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撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃

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kyogokurowa

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黒の夜空に朝焼けの光が差す街の中。その輝きを浴びながら街を歩く夾竹桃たち3人

「……業魔の左腕、ね。いくらバケモンの血肉食ったからって、そこまで変貌するものか?」

道中で麦野はベルベットが何故こうなったかの過程を耳にし、興味を示していた。学園都市でも裏での違法な能力開発の過程で『失敗作』が人の形をかなぐり捨てた化け物になったという話は度々聞く

「それをいうならあんたのその右腕と左目もあたしからしたら業魔にしか見えないわよ」
「てめぇに化け物扱いされるのは流石に心外だな」
「人間明らかに辞めてるような身体能力しているアンタにだけは言われたくないわよ脳筋」
「……なめてんのか化け物」
「うるさいわよ脳筋」

ベルベットもまた麦野の発言に皮肉るように言い返し、ベルベットも麦野の言葉が癪に障ったのか言い返す
そのまま二人の言い争いがヒートアップしそうになった所で

「はいはい、二人共落ち着きなさい。今のところ一応は『協力者』なんだから」
「「……」」

裏で静かにため息を吐いた夾竹桃が二人を収め、両者しぶしぶそうな顔で諍いを止め、二人揃って「一番胡散臭いお前にだけは言われたくない」と言わんばかりの表情をしながら横目で夾竹桃の顔を睥睨する
そしてそんな二人の心情なんぞ知ってるようで知らんと言わんばかりにスルー

付け入る隙間を見せようものなら、この薄氷の仲間ごっこなど簡単に崩れかねないことは夾竹桃含め3人共理解している
変えが利かないだけで、文字通りの『道具(アイテム)』、それが彼女たちだ。故に利用できるのなら利用する、用済みやら裏切りやらなら潰す。そのような関係性だからこそ、それぞれの目的が果たされるまでは手を出さないという約定が守られている
夾竹桃はあえて自分の目的を明かすことで、「邪魔をしないならそちらの邪魔もしない」という前提条件を出し、ベルベットと麦野とも盟を結ぶ事に成功。彼女の望み自体がベルベットや麦野にとって、胡散臭さという警戒心、「邪魔をしなければ使える」という認識を抱かせた
後は適度に関わりながら望み通りの展開へと自分を含めた盤面の駒を動かせばいい。警戒されることなどもとより承知の上であるのだから

朝焼けに照らされる街並、所々建物によって翳る通路を3人は進む。その闇はまるで彼女が抱え込んでいる"闇"を表しているかのように
だが、そんな静謐だった街に鳴り響くエンジン音。ブォォォォンという裂帛に等しいそれは静寂を劈くには十分であり、それは彼女たちにも聞こえるものであった

「……あら、何かしら?」

最初にそれに気づいたのは夾竹桃。後ろで歩いていたベルベットと麦野に対し中指を使って隠れるように合図。偶然にも曲がり角があったため、そこを使って隠れる事に

「バイクのエンジン音だな。一体誰が乗ってやがるんだか」
「誰、というよりも、誰かさん達、かしら? ……まあ、下手に関わるつもりもないからここは隠れてやり過ごせば……」

バイクを走らせているのが誰、もしくは誰か達なのかは不明であるが、下手に面倒事に巻き込まれるよりも、隠れて一旦やり過ごそうと考えた夾竹桃、ではあったのだが―――

「―――。―――。」

声が、聞こえた。男の声。距離が遠く何を言っているのかは分からなかった、だが、彼女にとっては”その声”だけで十分であった

「―――かは」

麦野が、笑う、呵う、嗤う。―――笑っている

「……ああ、そうだよな。テメェだけに幸運の女神様が舞い降りるなんてずりぃよなぁ。ああ、そうだよなぁそうだよなぁ……浜面ぁ」

それはまさに満面の笑みで。人生全ての幸福が今この時に舞い降りたかの如く。念願の獲物を見つけた獣の如く

「……察したわよ麦野。で、今から一人で殺りに行くのかしら?」
「――当たり前じゃねぇか。わかってると思うが、邪魔すんじゃねぇぞテメェら」
「はいはい、焦る気持ちはわかるけど、浜面仕上『以外』は好きにしていいのよね?」
「……あ? 別に浜面以外のやつになんぞ興味はねぇな。――元身内か第二位だったら話は別だがな」

