バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

東風谷早苗は大いに怯え夢想する

最終更新:

kyogokurowa

- view
メンバー限定 登録/ログイン
「はぁ…。とんでもない『異変』に巻き込まれてしまいました……」

微かな潮風が漂うC-8海岸エリア。
月夜に照らされる海を背景にしてーー。
白と蒼を基調とした巫女服を着込む少女、東風谷早苗は大きな溜息をつき、項垂れる。

脳裏に浮かぶ光景は、主催者を名乗る連中によって理不尽に命を散らされた二人の人間の末路。
それをただの悪夢で片付けることが出来れば、どんなに幸せなことか。
首筋から感じる冷たく硬い首輪の感触が、先程目にした光景が夢幻でないことを悟らせる。
つまり、それが意味することは主催者の気分次第で、自分も最初の会場で殺された少女のように首を吹き飛ばされるということ。


「……ッ!」


ゾクリ、とーー。
恐怖で全身が震えそうになるが、グッと堪える。
今は現実に悲観するのではなく、今後どうするべきか考えていくのが重要だ。
早苗はそう自分に言い聞かせて、思考を切り替える。

名簿を確認すると、見知った幻想郷の住人の名前が幾つかあったが、守谷神社で共に住まう諏訪子と神奈子の名前はなかった。
不幸中の幸いと言えるべきか。早苗にとって家族とも言える彼女らが、この悪趣味な催しに参加させられていないことに一先ずホッとする。その反面、僅かながらの心細さも覚えたのも事実である。

何にしろ、まずは幻想郷の住人をはじめとした他の参加者との接触が急務だ。
参加者の中には、早苗のように殺し合いを望まないものは必ずいるはず。
そういった参加者と徒党を組みことで、殺し合いに乗った参加者からの襲撃に備えることもできるし、会場からの脱出に向けて知恵を出し合うことも期待できる。
ちなみに早苗は、今のところ会場脱出に向けた具体的なプランは持ち合わせていない。
だからこそ、今は他人に縋るしかない。


「…はぁ。我ながら情けないですが、仕方ないですよね……」

またしても大きな溜息をつき、早苗は海岸を後にした。
市街地であれば多くの参加者が集まるであろうと見越しての移動となるが、やがて早苗は
その市街地の一角より、金属と金属が衝突する音を耳にする。








着崩した着物のような衣装を羽織った剣客が一人、夜の街に佇んでいた。
その男の名は、ロクロウ・ランゲツ。
最強の剣術流派・ランゲツ(嵐月)流を継承するランゲツ家の六男坊で、戦いの鬼神「夜叉」の業魔でもある。


「そうか……。シグレ、お前も来ているのか……」

街灯によって照らされた名簿を握り締め、ロクロウは小さな笑みを漏らす。
最初の会場で主催者を名乗る女達によって見せつけられた催しは、不愉快極まりないものであった。
元よりあのテミスという女の言いなりとなって、この殺し合いに乗るつもりはない。会場のどこかにいるであろうベルベット達と合流の上、あの女たちを斬るつもりであったがーー。
この会場にシグレもいるとなれば、主催者打倒の他にもう一つの目標ができる。


(何処であろうと関係ない……。お前が此処にいるのであれば、俺はお前を見つけ次第挑むだけだ)


シグレ・ランゲツーー現ランゲツ家の当主であり、ロクロウの兄。
導師アルトリウス・コールブランドを筆頭とする「聖寮」の特等対魔士であり、最強の剣客。
ロクロウは、兄シグレを斬るために業魔となり、剣の腕を磨き続けてきた。
例え、第三者が監視する殺し合いの場という監獄の中にあったとしても、ロクロウの目的は一切ブレることはない。

方針は定まった。
幸いなことに、闘争のための得物は支給されている。
いざ、シグレを捜索せんとロクロウがその足を踏み出さんとしたその刹那――。



「――動くな。 動くと斬る……」
「……。」


それは男の声だった。
冷徹な声と共に、ロクロウは首輪とはまた別の金属の感触を首に感じ取る。
肌を伝う感触から男の得物は刀か、それともそれに似た刃物の類だろうか……。


