――水の呼吸、参ノ型 流流舞い
「飛燕連脚!」
水流の如く滑らかな動き、それでいて相手の攻撃に対し即座に対応できるような足捌き。それに対して本来ならば敵を浮かす為の初撃をブラフとして使い相手の回避先を誘導。誘導先を予測し跳んだ所を狙い蹴り落とそうとする
――水の呼吸、弐ノ型・改 横水車
だが、それすらも予測してたとばかりに体を水平方向に一回転し刀を振るう。それに対して足に仕込んだブレードでわざと受け止め後ろに跳躍し距離を離して着地
「紅炎刃!」
右籠手の刺突刃から炎のリングが放たれる。射出と同時に移動し間合いを詰める
――水の呼吸、陸ノ型 ねじれ渦
それに対し、上半身と下半身を強くねじり、回転。回転の威力を伴った斬撃で炎のリングを消滅させ、間合いを詰めてきた相手の攻撃を弾き返す
だがそれでも止まらず、防がれたと同時に飛び上がり、左腕の業爪を振り下ろそうとする
だがそれでも止まらず、防がれたと同時に飛び上がり、左腕の業爪を振り下ろそうとする
「くっ……!」
技の動作直後のため少々反応は遅れてしまったがなんとか防ぐことに成功。が、業爪が弾かれた衝撃を利用し相手の背後に着地し着地後即ダッシュ
――水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き
対し、水の呼吸最速の突きを以って対応。二人の体が交差する
―――男、錆兎の服には爪で斬り裂かれたような跡
―――女 ベルベット・クラウの頬には先の突きによる傷
少しの沈黙の後、両者とも振り返り、お互いの姿を見据える
◯ ◯ ◯
(彼女……鬼というよりはまるで獣の戦い方にも思える。それでいてまるで誰かに仕込まれたような戦い方だ)
錆兎が思ったのはベルベットの戦い方。威力のある異形の左腕、メインウェポンであろう右籠手の刺突刃。速度のある足のブレード。足技に関しては本人曰く癖とのことらしいが、その割には攻撃のパターンに組み込めている。当初彼女のことを鬼と一種かと思っていた錆兎にとっても感心する他なかった。まるで知能のある獣だ。獰猛でありながらそれでいて冷静に相手を見定めている
(……変わった剣術ね。でも、強い。『水の呼吸』なんて言ってたけど、本当に水みたいな動き)
対するベルベットも錆兎の剣術に対し冷静に思考を巡らせていた。威力・速度共にまずまず。それでいて『水の呼吸』と自分から言った通り、相手の攻撃を『受け流す』点に関しては飛び抜けている
―――最低でもあの時監獄で戦った退魔士と同じぐらいには
―――最低でもあの時監獄で戦った退魔士と同じぐらいには
「……聞きたい。お前はさっき俺を襲った理由に『露払い』を答えた。――仲間がいるのか?」
「……まあ、隠した所で仕方はないわね。一応はいるわね、二人ほど」
「……まあ、隠した所で仕方はないわね。一応はいるわね、二人ほど」
思考の後、口を開いた錆兎の言葉に対してベルベットはそっけなく答える
「……そして、その内の一人は誰かさんにご執着ってわけよ。ま、あたしには関係のない話だけど」
「………」
「………」
ベルベットの返答に対し、錆兎は、その『仲間』とやらの一人がおそらく浜面が言っていた麦野なる女であることは、容易に想像できた
「……言いたいことはそれだけ? じゃあ戯言はここまでにしてさっさと再開していいかしら」
「いや、もう一つ。その剣術、一体誰に教わった? 随分と腕のいい人物に仕込まれたように思え―――」
「いや、もう一つ。その剣術、一体誰に教わった? 随分と腕のいい人物に仕込まれたように思え―――」
呆れ顔を浮かべながらも構えを取るベルベットに対し、錆兎がふとそんな疑問を問いかける。だが、その問の言葉を最後まで言い切る前にベルベットの姿が錆兎の視界から消える
「――!?(重い……!)」
視界から消えた時点で警戒をしなければ仕留められていたのは自分だった。空気の淀みと殺意を感じ、咄嗟に剣を構えていたのが功を奏し、ベルベットの業爪を既の所で受け止めていた
「戯言はここまでってあたし言ったわよね?」
「ぐぅ……!」
「ぐぅ……!」
ベルベットの言葉には、先程までに感じられなかった重苦しい『殺意』と『怒り』が込められている
「――じゃあ、死になさい」
その言葉を境に、足技やフェイントを含め、ベルベットによる攻撃が足技を含めた息を付かせぬ連続攻撃が怒涛の如く襲いかかる。捌き、防ぎ、食い止める。受け流して距離を詰めようにも手数が多すぎてその余裕がない