夾竹桃の確認も兼ねた問いに麦野は意気揚々と答える。もとより麦野沈利からすれば現状は浜面仕上以外に興味ない
さっき取り逃がした絹旗、何故生きているかわからないがどっちにしろぶち殺し確定のフレンダ、超えるべき壁の一つである垣根帝督という例外もあるが、それ以外の有象無象などに基本眼中にはない
それ故に

「あら、そう。それを聞けたら十分よ。――というわけでベルベット」

故に夾竹桃はベルベットに言葉を発す。そして、その意図をベルベットは瞬時に理解

「……麦野沈利、浜面仕上のわかりやすい人物像は」
「強いて言うなら茶髪ぐらいか」
「―――じゃあ、そいつ『以外』ね」

直後にベルベットが麦野に問うたのは浜面仕上の特徴。それを確認したと同時に、ただ一言だけ納得したように告げ、声がした方へと獣の如く駆け出す

「……そんじゃ、あたしも行きますか。あの化け物女に万が一浜面を殺られちゃあムカつくしな」
「あら、そう。私は下準備をしてから行くことにするわね」

そう上機嫌に吐き捨てる麦野もまたベルベットが向かった方向へと向かう。そしてこの場に夾竹桃しかいなくなる
再び静寂が戻った暁の輝きに照らされる中、夾竹桃は佇みながらもただ一言

「本当、気が早いと言うか……まあ、良いわ」

まるで見えないなにかに気づいたが如く、デイパックから『何か』を取り出す。
切っ先と根本以外に刃が存在しない、まるで針のような形状をした刀。本来は鬼殺隊『蟲柱』胡蝶しのぶの持つ、相手を斬るというよりも相手に毒を刻み込む事に特化した日輪刀だ
が、そんな攻撃力に劣る刀であるが、刀身にはオジギソウが散りばめられており、夾竹桃のような細腕でも見た目以上の破壊力を持つことを可能としている

刀を取り出した直後、炎を纏う札のような物が夾竹桃に向かって飛んでくる。それに気づき跳躍、宙返りしながら半月状に刀を振るい、炎の札を切り裂く。そのまま着地し、新たに聞こえてきた足音
足音の主は、まるで平安時代の貴族を思わせる白装束に身を纏った男、黒平安京の支配者たる安倍晴明

「……ほう?」
「何かしら、いきなりこんな危ないものをこんなか弱いレディに向けて飛ばすなんて」

両者お互いを見据える。清明が向ける視線は殺意に似た威圧。狩りの邪魔をされた獅子の如く、静かな怒りと、少女に対するほんの少しばかりの興味
が、この白き魔王には目の前の少女など一捻りで潰せるという自身と余裕が見られる。

「小娘、そこに黒い乗り物に乗った3人……特に青年の姿を知らぬか、返答次第では生命だけは見逃してやる」
「……申し訳ないわね。彼とすごーく因縁のある子が自分の手で殺したいって息巻いてるの」

夾竹桃は陰陽師との少ない対話から察する。わざわざ青年と限定したところを見るに彼も同じく浜面仕上を狙う人物ということが
麦野沈利といい、浜面仕上という青年は何をどうしたらあんなに厄を引き寄せるのかと思考するも、別段男子に対してそこまで興味を持たない夾竹桃にとってはどうでもいい話であった
だからこそ今の問題は目の前の男。おそらく先程の炎札は自分ではなく浜面仕上を追いかけて飛ばしたもの。それと、浜面仕上が誰に殺されるは別にどうでもいいが、今『浜面仕上がこの男に殺される』事は、麦野沈利との関係上、後々面倒になる。