(まあ、奴さんの武器が何であろうと考えるのは時間の無駄だよな。そんなものすぐにーー)
「其方に問う。其方はこの殺し合いに乗っているのか、それともーー」
(斬り合えば分かるからなぁッ!!!)
「ッ!?」


もはや男の言葉など耳に入っていない。
男の質問が終わる前に、ロクロウは獰猛な笑みを顔に張り付け、腰に下げている双剣を抜き取り、そのまま身体を捻じ回して、背後へと斬撃を振るったのであった。

カキンーー。
と甲高い音が深夜の街中に鳴り響く。
ロクロウが目にしたのは、己が剣撃を金色の扇を拡げて受け止める仮面の男の姿であった。


「ほう…鉄扇か。こいつは面白い」
「――有無を言わずに剣を振るうか、其方やはりこの殺し合いに……!」
「はは、さぁーてなッ!!」


仮面の男からの問いかけに、否定も肯定もしない。
挑発するかのように不適な笑みを浮かべながら、ロクロウは尚も剣を叩きこむ。
銀色の双剣と金色の鉄扇が火花を散らし、幾度も衝突音を奏でていく。

(反応は悪くない…、斬り合いには相応に慣れているようだな)

ロクロウは剣を振り回しながらも、相手の力量を測る。

元々ロクロウは背後より忍び寄る男の気配は察知していた。
しかし、あえて何かをするわけではなく男の出方を伺っていたのである。
男が殺し合いに乗っており、襲撃してくるのであればそれでよしーー支給された双刀の試し斬りとするつもりであった。
心の中ではそれを期待していた部分もあったが、接近してきた男が取った行動は殺し合いに乗ったそれではなかった。

その顛末に拍子抜けと物足りなさを感じたのと同時に、凶器を突きつけられた状態で相手に主導権を握られるのが面白くないからと思っての行動の果てが、この斬り合いだ。
断っておくがロクロウは、主催者の言いなりになって殺し合いに乗るつもりはない。しかし、それはこの会場において斬り合いを行わないことを意味しない。
ロクロウは主催者に唆されたからではなく、ロクロウ自身の意思に従って、闘争を繰り広げるーーただそれだけのことである。

勿論相手に明確な殺意がないのであれば、殺すことはないのだがーー。
ロクロウから繰り出される剣撃はまさに疾風怒濤。
仮面の男は鉄扇でそれらを受け止めるが、身を守るのが関の山。
ロクロウの剣技に一切の隙はなく、男に反撃を許さない。


「くッーー!」
「どうした、守りに徹するだけでは俺を討ち取れまい!」


ロクロウは仮面の男を煽り立て、剣を握る腕に大きく力を込める。
男は苦虫を潰したような表情を浮かべ、何とか斬撃を受け止めるが、大きく蹌踉めき後退。
バランスを崩した男へ、追撃せんと一歩踏み出したその矢先ーー。
男が鉄扇を握る腕とは別の腕で、懐から何かを取り出したのが見えた。

次の瞬間には、自身へと迫る風圧を感じとりーー
ロクロウは首を大きく逸らして、投擲物を回避した。

背後を振り返り、投擲物の状態を確認する。
それはーー男が今も手に取っているものと同じ鉄扇であった。
本来は二刀流のような用途を見越しての支給品なのだろうか。
金色に輝くその一方は、近くの建物の壁に深く突き刺さっていた。
回避が遅れていたら致命傷になりかねない一閃であった。

掠めた頬から鮮血が滴るのを感じ、ロクロウは視線を男へと戻す。
男は、片手を前に突き出したまま肩で息をしていた。
疲労困窮している様子だが、その仮面の奥底の瞳には尚も反抗の意志を宿している。


