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撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)-

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kyogokurowa

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「……やぁっと会えたなぁ、浜面ぁ」

邪悪に歪んだ満面の笑みを浮かべ、目の前の浜面へと目を向ける女。麦野沈利

「ああ、やっぱりこうなっちうのか」

対し、半ば諦め気味に呟く浜面。だがその評定には余裕などなく額に焦りの汗が流れている
高千穂麗もまた、浜面から話を聞いていた『麦野沈利』という危険人物を目の前にし、冷や汗を流している

「浜面、あれが貴方の言っていた、麦野沈利ですの?」
「……ああ。俺が元々いた暗部組織のリーダーだ。いつかまた会う事になるとは思っていたが、まさかこんな最悪なタイミングで……」
「あたしからしちゃあ最高のタイミングだけどな、浜面ぁ。しっかしてめぇがまだ生きててよかったぜ。スクールの第二位まで呼び込まれてるようなこんな殺し合いであっさりおっちんでしまってんじゃねぇかと思ってたぜ」
「……そりゃどうも。てめぇにだけは言われても嬉しくねぇな」
「元上司がわざわざ心配してやってんだぜ? 少しは感謝しろよな。滝壺くたばってヘタれてたと思ってたが、その様子じゃ元気そうだしな」
「……ッ」
「……あーそうかそうだよな大切なお姫様が自分の目の前で縊り殺されて、自分は何も出来ずただ突っ立ってたんだったらそりゃ堪えるよな、そうだよなぁ浜面ぁ!」
「……ッッッ!」
「てめぇにはそういうくっだらねぇボロっちぃワンコロ見てぇな惨めな姿がお似合いなんだよ。は・ま・づ・ら・ぁ」

麦野の怒涛の発言に、途中からただただ黙っている浜面。だが、高千穂麗の目からは、滝壺の話題を出された当たりから浜面が辛そうな表情をしているようにも見え、無意識に拳を握りしめていた
そして、機嫌が良さそうな麦野の邪悪な顔を見て尚更怒りが湧き、おもむろに取り出した拳銃を地面に向けて撃ち放つ

殺すつもりなど武偵として毛頭ないが、それでも怒りを込めた威嚇射撃。それに対し不愉快そうに高千穂に目線を向ける麦野

「……あ?」
「……ねぇ。私の下僕をいびり倒すは辞めにしてもらえないかしら? 不愉快よ」
「てめぇには関係ねぇだろうが。つーか誰だてめぇ? まさか浜面の新しい女か?」
「人を勝手に新しい女扱いしないでもらえないかしら? 決して恋人とかそういう関係ではないわ。それと私にはあかりさんという大切な人がもういますの」

応答の中、高千穂から出た「あかり」という言葉に、麦野は思い出したかのように親指爪を唇に当て思考する。そして思い出す
あかり――確かあの夾竹桃(クソガキ)が狙っているとかいう、『鷹捲』なる毒を持っている別のガキの名前だ
ということはいかにもお嬢様気質な金髪はその「あかり」なる人物の関係者であると見える
夾竹桃から武偵絡みの情報は一通り聞いた。要するに自分の世界における風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)の立場が一緒くたになったようなもの、という認識
そしてこの会場にいるであろう『武偵』は4人。そしてこの女はそのうちの一人となるわけだ

「――そこの誰も守れりゃしない浜面を下僕だなんぞにしても何の役にも立たねぇぞクソ武偵」
「だから私の下僕をいびるのはやめろと言ったはずですよ。それに私には高千穂麗というちゃんとした名前があるの。というよりも私が武偵だとよく一目でわかったわね? 誰かに教えてもらったのかしら?」
「そこは黙秘権ってやつだ。しっかし物好きなもんだ、そんな役立たずを下僕なんぞとな」
「……浜面はあなたのようなゲスに計れるような軟弱な男ではないと断言させてもらうわよ」
「あーそうかよ、実はてめぇヘタレフェチか? そういうのに発情する類か? そうかよそうかよだったら傑作じゃねぇか浜面もそのあかりって奴もどっちも約立たずのゴミ共で―――」

