【ifシリーズ~ハーメルンの笛吹きと出会わなかった上田~】
バシィン!
ズバン!
ドスッ!
早朝、二人の男が拳を交わしている。
一人は真っ黒なスーツに身を包んだ禿。
一人は真っ赤なシャツに赤みがかったジーンズをはいた若者。
そしてここはどこかの道場らしい。
ズバン!
ドスッ!
早朝、二人の男が拳を交わしている。
一人は真っ黒なスーツに身を包んだ禿。
一人は真っ赤なシャツに赤みがかったジーンズをはいた若者。
そしてここはどこかの道場らしい。
「基礎は完璧ですね。中々飲み込みが早い。」
若者の繰り出した拳を円を描くような動きでいなす禿。
勢いに任せて頭から吹き飛ぶ若者。
誰もがこのまま床に激突すると思うだろう。
しかし彼の本気はここからだった。
若者の繰り出した拳を円を描くような動きでいなす禿。
勢いに任せて頭から吹き飛ぶ若者。
誰もがこのまま床に激突すると思うだろう。
しかし彼の本気はここからだった。
ぺたん
若者は地面に手をつけるとそのまま身体をグルグルと回して蹴りを放ったのだ。
普通にやったら隙だらけの技。
「いやいや黒服さん、俺はここからですよ。」
「当てても良いですよ。」
「じゃあ遠慮無く。」
ビュッ!
――――――しかし速い。
蹴りの始めのモーションから終わりまで、もしその場にいたら何人が視認できたのだろうか?
少なくともこの禿げた黒服には視認できたのだろう。
「ケイシャーダ、ジンガ」
高速の蹴りに反応した黒服が飛び退いた隙を伺って青年は構えを取る。
腰を低く落として全身のバネを生かし、黒服の顎に向けてもう一度蹴りを放つ。
「もう一発!」
一発と言ったが其の一瞬で彼は二回蹴っている。
一定のリズムと確実に相手を牽制する動きはまるで舞いを舞っているようだ。
「やはりそちらの方が楽しそうですね。」
再び紙一重の差で回避する禿。
青年はタン、と禿の肩に躱された足を乗せて一気に飛び上がる。
ブン!
ビュン!
青年の踵と禿の拳がぶつかる。
ドゴォン!
ビリビリと道場の床が、空気が揺れる。
サマーソルトで黒服を牽制しながら構えを変える。
「今度は……、ほうほうサバットまで習い始めたんですか?」
「中距離だけならこっちのがやりやすいんです。」
ぐにゃり……
青年の足下が歪んだようにみえる。
パン!パン!パン!
黒服の頭が先程まで存在した空間で空気が破裂したような音が鳴った。
「良いハイキックですが……。」
「そうですね……、俺の完敗です。」
黒服、というか禿の身体はすでに青年の目の前まで移動していた。
彼の手刀が青年の首筋に添えられている。
「ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
そのままの姿勢で互いに礼をして模擬戦はどうやら終了になったようだ。
普通にやったら隙だらけの技。
「いやいや黒服さん、俺はここからですよ。」
「当てても良いですよ。」
「じゃあ遠慮無く。」
ビュッ!
――――――しかし速い。
蹴りの始めのモーションから終わりまで、もしその場にいたら何人が視認できたのだろうか?
少なくともこの禿げた黒服には視認できたのだろう。
「ケイシャーダ、ジンガ」
高速の蹴りに反応した黒服が飛び退いた隙を伺って青年は構えを取る。
腰を低く落として全身のバネを生かし、黒服の顎に向けてもう一度蹴りを放つ。
「もう一発!」
一発と言ったが其の一瞬で彼は二回蹴っている。
一定のリズムと確実に相手を牽制する動きはまるで舞いを舞っているようだ。
「やはりそちらの方が楽しそうですね。」
再び紙一重の差で回避する禿。
青年はタン、と禿の肩に躱された足を乗せて一気に飛び上がる。
ブン!
ビュン!
青年の踵と禿の拳がぶつかる。
ドゴォン!
ビリビリと道場の床が、空気が揺れる。
サマーソルトで黒服を牽制しながら構えを変える。
「今度は……、ほうほうサバットまで習い始めたんですか?」
「中距離だけならこっちのがやりやすいんです。」
ぐにゃり……
青年の足下が歪んだようにみえる。
パン!パン!パン!