「はん…、面白れぇッ!」


ロクロウの右の眼光が紅く光った。
思いもよらない反撃と、まだ潰えぬ男の闘志に全身の血を滾らせる。
湧き上がる更なる闘争への欲求、どうして抑えることができようか。

ロクロウは地を蹴り、仮面の男へと肉薄――。
笑顔を張りつけたまま、男の懐へと双刀を振りかぶる。
仮面の男もまた決死の形相で扇を振るう。

今まさに、ロクロウと仮面の男による剣戟が再開しようとしていた。


だが。


「「――ッ!?」」

唐突に二人の間に割って入るかのように、“何か”が飛来した
それはーー眩い光の弾。
ロクロウと仮面の男はほぼ同時に反応――。
それぞれ、その場から退避する。
直後、彼らが元いた場所に光の弾は着弾し、ド派手な衝突音とともにコンクリートの地面は抉られる。

結果として、両雄は切り離される格好となった。


「そこの二人、直ちに戦闘を止めなさい!」


声のした方向に二人は視線を向ける。
150mほど離れた坂道の上に、緑色の髪を靡かせた、巫女装束の女性がいた。
少女は、坂下の二人を見下ろすような形で、か細い腕を振り上げていた。
その手には白い紙を束ねた長細い棒のようなものが握られている。


「私は守矢神社の風祝、東風谷早苗といいます。二人とも武器を収めて、まずは私の話をーーッ!?」


早苗と名乗る少女が言い終える前に、少女の話に耳を傾ける仮面の男を其方退けで、ロクロウは大地を蹴り上げる。
人斬り業魔の鋭い眼光は少女を見据え、剣を振りかざし彼女の元へと坂道を駆けていく。


「邪魔をッーー!!」


猛然と迫り来るロクロウに、少女は一瞬怯み、慌てた様子で腕を振り下ろす。
振り下ろされた棒の先端から眩い光の弾が、ロクロウに向けられ放出される。


「するなぁッ!!!」


斬り合いに介入された怒りで、頭に血が昇ったロクロウは、自身を飲み込まんとする光の弾など意に介さず、サイドステップで避けつつ、尚も少女の元へと駆け上がる。


「其処の者、直ちに逃げよッ!」


仮面の男が大声で少女に警告を発した。
怒涛の勢いで接近するロクロウと剥き出しの殺意――。
はわわ、と少女は焦燥した表情で何度も腕を振り下ろして、光の弾を複数放射するが、ロクロウは一切怯むことなく、これらを躱していく。
ロクロウが通ったアスフォルトの地面には、光の弾によって抉られた幾つものクレーターが出来上がっていた。

やがてーー。


「捉えたぞッ! (ざん)ッ!」
「ひぃいッ!?」
「ま、待てーー」


仮面の男が発した静止の声も虚しく、少女に肉薄した男はその殺意と怒りとともに、少女の胴を両断せんと刃を振るう。
死を直感した少女は涙目になりがら、咄嗟に肩にぶら下げていたデイパックから咄嗟にある物を取り出し、自身を庇わんとする盾とした。
だが、ロクロウの前に突き出されたそれは鞘に収まった大太刀――。
小柄の少女の身体を覆うには、あまりに心許ないもので、傍からみると少女の絶命は必至であった。

しかし――。


「おおっ、號嵐じゃねえかッ!? これを何処で…、まさか主催者からあんたに支給されたものなのか?」
「……えっ? ええ、まぁ…」


ロクロウは、街灯の光の元でその刀を視認すると、斬撃の手を止めて興奮気味に少女に詰めよった。
見間違うことなどあろうはずがない。その刀は、ロクロウが常日頃から背負っていた名刀・號嵐――その影打ちであった。
既に仮面の男との斬り合いのことも、勝負を邪魔された怒りもすっかり忘れ去られていた。