麦野がその言葉を言い終わる前に、彼女の顔スレスレの距離を、銃弾が通過

「……あ゛?」
「……高、千穂?」

麦野は更に不機嫌となり高千穂の方を睨みつける。浜面は一瞬呆気に取られるも、改めて高千穂の顔を見て、彼女の内心があまりにも怒りで燃え上がっている事が察せられた

「―――いい加減にし()

口を開いた高千穂の言葉には、一つでも何かが違えば殺意に転換しそうな程の無感情なものである。それでも殺意ではなくまだ怒りであるのは、一概に高千穂麗という人物が『武偵』であるが故であるのか

「……おーおー、武偵サマは人殺しはしちゃいけなかったじゃねぇのか?」

そんな高千穂の表情が少しばかり気に入ったのは、少しばかりの笑みを浮かべ挑発する

「殺しはしないわ。再起不能(・・・・)になってもらうだけよ」
「……ケッ、そうかよ。じゃあてめぇが永遠に再起不能になってなクソ女ッ!!!」

麦野のその雄叫びとも言わんばかりの轟声と共に、『原子崩し』のレーザーが射出。それに対抗し高千穂もレーザーを撃ち出し対抗。両者のレーザーがぶつかり合い相殺され爆発が起きる。

「――浜面!」
「お、おう!」

爆発の煙幕に包まれ、その間に高千穂は浜面と共に移動。麦野が遅れて煙を振り払うも二人の姿はどこにもいない

「――鬼ごっこと行こうか浜面、クソ女。てめぇら二人まとめて串刺しにしてあたしの原子崩し(メルとダウナー)でじっくり焼き上げてやるよ!!」


◯ ◯ ◯


静寂を裂くレーザーの放射音。焼け落ち、崩れ落ちる住宅地帯。その中を走り回る二人。浜面仕上と高千穂麗

「……浜面、何か思うことがあるかもしれないけど、まずはあのくそったれを再起不能にしてからよ」
「……ああ、すまねぇ。……ありがとよ」
「私はただ自分の下僕と……よりによってあかりさんを侮辱したあいつが許せなかっただけよ。褒められたことはしてないわ。……って、無駄話をしている暇はなさそうね!」

その直前に二人のすぐ背後にレーザーが通り過ぎ、建物を焼き払う

「どこだぁぁっ! どこにいやがるっっ!!」

はっきりと聞こえる麦野の声。それを聞いた高千穂が位置を予測し、こちら側に向かってくる麦野の足を狙いマシンガンを掃射。だが、その掃射を麦野は高く飛び上がることで回避。避けられたことを確認し、逃走を再開


「全く、一体どういう身体能力してるのあいつ!」

高千穂は、初めて見る麦野の常軌を逸した身体能力に思わず口を溢すしかなかった
下級生の中でもCQCに長けた火野ライカ、忍者の子孫らしい風魔陽菜、そして神崎アリアと、直接的な身体能力が高い人物を高千穂麗はしっている。しかし、現在自分たちが相手しているあれは、人間と言うにはあまりにも化け物じみた身体能力。走っても走っても何故か歩いている彼女に追いつかれるため、リロードをしながらの威嚇射撃でなんとか距離を保っているような状態だ。幸いにも『原子崩し』のレーザーは連続で射出できないため、それで救われている部分も多い

「そりゃこっちもそう言いたくなるさ! まるでゴリラみたいだろ麦野のやつは!」
「仮にも女子に対してゴリラ呼ばわりは失礼極まりないけど、あれに限ってはそう言いたくもなるわね!」

逃げながらもあまりにもぶっ飛んだ身体能力に思わず愚痴を溢す二人
そして、高千穂麗個人として、麦野沈利の態度や言動には別の意味で苛つきを感じていた
それは、その傲慢な態度と「その力で好き勝手やっていた」というのが、過去の高千穂麗と似通っていた部分があったからだ
あり方が力だろうと財力だろうと、それで自分の好きに出来ていた、という同じ認識であった事には変わりない。もしカルテットであかり達に負けていなかったら、自分もあのような醜い人間に成り果ててたかもしれないと考えると、思わず背筋が冷たくなる

