バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

3の純情な感情

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kyogokurowa

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シ ャ ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ

シャワーのヘッドから流れ出る湯が全身を温め、こびりついた血や垢も落とし清めていく。
彼女、ベルベット・クラウは気持ちいい、とシンプルに思う。
顔に湯が掛かれば、目を閉じて顔を顰めつつもその一滴一滴を心地よく感じ。
たわわに実った果実から爪先までもが温もりに包まれ。
地に放たれた湯から立ち昇る湯気に、鼻腔をくすぐられながら深呼吸して肺いっぱいに満たし。
そして頭から湯を被り、長い髪の先までをも濡らし、備え付けのシャンプーを手に擦り付け泡立てると、その泡で髪を洗い始める。

もこもこもこ

シャンプーの泡がベルベットの頭を包み込む。
その感触の心地よさに思わず鼻歌の一つでも歌いたくなるような気分になる。
シャンプーを流すと、長年のしかかっていたような錘から解き放たれたような気分にすらなる。
髪の次は全身だ。
持ち込んだタオルに石鹸を着け、わしゃわしゃと揉みしだき泡立てると、首から順に拭っていく。
肩。腕。脇の下。胸。腹部。臀部。脚。全身を余すことなく泡で包めばそれだけで充足感が湧いてくる。
そのまましばし待機し、泡を全身で堪能。程なくして洗い流せば汗や血、垢と共に疲れも流れていくようなそんな感覚すら覚えてしまう。
傷はさすがに埋まらないが、それでも全身が綺麗になればシャワーを浴びる前とは見違えるほどスッキリした気分になれるのだ。

「あー......生き返る」

浴槽に浸かり、手足を思いっきり伸ばして息を吐けば自然とその言葉が出てくる。
体中に染み渡る熱を感じつつ、ベルベットはその肢体をゆっくりと沈ませていった。

「ふぅ〜〜〜...」

思わずため息にも似た吐息が漏れる。吐瀉物や汗を落とすために急遽入った風呂だったが、思えば、こんなにゆっくり風呂に入るなどいつ以来だったか。
アルトリウスに左腕を切られ、監獄島に堕ちてから、寝る時以外はずっと戦い喰らい続けてきた。そもそもロクな入浴施設が無かったのもそうだが、何よりも強くなるため。強くなりアルトリウスを殺すため。ただそれだけを考える三年間で、今までのような人間らしい行為なんて忘れていた。

と、感慨にふけっていると、ふと思い出す。

(...そういえば、私の臭いってどんなだったのかしら)

この世界が虚構であり、自身もまた本物ではないかもしれない、というのはわかっている。しかし、μが「三年間、ロクに風呂にも入らず血みどろなまま過ごした人間」をそっくりそのまま細部まで再現している可能性もある。
体臭というものは自分ではわからないことが多い。もしもμが臭いまで再現していたらとなるとゾッとしてしまう。

(...大丈夫よね?臭くないわよね?麦野たちも特に何も言ってなかったし...)

夾竹桃はともかく麦野であれば喧嘩腰に臭いについて言及があるはずだ。それが無かったということは決して気になる臭いではなかったということだ。
そう思いつつも、一度気になってしまえばついてまわるのは乙女の本能か。
すんすんと鼻を鳴らしてみるが、やはり不安にかられてしまう。

(...もう少し浸かろう)

いま何分くらい入ったかはさておき、ベルベットはそのまま湯船に顔までつかりぶくぶくと泡を吐くのだった。


「...遅せぇ」

琵琶坂は苛立ちと貧乏ゆすりをしながら椅子に腰掛けていた。
ベルベットと共にテレビ局に着くなり提案したのは身体の洗浄だった。
疲れが溜まっているのもそうだが、それ以上にベルベットが吐いた吐瀉物の臭いが気になって仕方なかった。プライドの高い琵琶坂からしてみればそれが耐え難く、彼女から先に入らせ、自身はボロボロになった服の代わりを探していた。ベルベットをシャワー室に向かわせ、程なくして見つけたのは衣装部屋だった。
そこにはなんと参加者分の全ての替えの衣装が用意されていた。
この殺し合いの舞台はμの作ったメビウスだ。アレなら替えの衣装の用意くらいは容易いだろうが、それにしてもなぜテレビ局に集めているのだろうか、思考を巡らせる。

(この殺し合いでの俺たちは偽物らしいが...まさか、そいつらのコスプレ用か?)