結果として、ロクロウから殺気は立ち消え、少女は命拾いすることになった。








「いやぁ、かたじけない。この恩は、必ず返させてくれ、早苗」
「は、はぁ…」


早苗から譲り受けた大太刀を背負い、ロクロウは満足気に礼を言った。

聞けば、この大太刀は、稀代の名刀・號嵐の影打ちということだがーー其の実、刃は既に折れており、早苗にとっても役に立つものではなかった。
しかし、ロクロウにとってこの太刀は「命の太刀」であり、得物として使えなくとも、自らを戒めるためにもどうしても背負っておきたいものーーとのこと。
それならば、私が持っていても意味はないものですから……と早苗は無償でロクロウに號嵐を手渡した。

早苗の機転に感激したロクロウは、先程の喧騒が嘘のように和やかになり、今へと至る。


「ロクロウ殿、繰り返しとなるが、其方は本当にこの殺し合いに乗っていないのだな?」
「おうさ。斬りたい奴はいるが、基本的にあのテミスとかいう女の話に乗っかって、他の参加者を殺すつもりはない……先程の非礼については、改めて謝罪させてくれ、早苗、オシュトル。この通りだ、つい熱くなってしまってな……」


(いやいや…『殺すつもりはない』って言われてもなぁ……。俺や早苗に対して向けられたあの殺気は尋常じゃなかったぞ……。この男、アトゥイ並みの…いやアトゥイ以上の戦闘狂かもしれん……)


早苗と自分に向けて、頭を下げて詫びるロクロウをオシュトルは、心のうちでそのように評した。
実際に刃を交えてみて、目の前の男がヤクトワルトを彷彿させるような剣技とアトゥイを越える狂気を兼ね備えた手練れということは痛感していた。
ゲーム開始早々、とんでもなく面倒くさい参加者と遭遇してしまったと、自身の不幸を嘆く。


「まぁまぁ……。ロクロウさんも反省しているようですし、結果として誰も大怪我しないで済んだので、それでいいじゃないですか」
「――早苗殿がそのように申されるのであれば、これ以上ロクロウ殿の過失を問うのも野暮というもの……」
「かたじけない!」


こうして、ロクロウの暴走によって勃発した修羅場はひと先ず収束する。
尤もオシュトルは、今後もロクロウの戦闘狂ぶりには注意を払うつもりであるが。

次に三人は情報交換を行う。

オシュトルは自らをヤマト右近衛大将であると明かして、主君であるアンジュと同胞であるクオンとムネチカを探していると述べる。
早苗は、繰り返しの紹介にはなるが、自身が『幻想郷』という地にある守矢神社の風祝であると説明し、このゲームには幻想郷の知り合いも複数人参加させられていると打ち明けた。

最後に、ロクロウは語った。
ロクロウが『業魔』なる人ならざる存在であることーー。
ベルベットを初めとした仲間達と世界を旅していることーー。
そしてーー。

「シグレ・ランゲツ……。其方は、名簿にあるこの男を斬りたいと申すかーー」
「あぁ、それが俺の宿願だ」
「えっ、でもシグレさんとロクロウさんは兄弟なんですよね?」
「ああ、あいつが長男で、俺が六男だ。」
「――兄弟同士で斬り合うなんて……」


シグレという男を語るロクロウは口角を吊り上げる。
その目には先ほどの戦闘と同じようなギラつきが宿っていた。
そんなロクロウに、早苗はかなり引いた様子だ。
というかドン引きしている。

(そりゃあ引くよな。あんだけ愉しそうに、てめえの兄弟を斬ること語っちゃあなぁ……やっぱおっかねえな、こいつは)

オシュトルも心の中では早苗に同意するが。


「ふむ……其方にも何かしらの事情があるようだな。 それが、其方の宿願ということであれば、あえて詮索はしないし、邪魔をするつもりもない」
「おお、話が早くて助かるぜ」