「……そうか、ならそやつらごと皆殺しにすれば良いこと。貴様も含めてな」

未だ威圧を辞めない男の予想通りの言葉。どうにもこの白装束の男、殺し合い以前に『殺し合い』という名の混沌を愉しもうとしているようにも思える
その証拠は先程焔の札を斬った夾竹桃に対しての反応。自分の知らない未知の力、未知の異能。自らの欲望のために世界に争いを齎す、他がどうなろうとどうでもいいというタイプの人間だ。麦野沈利もまた自分の目的のためなら他のことなんぞどうでもいいという点では似通っている部分はあるが、そもそも人間半分辞めている程度に落ち着いている麦野と比べたら、この男はそもそも人間を辞めている
が、それ故に『他人を見下しやすい』。未知に興味を示すが故に手を抜きやすく、それで足元を掬われる、そのようなタイプの超人だ。最も、夾竹桃自身もまたある意味彼と似通っている、などと自嘲と皮肉を交えた思考を思い浮かべ、改めて目の前の男に対し夾竹桃は言葉を紡ぐ

「……人の話はちゃんと最後まで聞きなさい。そいつと私は条件付きで手を組んでるのよ。それと、結果としてあなたの獲物を奪った謝罪代わりに何だけど……面白い情報があるのよね。特に貴方みたいに『そういうのに』に貪欲そうな同類さんには」
「………何?」

その言葉に、少しばかりの沈黙の後に眉を顰める。今はこのような小娘如きに長い時間構うつもりはないでいた清明であったが、夾竹桃の言葉に対しさしずめ清明を興味を示さず得なかったのだ
だが、これがあくまで少女の生き残りのための方便の可能性もある

「もし下らぬ戯言ならば今ここで消し炭になると覚悟するがいい」

しかし、真実にしろ嘘にしろ、聞いてみなければわからない。嘘ならば殺せばいいだけの話
清明の懐には既に呪符が構えられている。女の言葉が下らないものであれば直ぐにでも殺せるように

「あら、怖い……じゃあ、話っていうのは、これのことよ」

そう飄々とした態度で夾竹桃がデイパックが取り出したの黒く小さい何か

「なんだそれは……ただの黒いガラクタか?」
「あなたから見たらそうなるかしら? ――これは素養格付(パラメータリスト)という、ある世界の能力者達のデータが保存されているものよ。最もパソコンという機械(からくり)を使わないと見れないけれど」
「……異なる世界の能力者共の情報庫、ということか?」
「ええ。それと、あなたにとってパソコンなんてものの扱い方は全く知らない。だから私から殺してでも奪った所で、パソコンの使い方が分からなければ、あなたには扱えないでしょ?」

夾竹桃が清明に対し見せた黒い小さなチップ。
素養格付(パラメータリスト)』――学園都市の生徒たちの、各々の能力者としての素質調査結果が載せられているリスト……そのデータが保存されたチップ
夾竹桃としては、目の前の男の風貌からしてパソコンなどという文明の利器が無い昔の時代の……もしかすれば安倍晴明と名簿に表記されていた人物と同一である可能性が高いと考えている。
だからこそあえて餌をおいた。先の態度からこういう情報に対し食いつきそうと思ったからだ。自らが知らない未知の力に対し、貪欲そうである心の内であることを予想して

「……口だけでなく、頭も存分に回るようだな小娘。……何が目的だ?」
「私はただ、この世に自分の知らない毒があることが許せないだけの毒蜘蛛よ。それで目的を果たして無事に帰れればそれでいい。ただそれだけの話ね」

清明の興味を示したような言葉に、思わず口元が釣り上がりそうになる夾竹桃
清明からすれば目の前の小娘は信用できない。清明のいた黒平安京には、彼の敵対者たちが銃や水陸両用戦車、飛行戦艦などの機器の存在はあった。だが、夾竹桃の言った、黒い何かから情報を見る『パソコン』なる器具は流石に存在しない。今ここで殺してしまえばその『パラメータリスト(素養格付)』とやらごと道連れにされてしまう可能性だってある。いや、もとよりこの小娘は最悪そのつもりでいるのだろう
そもそも本来であればこの様な小娘に構う必要など無い。だが、例えわかりやすい餌だとしても異界の異能者の情報には価値がある。もし殺し合いを勝ち抜き、然るべき準備さえ整えれば『その世界』への襲撃も可能だ

「……良いだろう。貴様の企みに乗ってやるぞ小娘」
「……話が速くて助かるわ」

故に、これはチャンスでもある。と清明は夾竹桃に対し思惑に乗るような発言をしながら思考を巡らせる
鬼が召喚出来ない以上、それの変わりとなる手駒が入るならばそれに越したことはない。
先の言葉からしてこの小娘に従っているか、それとも同等の立場として付き合っている者もいる。
この小娘も、その仲間も利用し使い捨て、全てを貪り尽くし、そして主催者を、ゲッター線に選ばれた者共を、あわよくば神々共すらも打ち倒し、全てを手に入れよう
それに、小娘ごときの企みに最後まで乗せられるつもりなど毛頭ない。なのでこちらも一つ『毒』を仕込むことにする

