【上田明也の探偵倶楽部22~宴の準備~】
~前回までのあらすじ~
殺人鬼「拝戸直」との激戦を経て自らの異常性に気づいた上田明也。
朝比奈秀雄との戦いで受けた傷もほとんど治癒し、彼は探偵業務を再開したのであった。
そんな彼にスポンサーであるサンジェルマンからの依頼が入る。
~前回までのあらすじ、終わり~
~前回までのあらすじ~
殺人鬼「拝戸直」との激戦を経て自らの異常性に気づいた上田明也。
朝比奈秀雄との戦いで受けた傷もほとんど治癒し、彼は探偵業務を再開したのであった。
そんな彼にスポンサーであるサンジェルマンからの依頼が入る。
~前回までのあらすじ、終わり~
「だから言ってやった訳よ、お前それでも人間か!ってさあ。」
「アハハハハハハハ!」
「笛吹さんたらもう、何言ってるのよぉ!」
「アハハハハハハハ!」
「笛吹さんたらもう、何言ってるのよぉ!」
こんにちわ、私立探偵の笛吹丁だ。
只今事務所のお金を使って綺麗なお姉さんが居る店で豪遊中である。
単に遊んでいるだけのように見えるがこれも立派な仕事の一環だ。
只今事務所のお金を使って綺麗なお姉さんが居る店で豪遊中である。
単に遊んでいるだけのように見えるがこれも立派な仕事の一環だ。
「あ、俺用にウイスキーと……この子達にドンペリ適当にお願い。」
「おやおや笛吹さん、今日は飛ばしますねえ。」
「いやぁ、良いことがあったからね。」
「成る程、それは良かった。ところで今日は私立探偵殿に一件依頼をお願いしたい。」
「それは良いんだけどさ、事務所の帳簿ごまかしてる分、後で建て替えておいてね?
飲みに出たのばれると事務所の女性陣が怖いから。」
「おやおや笛吹さん、今日は飛ばしますねえ。」
「いやぁ、良いことがあったからね。」
「成る程、それは良かった。ところで今日は私立探偵殿に一件依頼をお願いしたい。」
「それは良いんだけどさ、事務所の帳簿ごまかしてる分、後で建て替えておいてね?
飲みに出たのばれると事務所の女性陣が怖いから。」
俺の前で佇むダンディでヨーロピアンな髭紳士はサンジェルマン伯爵という男だ。
彼は世界中の貴重な都市伝説をコレクションしては人間に配布して回るという妙な趣味を持っている。
ちなみに普段は金髪碧眼の優男なのだが今回は自らの力で姿を変えているらしい。
この姿の時はロイド=マスタングと名乗っているそうだ。
彼は世界中の貴重な都市伝説をコレクションしては人間に配布して回るという妙な趣味を持っている。
ちなみに普段は金髪碧眼の優男なのだが今回は自らの力で姿を変えているらしい。
この姿の時はロイド=マスタングと名乗っているそうだ。
「ありがとうございます。
報酬はいつも通り貴方の口座に振り込んでおきましょう。
依頼の内容を話したいので少し女性陣には席を……。」
「えー、やだー!
普段俺もてないんだからー!
こういう時くらいは美人の皆様に囲まれる至福の時間を楽しみたいのー!
もうちょっとだけ頼むって!」
「はいはい、後で好きなだけ時間取ってあげますから。
それでは皆さん少々…………。」
「くそーぅ!リンちゃんメアド交換してくれー!」
報酬はいつも通り貴方の口座に振り込んでおきましょう。
依頼の内容を話したいので少し女性陣には席を……。」
「えー、やだー!
普段俺もてないんだからー!
こういう時くらいは美人の皆様に囲まれる至福の時間を楽しみたいのー!
