【上田明也の探偵倶楽部】
黒いコートに身を包んだ男がハッカパイプをふかしている。
勿論だが上田明也である。
「こんにちわ、私立探偵の笛吹丁です。
第二回のお話で出てきた向坂境さんって覚えていますか?
彼女は今、うちの事務所で助手やっているんですよ。
助手、しかも人間、更に良いことには一般人。
完璧じゃないですか。
名探偵にはマスコットキャラクター的な助手とか頼りになる相棒が必要なんですよ!
まあざっくり言うと人との繋がりか。
大体なんですか?
俺の周りに集う百鬼夜行どもは!
俺は人間なんだ!
人間が人間と生活して何が悪い!
助手が身の回りで起きた事件を何気なく話して名探偵たるこの俺がそれを颯爽と解決!
これぞ正しい探偵小説だ。
これは探偵の探偵による探偵の為の物語だ。
さぁ始めよう、探偵の時間だ。」
勿論だが上田明也である。
「こんにちわ、私立探偵の笛吹丁です。
第二回のお話で出てきた向坂境さんって覚えていますか?
彼女は今、うちの事務所で助手やっているんですよ。
助手、しかも人間、更に良いことには一般人。
完璧じゃないですか。
名探偵にはマスコットキャラクター的な助手とか頼りになる相棒が必要なんですよ!
まあざっくり言うと人との繋がりか。
大体なんですか?
俺の周りに集う百鬼夜行どもは!
俺は人間なんだ!
人間が人間と生活して何が悪い!
助手が身の回りで起きた事件を何気なく話して名探偵たるこの俺がそれを颯爽と解決!
これぞ正しい探偵小説だ。
これは探偵の探偵による探偵の為の物語だ。
さぁ始めよう、探偵の時間だ。」
パチィン!
指が鳴ると幕は落ちた。
【上田明也の探偵倶楽部6
~ともだちのともだちはだいたいいない→
自分は友達の友達じゃない→
自分に友達はいない ってなると思うなよ!~】
指が鳴ると幕は落ちた。
【上田明也の探偵倶楽部6
~ともだちのともだちはだいたいいない→
自分は友達の友達じゃない→
自分に友達はいない ってなると思うなよ!~】
「と、言うわけですよ。所長。」
真面目そうな顔で何かを話す向坂境。
「成る程ねえ……。あ、やべぇインスタントラーメンがのびる。
ちょっと台所行ってくるわ。」
話半分にそれを聞く上田明也。
「ちゃんと話聞いてるんですか?ねぇメルちゃん。」
「まったくですよ、この人は人の話聞いてないこと多いですから。」
上田の人の話を聞かない癖に呆れるメル。
真面目そうな顔で何かを話す向坂境。
「成る程ねえ……。あ、やべぇインスタントラーメンがのびる。
ちょっと台所行ってくるわ。」
話半分にそれを聞く上田明也。
「ちゃんと話聞いてるんですか?ねぇメルちゃん。」
「まったくですよ、この人は人の話聞いてないこと多いですから。」
上田の人の話を聞かない癖に呆れるメル。
「俺の大好物が完成したぞー!」
上田の持っているフライパンにはできたてほかほかのキムチラーメンが入っていた。
具だくさんで美味しそうだが……赤い。
とにかく赤い。
それは例えるならば上田明也という一個人が背負っている血の池のように赤いのだ。
それは例えるならば絶望と共に降り注ぐ夕日のように赤いのだ。
端的に言うと辛そう、否、辛そうなんてものじゃない。
向こう二日は物を喰うと言うことの権利と義務を放棄しなくてはならないだろうことを覚悟させる色なのだ。
具だくさんで美味しそうだが……赤い。
とにかく赤い。
それは例えるならば上田明也という一個人が背負っている血の池のように赤いのだ。
それは例えるならば絶望と共に降り注ぐ夕日のように赤いのだ。
端的に言うと辛そう、否、辛そうなんてものじゃない。
向こう二日は物を喰うと言うことの権利と義務を放棄しなくてはならないだろうことを覚悟させる色なのだ。
「ああ……、所長?