黒服の頭が先程まで存在した空間で空気が破裂したような音が鳴った。
「良いハイキックですが……。」
「そうですね……、俺の完敗です。」
黒服、というか禿の身体はすでに青年の目の前まで移動していた。
彼の手刀が青年の首筋に添えられている。
「ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
そのままの姿勢で互いに礼をして模擬戦はどうやら終了になったようだ。
「どうですか?組織の仕事はなれましたか?」
「そうですね、黒服さんに尻を狙われ欠けた時以外は特に問題も無いですし。」
「それは良かった。それにカポエイラでしたか?あれもなかなか貴方に合っているようですね。」
「都市伝説の支援があるから使える技ですけどね。最後に試した奴の方が使う分には楽です。」
「ははは、両方とも今の貴方なら都市伝説無しでそこそこ使えている筈ですよ。」
「そう言って貰えると自信が出ますね、ありがとうございます。」
「それじゃあ行きましょうか?恐らく貴方の都市伝説も待っていますよ、上田明也さん。」
上田明也、確かにそう呼ばれた男は禿げた黒服に従って道場を出た。
「そうですね、黒服さんに尻を狙われ欠けた時以外は特に問題も無いですし。」
「それは良かった。それにカポエイラでしたか?あれもなかなか貴方に合っているようですね。」
「都市伝説の支援があるから使える技ですけどね。最後に試した奴の方が使う分には楽です。」
「ははは、両方とも今の貴方なら都市伝説無しでそこそこ使えている筈ですよ。」
「そう言って貰えると自信が出ますね、ありがとうございます。」
「それじゃあ行きましょうか?恐らく貴方の都市伝説も待っていますよ、上田明也さん。」
上田明也、確かにそう呼ばれた男は禿げた黒服に従って道場を出た。
「アキナリー!遅いの!」
ポテポテポテポテ……ちょこん。
家に帰ってきた上田明也を迎えたのは子供、小学三年生ほどの少女だった。
上田に抱きついて来たので彼はそのまま彼女を抱え上げる。
「おう済まなかったな朽葉。」
クチハと呼ばれた少女はマスクをしていた。
だがそれは決して彼女が風邪を引いているからではない。
「早く朝ご飯作るの!」
「解った解った、ちょっと待ってろ。
そのちっこいなりで人の何倍食うんだろうなお前は……。」
少女は都市伝説『口裂け女』だった。
ある日偶然、彼と出会ったのだ。
「ほら、ねこまんま。」
「食えないの!人間の飯じゃないの!」
「嘘だ、激辛麻婆。」
「おおおおお!」
クチハは子供らしい純粋な感動の声を上げている。
其の様子を見て満足そうな上田はとりあえず大学に向かうことにしたのだ。
ポテポテポテポテ……ちょこん。
家に帰ってきた上田明也を迎えたのは子供、小学三年生ほどの少女だった。
上田に抱きついて来たので彼はそのまま彼女を抱え上げる。
「おう済まなかったな朽葉。」
クチハと呼ばれた少女はマスクをしていた。
だがそれは決して彼女が風邪を引いているからではない。
「早く朝ご飯作るの!」
「解った解った、ちょっと待ってろ。
そのちっこいなりで人の何倍食うんだろうなお前は……。」
少女は都市伝説『口裂け女』だった。
ある日偶然、彼と出会ったのだ。
「ほら、ねこまんま。」
「食えないの!人間の飯じゃないの!」
「嘘だ、激辛麻婆。」
「おおおおお!」
クチハは子供らしい純粋な感動の声を上げている。
其の様子を見て満足そうな上田はとりあえず大学に向かうことにしたのだ。
彼にとって大学の講義は非常につまらない物だった。
レポートやノートを見せてくれと頼まれれば見せ、
コンパがあると言われれば顔を出して、
基本的に阿呆な友人と話を合わせ、
好きでもない女性とロリコンをカモフラージュする為に付き合い、
適当に教授の機嫌を取り、
その日その日を優等生として過ごすのが彼の日常だった。
それは都市伝説と契約してからも変わらない。
サボリ放題が謳い文句のサークルに顔だけ見せて事務仕事をするとその日の彼は大学から家に帰った。
レポートやノートを見せてくれと頼まれれば見せ、
コンパがあると言われれば顔を出して、
基本的に阿呆な友人と話を合わせ、
好きでもない女性とロリコンをカモフラージュする為に付き合い、