「まず何をすべきかは貴様が話すことだろう、その前に――」

毒師にとって、最上級の『()』を以って――

「対価として、貴様にゲッター線というものを教えてやろう」

白き陰陽師の魔王は、内心ほくそ笑みながら、女郎蜘蛛に対して『()』を提示した





◯ ◯ ◯

静寂を裂いて街並みを走り抜ける一台の黒いバイク。それに乗り往くのは浜面仕上、高千穂麗、錆兎の三名
自分たちを追いかけてくる安倍晴明の気配も、炎の呪符の気配すらない

だが、あの人の形をした化け物がそう簡単に諦めるとは思えない。かといって今の戦力で戦おうものなら最悪全滅もありえる。犠牲なしの勝利なんてありえない

だからこそ『化け物』には『化け物』をぶつける。温泉旅館で盛大に戦っていたであろう二人。絹旗最愛、麦野沈利。
もし絹旗だけがいれば合流して何かしらの策を考える
もし麦野だけがいれば、文字通り化け物(安倍晴明)には化け物(麦野沈利)とぶつける。
もし両方だった場合は両方のパターンだ。絹旗と合流後さっさとその場から退散して化け物同士の殺し合いからトンズラすればいい

だが、もし、それすらも失敗した時は――


「……どうした?」
「いや、すまねぇ。ちょっと考え事してて……」
「浜面、何余計なことを考えているのかは私は知りませんが、悩む暇があるのなら運転に集中しなさい」
「………」
「心配するな、俺たちで出来るだけの援護はする」
「下僕2号の言う通りね。下僕の失態は主人である私がフォローしなければならないのは当然のこと」

そんな浜面の不安を察した二人が口を開く。高千穂の言葉に錆兎が(だから下僕は御免被ると言ったはずなのだがな)なんて思ってそうな視線を高千穂に向けたが当の本人は気づいていない
だがある意味そんな言葉だけでも今の浜面には十分ではあった

「そうだな、今は急いで目的地の方へ……?」

気を取り直して目的地へ向けて速度をあげようとした時である。3人の視界にその『人物』が見えたのが
見た目こそ、黒い長髪の綺麗な女性ではあった。だが、それ以上に一際異彩を放っているのはその左腕だ

まるで魔物の様な、鬼のような、―――憎悪と嘆きの塊とも思わせる、数多の血肉を引きちぎり喰らう尽くした黒い異形の業腕

だが、その琥珀色の瞳は……静かに、ただ冷徹に目の前の浜面達を見据えている
走っている自分たちとの距離はそれなりにあるというのに、その視線を否応にも感じてしまう

「誰ですの、あれは……」
「……もしかしたら麦野のやつから逃げてきたやつか? いやでもなんだあの左腕……能力者、なのか……?」

高千穂麗、浜面仕上共に彼女のその異様な風貌に困惑と疑問を抱いていた。もしかしたら麦野から逃げていたのかもなどと浜面は思ったがあまりにも異様なその左腕の女性に対し違和感を拭いきれなかった
そのほんの少し思考に、それ故に――気づけなかったのだろう。いつの間にかその女性の姿が、彼らの視界から消えていたことに


「……浜面!」

唯一、少女の動きが『視えた』錆兎が叫ぶ。

「―――遅い」

だが、時既に遅く、その女性の身体はバイクのすぐ近く。異形の左腕から生えるその業爪をバイクに向かって振るう。ガキィン!という鋼鉄がぶつかる音が鳴り響く

「うおおおおおっ!?」

振り放たれた業爪の一撃によってバイクは乗っていた三人ごと宙へと吹き飛ばされ、轟音とともにバイクは地面へと激突する
バイクが吹き飛ばされた際に宙に浮いた3人――浜面仕上と高千穂麗は前方へと放り飛ばされる形となり、先んじて受け身をとっていた錆兎は真下の地面に着地