それは一体何処の国の食べ物なのでしょうか?」
それは一体何処の国の食べ物なのでしょうか?」
「見れば解るだろう、ラーメンだ。」
向坂の顔を見て、フライパンの中のラーメンを見る上田。
「食うか――――?」
聞かれた向坂は「食うか――――!」と絶叫した。
「もしかして美味いのか。
あのラー油と唐辛子を百年間ぐらい煮込んで合体事故のあげく、
オレ外道マーボー今後トモヨロシクみたいな料理が美味いというのか。」
半ば放心状態になった向坂境はブツブツと問を発し続ける。
向坂の顔を見て、フライパンの中のラーメンを見る上田。
「食うか――――?」
聞かれた向坂は「食うか――――!」と絶叫した。
「もしかして美味いのか。
あのラー油と唐辛子を百年間ぐらい煮込んで合体事故のあげく、
オレ外道マーボー今後トモヨロシクみたいな料理が美味いというのか。」
半ば放心状態になった向坂境はブツブツと問を発し続ける。
「そうか、喰わないのか。残念だ。メル、お前は喰わないのだろう?」
「唐辛子で頭やられたんじゃないですか?
私がそんな物喰うわけ無いでしょうが。」
「仕方がない、では私だけで美味しく食べさせて貰おう。
酢豚ができているからお前らはそれでも食べていろ。
体重が気になるお年頃の女の子の為に肉の量は控えめにしてあるぞ。
辛くない野菜でも嬉しそうにむさぼっていればいい。
それじゃあ、いただきま~っす。
はふっ、ほんむ、むっは、はふっはふっ!
ジュルルルル!
うわ、辛い!辛い辛い辛い辛い!
やめられない止まらない美味しい!美味しいけど食えない!
食えないけど食べ続けるっていうこの矛盾した状況がああああ、うめええええ!」
「唐辛子で頭やられたんじゃないですか?
私がそんな物喰うわけ無いでしょうが。」
「仕方がない、では私だけで美味しく食べさせて貰おう。
酢豚ができているからお前らはそれでも食べていろ。
体重が気になるお年頃の女の子の為に肉の量は控えめにしてあるぞ。
辛くない野菜でも嬉しそうにむさぼっていればいい。
それじゃあ、いただきま~っす。
はふっ、ほんむ、むっは、はふっはふっ!
ジュルルルル!
うわ、辛い!辛い辛い辛い辛い!
やめられない止まらない美味しい!美味しいけど食えない!
食えないけど食べ続けるっていうこの矛盾した状況がああああ、うめええええ!」
上田明也。
年齢21才。
身長は高めだが肉体的な話に限ればそれ程鍛えられた雰囲気はない。
学校町近辺のとある有名国公立大学の法学部出身。
卒業後は弁護士になる予定だった。
しかし、ひょんなことから都市伝説と契約し、それを切っ掛けに「組織」に追いかけ回されることになる。
生まれ持った弁舌と狡知で幾度となく危機を脱してきた。
契約の代償として今まで出会った人々から彼の記憶が奪われてしまったので、
今はとある都市伝説の協力の下で私立探偵「笛吹丁」として学校町で生活している。
探偵としての能力はかなり優秀で探偵事務所は偶に贅沢できる程度には繁盛している。
年齢21才。
身長は高めだが肉体的な話に限ればそれ程鍛えられた雰囲気はない。
学校町近辺のとある有名国公立大学の法学部出身。
卒業後は弁護士になる予定だった。
しかし、ひょんなことから都市伝説と契約し、それを切っ掛けに「組織」に追いかけ回されることになる。
生まれ持った弁舌と狡知で幾度となく危機を脱してきた。
契約の代償として今まで出会った人々から彼の記憶が奪われてしまったので、
今はとある都市伝説の協力の下で私立探偵「笛吹丁」として学校町で生活している。
探偵としての能力はかなり優秀で探偵事務所は偶に贅沢できる程度には繁盛している。
だが
都市伝説と契約した影響か彼自身の元々の性癖がそうだったのかは解らないが、
時間が空くと都市伝説の能力で人を殺して回る。
世の為人の為になろうとがんばっている人間を殺すのは気が引けると言う理由から、
できるだけ善人っぽい人は殺さないように努力しているらしい。
時間が空くと都市伝説の能力で人を殺して回る。
世の為人の為になろうとがんばっている人間を殺すのは気が引けると言う理由から、
できるだけ善人っぽい人は殺さないように努力しているらしい。