適当に教授の機嫌を取り、
その日その日を優等生として過ごすのが彼の日常だった。
それは都市伝説と契約してからも変わらない。
サボリ放題が謳い文句のサークルに顔だけ見せて事務仕事をするとその日の彼は大学から家に帰った。
「と言うわけで今日も怠惰な一日だったんだよ茜さん。」
「仕方ないじゃないですか、それでも他の人よりは充分刺激的です。」
家に帰るとクチハはぐっすり眠っていた。
パソコンの電源をつけると彼は彼の契約するもう一つの都市伝説『赤い部屋』を呼び出す。
彼はこのことを組織には報告していない。
彼は組織のことをなんだかんだ言って信用していないのだ。
そして彼は赤い部屋――――茜さんと会話を続ける
「そうか、ところでメールは?」
「ああ、組織から一件届いているわよ。
えっとねえ、討伐対象になった都市伝説が居るから倒しておけだって。
ずいぶんこき使われているのね。」
「言ってくれるなよ、俺の担当する黒服は良い人だし悪くないと思っているよ。」
「貞操の危機が伴っているんですけどね。」
「ああ、それなんだけど今度新しい人が来るんだって。」
「なんだ、それなら大丈夫です……よねぇ?」
「俺も正直もっと危ないんじゃないかと思う。」
「でも組織は抜けないのね?」
「ああ、クチハの安全も有るしな。」
「私のことは心配してくれないんだ。」
「お前はネットの中に居るから基本的に安全だろう?」
「まあね。」
「それじゃあクチハ連れて行ってくるわ。
茜さん、俺の服用意しておいて。」
「任せてあなた……なんて。」
「ひきこもりでNEETでネトゲ廃人なことを除けば俺の身には勿体ない都市伝説だよ、お前は。」
コンピュータの画面からにゅるんと出てきた真っ赤なコートを着込み、
赤い帽子を被ると上田明也はメールで指定された場所に向かった。
「仕方ないじゃないですか、それでも他の人よりは充分刺激的です。」
家に帰るとクチハはぐっすり眠っていた。
パソコンの電源をつけると彼は彼の契約するもう一つの都市伝説『赤い部屋』を呼び出す。
彼はこのことを組織には報告していない。
彼は組織のことをなんだかんだ言って信用していないのだ。
そして彼は赤い部屋――――茜さんと会話を続ける
「そうか、ところでメールは?」
「ああ、組織から一件届いているわよ。
えっとねえ、討伐対象になった都市伝説が居るから倒しておけだって。
ずいぶんこき使われているのね。」
「言ってくれるなよ、俺の担当する黒服は良い人だし悪くないと思っているよ。」
「貞操の危機が伴っているんですけどね。」
「ああ、それなんだけど今度新しい人が来るんだって。」
「なんだ、それなら大丈夫です……よねぇ?」
「俺も正直もっと危ないんじゃないかと思う。」
「でも組織は抜けないのね?」
「ああ、クチハの安全も有るしな。」
「私のことは心配してくれないんだ。」
「お前はネットの中に居るから基本的に安全だろう?」
「まあね。」
「それじゃあクチハ連れて行ってくるわ。
茜さん、俺の服用意しておいて。」
「任せてあなた……なんて。」
「ひきこもりでNEETでネトゲ廃人なことを除けば俺の身には勿体ない都市伝説だよ、お前は。」
コンピュータの画面からにゅるんと出てきた真っ赤なコートを着込み、
赤い帽子を被ると上田明也はメールで指定された場所に向かった。
「うぃーっす。」
「五分早い到着ですね、上田さん。」
学校町の中心、空きビルの前が集合場所だった。
「どうもっす黒服さん。あれ?今日は……。」
「久しぶり。」
「あ、刀のにーさん。合コン誘っても来ないんで死んだかと。」
「行かないよ、それは。」
上田が現地に到着するとかごめかごめの契約者と禿が居た。
「かごめかごめのにーちゃんなの!」
「クチハちゃん久しぶりだなあ!」
「飴頂戴!」
「今日のお仕事終わったらな。」
「わーい!」
「なんでこんなに懐いているの?飯食えれば誰でも良いの?」
「おや、上田さん、寂しいなら相手しますよ?」
「それは勘弁。」
ひとしきり談笑すると禿が仕事の説明を始めた。
「今日の相手はコークロアの中毒者達ですね。
いかんせん数が多いので私達に出番が回ってきました。」
「ほうほう、じゃあさっくり終わらせましょうかね。」
上田はすぐに終わらせる気満々で