もうちょっとだけ頼むって!」
「はいはい、後で好きなだけ時間取ってあげますから。
それでは皆さん少々…………。」
「くそーぅ!リンちゃんメアド交換してくれー!」
「笛吹さんたらすぐに新入りの女の子に声かけるんだから!」
「またお話聞かせてね笛吹さん!はいこれメアド!」
「あ、抜け駆けしないでよー!」
「じゃあ私もあげちゃうもん!」
「私も笛吹さんと遊びに行きたーい!」
「ロイドさん、今度はお酒も頼んでね!」
「またお話聞かせてね笛吹さん!はいこれメアド!」
「あ、抜け駆けしないでよー!」
「じゃあ私もあげちゃうもん!」
「私も笛吹さんと遊びに行きたーい!」
「ロイドさん、今度はお酒も頼んでね!」
ああ、綺麗なお姉さん達が別の席へ……。
まあ興味ないから別に良いのだけどさ。
まあ興味ないから別に良いのだけどさ。
「…………で、お仕事って何よ?」
「ええ、もうそろそろ朝比奈秀雄が倒されるらしいんですよ。」
「朝比奈秀雄?俺が戦った竜男かい?」
「そうです、偶然貴方が彼に接触したのがラッキーでした。
そのおかげで橙さんの情報網にもかからない“教会”の情報が手に入った。」
「ふぅん、その情報で朝比奈が倒されるって解ったの?」
「いいえ、それとは別です。」
「別なのかよ!」
「ええ、もうそろそろ朝比奈秀雄が倒されるらしいんですよ。」
「朝比奈秀雄?俺が戦った竜男かい?」
「そうです、偶然貴方が彼に接触したのがラッキーでした。
そのおかげで橙さんの情報網にもかからない“教会”の情報が手に入った。」
「ふぅん、その情報で朝比奈が倒されるって解ったの?」
「いいえ、それとは別です。」
「別なのかよ!」
まったく、困った奴だ。
人に物を話す時は要点をまとめろというものだ。
人に物を話す時は要点をまとめろというものだ。
「私が確認したのは朝比奈秀雄が契約した都市伝説です。
なんと彼は“教会”が封印していた複数の『竜』の都市伝説と契約していたのですよ。」
「そりゃあ俺だって知ってるよ。俺自身が戦ったんだもの。
まあ複数だったのは俺も知らなかったけどさ。」
「今回大事なのは教会が封印していた竜達だということです。」
なんと彼は“教会”が封印していた複数の『竜』の都市伝説と契約していたのですよ。」
「そりゃあ俺だって知ってるよ。俺自身が戦ったんだもの。
まあ複数だったのは俺も知らなかったけどさ。」
「今回大事なのは教会が封印していた竜達だということです。」
俺は少し考え込む。
……ああ、そういうことか。
俺にはサンジェルマンの言いたいことがよくわかった。
教会が封印していたってことはサンジェルマンには手が出せない。
しかし今、朝比奈秀雄が敗北することになれば……。
……ああ、そういうことか。
俺にはサンジェルマンの言いたいことがよくわかった。
教会が封印していたってことはサンジェルマンには手が出せない。
しかし今、朝比奈秀雄が敗北することになれば……。
「朝比奈秀雄の敗北時に朝比奈が手放すであろう竜を俺が確保すれば良いんだな?」
「その通りです。『組織』に籍を置く私の友人によれば、
Dナンバーの黒服が契約を解除させる類の都市伝説を持ち出しているようです。
おそらくそれで竜は朝比奈秀雄の制御を外れます。」
「成る程、そいつぁ素敵だね。誰も知らないところで暗躍する訳か。中々かっくいいな。」
「でしょう?」
「で、お前のにらむその戦闘の日って何時よ?」