最近の悩みは探偵と殺人鬼の二重生活が疲れること。
「………ごちそうさま。」
「ごちそうさま!」
「ごちそうさま!」
上田がキムチラーメン?を食べ終わると同時にメルと向坂もそれぞれ昼飯を食べ終わった。
「ごちそうさま!」
「ごちそうさま!」
上田がキムチラーメン?を食べ終わると同時にメルと向坂もそれぞれ昼飯を食べ終わった。
「そういや、なんで向坂ここに居るの?」
「今日は土曜日で授業は半日です。
昼飯代が無かったので食わせて貰いに来ました。」
「ああ~、そうだった。」
「ついでになんか面白い事件がないかと言われたんで学校であった事件の話したんじゃないですか。」
「ああ~、そうだったそうだった。
で、どんな事件だったっけ?」
「え~っと、下校中に口裂け女が現れたそうです。
他には人面犬とか、赤マントとか……。
まあ幸い死人は出ていないし大丈夫なんじゃないですかね。」
「なんだ、普通だな。この町じゃあ良くある話じゃないか。」
「ですよねー、こんなんじゃ事件とは言えないですよね。」
「もう嫌だこの町。」
二人のずれた会話を聞きながらため息をつくメル。
「今日は土曜日で授業は半日です。
昼飯代が無かったので食わせて貰いに来ました。」
「ああ~、そうだった。」
「ついでになんか面白い事件がないかと言われたんで学校であった事件の話したんじゃないですか。」
「ああ~、そうだったそうだった。
で、どんな事件だったっけ?」
「え~っと、下校中に口裂け女が現れたそうです。
他には人面犬とか、赤マントとか……。
まあ幸い死人は出ていないし大丈夫なんじゃないですかね。」
「なんだ、普通だな。この町じゃあ良くある話じゃないか。」
「ですよねー、こんなんじゃ事件とは言えないですよね。」
「もう嫌だこの町。」
二人のずれた会話を聞きながらため息をつくメル。
「そういえば気になったんですけどメルちゃんと所長の関係ってなんなんですか?」
「え?」
「え?」
急な質問である、聞かないで適当に済ませていると思い込んでいた上田とメルは戸惑ってしまった。
「いや、親戚の子を預かっているんだよ。
この子の両親が今色々と問題があってね……。」
「そ、そうなんですよ。所長さんのところが丁度空いていたんで転がり込ませて貰ったんです!」
「普段学校とかには……?」
「勿論、通っているぜ。学校町立(ピュー)小学校の五年生だ。」
「ちなみに得意科目は国語です。逃げて科目は算数。」
「逃げて科目ってなに!?」
「いや、算数逃げてーみたいな。」
「いやいやいや逃げるの逆だから、逃げるべきはお前だから。」
「あははは、おもしろーい。」
それにしてもこいつらノリノリである。
「……(ごまかせたかッ!?)。」
「………(まだです所長!)。」
目と目で会話する上田とメル。
数多の視線をくぐり抜けてきた二人だからこそ出来る芸当である。
「え?」
「え?」
急な質問である、聞かないで適当に済ませていると思い込んでいた上田とメルは戸惑ってしまった。
「いや、親戚の子を預かっているんだよ。
この子の両親が今色々と問題があってね……。」
「そ、そうなんですよ。所長さんのところが丁度空いていたんで転がり込ませて貰ったんです!」
「普段学校とかには……?」
「勿論、通っているぜ。学校町立(ピュー)小学校の五年生だ。」
「ちなみに得意科目は国語です。逃げて科目は算数。」
「逃げて科目ってなに!?」
「いや、算数逃げてーみたいな。」
「いやいやいや逃げるの逆だから、逃げるべきはお前だから。」
「あははは、おもしろーい。」
それにしてもこいつらノリノリである。
「……(ごまかせたかッ!?)。」
「………(まだです所長!)。」
目と目で会話する上田とメル。
数多の視線をくぐり抜けてきた二人だからこそ出来る芸当である。
「そ、そうだ。なんか他に事件無いの?」
「う~ん。まあ今クラスの中で話題になっているのはクラスの物が消えて無くなるってことですかね?」
「え、財布とか?」
「いや、女子の着替えとかですね。」
「うん、それは痴漢だね。」
即答する上田。
「ところがどっこい、そこが妙なんですよ。
そう思って廊下にあった防犯カメラに何も映っていない。
勿論、窓には鍵がかかっていましたよ?