「まあまあ待って下さい。まずはかごめかごめの都市伝説で逃げ道をふさいでからです。」
「はーい。じゃあ刀のにーさんにお願いしようかな。
ほら、クチハ、お前はここに居ろ。」
上田明也は口裂け幼女を背中に背負うと出番を待つことにした。
「ねーねー、アキナリー。私玩具欲しいの。」
「解った、組織から出たお金で買ってあげるから。大人の玩具。」
「ねーねー、大人の玩具ってなんなの?」
二人がギリギリの会話をしていると禿がそれを止めた。
「上田さん、どうやら下準備は終わった見たいですよ。」
「了解、クチハ、話は後で聞いてやるからさっさと行くぞ。」
「むー、わかったのー!」
上田は禿の後についてビルの中に駆け込んでいった。
「五分早い到着ですね、上田さん。」
学校町の中心、空きビルの前が集合場所だった。
「どうもっす黒服さん。あれ?今日は……。」
「久しぶり。」
「あ、刀のにーさん。合コン誘っても来ないんで死んだかと。」
「行かないよ、それは。」
上田が現地に到着するとかごめかごめの契約者と禿が居た。
「かごめかごめのにーちゃんなの!」
「クチハちゃん久しぶりだなあ!」
「飴頂戴!」
「今日のお仕事終わったらな。」
「わーい!」
「なんでこんなに懐いているの?飯食えれば誰でも良いの?」
「おや、上田さん、寂しいなら相手しますよ?」
「それは勘弁。」
ひとしきり談笑すると禿が仕事の説明を始めた。
「今日の相手はコークロアの中毒者達ですね。
いかんせん数が多いので私達に出番が回ってきました。」
「ほうほう、じゃあさっくり終わらせましょうかね。」
上田はすぐに終わらせる気満々で
「まあまあ待って下さい。まずはかごめかごめの都市伝説で逃げ道をふさいでからです。」
「はーい。じゃあ刀のにーさんにお願いしようかな。
ほら、クチハ、お前はここに居ろ。」
上田明也は口裂け幼女を背中に背負うと出番を待つことにした。
「ねーねー、アキナリー。私玩具欲しいの。」
「解った、組織から出たお金で買ってあげるから。大人の玩具。」
「ねーねー、大人の玩具ってなんなの?」
二人がギリギリの会話をしていると禿がそれを止めた。
「上田さん、どうやら下準備は終わった見たいですよ。」
「了解、クチハ、話は後で聞いてやるからさっさと行くぞ。」
「むー、わかったのー!」
上田は禿の後についてビルの中に駆け込んでいった。
「上田さんは一階の制圧と増援の邪魔をお願いします。」
「ここにいる奴ら、殺してしまっても構わないんでしょう?」
面倒臭そうに上田は言う。
「できるだけ急所は外しておくことを勧めます。」
禿がやれやれと言った雰囲気でたしなめる。
「どうせ死んでいても生きていても変わらないような奴ばかりだとは……。」
「アキナリ、めっ!」
上田明也は背負った朽葉に怒られた。
無用な殺しは厳禁。
上田明也が組織に入った時、厳重に言われたことだった。
「ここにいる奴ら、殺してしまっても構わないんでしょう?」
面倒臭そうに上田は言う。
「できるだけ急所は外しておくことを勧めます。」
禿がやれやれと言った雰囲気でたしなめる。
「どうせ死んでいても生きていても変わらないような奴ばかりだとは……。」
「アキナリ、めっ!」
上田明也は背負った朽葉に怒られた。
無用な殺しは厳禁。
上田明也が組織に入った時、厳重に言われたことだった。
上田明也が口裂け女と契約するとすぐに彼らは現れた。
その時、彼は丁度子供達に襲いかかっていたハーメルンの笛吹きの契約者を殺し終えた所だった。
上田に会いに来た黒服―――――禿は、彼にできるだけ人を殺さないように警告した。
そして、それと引き替えに口裂け女の能力①『100mを3秒で走る脚力』を存分に生かせるカポエイラを
彼の知り合いから教えて貰えるように手配してくれたのだ。
平気で人を殺せる。
上田明也の危うくもあり何よりも強い一面だった。
一歩間違えれば彼は当然の如く殺人鬼に、学校町を震撼させる殺人鬼になり得ただろう。
例えば彼が初めての戦いで取り逃したハーメルンの笛吹きの都市伝説。
あれなどと契約したなら当然、彼はその都市伝説の為に人を殺して回ったに違いない。
その時、彼は丁度子供達に襲いかかっていたハーメルンの笛吹きの契約者を殺し終えた所だった。