下手に首を突っ込むと、此方にも火の粉が飛んでそうなので、基本的にロクロウの血生臭い目的には、無干渉を決め込んだ。


「オシュトルさん…でも……」
「早苗殿……我らは『殺し合いに乗っていない』という点においては共通しているが、それぞれの最優先事項は異なっている。某に姫殿下の守護という宿命があるように、ロクロウ殿にも別の宿願があるのだ。 今は何より時間が惜しい。各々の事情に深入りするよりも、まずはこの殺し合いからの脱出に向けて行動を起こしていくのが先決と考えるが……」
「――分かりました……」


早苗も表情こそ晴れず、思うところもあるようだが、一応は納得し引いてくれた。

これで良い。
基本的にお互いの事情には深入りしない関係の方が、『偽りの仮面』を纏っているオシュトル自身にとっても好都合だ。

ロクロウもシグレの首を狙うのが第一目標ではあるようだが、シグレが向かう場所の当てがない今、暫くは刀のお礼も兼ねて、早苗に同行するつもりのようだ。


「それで、脱出に向けて、オシュトルは具体的にこれからどうするつもりだ」
「某は、隣のエリアにある『早乙女研究所』なる施設へ向かおうと思っている」
「理由はーー?」
「そうだな…強いて言うなら、この首輪を解除するためというべきか。『研究所』というからには、何かしら解析や解除に役に立つ工具類はあるかもしれぬからな。 姫殿下をはじめとする仲間を探したいのも山々だが、まずは姫殿下をお迎えする前に首輪解除の当てを見つけておきたい」
「ほう、工具さえ見つければ、この忌まわしい小細工を解体する自信があると……?」
「確信はない。だがこういった類の技術には少々覚えがある……。それに、抗いもせずに、大人しくこの首輪に己が命運を握られるのは性に合わないのでな」
「はんッ、なるほど。それについては同感だな」


この首輪は恐らく大いなる父(オンヴィタイカヤン)こと旧人類の産物だろう。仮に、この首輪に旧人類の知識によって製作されたプログラムが組み込まれているとすれば、その枷を解除できるためのパスは必ず存在するはずだ。
一応、これでも昔はスーパーハカーを生業にしていたのだ。その知識をふんだんに活かすことができれば、首輪解除も不可能ではないと見立てている。

まぁ工具を見つけたとしても、次は解析のためのサンプルも必要なのだが、それは追々考えるとしよう。

そんなオシュトルの思考を他所に、ロクロウは傍らで話を聞いていた早苗に視線を向ける。

「――早苗はどう思う?」
「私は賛成しますよ、早乙女研究所!」
「ふむ、早苗がそう言うのであれば、俺に異論はない。オシュトルの提案に乗るぜ」
「――決まりのようだな」


意外にも二つ返事で賛同した早苗。
先程までの重苦しいテンションは晴れて、今は心なしか若干テンションが高めのようにも見受けられる。
彼女の微かな変貌に違和感を覚えるオシュトルに、早苗はそっと近づき尋ねる。


「ところで、オシュトルさん……この研究所って一体何を研究している施設なんですかね」
「さて……施設を用意したのは某ではなく、あのμなるもの故、某には見当もつかぬ」
「あのμって子、不思議な力を持っていますし、この会場自体も『幻想郷』のように常識の外で成り立っているようですしーーもしかして、もしかすると、とんでもないものが研究されていたりしないですかね?」
「と、とんでもないものとは……?」
「た、例えば巨大ロボットとか!」
「巨大…ロボットとな……?」


突拍子もない単語が出てきて、思わず拍子抜けするオシュトル。
しかしオシュトルを見つめる早苗の瞳は、輝きに満ちていた。
それは、それは純粋無垢な煌めきであった。
というか「巨大ロボット」という浪漫溢れる存在を、是非とも他人の口から肯定してほしいという期待が込められた眼差しであった。