なのに着替えだけが消えてしまっている。
変じゃないですか?
これ、この事件を解決したら探偵です!名探偵です!」
何故か自信満々に断定する向坂。
しかしアニメや漫画の中の探偵ばかりが探偵ではないのだ。
「う~ん。まあ今クラスの中で話題になっているのはクラスの物が消えて無くなるってことですかね?」
「え、財布とか?」
「いや、女子の着替えとかですね。」
「うん、それは痴漢だね。」
即答する上田。
「ところがどっこい、そこが妙なんですよ。
そう思って廊下にあった防犯カメラに何も映っていない。
勿論、窓には鍵がかかっていましたよ?
なのに着替えだけが消えてしまっている。
変じゃないですか?
これ、この事件を解決したら探偵です!名探偵です!」
何故か自信満々に断定する向坂。
しかしアニメや漫画の中の探偵ばかりが探偵ではないのだ。
「何を言っているのだ貴様は!
探偵がそんな綺麗な仕事ばかりだと思うなよ!」
上田がはっきりと言う。
探偵がそんな綺麗な仕事ばかりだと思うなよ!」
上田がはっきりと言う。
「だからやるんだろうが所長!
探偵の仕事の現実?
探偵の仕事の苦労?
知ったこっちゃ無いね!
大事なのは思想だ!理想だ!
例え偽装された理想だったとしたって!
例え幻想みたいな発想だったとして!
それでも守って見せろよ!
泥にまみれて、砂を噛んで、誰からもあざ笑われてもさ!
それでも………、誰かの幸せの為に必死になろうとするのが探偵だろうがよ………。」
探偵の仕事の現実?
探偵の仕事の苦労?
知ったこっちゃ無いね!
大事なのは思想だ!理想だ!
例え偽装された理想だったとしたって!
例え幻想みたいな発想だったとして!
それでも守って見せろよ!
泥にまみれて、砂を噛んで、誰からもあざ笑われてもさ!
それでも………、誰かの幸せの為に必死になろうとするのが探偵だろうがよ………。」
「――――――――――――!!」
向坂の言葉を聞いて上田の眉毛がわずかに動く。
「良いぜ。解ったよ。
調査してやる。」
「――――――え!?」
「聞こえなかったのか?
その事件調査してやるって言っているんだ。」
「所長……!」
「所長……!?」
上田明也のまるで良い人かのような発言に耳を疑うメルと向坂。
顔を見合わせて驚いている。
「ただし依頼が来たらな。言っておくが一生徒からの依頼で学校を調べたりなんかしないんだから勘違いするなよ。」
「所長……、良いとこ有るじゃないですか!」
「褒めろ、讃えろ、特別に無料で調査してやるよ。」
「馬鹿な、こんな善人私達の所長じゃない!偽物だ!」
「私達の愛した所長は死んだ!ラッキー!」
「お前ら酷い……。」
上田明也はがっくりと肩を落とした。
調査してやる。」
「――――――え!?」
「聞こえなかったのか?