上田に会いに来た黒服―――――禿は、彼にできるだけ人を殺さないように警告した。
そして、それと引き替えに口裂け女の能力①『100mを3秒で走る脚力』を存分に生かせるカポエイラを
彼の知り合いから教えて貰えるように手配してくれたのだ。
平気で人を殺せる。
上田明也の危うくもあり何よりも強い一面だった。
一歩間違えれば彼は当然の如く殺人鬼に、学校町を震撼させる殺人鬼になり得ただろう。
例えば彼が初めての戦いで取り逃したハーメルンの笛吹きの都市伝説。
あれなどと契約したなら当然、彼はその都市伝説の為に人を殺して回ったに違いない。
「それでは私は先に行った彼と合流しに行きます。」
「はい、お気をつけて……は無いか。」
「あなたこそお気をつけて。」
「ですね。」
彼らの目の前に現れたコークロアの中毒者達を蹴散らしながら禿は二階へ向かっていった。
「はい、お気をつけて……は無いか。」
「あなたこそお気をつけて。」
「ですね。」
彼らの目の前に現れたコークロアの中毒者達を蹴散らしながら禿は二階へ向かっていった。
「じゃあ行くぞクチハ、しっかり捕まっていろ。」
「解ったのアキナリ!」
残ったコークロアの中毒者達の顔が殺気立っている。
それを見て上田はコートの袖からH&KのUSPと大降りの鉈を取り出す。
口裂け女の能力②『常に鉈や鎌などの刃物を持ち歩いている』
ただしH&KのUSPは上田明也が禿に頼んで調達して貰った私物である。
「解ったのアキナリ!」
残ったコークロアの中毒者達の顔が殺気立っている。
それを見て上田はコートの袖からH&KのUSPと大降りの鉈を取り出す。
口裂け女の能力②『常に鉈や鎌などの刃物を持ち歩いている』
ただしH&KのUSPは上田明也が禿に頼んで調達して貰った私物である。
BANG!BANG!
先頭にいた中毒者の足を撃ち抜く。
どんなに身体の限界を突破したところで足を完全に潰されれば動けなどしない。
「殺してはいけないということは殺さなければ何をしても良いと言うことだよね。」
上田明也が歪んだ笑みを浮かべる。
「あんまりひどいことしちゃ駄目なの!」
背中にいる口裂け幼女が怒る。
「解った解った……。」
銃器と刃物をしまってすばやく中毒者の集団に走り寄ると先程動けなくした先頭の男を思いきり蹴り飛ばした。
空き缶のように簡単に吹き飛ぶ男。
それは周りの中毒者も巻き込んで壁に激突する。
先頭にいた中毒者の足を撃ち抜く。
どんなに身体の限界を突破したところで足を完全に潰されれば動けなどしない。
「殺してはいけないということは殺さなければ何をしても良いと言うことだよね。」
上田明也が歪んだ笑みを浮かべる。
「あんまりひどいことしちゃ駄目なの!」
背中にいる口裂け幼女が怒る。
「解った解った……。」
銃器と刃物をしまってすばやく中毒者の集団に走り寄ると先程動けなくした先頭の男を思いきり蹴り飛ばした。
空き缶のように簡単に吹き飛ぶ男。
それは周りの中毒者も巻き込んで壁に激突する。
派手な衝突音に気付いたのかゾロゾロゾロゾロと他の部屋からも中毒者達が集まって来た。
「がんばれなのアキナリ!」
「他人事だと思いやがって……。武器は禁止か?」
「人を殺したら怒られるの!怒るの!」
「解ったよ、俺はお前に嫌われたくないんだ。」
「他人事だと思いやがって……。武器は禁止か?」
「人を殺したら怒られるの!怒るの!」
「解ったよ、俺はお前に嫌われたくないんだ。」
そう言って取り出した武器を服の中にしまい込む上田。
口裂け幼女に頭を撫でて貰うと幸せそうな顔をする。
「ようし……、漲ってきた!」
広い廊下の中心で前後を見回す上田。
彼に気付いて出てきた中毒者の数はおよそ20。
成る程、なかなか危ない状況だ。
加えて彼はクチハをおんぶしているので両手を自由に使えない。
「良いハンデだよ。」
「手が使えない事ははハンデになってないの。」
口裂け幼女に頭を撫でて貰うと幸せそうな顔をする。
「ようし……、漲ってきた!」
広い廊下の中心で前後を見回す上田。
彼に気付いて出てきた中毒者の数はおよそ20。
成る程、なかなか危ない状況だ。
加えて彼はクチハをおんぶしているので両手を自由に使えない。
「良いハンデだよ。」
「手が使えない事ははハンデになってないの。」
ダン!