「それについては橙さんがすでに予測を出しています。
三日後、ですね。貴方に確保して頂きたい竜は実はすでに決まっています。」
「いつもながら良い仕事だ。完璧な情報有っての完璧な仕事だよ。」
「才能にも相性が有りますからね。
橙さんの能力で前もって情報を得られていれば、貴方の交渉能力や作戦立案能力は何倍にも輝く。」
「ちなみに確保して欲しい竜の種類は?」
「タラスクス、亀です。詳しいことはまた後から教えましょう。
とりあえず今はまだ飲みたいんでしょう?」
「いや、良い。残りは帰ってからだ。ネタバレなんてあまり面白くないだろう?」
「その通りです。『組織』に籍を置く私の友人によれば、
Dナンバーの黒服が契約を解除させる類の都市伝説を持ち出しているようです。
おそらくそれで竜は朝比奈秀雄の制御を外れます。」
「成る程、そいつぁ素敵だね。誰も知らないところで暗躍する訳か。中々かっくいいな。」
「でしょう?」
「で、お前のにらむその戦闘の日って何時よ?」
「それについては橙さんがすでに予測を出しています。
三日後、ですね。貴方に確保して頂きたい竜は実はすでに決まっています。」
「いつもながら良い仕事だ。完璧な情報有っての完璧な仕事だよ。」
「才能にも相性が有りますからね。
橙さんの能力で前もって情報を得られていれば、貴方の交渉能力や作戦立案能力は何倍にも輝く。」
「ちなみに確保して欲しい竜の種類は?」
「タラスクス、亀です。詳しいことはまた後から教えましょう。
とりあえず今はまだ飲みたいんでしょう?」
「いや、良い。残りは帰ってからだ。ネタバレなんてあまり面白くないだろう?」
俺はサンジェルマンに会計を任せてさっさと家に帰ることにしよう。
こういう店の雰囲気は苦手だし……
正直言って大人の女性というのは近くに居るだけで嫌なのだ。
こういう店の雰囲気は苦手だし……
正直言って大人の女性というのは近くに居るだけで嫌なのだ。
「そういえば気になってたんだけどさ。」
「どうしたんですか?」
「朝比奈秀雄って、本当に悪い奴なのか?」
「……どういうことでしょうか?」
「いや、俺が戦った限りでは確かに悪い奴っぽかったけどさ。
なんていうか、違うんだよなあ?
あいつが悪い奴ならもっと楽しようと思うはずなんだよ。
あれじゃあまるで、『組織』が憎いみたいじゃないか。」
「私の頭では貴方の話が理解出来ないようです。」
「いや、悪いことするだけなら『組織』を敵に回さなくたって良い。
俺みたいに自分の我が儘で動くんなら仕方がないけどさ。
―――――――違うかい?」
「まぁ、別に悪いことだけが目的ならばそもそもこの町に来る必要はない。
というのは正しいですね。」
「じゃあ彼は何をしに来たんだろうか?ここで俺は面白い仮説を一つ立てた。」
「聞かせてもらいましょうか…………。」
「あいつは単に家族が欲しいだけなんじゃないかなあ?」
「え?」
「第一に、家族の為じゃなければ人間にあんな非道な真似はできない。
第二に、家族の為じゃなければそもそもこの町にこだわる必要はない。
第三に、家族、乃至大切な人の為じゃなければ大量の竜との契約など無茶な行為は出来ない。
違うかな?」
「それは………………。」
「どうしたんですか?」
「朝比奈秀雄って、本当に悪い奴なのか?」
「……どういうことでしょうか?」
「いや、俺が戦った限りでは確かに悪い奴っぽかったけどさ。
なんていうか、違うんだよなあ?
