「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-29

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【電磁人の韻律詩29~ピュアピュアハートの恋占い・後編~fin】

~前回までのあらすじ~
遊園地に遊びに来ていた明日と恋路。
二人は偶然仲良くなった拝戸直という男と彼の妹である拝戸純に出会う。
兄に襲いかかる純を止める明日。
戦闘の結果、明日は丑の刻参りの能力をもろに受けてしまった。
その影響で不運にも明日と恋路は分断されたのである。





「っはぁ……、はぁ……。ここのゲートにたどり着けば大丈夫なはずだけど……?」

恋路は遊園地にあるもう一つの連絡通路に特に何の障害も無くたどり着いていた。
彼女に拝戸純の呪いの力は無意味であるので、当然と言えば当然である。


「んふふ、お兄ちゃんってば何処に居るのかしら。」

一方その頃、拝戸純は兄である拝戸直と彼が契約していた口裂け女を徐々に追い詰めていた。
彼女は驚くべきことに、口裂け女のスピードで移動している人間を追跡しているのだ。

「なんて、私に私に対して逃げや隠れが通じるなんて、お兄ちゃんも思ってないでしょうけど。」


「えーん、お母さーん!」
「どうしたんだそこの子供。」

さらにその頃、明日真は迷子の子供を迷子案内所に届けていた。
先ほどから“彼の性格上手助けせざるを得ない事件”ばかりが彼の周りで起きている。
それはすなわち、恋路との合流が遅れ、

「うわっ、財布落とした……。」

不幸が続くと言うことであった。




「くっ、あまりに遅いぞ?」

恋路はいらついていた。
明日真があまりに遅い。
彼女としてはあまり想像したくなかったが、明日が最悪の事態に至っている可能性は高い。

「おい、明日恋路。」

そこで彼女に思わぬ人物が声をかけてきた。


「あと少し、別に足が遅くても逃げ場所さえ解っていればそこに先回りするだけだもの。」

拝戸純は胸の高鳴りを抑えられずにいた。
あと少しで兄に会える。
愛する愛する兄に、会えるのだ。


「くそっ、なぜだか知らないけど助ける人が多すぎる!」
「君は、誰も彼も助けて生きていくのか?
 『そろそろ選びたまえよ。』
 『簡単なことさ、取捨選択というものは。』」

明日はすれ違いざまにかけられた声に振り返った。






「ずいぶん困っているようじゃないか。」
「あら、レモンちゃん。」
「橙だ。」
「大体だ?」
「橙だ。」
「代替だ?」
「橙だ。」
「大腿だ?」
「橙ですぅ!」

彼女に声をかけてきたのは笛吹探偵事務所の助手、橙・レイモンだった。


「お兄ちゃん!」

拝戸純は愛する兄の背中に抱きついた。
ぬくもり、手触り、どれをとってもそれは間違いなく愛する兄の物だった。


「誰だ?」
「――――俺だよ、中央高校風紀委員長。」
「なんだ、坂本さんか……。」
「いやなに、面白そうなことに巻き込まれているな、と思ってさ。
 要るかい、道案内。彼女の所までならつれてってやるぜ。」

そう言って、坂本と呼ばれた男は明日に手をさしのべた。





「まったく、事件に首突っ込んだら返り討ちに遭うなんて彼らしくてしょうがないよ。」
「……見てた?」
「ラプラスの能力で見てた、そして恋路の言うとおり確かにその拝戸直とかいう男は危険だな。
 黒く靄がかかっていて上手く見えないがかなりの人数を意味も無く殺している。
 うちの所長以上だな、しかも無意味に無価値に無関係な人間を、ってところが気にくわない。」
「ふむ、やっぱりか……。」
「だが、それ以上に今回不味いのは拝戸純だ。」
「へ?」
「まあ良いや、とりあえず明日達の居場所を探すぞ。」