廊下を踏みしめて走り出す上田。
「飛べ、クチハ!」
すかさず上田がおんぶしているクチハが小さな赤い傘を取り出す。
口裂け女の能力③『赤い傘で空を飛ぶ』
ジャニー●のアイドルよろしくワイヤーで釣られたように宙を舞う上田。
上田が正面から攻撃を加えると思って待ち構えて居た中毒者達は完全に虚を突かれた。
上田明也は中毒者達の頭上に乗ると飛び回るようにして次々と足技を決めていく。
廊下を踏みしめて走り出す上田。
「飛べ、クチハ!」
すかさず上田がおんぶしているクチハが小さな赤い傘を取り出す。
口裂け女の能力③『赤い傘で空を飛ぶ』
ジャニー●のアイドルよろしくワイヤーで釣られたように宙を舞う上田。
上田が正面から攻撃を加えると思って待ち構えて居た中毒者達は完全に虚を突かれた。
上田明也は中毒者達の頭上に乗ると飛び回るようにして次々と足技を決めていく。
「はい、これで半分。」
彼は文字通り、敵を『踏破』していた。
中毒者達も危険を感じて逃げだそうとし始める。
だが、それこそ彼が許さない。
「100m3秒だぜ?無理だろ?」
あっという間に距離を詰めて背後からサマーソルトを決める。
崩れ落ちた中毒者を先程と同じように蹴り上げてから回し蹴りで中毒者の群の中に蹴り込んだ。
「うわあああああああ!!!」
中毒者の生き残りが不意をつこうと背後から襲いかかった。
しかし上田はすかさず天井に跳ねる。
「いやいや、声だしたら不意打ちじゃねえよ。」
中毒者が正常な頭をしていたら再び絶叫していただろう。
「はろー。」
上田明也は天井に張り付いていたのだ。
ドン!
天井から落ちた勢いに任せて上田は中毒者の生き残りに踵落としを決めた。
彼は文字通り、敵を『踏破』していた。
中毒者達も危険を感じて逃げだそうとし始める。
だが、それこそ彼が許さない。
「100m3秒だぜ?無理だろ?」
あっという間に距離を詰めて背後からサマーソルトを決める。
崩れ落ちた中毒者を先程と同じように蹴り上げてから回し蹴りで中毒者の群の中に蹴り込んだ。
「うわあああああああ!!!」
中毒者の生き残りが不意をつこうと背後から襲いかかった。
しかし上田はすかさず天井に跳ねる。
「いやいや、声だしたら不意打ちじゃねえよ。」
中毒者が正常な頭をしていたら再び絶叫していただろう。
「はろー。」
上田明也は天井に張り付いていたのだ。
ドン!
天井から落ちた勢いに任せて上田は中毒者の生き残りに踵落としを決めた。
「やるじゃないか、たかだか口裂け女の契約者なのに。」
いい汗かいた上田の背後から響く声。
「むぅ、馬鹿にするな!今まで隠れていたチキン野郎の癖に!」
馬鹿にされた朽葉が怒り始める。
「……中毒者とはちょっと違うのか。」
上田が振り返ると男が一人、立っていた。
「おいおい、俺をあいつらみたいな雑兵扱いにしないでくれよ。」
戯けた様子で笑う男。
「で、お前はなんの契約者なんだ?」
「そいつぁ自分で当ててみな!」
男はそう言うと上田に向かって人差し指を向けた。
「撃て!」
ダダダダダダダダ!