「―――」

そんな錆兎に先程の女性――ベルベット・クラウは着地の硬直を狙い一気に近づき爪を振るおうとする

「……ッ!」

―――水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き

瞬時に高速の突きでベルベットの爪を間一髪防ぐ。防がれたことを確認したベルベットは防がれた金属音と同時に跳躍、そのまま爪を振り上げ上空より錆兎へと迫る

―――水の呼吸、弐ノ型 水車

その攻撃を垂直に身体を一回転しながら刀を振るい防ぐ。衝撃と同時にベルベットは錆兎と距離を取る

「器用ね。それでいて無駄が少ない。その年でよくもまあ」
「……何が目的だ?」

関心したようにも思える淡々とした言葉を話すベルベットに対し錆兎は警戒を続けながらも問う。まるで待ち受けていたようにも思える先の襲撃。目的も分からぬ目の前の女の態度に訝しむ

「誰かさんの露払い、ぐらいかしら?」
「露払い、だと? ……ッ!?」

露払い―――その言葉の意味を理解した瞬間、今度はベルベット右腕――その籠手に仕込まれた刺突刃が迫る。それを瞬時に顔を動かし避けた途端、自分の体が蹴り飛ばされたように吹き飛ばされ、別の通路へと叩きつけられる。受け身自体はとったおかげでダメージも少なく抑えられたが、まんまと浜面たちとの距離を離されてしまった

「悪いわね、足癖だけは悪いのよ。……ああ、あの二人と合流なんて、させるつもりはないから」
「くっ……!」

鬼のように荒々しくも、刺突刃と業爪、そして足技を扱う目の前の少女を相手に、そう安々と浜面たちとの合流は無理だと悟る錆兎であった。


◯ ◯ ◯

「クソッ……おい高千穂、大丈夫か!?」
「こっちはなんとか……ですが、まんまとやられてしまったわね……」

一方その頃浜面の高千穂の二人。バイクごと空中に放り上げられ、地面に激突するハメになった二人。幸いにも高さがそれほどでもなかったため多少の痛みだけで済んだ

「錆兎のやつは……」
「おそらく先の彼女と交戦しているわね。もし逃げるだけならば……まあ、元々彼を見捨てるつもりなど毛頭ないけれど」

錆兎の姿が見当たらない。先程の襲撃者の動きに唯一反応でき、自分に警戒の声を促したため、それで狙いを定められ引き離されたのか。どちらにしろ彼を助けに行くという意見に関しては両者とも一致していた
幸いにも吹き飛ばされたバイクは多少の傷はあるが破損等は見受けられない。

「だったら早く助けに――」
「……ええ、そう簡単に行かせてはくれないようで」
「!?」

刹那、バイクの方へ駆け出そうとした浜面の目の前の地面にビームのようなものが着弾。もし判断が遅れたならば文字通り先のビームによって消し飛ばされていたであろう
そして、浜面仕上はこのビームを知っている。そして、その能力を扱う人物を知っている

「――カハッ」

それは、けたたましい笑みを浮かべ背後から近づいていた
それは、モデルのようなプロモーションを持ち合わせているにも関わらず、荒々しくも思えるまるで野獣の如き殺意の眼光。閃光のような何かで構成された左腕のようなアーム


「………最悪だ」


それは、浜面仕上にとって、この状況で最も出会いたくない人物


「ようやく年貢の納め時だなぁ、は・ま・づ・らぁぁぁぁぁっ!!」

元『アイテム』リーダー、学園都市レベル5第四位『原子崩し(メルダウナー)』――麦野沈利である


前話 次話
Big Brother 投下順 撫子乱舞 -黒髪乱れし修羅となりて-

前話 キャラクター 次話
禍ツ華が哭くころに ベルベット・クラウ 撫子乱舞 -黒髪乱れし修羅となりて-
ワイルド・スピード 錆兎 撫子乱舞 -黒髪乱れし修羅となりて-
禍ツ華が哭くころに 夾竹桃 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)-
禍ツ華が哭くころに 麦野沈利 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)-
ワイルド・スピード 浜面仕上 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)-
ワイルド・スピード 高千穂麗 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)-
ワイルド・スピード 安倍晴明 撫子乱舞 -凛として咲く華の如く(前編)-
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