「おやおや、もう純に捕まっちゃったかー。」

拝戸直は純に優しく声をかけた。

「えへへ、捕まえた!あの女は何処なの?」

やっとこさ愛しの兄を捕まえた純は無邪気に喜んでいた。
しかし殺気は消えていない、目が据わっている。


「誰だろうなあ、ジロジロ俺のことを見つめている奴。敵って感じじゃないし放っておくべきかしら。」
「どうしたんですか坂本さん?」
「いや、誰かに見られているのが気になってさ……。
 待ち合わせのゲートはこの先だったっけか。
 ああ、それとこれ、さっき拾ったんだけどこれってお前の?」
「え、……あ!」

坂本がポケットから取り出したのは先ほど明日が落とした財布だった。







「拝戸純、拝戸直、どちらも同じようにラプラスの悪魔で把捉できないタイプの人間だ。」
「ラプラスの悪魔?」
「私の能力だよ、性質自体は探知に特化した強化系だ。」
「ふむ、それでアスマの居場所もわかっていると。」
「そうだよ、今はあいつ安全みたいだしさっさと迎えに行こう。
 その角を右に回れ。」


「あの女って……、あのな?
 お兄ちゃんの彼女なんだからそこまで目の仇にされると……」
「だから目の仇にするの!」
「そうかそうか……じゃあ仕方ない。」

ゴスン!
拝戸純の後頭部に重たい一撃が突き刺さった。

「すまない純、少し倒れていてくれ……。」

薄れ行く意識の中で彼女ははっきりと兄の声を聞いた。
裏切られた、彼女はそう思った。


「ちっくしょー!あいつら勝手にどこ行きやがったー!能力使うぞおるぁー!」
「何か面白い物でも見つけたんじゃないの?私は別の所探してくるよ。あと絶対能力は使わないように。」
「あ、坂本さん。少し迂回しましょう。」
「どうしたの?」
「少々厄介な奴が前方に居ます。」

明日真は自分の姉と仇敵が同時にいるところを発見してしまった。




「ラプラスの悪魔ならなんでも探し出せる物なんじゃないの?」
「いや、私のラプラスの悪魔は優秀だがそれほど万能ではない。
 確率論のセカイから外れる異常者相手にはわりと何も出来ないんだよ。
 逆に偶然やら確率を操ってくる能力を持つ奴には強いが……。」
「不幸にする能力は確率を操るって事じゃないの?」
「ああ、拝戸純の能力は恐ろしくないんだ。ただあいつ自身の持つ性質が危ない。
 本の中の誤植のような感じだよ。セカイの歪み、みたいな。」
「ふぅん、異常なんだ。」
「異常だね。」


「…………ッ!」

また、逃がした。
兄に逃げられてしまった。
あんな女と居れば兄が危ないというのに。
私は兄を純粋に心配しているだけなのに。
なのに、どうしてこんな目に遭わなければいけないのだろうか?
頭がずきずきと痛む。
そう思って拝戸純は辺りを見回した。
「また、誰も私に気づいていない。」



「あ、あれお前の彼女じゃない?」
「ああ、そうです。おーい!」

遠くで明日の声に気づいた恋路が手を振る。
彼女と一緒に一人の子供が歩いていた。


「おお、居た居た。おーい!」
「これでゲームセットだな。それじゃあ私は本来の捜し物をさせてもらおう。
 私はうちの所長も探さなければいけない。この作業が結構骨なんだよ。
 そのうえ私が急いで探さないとやばいことが起きるらしいし。
 さらばだ明日恋路。」
「やだなあ、私は明日なんて名字じゃないよ。」

ふっ、とその言葉を鼻で笑うと橙は別の所に行ってしまった。
そこで橙の言葉から恋路は気付いてしまった。
ラプラスの悪魔で、上田明也が捜索できないと言うことに。


拝戸純は目立たない子供だった。
先生に名前を覚えられるのも、かくれんぼで見つかるのも、一番最後。
友達は出来たが、卒業すれば皆不思議と彼女のことを忘れていった。
そんな彼女が感じていたのはこの上ない孤独。
そしてその孤独をいやしてくれたのが兄だった。