ダダダダダダダダダダ!
男が叫ぶと大量の銃弾が上田とクチハに向けて飛んでくる。
「うわあぶねえ!!」
上田がそう叫ぶと一瞬で彼の姿は消えていた。
口裂け女は100mを3秒で走る。
それを拡大解釈すれば0.3秒で10mは動けるという能力になる。
「そんなことまで出来るのか!ずいぶん多芸な口裂け女じゃないか。」
男の叫びばかりが廊下に響く。
いい汗かいた上田の背後から響く声。
「むぅ、馬鹿にするな!今まで隠れていたチキン野郎の癖に!」
馬鹿にされた朽葉が怒り始める。
「……中毒者とはちょっと違うのか。」
上田が振り返ると男が一人、立っていた。
「おいおい、俺をあいつらみたいな雑兵扱いにしないでくれよ。」
戯けた様子で笑う男。
「で、お前はなんの契約者なんだ?」
「そいつぁ自分で当ててみな!」
男はそう言うと上田に向かって人差し指を向けた。
「撃て!」
ダダダダダダダダ!
ダダダダダダダダダダ!
男が叫ぶと大量の銃弾が上田とクチハに向けて飛んでくる。
「うわあぶねえ!!」
上田がそう叫ぶと一瞬で彼の姿は消えていた。
口裂け女は100mを3秒で走る。
それを拡大解釈すれば0.3秒で10mは動けるという能力になる。
「そんなことまで出来るのか!ずいぶん多芸な口裂け女じゃないか。」
男の叫びばかりが廊下に響く。
口裂け女はメジャーであるが故に学校町では弱いと判断されがちだ。
しかし、それは能力や弱点が知られているからであって決して都市伝説そのものとしては知名度による補正もあって強いのだ。
上田明也はこれを利用した。
彼は自らの心の器が異常な大きさを持つことと組織の技術を利用して、
自らの口裂け女に様々な派生バージョンの能力を追加したのだ。
例えば、口裂け女は三姉妹であるとか。
例えば、三姉妹の内一人は口が裂けていないとか。
例えば、傘を使って空を飛ぶとか。
例えば、実は幼女であるとか。
例えば、沢山の刃物を常に隠し持っているとか。
例えば、怪力であるとか。
思いつく限り、口裂け女に関わるありとあらゆる能力を彼は追加した。
その為に本来の口裂け女よりずっと容量を食うようになってしまったのだが……。
そこはそれこそ上田明也の容量に任せた無茶である。
「おい、ところで俺の背負っているこの女の子、綺麗だと思わないか?」
「そこそこだよ!」
それは口裂け女と出会った人間としては当然の対応。
誰だってそう言うだろう。
ザシュッ!
「うぎゃああああああああああ!」
だからこそ、そこに彼は一撃必殺の罠を仕掛けたのだ。
男の断末魔が聞こえる。
恐らく上田が背負っている彼女の“お姉さん”に不意を突かれて殺されたのだろう。
彼女達は“まあまあ”などという答えを許さない。
「というかだ、こんな美幼女にまあまあって俺がぶっ殺してやりたいわ……。」
上田はぼそりと呟いた。
しかし、それは能力や弱点が知られているからであって決して都市伝説そのものとしては知名度による補正もあって強いのだ。
上田明也はこれを利用した。
彼は自らの心の器が異常な大きさを持つことと組織の技術を利用して、
自らの口裂け女に様々な派生バージョンの能力を追加したのだ。
例えば、口裂け女は三姉妹であるとか。
例えば、三姉妹の内一人は口が裂けていないとか。
例えば、傘を使って空を飛ぶとか。
例えば、実は幼女であるとか。
例えば、沢山の刃物を常に隠し持っているとか。
例えば、怪力であるとか。
思いつく限り、口裂け女に関わるありとあらゆる能力を彼は追加した。
その為に本来の口裂け女よりずっと容量を食うようになってしまったのだが……。
そこはそれこそ上田明也の容量に任せた無茶である。
「おい、ところで俺の背負っているこの女の子、綺麗だと思わないか?」
「そこそこだよ!」
それは口裂け女と出会った人間としては当然の対応。
誰だってそう言うだろう。
ザシュッ!