テレビ局と衣装の関連性をこじつけるなら、誰ともわからない偽物たちが本来の姿で訪れた時、この衣装を着て成りきる為か。
そこまで考えたところでどうでもいいかと切り捨て、目当てのものだけを手に、落ち合う予定だった食堂で待機。しかし、ベルベットが入ってから三十分は経過したというのに未だにやってこない。

「制限時間もあるのに呑気な奴だな...」

琵琶坂は溜め息を吐かずにはいられない。ベルベットの長風呂もそうだが、自分も早くシャワーを浴びてスッキリしたいのだ。殴り込みをかけてもいいのだが、相手もただの雑魚じゃない。こんなところで無駄な消耗はしたくないため、大人しく待機しているのだ。

それからさらに十分ほど経過して、ようやく風呂から上がってきたベルベットがやってきた。

「待たせて悪かったわね」
「そう思うならもっと早く出てくれ」

気だるげに立ち上がり、ベルベットの横を通り過ぎようとする琵琶坂だが、肩を掴まれて立ち止まる。

「...なんだ?」
「ねぇ、私、変な臭いしない?」

思わぬ問いかけに琵琶坂は「はぁ?」とつい漏らしてしまう。
それもそのはず。つい先程まで暴君の如き振る舞っていた女が、今は恥じらい隠せぬ乙女のようなことを言い出すのだから。

(まさか臭いを気にして長風呂してたのか...?)
「ねえ、どうなのよ」
「...特に変な臭いはしないさ。もう充分だろ?」
「ええ。それならよかった」
「それと、向こうに衣装部屋があった。そのボロ切れだと見苦しいから、なにか着てくるといい」
「助かる」

衣装部屋へと向かっていくベルベットの背中を見ながら、本当に人が変わったようだと思う。
魔王と自称していた時より威厳が消えたというか憑き物が落ちたというか。つい先程まで暴れるしかなかった脳筋の暴君とは思えないほどの変貌ぶりだ。

(まあ邪魔にならなければなんでもいいさ。どのみち、優勝するんならいずれは殺すし、そうでないにしても二度と会うこともないしな)

琵琶坂永至は組んだ相手に情を抱くことは決してない。用が済めばすぐに関係を断ち、あるいは排除して、繋がりを消すことで己の本性を世間からひた隠し欲望を振るう。それはこの場でも、どんな相手でも変わらない。


シ ャ ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ

シャワーのヘッドから流れ出る湯が全身を温め、こびりついた血や垢も落とし清めていく。
彼、琵琶坂永至は気持ちいい、とシンプルに思う。
思えばここまでロクな目に遭わなかった。
非力だった少女に氷で頬を裂かれ。巨大な鳥にタップダンスを踏まれ。クソメイドにナイフを突き立てられ。珍妙な陰陽師に身体を焼かれ。魔王のビームによる襲撃に遭い。暴走する馬鹿に飽きるほど殴り飛ばされ。
そんな溜まりに溜まった鬱憤も、シャワーを浴びているこの時ばかりは和らいだ。
シャンプーで髪を洗い、石鹸で全身を泡で包めば、血も臭いも全てが洗い流されていき、爽快という2文字では表せられないほどに気持ちが和らぐ。
これで風呂が一人分の浴槽ではなく、旅館のような温泉であれば更に良かったのだが。

琵琶坂はメビウスの都合上、学生の姿をしているものの、実年齢は三十四歳。世間的に言えばまだ若いものの、直に中年の領域に入る。風呂に酒の一つでも持ち込みたいと思ったが、流石に殺し合いという状況の中でそんなことをするほど愚かではない。身体が温まり、ほどほどに気も安らぐと、風呂からあがり、身体をしっかり拭いて衣服を身に纏う。
そして、食堂に向かうと、鼻腔に届くのは食欲を誘う香りだった。
そのまま足を進めれば、下着のシャツの上からエプロンをかけたベルベットが台所に立っていた。

