「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-44

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匿名ユーザー

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【上田明也の探偵倶楽部】

こんにちわ皆さん、お久しぶりです。
私立探偵の笛吹丁と申します。
最近までアメリカで助手と一緒に仕事をしていたんですが、その時に昔の彼女と出会いましてね。
彼女の弟が学校町に住んでいるそうなので一緒に日本に帰ってきたんですよ。
でまあ助手を事務所において彼女と二人でデートなんて決めてたら……会っちゃったんですよええ。
とてつもなく悪いやつに。
目を見れば一発で解りました。
あいつは確実にこの愛すべき町を、否、世界を自らの物にしようとしている。
え?どうしたかって?
腹が立ったから叩き斬ってやりましたよ、俺はこの町を愛する心優しい私立探偵ですから。
まぁ、叩き斬っただけでこっちは死にかけたんですけどね。
今は彼女と助手に助け出されて事務所で死にかけってところです。
それじゃあ、奇想曲のあらすじはこれでお終い。
殺人鬼は終わり、探偵を始めましょう。


【上田明也の探偵倶楽部20~忍び寄る影~】


日本に帰ってから数日後。
俺は相変わらず全身を包帯に包まれてベッドに横たわっていた。
世間では春休みも終わり、我が事務所のバイト共も勉学にいそしんでいるというのに所長たる俺はこのざまである。

「委員長、生きているか?」
「ああ生きているよ。」
「しかし真っ黒焦げだね、良い男が台無しだ。」
「こんな見た目の男は嫌いか?」
「君の見てくれが好きだった訳じゃない。」
「俺もだ、お前の体型は昔からそれほど好きじゃない。」

明日晶、俺の元・彼女である。
俺が幼女にしか欲情できない類の人間なのに妙な流れで妙に恋愛してしまった。
…………昔の話だ。

「しかし君が会った男はいったい何者だったんだい?」
「それが解ってたら苦労はしないよ。とりあえず火を噴いたり怪力持っていたりする危ないやつってだけで十分だ。
 お前の都市伝説無しだったら生きては帰れなかったよ。」

明日晶の都市伝説。
名前を「人間の集中力は三分間が限界」という。
一日の中で三分間は頭脳を極限まで活性化させて超能力を使うことが出来るそうだ。
ひどく適当である。
ふと、俺はここ数日メールをチェックしていないことを思い出した。






「ああ、そうだ。晶、メールは来ていないか?」
「メール?」
「誰にも言っていないんだが俺には一人従妹が居るんだ。
 そいつは【組織】の契約者として動いているんだがそいつから【組織】の様子についてたまにメールが来るんだ。」
「ふぅん……。」
「俺のネットブック取ってくれ。まだ指先も動かせないんだ。」

晶は赤いネットブックを取るとメールボックスを開いて一々それを読み上げた。
ほとんどが依頼に関する物だったが俺が死にかけている以上、丁重にお断りするしかない。
まあ俺が出るまでもない依頼ならほかの奴に任せよう。
最初、俺の体は大部分が炭化していたそうである。
それを治癒能力を持った都市伝説で時間をかけて丁寧に治して……、今なんとか命を保っている。


「あ、このメール?お兄ちゃんへ、って書いてあるけど……。」
「ああ、それだそれだ。読み上げてくれ。」

どうやら俺の従妹である平からのメールが来たらしい。

「助けてください、番屋町に殺人鬼が出てきています。私も一度おそわれました。
 担当の黒服さんは今、その時の戦いが原因で病院で意識不明の重体になっています。
 『組織』は人員を裂けないせいで野放しになっていて、
 被害者はいつも行方不明扱いになっています。
 …………だそうだ。のっぴきならない事態じゃないか、委員長。」
「おいおい、冗談じゃないだろうな?」
「見てみるかい?」

ぽん、と胸の上に置かれたネットブックには晶の言うとおりの内容が載っていた。





急いで起き上がる。
全身がずきずき痛むがその程度のことに構っては居られない。

「委員長、まだ動くな!君の体は治るかすらまだ解らないんだぞ!」
「人間気合いでなんとかなるもんだぜ?
 とりあえず俺は今すぐにでも番屋町に行く。
 唯は昔っから何をやってもだめな奴だったんだ。
 俺が優秀な分無能だったと言っても良い、だから俺が助けてやらないといけない。」

「そんなこと言ってもそんな包帯だらけの顔で何処に行くんですか?」

「――――いつの間に?」
「サンジェルマン、ドクターストップでもかけに来たか?」

俺が立ち上がって所長室のドアを開けると、そこには金髪碧眼の男が立っていた。
俺は構わずに服を着て、事務所から外に出ようとする。
探偵事務所を出ると、そこは見慣れた探偵事務所だった。

「その通り、ドクターストップです。」

サンジェルマンはゆっくりと俺の背中に近づくと肩に手を置いた。

「なるほど、貴方の体は奇跡的にもこうして命を保っている。
 それどころか貴方の意志に応えるように元の体を完全に取り戻そうとさえしている。
 でも、そういう奇跡はまだ先の話だ。
 貴方が心配するのなら従妹のことは私がなんとかしましょう。」





思わぬ提案だ。
自ら動かないことに定評のあるこいつが俺に手を貸すとは思わなかった。
まあこいつが動くのなら唯に危険は及ぶまい。
恥ずかしいことにこの体ではろくに戦えそうもないので俺はその提案を渋々のむことにした。
だが、その前に一つ確かめたいことがある。

「サンジェルマン、確かめたいことがある。」
「なんですか?」
「お前、以前から自分の所持する強大な都市伝説の担い手を捜していたんだよな?」
「ええ、貴方に渡した蜻蛉切しかり、橙さんのウォーリーしかり。」
「その殺人鬼が、だ。お前の持っている都市伝説に適正がある可能性があるよな?」
「…………貴方に隠し事は出来ないな。やはり問題ですか?」
「いや、そいつを制御できるならばむしろ好ましい。」
「委員長、君は従妹を殺しかけた相手を見逃すのかい?」
「弟を殺しかけた人間に対して姉が言う言葉ではないな。
 サンジェルマンが管理してくれるならそれが幸いだ。
 俺が動くまでもない。」
「君がそういうなら良いんだが…………。」

安心したら力が抜けてきた。
視界が揺れる。
倒れそうになった体を晶に支えられて、俺はベッドに強制送還されることになってしまった。
殺人鬼、ね。探偵が相手してやりたかったが仕方がないか。
【上田明也の探偵倶楽部20~忍び寄る影~fin】

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