その事件調査してやるって言っているんだ。」
「所長……!」
「所長……!?」
上田明也のまるで良い人かのような発言に耳を疑うメルと向坂。
顔を見合わせて驚いている。
「ただし依頼が来たらな。言っておくが一生徒からの依頼で学校を調べたりなんかしないんだから勘違いするなよ。」
「所長……、良いとこ有るじゃないですか!」
「褒めろ、讃えろ、特別に無料で調査してやるよ。」
「馬鹿な、こんな善人私達の所長じゃない!偽物だ!」
「私達の愛した所長は死んだ!ラッキー!」
「お前ら酷い……。」
上田明也はがっくりと肩を落とした。
それから数時間後。
上田はメルと一緒にキムチ鍋の材料の買い出しにでかけていた。
「所長、調査しようとか言っておいて何買い出し始めているんですか?
現場に行ったりとか調査とかしないんですか?」
戸惑い気味のメル。
先程上田が「調子よく無料で調査してやる」と言っていたからすぐに調査すると思っていたのだろう。
「冷静に考えてみろよメル。この事件は急いで調査する必要がない。」
「え、なんでですか?」
「だって恐らくどこぞの正義の味方気取りがそんな事件とっくに調査しているもの。」
「正義の味方?誰ですか?」
「え、この前クラブで会ったあいつだよ。バチバチ少年。」
「あの電子レンジの二人組ですか。」
「そうそう、奴は学校では風紀委員をやっているそうだ。」
「へぇ……、いつの間に調査したんですか?」
「向坂ちゃんの後輩らしいよ、彼。」
「世間って狭いですねえ。あ、所長、卵のタイムバーゲンやってますよ。」
上田がメルの指さす方向を見ると確かにタイムバーゲン真っ最中だ。
上田はメルの手を引く。
二人がスーパーの店の中に入ろうとしたときだった。
「所長、調査しようとか言っておいて何買い出し始めているんですか?
現場に行ったりとか調査とかしないんですか?」
戸惑い気味のメル。
先程上田が「調子よく無料で調査してやる」と言っていたからすぐに調査すると思っていたのだろう。
「冷静に考えてみろよメル。この事件は急いで調査する必要がない。」
「え、なんでですか?」
「だって恐らくどこぞの正義の味方気取りがそんな事件とっくに調査しているもの。」
「正義の味方?誰ですか?」
「え、この前クラブで会ったあいつだよ。バチバチ少年。」
「あの電子レンジの二人組ですか。」
「そうそう、奴は学校では風紀委員をやっているそうだ。」
「へぇ……、いつの間に調査したんですか?」
「向坂ちゃんの後輩らしいよ、彼。」
「世間って狭いですねえ。あ、所長、卵のタイムバーゲンやってますよ。」
上田がメルの指さす方向を見ると確かにタイムバーゲン真っ最中だ。
上田はメルの手を引く。
二人がスーパーの店の中に入ろうとしたときだった。
「――――――ねぇ、知ってる?」
「急にどうしたんだメル?」
「……いや、私何も言ってないです。」
「……いや、私何も言ってないです。」
真後ろから響く声。
聞き覚えのある声。
聞いた事もない声。
聞き覚えのある声。
聞いた事もない声。
「今のは一体………。」
「都市伝説か何かか?」
「下手に返事すると不味いんだよなあ、ああいうのって。」
「ていうかマスター、野生の都市伝説に狙われすぎです。」
「マスターなんて呼ぶな、町中じゃ目立つだろうに。」
「二人の愛の証ってところでいかがでしょうか?」
「そいつぁ最高だ。」
「都市伝説か何かか?」
「下手に返事すると不味いんだよなあ、ああいうのって。」
「ていうかマスター、野生の都市伝説に狙われすぎです。」
「マスターなんて呼ぶな、町中じゃ目立つだろうに。」
「二人の愛の証ってところでいかがでしょうか?」
「そいつぁ最高だ。」
軽口をたたき合いながら周囲の気配を探る二人。
「……次来ますよ。」
「友達の友達から聞いた話なんだけどね。
【口裂け女】って知ってる?」
【口裂け女】って知ってる?」
「―――――――――――しまっ……」
上田が後ろを振り返ると真っ赤なコートを着てマスクをした女性が立っていた。
「私、綺麗?」
上田に問いかける女。
「そうだな、君のひとみには一撃でやられてしまったよ。
俺にとっては地上に降りた最後の天使だろうね。
どうだい良かったらこのあとお茶でも……。」
「……綺麗なの?」
「そりゃああれだよ。これから二人で愛でも語りながらゆっくりとその答えを聞かせて……。」
「チェストォ!」
ゴギッ!