あいつが悪い奴ならもっと楽しようと思うはずなんだよ。
あれじゃあまるで、『組織』が憎いみたいじゃないか。」
「私の頭では貴方の話が理解出来ないようです。」
「いや、悪いことするだけなら『組織』を敵に回さなくたって良い。
俺みたいに自分の我が儘で動くんなら仕方がないけどさ。
―――――――違うかい?」
「まぁ、別に悪いことだけが目的ならばそもそもこの町に来る必要はない。
というのは正しいですね。」
「じゃあ彼は何をしに来たんだろうか?ここで俺は面白い仮説を一つ立てた。」
「聞かせてもらいましょうか…………。」
「あいつは単に家族が欲しいだけなんじゃないかなあ?」
「え?」
「第一に、家族の為じゃなければ人間にあんな非道な真似はできない。
第二に、家族の為じゃなければそもそもこの町にこだわる必要はない。
第三に、家族、乃至大切な人の為じゃなければ大量の竜との契約など無茶な行為は出来ない。
違うかな?」
「それは………………。」
まあ答え合わせはどうでも良い。
思いつくままに話しただけだ。
サンジェルマンに会計を押しつけると俺は綺麗なお姉さんの居る店を出ることにした。
思いつくままに話しただけだ。
サンジェルマンに会計を押しつけると俺は綺麗なお姉さんの居る店を出ることにした。
プルルルルルル
プルルルルルルル
プルルルルルルル
電話だ。
明日恋路からの物のようだった。
おおかた明日真の身に何かあったのだろう。
と、なると黒服Hも出張ってきたか?
明日恋路からの物のようだった。
おおかた明日真の身に何かあったのだろう。
と、なると黒服Hも出張ってきたか?
「はい、こちら笛吹探偵事務所。」
「やぁ所長、これから……」
「これからあまり事務所に行けなくなりそうだ。
何故なら組織、というか黒服Hに止められたから。
違うか?」
「正解。なんで解ったの?」
「声の調子で解る、人間心理なんて所詮パターンだ。
心は無限に変化するなんて綺麗事、俺には通用しないぜ。」
「そうですか、じゃあ理由もわかりますね?」
「おう、お前の主が『組織』と対立せざるを得なくなったら俺に電話しろ。
その時は面白い物を貸してやる。」
「え?」
「俺が只のフリーの契約者だと思うなよっつー話だよん。
これから忙しいから切るぜ、じゃあな。」
「やぁ所長、これから……」
「これからあまり事務所に行けなくなりそうだ。
何故なら組織、というか黒服Hに止められたから。
違うか?」
「正解。なんで解ったの?」
「声の調子で解る、人間心理なんて所詮パターンだ。
心は無限に変化するなんて綺麗事、俺には通用しないぜ。」
「そうですか、じゃあ理由もわかりますね?」
「おう、お前の主が『組織』と対立せざるを得なくなったら俺に電話しろ。
その時は面白い物を貸してやる。」
「え?」
「俺が只のフリーの契約者だと思うなよっつー話だよん。
これから忙しいから切るぜ、じゃあな。」
通話は早々に切った。
組織が今の通話を利用して俺の位置を特定してくる可能性もある。
俺はとりあえず急いで事務所に帰ることにした。
組織が今の通話を利用して俺の位置を特定してくる可能性もある。
俺はとりあえず急いで事務所に帰ることにした。
「組織、教会勢力、首塚、朝比奈秀雄、あと呂布、この町は問題を抱えすぎている。
まあ町なんてどこだって問題を抱えているだろうが……。
いくら何でも多すぎる。
何かに誘われているんじゃないか?」
「さぁて、それはどうでしょう?」
「……誰だお前。」
まあ町なんてどこだって問題を抱えているだろうが……。
いくら何でも多すぎる。
何かに誘われているんじゃないか?」
「さぁて、それはどうでしょう?」
「……誰だお前。」
俺の隣をいつの間にか黒服の女が歩いていた。
とりあえず村正で斬りつけてみる。
見事に直撃。
豊かな胸から鮮血を吹き出して彼女はその場に倒れた。
とりあえず村正で斬りつけてみる。
見事に直撃。
豊かな胸から鮮血を吹き出して彼女はその場に倒れた。
むくりと起き上がる。
黒服の少女はあっけらかんと笑っていた。
黒服の少女はあっけらかんと笑っていた。
「誰だお前?」
「私は『組織』の中でも貴方を快く思っていない人間です。」
「こいつは愉快だ、『組織』に俺を快く思っている人間が居るのか?」
「あはっ、良いこと言いますね!」
「俺は良いことしか言わない、そんなの知っているよ。ついでにお前の能力も知っている。」
「それは嘘ですよー。」
「良いのか?嘘だ、なんて言っちゃって。」
「私は『組織』の中でも貴方を快く思っていない人間です。」
「こいつは愉快だ、『組織』に俺を快く思っている人間が居るのか?」
「あはっ、良いこと言いますね!」
「俺は良いことしか言わない、そんなの知っているよ。ついでにお前の能力も知っている。」
「それは嘘ですよー。」
「良いのか?嘘だ、なんて言っちゃって。」
正直に言うと当たりはついているが詳しくは知らない。
今解っているのは『言葉』が発動条件。
そして直接攻撃は出来ないということ。
おそらく何かしらの制限をもうけたタイプの都市伝説で言葉を交わさなければ俺を倒せない。
“私死んじゃう”の所だけ微妙に緊張していた所から推理すると
自分が出した言葉を現実に変える能力だろうか?