「ちょうどいいわね。もう少しでできるから」
「...なにをやってるんだ?」
「見ればわかるでしょ。料理よ、料理。あんたもお腹空いてるでしょ」

ベルベットの手元にはおたまが、目の前には鍋が煮えたぎっており、そこからは香ばしい臭いが漂っていた。
クリームシチュー。
殺し合いの舞台であるテレビ局の中で、その料理が出てくるというのはなんともミスマッチな光景だ。
ただ、食欲という欲求には逆らえず、琵琶坂の腹は早く寄越せと音を鳴らす。

「...毒でも入れたか?」
「入れるわけないでしょ。あんた、私をなんだと思ってるの。...こんなものでいいかしら」
ベルベットは呆れながら鍋の中身を皿によそい、テーブルに置くと、琵琶坂も席に着く。
そして、スプーンを手に取りシチューを口に運ぶ。

「!こ、こいつは...」

美味い。思わずそう漏らしてしまうほどに。
殺し合いの場であることを忘れてしまいそうになるほど、その味は美味かった。
ホワイトソースが舌の上で溶けるように広がり、そこに野菜や肉の旨みが染み渡る。
具材も小さく切られており、変に舌や歯に挟まることもなく胃に収めることができる。そのおかげで一つまた一つと食べる手が止まらない。

「で、どう?味は?」
「...悪くないんじゃないか」

強がるようにそう答えるが、未だに止まらないスプーンで本心は誤魔化せない。

「そ。ならよかった」

微笑みをこぼすベルベット。基が顔立ちの整っている彼女の微笑みだ。側から見ればそれは大層な美女として映るだろう。これまでの言動を知らなければ。

(...なんだこいつ。俺に取り入ろうとしてるのか?)

琵琶坂はベルベットを訝しむが、しかしすぐに「ないな」と改める。
もしもこれが帰宅部の頭の軽そうな女どもであればそういう可能性も無きにしもあらずだったろう。
しかし、ベルベットは帰宅部連中のような後ろ向きのダメ人間ではない。暴君、百歩譲っても荒れ狂うゴリラだ。そんな彼女に微笑まれようが、琵琶坂の心は微塵も寄らない。もとから他者に寄せる心なんてものは持ち合わせていないが。

そして琵琶坂の考えは概ね当たっていて。

(よかった...久々に作ってみたけど案外忘れてないものね)

ベルベットは琵琶坂のために料理をしていたのではない。

ベルベットは喰魔になった影響で、味覚が殆ど死んでいた。何を食べても無味であり、不味でもなければ美味くもない。そんな中で味見もせずにかつての味を再現できるか不安だった。しかし、その心配は杞憂だったようだ。
そして本当に食べてもらいたいのは琵琶坂ではなく、『ライフィセット』。弟と同じ名前を冠する彼のためだった。

(...おかしな話ね。これから殺そうとする相手に喜んでもらいたいだなんて)

彼は最終的には殺す。それは変わらない。そうしなければ願いを果たせないからだ。けれどもう、彼に対しての憎悪や怒りなどない。戦う前に一度、向き合って話したい。記憶だけではなく、互いのことをもっと解りあいたい。だからか、柄にもなく変な臭いがしないか気になったり、手料理を食べてもらいたいなどと変に色気づいたりしたくなった。

(ふふっ、魔王なんてものになったせいでイカれちゃったのかしら)

思わず笑みを溢すと、琵琶坂が怪訝な目を向けてくるのを感じ取った。
ベルベット自身、己の変わりように驚きもした。けれど忌避感はなく受け入れられてるのは、吹っ切れて心が軽くなったからだろうか、それともーーー