防ぎながら後退するしかないが、追い詰められた先には運悪く背後に壁。完全に追い込まれてしまった――いや
防ぎながら後退するしかないが、追い詰められた先には運悪く背後に壁。完全に追い込まれてしまった――いや
「……じゃあ、さようなら」
(――今しかない)
(――今しかない)
瞬時の思考、刹那の閃き。今にも自分に振り下ろされようとする異形の業爪を前にしても、錆兎はどこまでも冷静なまま
「――!」
振り下ろされた業爪を、最後まで引きつけ、ギリギリのタイミングで回避。予想通り業爪は壁に埋まり、抜き出すまでの動作に『間』が出来る
それでも自分への足止めにと――放たれた炎の輪は剣で受け流し、距離を取る
それでも自分への足止めにと――放たれた炎の輪は剣で受け流し、距離を取る
「ちいっ!」
(――確実に、決める)
(――確実に、決める)
引き抜く動作の『間』に、十分な距離を取った。等のベルベット舌打ちながらも、相手の技の発動に近づいての攻撃は間に合わないと判断。先の炎の輪を数発放つ
(――全集中)
それぞれ時間差を伴い近づいてくる炎の輪、焦らず、迷わず、心は熱く、頭は流水のごとく冷静に
――水の呼吸、拾ノ型
込めて、駆けて、切り裂け
――生生流転!!
「ッ!?」
地を蹴り駆け出しながら、刃を回転させ、炎の輪を切り裂いていく。さしずめその動きは流水の如く、猛々しく荒れ狂う暴水の如く、それはまるで激昂にうねる龍の如き幻想
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ―――そして七つ、切り裂き、切り捨て、ベルベットへと近づいていく
拾ノ型『生生流転』 水の呼吸において最強とも言える技であり、その特徴は回転を重ねるごとに威力を増す事である。もちろん十分な威力を引き出すには相応の連撃数を重ねる必要はあり、技中は水の呼吸の長所である変幻自在の歩法が使えなくデメリットもあるが、その代償も踏まえ確実なチャンスとして錆兎この技を使用した
そして至近距離で放たれた八発目の炎の輪をも切り裂き、そしてベルベットへと肉薄する
ベルベットもすかさず業爪を繰り出す
ベルベットもすかさず業爪を繰り出す
十分な回転数を得た生生流転、これならば目の前の異形の業爪をも切り裂ける。確信した錆兎はそのまま刀を振るう
パリンと、何かが割れる音が鳴った
「―――ぇ」
それは、自分の持っている剣が折れた音だった
事実上の無防備となった錆兎の身体に、ベルベットの右籠手が密着する
事実上の無防備となった錆兎の身体に、ベルベットの右籠手が密着する
「――空破絶掌撃」
その言葉と共に、自分の身体に穴が開いた感覚と同時に、錆兎の身体は背後へと吹き飛ばされた
空破絶掌撃。本来であれば硬い装甲を持つ魔物に対して有効となりうる、装甲を破壊するための奥義
当てた拳を密着させ、ゼロ距離でブレードを突き出し、破壊する
当てた拳を密着させ、ゼロ距離でブレードを突き出し、破壊する
「が――――――」
建物の壁を突き破り、その場にあった民家のような場所を中を吹き飛ばしながら地面に激突し血反吐を吐く。まともに呼吸が出来ない。先の攻撃で肺を突き破られたのか
「……ああ、どうしてって思うでしょ?」
倒れ伏す錆兎の目の前にベルベットがいた
「わざわざあんたの言葉にあえて逆上してあげたのが功を奏したようね。おかげで自分の得物の状態に気づかないと来た。アンタが単純で助かったわ」
「……ぁ……ぁ?」
「それとさっきのあれ、あれは牽制とかヤケとかなんかじゃなくて脆くさせるためのものよ。融点まではいかないでしょうけど、脆くなった上に熱通して折れやすくしたのよ」
「……ぁ……ぁ?」
「それとさっきのあれ、あれは牽制とかヤケとかなんかじゃなくて脆くさせるためのものよ。融点まではいかないでしょうけど、脆くなった上に熱通して折れやすくしたのよ」
言葉には出せないが、ベルベットの言葉で、朦朧となる意識の中理解した。あの時の怒りとそれによる連撃は全て彼女の策の内だったと
「……少し話しすぎたわね」
だが、もう遅い。もはや興味がないと言わんばかりに喋るベルベットの異形の左腕が、死に体の錆兎の身体を掴む
「……じゃあ、今度こそ。――さようなら」
左腕に力が入る。握りつぶされる感覚。あの時と同じ、試験の時と同じ