今解っているのは『言葉』が発動条件。
そして直接攻撃は出来ないということ。
おそらく何かしらの制限をもうけたタイプの都市伝説で言葉を交わさなければ俺を倒せない。
“私死んじゃう”の所だけ微妙に緊張していた所から推理すると
自分が出した言葉を現実に変える能力だろうか?
「嘘なんて、つくもんじゃないだろう?
そういう能力の持ち主ならばなおのことだ。
言葉は選んで使わなきゃ、嘘なんてものも意味はない。
虚しいだけだ。」
そういう能力の持ち主ならばなおのことだ。
言葉は選んで使わなきゃ、嘘なんてものも意味はない。
虚しいだけだ。」
キョトンとした顔でこちらを見つめる黒服。
恐ろしい物でも見たかのように顔が引きつっている。
馬鹿め、お前の気持ちなんて丸っとするっとお見通しだ。
恐ろしい物でも見たかのように顔が引きつっている。
馬鹿め、お前の気持ちなんて丸っとするっとお見通しだ。
「さしずめ黒服になる前に近親者を俺に殺されたってところか。」
黒服の顎に手を当てて顔を傍に引き寄せる。
中学生、高校生、少なくとも二十歳を超えているとは思えない。
中学生、高校生、少なくとも二十歳を超えているとは思えない。
「いいや、お前が被害者だったのかもしれないな?
覚えがあるぞ、お前の顔には。
そうだ、あのクラブだったかなあ?
俺が殺戮した少女Aだったかもしれないね。」
「さあどうでしょうかー?
そもそも私が元・人間の黒服かどうかさえ…………。」
「純粋な黒服に言葉を介して発動する複雑な都市伝説の発動はできない。」
覚えがあるぞ、お前の顔には。
そうだ、あのクラブだったかなあ?
俺が殺戮した少女Aだったかもしれないね。」
「さあどうでしょうかー?
そもそも私が元・人間の黒服かどうかさえ…………。」
「純粋な黒服に言葉を介して発動する複雑な都市伝説の発動はできない。」
黒服が腰から銃を抜き放つ。
俺は村正でそれを真っ二つにして彼女の腹を割く。
俺は村正でそれを真っ二つにして彼女の腹を割く。
「駄目だな、暴力で俺に勝てる訳がない。」
「それは、“嘘でしょう”。それにその刀じゃもう私は傷つかないですよー。」
「それは、“嘘でしょう”。それにその刀じゃもう私は傷つかないですよー。」
次の瞬間、黒服はすごい勢いで俺を組み伏せた。
さっきまでの子供の何処にこんな力が有ったのだろうか?
だがこれで推理は徐々に確信に近づく。
あと少しで、完璧にこいつの正体がわかる。
さっきまでの子供の何処にこんな力が有ったのだろうか?
だがこれで推理は徐々に確信に近づく。
あと少しで、完璧にこいつの正体がわかる。
「お前、沢山の黒服と一緒に来ていたりするんじゃないか?」
「へ?何言ってるんですかー?