上田の内蔵が軋む嫌な音。
かけ声と共にメルが上田の身体を思い切り殴ったのだ。
「おぶぅわ!」
「キャアアアアア!!」
スーパーに向けて勢いよく吹き飛ばされる口裂け女と上田。
上田に問いかける女。
「そうだな、君のひとみには一撃でやられてしまったよ。
俺にとっては地上に降りた最後の天使だろうね。
どうだい良かったらこのあとお茶でも……。」
「……綺麗なの?」
「そりゃああれだよ。これから二人で愛でも語りながらゆっくりとその答えを聞かせて……。」
「チェストォ!」
ゴギッ!
上田の内蔵が軋む嫌な音。
かけ声と共にメルが上田の身体を思い切り殴ったのだ。
「おぶぅわ!」
「キャアアアアア!!」
スーパーに向けて勢いよく吹き飛ばされる口裂け女と上田。
よりによってまずい場所で目立ってしまった物だ。
上田明也は舌打ちをする。
すばやく起き上がって辺りを見回すとさっきまであれだけ居た人々が居ない。
「………推理しろ。」
この状況は異常だ。
「急に現れた都市伝説。
友達の友達から聞いた話。
急に消えた人々。
いつもと変わらぬ風景。
起きた事象から考えて奴の狙いは?
出会いは常に偶然か?
今俺の置かれている状況は果たしてどうなっているんだ?」
「ねぇ、知ってる?」
またも先程の声が上田の耳に届く。
「おそらく、この言葉が都市伝説始動の合図だ。メル!」
「はい、こっちです!つーかなに都市伝説口説いているんですか?
馬鹿じゃないすか?死にたいんですか、ていうか貴方を殺して私も死ねば良いんですよね解りますよええ。」
「………怒ってらっしゃる。」
当たり前である。
上田明也は舌打ちをする。
すばやく起き上がって辺りを見回すとさっきまであれだけ居た人々が居ない。
「………推理しろ。」
この状況は異常だ。
「急に現れた都市伝説。
友達の友達から聞いた話。
急に消えた人々。
いつもと変わらぬ風景。
起きた事象から考えて奴の狙いは?
出会いは常に偶然か?
今俺の置かれている状況は果たしてどうなっているんだ?」
「ねぇ、知ってる?」
またも先程の声が上田の耳に届く。
「おそらく、この言葉が都市伝説始動の合図だ。メル!」
「はい、こっちです!つーかなに都市伝説口説いているんですか?
馬鹿じゃないすか?死にたいんですか、ていうか貴方を殺して私も死ねば良いんですよね解りますよええ。」
「………怒ってらっしゃる。」
当たり前である。
「友達の友達から聞いた話なんだけどさ。」
友達の友達から聞いた話。
友達が居ない人間には友達は居ない。
そのことに上田はとっくに気付いていた。
友達が居ない人間には友達は居ない。
そのことに上田はとっくに気付いていた。
「友達?うちのマスターに友達なんて居るわけ無いじゃないですか!」
メルが『友達の友達』にたいしてはっきりと告げる。
そうだ、その通りなのだ。
彼女の言っていることは正しい。
一、二週間程前まではの話であるのだが。
そうだ、その通りなのだ。
彼女の言っていることは正しい。
一、二週間程前まではの話であるのだが。
「そうなの?でも其処の人はそう思っていないみたい。」
「マスター!?」
「ぐ………。」
「マスター!?」
「ぐ………。」
上田明也、冷徹な殺人鬼。
笛吹丁、有能な探偵。
どちらも同じ人間。
臨界地点の人間。
友達と聞いて浮かべる顔がある。
笛吹丁、有能な探偵。
どちらも同じ人間。
臨界地点の人間。
友達と聞いて浮かべる顔がある。
「友を友と言えない人間には死んでもなりたくないね。」
彼はむしろ余裕さえ感じるような表情で嗤う。
「マスターーーーー!!何処で友達なんぞ作ってたんですか!
