には幻想郷での仲間たちも呼ばれている。彼女たちと殺し合いなんてしたくないし、誰かを殺そうとも思わない。
そして妖夢にはもう一つ、テミスとμを打ち倒してこの殺し合いから脱出する、という選択肢がある。妖夢がとったのは当然こちらの考え。
しかし、妖夢が好んで扱う楼観剣も白楼剣もどこにも見当たらない。支給品袋を漁っても、基本的なそれの他には鍔に隼の意匠が施された細身の直剣に、どう考えても武器にならなそうなものが2つ。
剣が支給されたのは妖夢にとって幸運ではあったが、やはり妖夢の力を引き出すにはあの二振りの刀が1番である。
剣が支給されたのは妖夢にとって幸運ではあったが、やはり妖夢の力を引き出すにはあの二振りの刀が1番である。
(やはり、そう簡単にテミスは私たちに反撃ののろしを上げさせてはくれないみたいですね……)
妖夢は暫く考え込む。ここからだと産屋敷邸という場所が近いが、そう遠くない場所には紅魔館──この殺し合いに呼ばれている十六夜咲夜がメイド長として働いている館がある。まずはそこへ向かおう。霊夢たちもきっとそこへ向かうはずだ。
そう妖夢が思ったその時であった。
ザッ、ザッ、ザッ
足音がする。それはこちらに向かってだんだん大きくなっていく。
そしてハッキリと、男の姿が見えた。その男は黒い詰襟の服を着ており、右半分に無地、左半分に鼈甲柄の羽織りを着ている。参加者の一人か? 妖夢は構える。
そしてハッキリと、男の姿が見えた。その男は黒い詰襟の服を着ており、右半分に無地、左半分に鼈甲柄の羽織りを着ている。参加者の一人か? 妖夢は構える。
「どなたですか?」
「そっちこそ、剣なんて構えて何をしている? まさかこの殺し合いに乗った者か?」
「いいえ。この殺し合いに乗るつもりはありません……これでどうですか?」
「そっちこそ、剣なんて構えて何をしている? まさかこの殺し合いに乗った者か?」
「いいえ。この殺し合いに乗るつもりはありません……これでどうですか?」
そう言って妖夢は剣を置き、両手を上げる。それを見た男は、そうか、と言うと、
「俺は冨岡義勇。お前と同じ、殺し合いに乗るつもりは無い。ところで……その白い物体は何だ?」
冨岡義勇と名乗った男は妖夢の傍にある半霊をまじまじと見つめている。
冨岡義勇と名乗った男は妖夢の傍にある半霊をまじまじと見つめている。
「私は魂魄妖夢。半人半霊の庭師です。この白いのは、半霊です」
「半人? 半霊? 鬼とは違うのか?」
聞きなれない単語に義勇は困惑する。そんな義勇に妖夢は自分は人間と幽霊のハーフであるが、その間に生まれた子供ではなく元々こういう種族であるということを説明した。
「半人? 半霊? 鬼とは違うのか?」
聞きなれない単語に義勇は困惑する。そんな義勇に妖夢は自分は人間と幽霊のハーフであるが、その間に生まれた子供ではなく元々こういう種族であるということを説明した。
「ふむ……お前がどんな存在であろうと、この殺し合いに乗っていない以上、敵対する理由もない。同行しよう」
「あ、ありがとうございます! 冨岡さん!」
「あ、ありがとうございます! 冨岡さん!」
その後、妖夢と義勇はひとまずの目的地について話し合った。彼女たちの近くにある産屋敷邸は義勇がよく知る場所というのもあり、最初に産屋敷邸、その次に紅魔館へと向かう事になった。
「行くぞ」
「はい!」
「はい!」
義勇と妖夢は歩みを進める。
2人が迎える結末がいかなるものか。それはまだ、誰も知らない。
2人が迎える結末がいかなるものか。それはまだ、誰も知らない。
◆
(しかし、なぜ錆兎や煉獄がここにいるのだ……?)
魂魄妖夢と共に産屋敷邸に向かっている最中、義勇は妖夢に出会う前の事を思い出していた。
錆兎。義勇の親友で、最終選別を通るために稽古に励んでいたが、運命の最終選別の時に彼は1人で殆どの鬼を倒し、そして命を落とした。
煉獄杏寿郎。義勇と同じく”柱”の一人で、『炎柱』の二つ名をもつ隊士だったが、上弦の鬼との戦いで命を落とした。
その2人が、何故かこの殺し合いに呼ばれている。
考えられるのは、テミスが彼らを蘇生させたこと。確かに、なんでも願いを叶えられると言っていた以上、死者蘇生など造作もないのだろう。
しかし、失われた命は戻らない。それがこの世界の常だ。それをねじ曲げるなど……
しかし、失われた命は戻らない。それがこの世界の常だ。それをねじ曲げるなど……
とはいえ、錆兎や煉獄がいるということに、喜びを感じたというのもまた事実だ。特に錆兎とは、また語り合いたいと考えている。
そして。
(鬼舞辻無惨……! それに、あの時の下弦の鬼……!)
(鬼舞辻無惨……! それに、あの時の下弦の鬼……!)
鬼舞辻無惨。鬼の始祖にして、鬼殺隊が必ず殺さなければいけない相手。それに、かつて義勇が首を斬り落とした筈の『下弦の伍』累。
柱にとって、下弦の鬼は敵ではない。しかし他の一般隊士や、何の力も持たない一般人にとっては十分すぎる脅威となりうる。他の人に危害が及ぶ前に、何としても今一度首を斬り落とす。
そして、鬼舞辻無惨。今まで炭治郎以外は誰もその姿を見たことがないが、テミスは鬼舞辻無惨をも呼び寄せている。無惨は間違いなくこの殺し合いでも人を殺して回り、鬼にしていくのだろう。何としてでも見つけ次第、殺さなければならない。
鬼殺隊の、『水柱』として──
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