憎い仇相手なんだから自分でぶっ殺したいじゃないですかー。」
「そうか、このまま俺は殺される訳か?」
「いやいや、ゆっくり苦しんでから死んでもらいますよ。」
「へ?何言ってるんですかー?
憎い仇相手なんだから自分でぶっ殺したいじゃないですかー。」
「そうか、このまま俺は殺される訳か?」
「いやいや、ゆっくり苦しんでから死んでもらいますよ。」
解った。
こいつの能力は嘘を現実にする能力ではない。
現実を嘘にする能力だ。
唯の能力に似ているがネタが割れれば対処しやすい能力だ。
黒服の手が首に掛かる。
こいつの能力は嘘を現実にする能力ではない。
現実を嘘にする能力だ。
唯の能力に似ているがネタが割れれば対処しやすい能力だ。
黒服の手が首に掛かる。
「お前の能力、自らの言葉を嘘に出来るわけじゃないな。
俺の言葉しか嘘に出来ていない。
さっきから俺の言ったことが次々覆されている。
更に気になるのが今の俺の台詞は覆せるのか?
出来ないはずだ。
俺の言葉の中で俺とお前の間でだけ成り立つような物のみが現実になる。
まだ使いこなしていないみたいだな、それ。」
俺の言葉しか嘘に出来ていない。
さっきから俺の言ったことが次々覆されている。
更に気になるのが今の俺の台詞は覆せるのか?
出来ないはずだ。
俺の言葉の中で俺とお前の間でだけ成り立つような物のみが現実になる。
まだ使いこなしていないみたいだな、それ。」
袖から取り出した小型の拳銃で黒服を撃つ。
小さな身体が道の中央に転がった。
小さな身体が道の中央に転がった。
「こんな攻撃で死ぬなんて……、嘘だ!」
少女の傷が一気にふさがる。
どうやら先ほど俺は余計なことを言ってしまったようだ。
まだつかいこなしていない、などと言えばそれを嘘にすれば彼女がレベルアップする。
あくまで俺との戦いの間だけ、しかもそれなりに代償は払ったのだろうが……。
今だけは彼女は嘘に出来る範囲が広がったらしい。
現実を少しばかりいじれるようになったみたいだ。
だが都市伝説の能力の拡張には限界があると考えて良いだろう。
今の彼女は恐らく自分に関わることならば嘘に出来るに違いない。
どうやら先ほど俺は余計なことを言ってしまったようだ。
まだつかいこなしていない、などと言えばそれを嘘にすれば彼女がレベルアップする。
あくまで俺との戦いの間だけ、しかもそれなりに代償は払ったのだろうが……。
今だけは彼女は嘘に出来る範囲が広がったらしい。
現実を少しばかりいじれるようになったみたいだ。
だが都市伝説の能力の拡張には限界があると考えて良いだろう。
今の彼女は恐らく自分に関わることならば嘘に出来るに違いない。
「本当に、嘘かな?」
「え?」
「俺には解らないな。」
「えっと……」
「それは事実かもしれないんじゃないか?」
「え?」
「俺には解らないな。」
「えっと……」
「それは事実かもしれないんじゃないか?」
曖昧なことは嘘に出来ない。
疑問は嘘に出来ない。
疑問から暗に込められた真意を読み取るのは人間だ、都市伝説じゃない。
こうすれば、都市伝説による無効化は不可能だ。
黒服の動きが止まる。
攻めるなら今だ。
疑問は嘘に出来ない。
疑問から暗に込められた真意を読み取るのは人間だ、都市伝説じゃない。
こうすれば、都市伝説による無効化は不可能だ。
黒服の動きが止まる。
攻めるなら今だ。
「俺には解らない。
そして君にさえ解らない。
君が言ったことは本当に嘘なのだろうか?