食事を終えた二人は、これからの方針を決めるーーーはずだったのだが。

「私たちで話し合うことなんてある?」
「そりゃ...あー、いや、ないな」

琵琶坂にしてもベルベットにしても、ここまできたからには狙うは優勝であり、最終的には殺し合う間柄だ。
故に、互いに信頼など一切置けず、他の連中のように背中を預け合って戦うなんてこともできるはずもない。組んでいるメリットとしては相手にする人数を分散するくらいのもので、それについても特別に策があるわけでもない。

「これでよし、と」

『1階・ベルベット・クラウ 2階・琵琶坂永至』
テレビ局の入り口に貼られた紙にはそう書かれていた。非常にシンプルな案内ではあるが、これで互いに背中から撃たれることもなく、且つ敵の戦力を分散させることができる。
仮に一方に戦力を集中させようとしても、敵はかえってもう一人の背後からの奇襲に気を割かなければならなくなるため、それはそれで都合もいい。

そして、ここがテレビ局だということは、移動する必要もないということでもある。

「えーと、このメガホン?ってやつに向けて話せばいいのね」
「ああ。たぶん、それでここら一帯くらいには響くんじゃないか?」

ベルベットが手に持つのは、大型メガホン。
テレビの機材として置かれていたそれを見て、使い方を知るなり彼女はこう考えた。

これで相手に呼び掛ければ会いやすくなるんじゃないかと。

琵琶坂からしても、以前までならいざ知らず、今はゲッターの恩恵を得ているため、大概の相手が脅威ではない。故に、面倒な相手、特にメアリのようなやつらとはさっさと決着を着けられるならそれでいいと同意した。

そして、ベルベットがメガホンに声を吹き込めば、周囲にその声が響き渡った。

『あー、あー。ちゃんと響いてるわよねこれ...まあいいわ。いま私たちはテレビ局にいる。ベルベット・クラウと琵琶坂永至、この二人に用がある奴らは今すぐここに来い!』

【一日目/夜中/Hー5】

【ベルベット・クラウ@テイルズオブベルセリア】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)、????を注入された。気分スッキリ。
[服装]:いつもの服装 (新品)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:復讐を果たす。私のやりたいことはソレだ。
0:テレビ局で他の参加者を待ち受ける。
1:琵琶坂永至、信用ならないが利用する。
2:会いたい...ライフィセット
3:『ゲッター』は邪魔をするなら排除する。
[備考]
※牢獄でのオスカー戦後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
※恐らく『絶対能力者』へ到達しました。恐らく『その先』にも到達する可能性があります。
※夾竹桃の知っている【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。

※複合能力 『災禍顕現』を習得しました。本人の拡大解釈を以て穢れを様々な形として行使できる能力です。
...が、本人が魔王になるつもりがないので出力は大幅に下がっています。

【琵琶坂永至@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:◆◆化、顔に傷、全身にダメージ(大)、疲労(大)、背中に複数の刺し傷、左足の甲に刺し傷、ゲッター線による火への耐性強化、火傷(中)、痣@鬼滅の刃
[服装]:黒のゴシックスーツ(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1、ゲッター炉心@新ゲッターロボ、絹旗の首輪
[思考]
基本:優勝してさっさと元の世界に戻りたい……つもりだったが……
0:俺の邪魔となるやつは全員潰せばいい。利用できるやつはとことん利用してやる 。ひとまずテレビ局で他の参加者を待つ。
1:ベルベットと組み、他の参加者を潰してまわる。ひとまずは休憩か。
2:あいつ(流竜馬)は許さない、が、関わりたくもない。頼むからどこかで勝手にくたばってろ。
3:あのクソメイド(咲夜)も殺す。...そういえばさっき居たな...殺しそびれたな...まあいいか
4:他の帰宅部や楽士に関しては保留
5:他に利用できそうなカモをがいればそいつを利用する
6:クソメイドの能力への対処方法を考えておく
[備考]
※帰宅部を追放された後からの参戦です
※ゲッターに選ばれました。何処まで強化されたかは後続の書き手にお任せします。

前話 次話
暴走特急 投下順 戦々凶々(前編)

前話 キャラクター 次話
魔獣戦線 ー生命の輝きー ベルベット・クラウ ---
魔獣戦線 ー生命の輝きー 琵琶坂永至 ---
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