刀が折れて、握りつぶされて、終わり
刀が折れて、握りつぶされて、終わり
(……ああ、あの時と、同じか)
全ては手遅れだった。どこで間違えたのか、もう遅すぎる
(――すまない浜面、高千穂)
その思いを最後に、錆兎の意識はその身体ごと握りつぶされ、物言わぬ肉塊へと変わった
【錆兎@鬼滅の刃 死亡】
◯ ◯ ◯
「……まずは、一人」
錆兎だった肉塊を投げ捨て、そう呟きながら息を吐く
ベルベットには、彼の、錆兎の事情なんぞ知ったことではない。ただ自分の邪魔になるから殺しただけだ。そこに感傷は存在しない。後悔も恐怖も、あの日の絶望から全て'喰らいつくして'自分はここにいる。聖隷シアリーズを文字通りこの手で喰らった時から、彼女の覚悟は既に決まっている
ベルベットには、彼の、錆兎の事情なんぞ知ったことではない。ただ自分の邪魔になるから殺しただけだ。そこに感傷は存在しない。後悔も恐怖も、あの日の絶望から全て'喰らいつくして'自分はここにいる。聖隷シアリーズを文字通りこの手で喰らった時から、彼女の覚悟は既に決まっている
「……さて、あの二人はどうしてるんだか」
意識を切り替え、考えるのは二人のことだ。信頼もクソもない関係ではあるが、一応にも利害の一致で協力している以上勝手に死なれても困る。
夾竹桃の方はのらりくらりと何かしら一仕事して終わってそうな気もしなくはないが、麦野の方はある意味問題点もある
あの気性からして、例えるならば「ゲームでコンプリート目指さないと納得しない」性格だ。何があって浜面仕上に執着しているのかベルベットにとっては知ったことではないが、「万が一目先の利益の為に関係を蔑ろにされても困る」のも考慮して置かなければならない。もちろん夾竹桃がそれを一番理解しているようではあるが
夾竹桃の方はのらりくらりと何かしら一仕事して終わってそうな気もしなくはないが、麦野の方はある意味問題点もある
あの気性からして、例えるならば「ゲームでコンプリート目指さないと納得しない」性格だ。何があって浜面仕上に執着しているのかベルベットにとっては知ったことではないが、「万が一目先の利益の為に関係を蔑ろにされても困る」のも考慮して置かなければならない。もちろん夾竹桃がそれを一番理解しているようではあるが
「……そういえば、浜面仕上とさっき殺したこいつ以外、他にもいたわね」
乗っていたのは3人。一人は浜面仕上、もう一人はさっき自分が殺した剣士。そして3人目はあの金髪の女。
「……浜面にさえ手を出さなければあいつはごちゃごちゃ言うことは少なくともないわね。念の為にあの脳筋には話しておくとして――――あいつは殺しておくか」
次の獲物は3人目の金髪の女性。最も仕留めるかどうかは脳筋女 と合流し状況を把握してから
そうと決まれば善は急げである。そして運がいいのか悪いのか、遠くから爆発音が
そうと決まれば善は急げである。そして運がいいのか悪いのか、遠くから爆発音が
「……もしかしたら、私が来た時には全て終わってるかもしれないけど」
爆発音が聞こえた方向へと向かい駆け出す。もしかすれば既に終わっている可能性も無きにしもあらずだが、その時は苦労が一つ減ったでそれで良い
復讐者はただ冷静に、冷徹に、氷の如く判断し、そして見極める
復讐者はただ冷静に、冷徹に、氷の如く判断し、そして見極める
何故ならば、もし三者の目的が全て果たされ、その時が来たのなら――すべて殺して殺し尽くして喰らい尽くせばいいだけの話だからだ
前話 | 次話 | |
撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃 | 投下順 | 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)- |
前話 | キャラクター | 次話 |
撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃 | ベルベット・クラウ | 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く-(後編) |
撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃 | 錆兎 | GAME OVER |