「あれっ、あの子供行っちゃったよ。なんだったんだろ。」
「さて、俺の出番も終わりだね。それじゃあ俺はもう行くぜ。」
「あれれ、坂本さんももう帰るんですか?」
「俺は風紀委員長として生徒を守っていただけだからね。
 あのチビとお前の言う厄介な相手に興味がわいた。」
「えっ、ちょ……!」

明日が止める間も無く、坂本はその場を離れていってしまった。





「いやー、見つかって良かったよ。」
「ごめんごめん、心配をかけた。」

恋路は拝戸純の髪を明日に手渡す。
これで彼女の呪いは解けた筈だ。

「どうする?この後少し遊ぶ?」
「いやー、遠慮する。姉さんに見つかりたくない。」
「うーん、……なら良いや。」
「その代わり、今日は家でのんびりさせてくれ。」
「まあ私はアスマが安全なら何処でも良い気がしてきた。愛してるよアスマ。
 だから無事でいてくれ、気がかりでしょうがない。
 今日だってレモンちゃん居なければどうなったことか……。」
「はいはい、俺も愛してるよ。それじゃあ今日くらいは俺が晩飯作ろうかな。」
「それは断る。」
「これだからやれやれだぜ。」

明日達は駐車場に停めてあったバイクに二人で仲良く乗ると、
初夏の風を受けて郊外の広い道を気持ちよく走り始めたのである。
二人が進む道は光があふれていた。




「誰も誰しも、私を見ていてくれない……。」

絶望、絶望、絶望。
両親と同じように自分をずっと見ていた、覚えていた兄さえ自分を拒絶する。
拝戸直の持つそれと同じように彼女が生まれつき持っていた『隠す』才能は彼女を決して幸せにしなかった。

彼女は、不幸だった。

拝戸直と違い、その才能を半ば拒絶するが故に、尚のこと不幸だった。

「そこの可愛らしいお嬢さん、どうしてそんな所で寝ているんだ?
 怖いお兄さんに誘拐されちゃうよ。」
「――――――――――――――!?」

拒絶はしても制御は出来る。
後頭部を思い切り殴られていた彼女は防衛本能のままに『隠す』才能を発揮させていた。
彼女自身の姿を隠したまま、遊園地の中で寝転がっていたのである。

「貴方、……誰?」
「お嬢さん、君は自分が話しかけられているのが不思議で仕方ないって顔しているな?」
「え、あ、……はい。」
「とりあえず起き上がりな、立てないなら手を貸してあげよう。話はそれからだ。
 ところで年は幾つかな?見た目通りの年齢って訳じゃなさそうだが……。」

私を見ている人が居る。
それが彼女には新鮮な驚きだった。

「貴方の名前は?」

拝戸純は目の前の男性の名前を聞いた。





「……そうか、君は寂しい思いをしてきたようだね。」
「あの、名前…………。」
「名前に恐らく意味など無いが、良いだろう名乗ろうそうしよう。
 俺の名前は上田明也、私立探偵笛吹丁として活動しているから呼ぶ時は笛吹と呼べ。」
「上田……、小学校の時の先輩に居たような……。」
「ああ、そういえば低学年のお世話係とかしてたね。懐かしい。学校町立の小学校だな?」
「はい、西区のあそこです。」
「そうか、思わぬ接点だね。迷子を捜してたら面白い人間に会えたものだね。」
「えと、私の名前は拝戸純って言います。」
「……思い出したぞ、そうか、あの頃と全然変わってないな!
 良いぞ、非常に良いことだ。」

手をさしのべてくれた。
名前を聞いてくれた。
存在を覚えていてくれた。
それだけで彼女にとっては充分すぎた。
まともな人間にはそれすらも不可能なのだから。

「上田さん、お兄ちゃんって呼んで良いですか?」
「へ?いや望むところだけど……。」
「ありがとう、お兄ちゃん!」

突如抱きつかれて焦る上田。
それは彼女にとっては幸せな出会い。
でもそれは普通に考えればあまりにも最悪な出会いだった。

【電磁人の韻律詩29~ピュアピュアハートの恋占い・後編~fin】



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