幸いなのか不幸にしてか此処には君と俺以外誰もいない。
それはすなわち君と俺しか今此処で起きたことに真偽の判定が出来る人間は居ないってことだ。
しかしその二人が解らないのだ。
君が怪我しているかは俺たちに解っているんだろうか?
明快じゃないね、まったく訳がわからないように感じられる。
ところでだ、君とは明日真の居たクラブで出会ったらしいが、君はどうやって俺に殺されたんだ?
ワラのように?屑のように?塵芥のようにかな?
惨殺か、斬殺か、銃殺か、重殺か。
一度死んだのに、一度殺されたのに、まだ俺とやりあおうだなんてずいぶん頑張り屋サンだ。
おいおい何か話せよ、君の能力はそういうものだろう?」
そして君にさえ解らない。
君が言ったことは本当に嘘なのだろうか?
幸いなのか不幸にしてか此処には君と俺以外誰もいない。
それはすなわち君と俺しか今此処で起きたことに真偽の判定が出来る人間は居ないってことだ。
しかしその二人が解らないのだ。
君が怪我しているかは俺たちに解っているんだろうか?
明快じゃないね、まったく訳がわからないように感じられる。
ところでだ、君とは明日真の居たクラブで出会ったらしいが、君はどうやって俺に殺されたんだ?
ワラのように?屑のように?塵芥のようにかな?
惨殺か、斬殺か、銃殺か、重殺か。
一度死んだのに、一度殺されたのに、まだ俺とやりあおうだなんてずいぶん頑張り屋サンだ。
おいおい何か話せよ、君の能力はそういうものだろう?」
ジワリと黒服の傷口から血がにじむ。
少しずつ集中力がそがれているようだ。
物事を嘘にし続けるには集中力が必要らしい。
少しずつ集中力がそがれているようだ。
物事を嘘にし続けるには集中力が必要らしい。
「そして次にお前はこんな弱い自分は嘘だ、と自己否定を始める。」
「こんな弱い自分は……嘘だ!
――――――!?」
「君は俺を倒すには力が足りないと思ったね?
ところで俺に見越されていた程度の自己強化で俺にとどめを刺せると思うかい?
君の乱れた集中力で、君の『あぎょうさん』はどこまで保つんだい?」
「こんな弱い自分は……嘘だ!
――――――!?」
「君は俺を倒すには力が足りないと思ったね?
ところで俺に見越されていた程度の自己強化で俺にとどめを刺せると思うかい?
君の乱れた集中力で、君の『あぎょうさん』はどこまで保つんだい?」
黒服はジワジワと後ろに引き下がり始める。逃げ出す気だ。
恐らく俺の言った都市伝説は完全に当たりだったのだろう。
恐らく俺の言った都市伝説は完全に当たりだったのだろう。
「おい、待てよ。」
黙ってこちらに背を向けて逃げ出す黒服。
仕方がない。
仕方がない。
「仕方ないなあ……。」
息を大きく吸ってよく通る声で彼女に語りかける。
否、命令する。
否、命令する。
「 ひ れ ふ せ 。」
ベタコーン!
彼女はまるでひれ伏すかのように頭を地面にたたきつけた。
彼女はまるでひれ伏すかのように頭を地面にたたきつけた。
「足がもつれた……?」
「驚いただろう?俺の特技だ。
俺は人間の意志を操ることが出来るんだよ。
元々人と会話する能力に長けていたからね、
少し操作系の都市伝説の影響を受けただけでもここまで特技が強化されたんだろうな。」
「そ、そんなの『組織』でも聞いていない!」
「そりゃあそうだろうさ、俺が独自に見つけた技術なんだから。
都市伝説は人間が本来持っている才能を磨き上げる能力があるのさ。」
「驚いただろう?俺の特技だ。
俺は人間の意志を操ることが出来るんだよ。
元々人と会話する能力に長けていたからね、
少し操作系の都市伝説の影響を受けただけでもここまで特技が強化されたんだろうな。」
「そ、そんなの『組織』でも聞いていない!」
「そりゃあそうだろうさ、俺が独自に見つけた技術なんだから。
都市伝説は人間が本来持っている才能を磨き上げる能力があるのさ。」
俺はゆっくりと地面にひれ伏す黒服に近づく。
まるで自分が王者か何かでもあるように。
まるで自分が王者か何かでもあるように。
「顔をあげて良いぞ。」
再び逃げようとする黒服。
同じことをしても無駄だというのに。
同じことをしても無駄だというのに。
「ひ れ ふ せ 。」
ベチコーン!