「……本当に、どこまでもムカつく女」

思わず、その苛立ちが口から零れる。溢れんばかりの怒りを一旦抑え込み頭を冷静に。あの人の形をした戦術兵器もどき(怪物・麦野沈利)相手に真っ向から立ち向かうなど無謀中の無謀
そもそも浜面が過去に二度アレを打ち破ったのは相手の油断を突いた事と彼の機転の賜物だ。
ならばどうすべきか―――

「……おい、ありゃ……」

そんな思考している最中、空を見上げていた浜面がぽつんと呟く。同じく見上げてみれば、飛んでいるのが瓦礫。しかもそれなりの大きさのものだ。なんであんな物が飛んでいるのか……そう考えた時点ですでに手遅れだった

「……逃げろ、高千穂!!!」
「……!?」

何かに気づいた浜面の叫びと同時に、二人共空の瓦礫から遠くに離れようとする。その直後、その瓦礫に対し『原子崩し』らしきレーザーが照射。レーザーが直撃した瓦礫はその光熱によって赤白色に溶け出し、手榴弾のごとく破裂。溶け出し、熱を纏ったその瓦礫が四方八方に飛び散り、建物に降り注ぐ

「……あいつ、瓦礫に『原子崩し』ぶつけてナパーム弾にしやがった!!」
「ちょっと待ちなさい! じゃあさっき空を飛んでいた瓦礫は……」
「十中八九麦野がぶん投げたやつだ!」
「……ああもうッ、冗談にも程があるわよあんなの! どこまで馬鹿力なのよあいつは!!!!」

通常な素っ頓狂な考えのはずの浜面の言葉に、麦野沈利の化け物具合を目の当たりにした高千穂はそのありえそうな現実に対しただただ驚愕のツッコミを入れるしかなかった
事実、元の世界において麦野沈利は体重40kg以上はあるであろう滝壺理后の身体を片手でぶん投げた事がある。その腕力を利用して瓦礫をぶん投げ、それを『原子崩し』で威力で破壊し、簡易的なナパーム弾にしたのだ

降り注ぐ白熱の瓦礫の大きさはそれほどではないものの小さい粒ですら直撃すればその高熱で人間の腕をも容易く切り裂く。浜面、高千穂の二人からすればまさしく流星群
そして、勿論そんな事が『一度だけ』なわけもなく、破片を避け続ける二人の視線にはまたしても空を飛ぶ瓦礫の姿。しかも今度は一つではなく複数。そしてその複数へレーザーが貫通し、破裂。そして破片が更に降り注ぐ

「クソッ! 完全に天変地異じゃねぇか! この周辺一帯を吹き飛ばすつもりなのかあいつは!」
「どこまでも無茶苦茶な……って浜面、上!」

高千穂の言葉が響き渡るも、既に遅く、浜面のすぐ近く、その上空に、熱で溶解された瓦礫の破片。しかも半身ほどの大きさだ。あんな物が直撃すれば最悪死にかねない

「っ!? しまっ――」

最低でも怪我は避けられない――と覚悟した浜面であるが、突如自分の体が突き飛ばされる感覚に襲われ、結果として破片の目測落下地点より遠くに離れる。しかし、その代償として――

「……高千穂ぉぉぉぉっ!!!」

浜面を助けるために彼を突き飛ばした張本人、高千穂麗は落下した破片の爆発とその衝撃に飲み込まれ、浜面もまた高千穂の名を叫んだ後に、爆発の衝撃に吹き飛ばされるのであった


◯ ◯ ◯

時を同じく別の場所
降り注ぐ瓦礫の流星を、ある者は切り裂き、あるものは容易く防いでいる
それは『話』が落ち着き、ベルベット・クラウと麦野沈利を探しに歩いていた夾竹桃と安倍晴明の二人

「……小娘、これは貴様の仲間とやらがしでかした事か?」
「……あー……うん、恐らく。……なんか、申し訳ないわね」
(存外苦労人なのではないのか? この小娘は)

「またやってくれたわね彼女……」と別の場所にいる麦野に言いたげそうなジト目で呟く夾竹桃に対し、ほんの少しばかり同情してしまう清明であった


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