「うぎゃああああああああああ!」
だからこそ、そこに彼は一撃必殺の罠を仕掛けたのだ。
男の断末魔が聞こえる。
恐らく上田が背負っている彼女の“お姉さん”に不意を突かれて殺されたのだろう。
彼女達は“まあまあ”などという答えを許さない。
「というかだ、こんな美幼女にまあまあって俺がぶっ殺してやりたいわ……。」
上田はぼそりと呟いた。
「クチハ、こいつは悪い奴だったから容赦しなかったぞ?」
「……仕方ないの。」
「上田さん、そちらはどうですか?」
「あー、今終わりましたよ黒服さん。
一人こいつらのボスっぽいの殺しちゃったんですが良かったですかね?」
禿げた黒服は鋏で八つ裂きにされた男の顔を確認する。
「……本当は捕まえたかったのですが危なかったなら仕方ないでしょう。」
「……すいません。」
「ごめんなさいなの。」
「気にすることはないですよ。それよりも……。」
禿は倒れた男の服を探る。
決していやらしい意味は無い。
「ふむ、宮内庁の殺人部隊ですか。悪口を言った相手に場所を無視した攻撃を加えられる……。
まあ仕方がないでしょう。」
男の身体から紙のような物が出てきた。
都市伝説の契約書だ。
「とりあえずこれは組織に管理して貰います。
かごめかごめの青年ももうすぐ降りてくると思うのであとは私に任せて下さい。
今日の仕事は終わりです、お疲れ様でした。」
「いえいえ、こちらこそお疲れ様でした。」
ぺこりと頭を下げる上田。
「置いてかないで下さいよー。」
かごめかごめの青年が二階から降りてくる。
上田が一階でバタバタしている間にビルにいたコークロアの中毒者達は完全に無力化されていたらしい。
「……仕方ないの。」
「上田さん、そちらはどうですか?」
「あー、今終わりましたよ黒服さん。
一人こいつらのボスっぽいの殺しちゃったんですが良かったですかね?」
禿げた黒服は鋏で八つ裂きにされた男の顔を確認する。
「……本当は捕まえたかったのですが危なかったなら仕方ないでしょう。」
「……すいません。」
「ごめんなさいなの。」
「気にすることはないですよ。それよりも……。」
禿は倒れた男の服を探る。
決していやらしい意味は無い。
「ふむ、宮内庁の殺人部隊ですか。悪口を言った相手に場所を無視した攻撃を加えられる……。
まあ仕方がないでしょう。」
男の身体から紙のような物が出てきた。
都市伝説の契約書だ。
「とりあえずこれは組織に管理して貰います。
かごめかごめの青年ももうすぐ降りてくると思うのであとは私に任せて下さい。
今日の仕事は終わりです、お疲れ様でした。」
「いえいえ、こちらこそお疲れ様でした。」
ぺこりと頭を下げる上田。
「置いてかないで下さいよー。」
かごめかごめの青年が二階から降りてくる。
上田が一階でバタバタしている間にビルにいたコークロアの中毒者達は完全に無力化されていたらしい。
「それじゃあ俺は帰りますね。夜中に子供を連れて歩く大学生とか不審者以外の何者でもないんで。」
「おう、じゃあな。あとクチハちゃんに飴。」
「わーい!」
「さようなら、上田さん。」
「また訓練に付き合って下さいよ、黒服さん。」
「突き合いなら何時でも待っています。」
「それは遠慮しますよ。」
「うにゃー!」
上田明也はべっこうあめを舐めているクチハを肩車すると夜の学校町の雑踏の中に消えていった。
【ifシリーズ~ハーメルンの笛吹きと出会わなかった上田~fin】
「おう、じゃあな。あとクチハちゃんに飴。」
「わーい!」
「さようなら、上田さん。」
「また訓練に付き合って下さいよ、黒服さん。」
「突き合いなら何時でも待っています。」
「それは遠慮しますよ。」
「うにゃー!」
上田明也はべっこうあめを舐めているクチハを肩車すると夜の学校町の雑踏の中に消えていった。
【ifシリーズ~ハーメルンの笛吹きと出会わなかった上田~fin】