私の閃きを無にするつもりですか!」
メルは上田の胸ぐらを掴んでゆさゆさする。
「なぁに、俺は死なないよ。」
「それで友達の友達から聞いた話なんだけどさ。」
「メル、ちょっとこっち来い。」
「なんですキャピィ!」
「済まないな……。」
この男、見た目だけとはいえ子供を、しかも女の子を手刀で気絶させた。
人でなしのロクデナシである。
彼はむしろ余裕さえ感じるような表情で嗤う。
「マスターーーーー!!何処で友達なんぞ作ってたんですか!
私の閃きを無にするつもりですか!」
メルは上田の胸ぐらを掴んでゆさゆさする。
「なぁに、俺は死なないよ。」
「それで友達の友達から聞いた話なんだけどさ。」
「メル、ちょっとこっち来い。」
「なんですキャピィ!」
「済まないな……。」
この男、見た目だけとはいえ子供を、しかも女の子を手刀で気絶させた。
人でなしのロクデナシである。
「この場は逃げさせて貰うぜ?」
赤いコートを翻し、少女を抱えて探偵は走り出す。
「師匠って都市伝説、知っている?」
それに追いすがる声。
「友達の友達、それなら友達の居ない環境に貴様は来られない。
つまりだ、――――――赤い部屋は好きか?」
空間がねじれる感覚。
気がつくと上田とメルは真っ赤な部屋の中に居た。
赤いコートを翻し、少女を抱えて探偵は走り出す。
「師匠って都市伝説、知っている?」
それに追いすがる声。
「友達の友達、それなら友達の居ない環境に貴様は来られない。
つまりだ、――――――赤い部屋は好きか?」
空間がねじれる感覚。
気がつくと上田とメルは真っ赤な部屋の中に居た。
「あれ、ここどこ……キュウ!?」
目覚めるメル。
もう一発手刀を決める上田。
奇声を発してメルは再び眠りについた。
なんとか逃げ切れたことを確認し安堵のため息をする上田。
赤い部屋を経由して彼らはなんとか探偵事務所に帰ったのだ。
しかし十秒後、彼は買い物の荷物を置いてきてしまったことに気付き、絶叫するのであった。
【上田明也の探偵倶楽部6
~ともだちのともだちはだいたいいない→
自分は友達の友達じゃない→
自分に友達はいない ってなると思うなよ!~fin】
目覚めるメル。
もう一発手刀を決める上田。
奇声を発してメルは再び眠りについた。
なんとか逃げ切れたことを確認し安堵のため息をする上田。
赤い部屋を経由して彼らはなんとか探偵事務所に帰ったのだ。
しかし十秒後、彼は買い物の荷物を置いてきてしまったことに気付き、絶叫するのであった。
【上田明也の探偵倶楽部6
~ともだちのともだちはだいたいいない→
自分は友達の友達じゃない→
自分に友達はいない ってなると思うなよ!~fin】
「ねぇ、師匠って都市伝説知っている?」
「うん、知っているよ。」
誰もいなくなったはずの空間に響く声。
「だってそれ、僕だもの。」
「え?」
「楽しそうな町だなあ学校町。妙な物だらけじゃないか。」
空間の密度がそこだけ違う。
黒く霧のような物がぼんやりと集まっている。
それは見る間に人の形になり、歩き始めた。
「うに君、ちょっと遊びに行ってくるよ。」
男はそれだけ呟くと声を無視するように歩き始めてしまった。
【上田明也の探偵倶楽部 続】
「うん、知っているよ。」
誰もいなくなったはずの空間に響く声。
「だってそれ、僕だもの。」
「え?」
「楽しそうな町だなあ学校町。妙な物だらけじゃないか。」
空間の密度がそこだけ違う。
黒く霧のような物がぼんやりと集まっている。
それは見る間に人の形になり、歩き始めた。
「うに君、ちょっと遊びに行ってくるよ。」
男はそれだけ呟くと声を無視するように歩き始めてしまった。
【上田明也の探偵倶楽部 続】