再び彼女は頭を打ち付けた。
再び彼女は頭を打ち付けた。
「誰が逃げて良いと言った?」
「ひ、ひぃ……!」
「ひ、ひぃ……!」
脅えた少女の目。
良いぞ、ゾクゾクする。
良いぞ、ゾクゾクする。
「安心しろ、お前は殺さない、これから一晩かけて俺の話を聞いてもらう。」
まだこの年ならばハーメルンの笛吹きの能力も効くだろう。
契約者、特に黒服といえど此処まで心を折られたならもはや俺の操り人形だ。
俺のような操作系もそうだがこの手の事象に直接干渉する都市伝説は高度な集中力を要する。
もう彼女は俺に抵抗できない。
契約者、特に黒服といえど此処まで心を折られたならもはや俺の操り人形だ。
俺のような操作系もそうだがこの手の事象に直接干渉する都市伝説は高度な集中力を要する。
もう彼女は俺に抵抗できない。
ところで先ほどの「ひれふせ」だが当然嘘である。
さっき組み伏せられた時、彼女の服の裾などにワイヤーを少し仕込んだだけだ。
それを彼女が逃げだそうとした時にひっぱって転ばせただけである。
無論、彼女は自分が操られていると錯覚したようだがそんなことはない。
言葉をかけるだけで相手を操れるなんて化け物の所行だ。
さっき組み伏せられた時、彼女の服の裾などにワイヤーを少し仕込んだだけだ。
それを彼女が逃げだそうとした時にひっぱって転ばせただけである。
無論、彼女は自分が操られていると錯覚したようだがそんなことはない。
言葉をかけるだけで相手を操れるなんて化け物の所行だ。
「一晩かけて俺の話を聞けば多分だけど俺を憎むことは出来なくなるだろうな。
安心しろ、退屈はさせないし殺しもしない。
ただ一瞬だけ、俺の下僕になってもらえるように丁寧にハーメルンの笛吹きの能力で後催眠をかけるだけだ。
まず、組織で俺を討伐する場合積極的に志願すること。
次にお前の目の前で俺を殺そうとした奴をお前がその腰の銃で撃つ。
ただそれだけの行動をお前の精神に嫌と言うほど刻み込んでやる。
お前は俺の下僕になるんだよ。
黒服になったんなら俺に関わらずに生きていれば良かったのにな!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
フフフハハハハハハハハハハハハ!」
安心しろ、退屈はさせないし殺しもしない。
ただ一瞬だけ、俺の下僕になってもらえるように丁寧にハーメルンの笛吹きの能力で後催眠をかけるだけだ。
まず、組織で俺を討伐する場合積極的に志願すること。
次にお前の目の前で俺を殺そうとした奴をお前がその腰の銃で撃つ。
ただそれだけの行動をお前の精神に嫌と言うほど刻み込んでやる。
お前は俺の下僕になるんだよ。
黒服になったんなら俺に関わらずに生きていれば良かったのにな!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
フフフハハハハハハハハハハハハ!」
さて、これで少し娯楽が増えそうだ。
ドラゴン退治の前に少しばかり楽しいおもちゃが出来た。
自我を失うまで調教してやることにしよう。
ドラゴン退治の前に少しばかり楽しいおもちゃが出来た。
自我を失うまで調教してやることにしよう。
【上田明也の探偵倶楽部22~宴の準備~fin】