「……。」

オシュトルは返答に詰まった。
巨大ロボットなる存在を焦がれる少女の期待を裏切りたくないという理由だけではなく、純粋に否定が出来ないのだ。

事実、オシュトルことハクは、旧人類時代に広く利用されている「アベルカムル」というパワードスーツを知っている。
あれを「巨大ロボット」と定義できるかは些か議論の余地があるが、この殺し合いに大いなる父(オンヴィタイカヤン)の技術が関わっているとすれば、その可能性を否定するのは早計とも言える。


「確かに、早苗殿が言うように主催者が保有している技術や力を以てすれば、巨大ロボットの存在は否定できぬな……それが研究所に在るかは定かではないが」
「可能性はゼロではないということですね、うふふ。そうですか」
「俺はそのきょだいろぼっと……なるものはよく分からんが、まぁとにかく行ってみれば分かるんじゃないのか?」
「――それもそうですね! こうしてはいられません! まずは早乙女研究所へと向かいましょうか」

早苗の表情はより一層明るいものとなり、足早に歩き出した。
その足取りは軽く、どことなくウキウキしているように見て取れた。
先行する早苗を、ロクロウとオシュトル慌てては追い掛ける。

早苗という少女――大人しく落ち着いた少女と考えていたが、見込み違いだったか、とオシュトルは心の中で呟いた。
ロクロウほどではないにしろ、これはこれで振り回されそうだ、と天を仰いだ。

「こりゃあ、特別労働手当でももらわんと割に合わんな……。」
「うん? 何か言ったか、オシュトル?」
「――何でもない……」

それでも親友から託された務めを果たさなければならない。
何故なら自分は『ハク』ではなく、ヤマト右近衛大将『オシュトル』。
ヤマトに仕え、姫殿下を支えることを宿命とする仮面の者(アクルトゥルカ)であるのだから……。




【C-8/市街地/深夜/一日目】
【オシュトル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康、疲労(小)
[服装]:普段の服装
[装備]:オシュトルの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、童磨の双扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1
[思考]
基本:『オシュトル』としてアンジュを守りつつ、殺し合いから脱出する
0:ロクロウ、早苗と共に早乙女研究所に向かい、首輪解析のための工具を探す
1:仲間を探す(最優先はアンジュ)
2:首輪のサンプルも出来れば入手したい
3:『大いなる父の遺跡』が気になる
4:ミカヅチ、マロロ、ヴライを警戒
[備考]
※ 帝都決戦前からの参戦となります


【ロクロウ・ランゲツ@テイルズ オブ ベルセリア】
[状態]:健康、頬に裂傷、疲労(小)
[服装]:いつもの服装
[装備]: オボロの双剣@うたわれるもの 二人の白皇、ロクロウの號嵐(影打ち)@テイルズ オブ ベルセリア
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2
[思考]
基本:シグレ及び主催者の打倒
0: 暫くは早苗とオシュトルに同行
1: シグレを見つけ、倒す
2: 號嵐を譲ってくれた早苗には、必ず恩を返す
3: ベルベット達は……まあ、あいつらなら大丈夫だろ
4: 殺し合いに乗るつもりはないが、強い参加者と出会えば斬り合いたい
[備考]
※ 参戦時期は少なくともキララウス火山での決戦前からとなります。
※ 早苗からロクロウの號嵐(影打ち)を譲り受けました。


【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:健康、疲労(小)、気分高揚
[服装]:いつもの服装
[装備]: 早苗のお祓い棒@東方Project
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。この『異変』を止める
0: オシュトル、ロクロウと共に早乙女研究所に向かう
1: 幻想郷の知り合いをはじめ、殺し合い脱出のための仲間を探す 
2: 早乙女研究所……巨大ロボットがあるか期待
3: ロクロウに若干引き気味。兄弟で殺し合いなんて……
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも東方風神録以降となります。

前話 次話
有刺鉄線の向こう側 投下順 爪爪爪

前話 キャラクター 次話
GAME START オシュトル 深淵の入り口
GAME START 東風谷早苗 深淵の入り口
GAME START ロクロウ・ランゲツ 深淵の入り口
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!