【上田明也の探偵倶楽部24~割と平和な日もあって~】
「明日はお花見に行きます。
よい子の皆さんはレジャーシートとかの準備をとりあえずまあ急いで行ってください。
それと弁当については俺がもうすでに用意を始めているので、穀雨ちゃんは絶対に台所に突入してはいけません。
その場合近くのハッピーピエロでご飯を買わなくちゃいけません。
メルとレモンは協力して絶対にそれを防ぐように。
笛吹探偵事務所にはお金がないのでできるだけそのような悲劇は避けたいと思っています。
解りましたか?」
よい子の皆さんはレジャーシートとかの準備をとりあえずまあ急いで行ってください。
それと弁当については俺がもうすでに用意を始めているので、穀雨ちゃんは絶対に台所に突入してはいけません。
その場合近くのハッピーピエロでご飯を買わなくちゃいけません。
メルとレモンは協力して絶対にそれを防ぐように。
笛吹探偵事務所にはお金がないのでできるだけそのような悲劇は避けたいと思っています。
解りましたか?」
「「「はーい!」」」
桜の季節だと言うことで花見に行くことになった。
ここで一つ問題がある。
大の大人が一人で幼女を三人も花見に連れて行くと只の誘拐に見えてしまうのだ。
まあ三分の二は誘拐して此処に連れてきているのでその見方も間違っては居ないのだが。
しかしこれは明日晶を連れて行くことで解決するので問題ない。
ここで一つ問題がある。
大の大人が一人で幼女を三人も花見に連れて行くと只の誘拐に見えてしまうのだ。
まあ三分の二は誘拐して此処に連れてきているのでその見方も間違っては居ないのだが。
しかしこれは明日晶を連れて行くことで解決するので問題ない。
それと念のために言っておきたいが笛吹探偵事務所は非常に景気が良い。
この町の治安が悪くなれば成る程仕事は増えるのである。
お金がないというのは主に穀雨ちゃんが食べ過ぎない為の方便である。
この町の治安が悪くなれば成る程仕事は増えるのである。
お金がないというのは主に穀雨ちゃんが食べ過ぎない為の方便である。
嘘も方便?
いいえ、嘘こそ方便です。
いいえ、嘘こそ方便です。
「つー訳で俺は少し買い物に行ってきます。
俺が居ない間は明日姉が来てくれると思うんで言うことを聞いて遊ぶなり勉強するなりしてください。
特に橙は国語の成績がひどいのでちゃんと勉強するように。
あと穀雨ちゃんも算数だの英語だのなんだの問題集買ってきているからちゃんとやるんだぞ?」
「えー、勉強やだー!」
「やらないとお花見連れて行かないぞ?」
「うぅ……。それじゃあやる。」
「明日お姉ちゃんも来るんだから、我が儘いって困らせるなよ?」
「はーぃ……。」
俺が居ない間は明日姉が来てくれると思うんで言うことを聞いて遊ぶなり勉強するなりしてください。
特に橙は国語の成績がひどいのでちゃんと勉強するように。
あと穀雨ちゃんも算数だの英語だのなんだの問題集買ってきているからちゃんとやるんだぞ?」
「えー、勉強やだー!」
「やらないとお花見連れて行かないぞ?」
「うぅ……。それじゃあやる。」
「明日お姉ちゃんも来るんだから、我が儘いって困らせるなよ?」
「はーぃ……。」
穀雨吉静はいかにも文句たっぷりといった様子で口をとがらせている。
まったく、可愛いものだ。
まったく、可愛いものだ。
「もしかしたら、“買い物”から帰るのが少し遅れるかもしれん。」
「ねえお兄ちゃん、遅れてもちゃんと帰ってくるよね?」
「大丈夫だよ、ちょっと行ってくるだけだ。」
「ねえお兄ちゃん、遅れてもちゃんと帰ってくるよね?」
「大丈夫だよ、ちょっと行ってくるだけだ。」
メルは穀雨の手を引いて事務所の奥に戻っていった。
どうにも彼女には迷惑をかけっぱなしだ。
俺は橙の頭をくしゃくしゃと撫でるとフラフラと買い物に向かった。
どうにも彼女には迷惑をかけっぱなしだ。
俺は橙の頭をくしゃくしゃと撫でるとフラフラと買い物に向かった。
「……よう。」
「……やぁ。」
「それじゃあ子供達頼んだわ。」
「解っているよ、委員長は委員長のやるべきことをやったら良い。
私はそれを手伝える限り手伝うよ。」
「弟とは会ったか?」
「んにゃ、あの子にはもう私ゃ要らないよ。」
「じゃあ俺が必要とさせてもらおうか。」
「…………馬鹿。」
「……やぁ。」
「それじゃあ子供達頼んだわ。」
「解っているよ、委員長は委員長のやるべきことをやったら良い。
私はそれを手伝える限り手伝うよ。」
「弟とは会ったか?」
「んにゃ、あの子にはもう私ゃ要らないよ。」
「じゃあ俺が必要とさせてもらおうか。」
「…………馬鹿。」
事務所を出るとちょうど良く明日姉とすれ違う。
赤い部屋を迎えに行かせたが予想より早く来れたようでなによりだ。
赤い部屋を迎えに行かせたが予想より早く来れたようでなによりだ。
軽くため息をつく。
ことの発端は数日前だ。
俺の事務所に一通の手紙が来た。
「家族の恨みを忘れない。」
それだけが書かれたシンプルな手紙である。
そもそもあれを手紙と呼んで良いかすらも解らない。
恨みを買う覚えはそれこそ星の数ほどある。
人間というのは皆等しく誰かとつながっているのだ。
誰か一人に害を与えればそれに憤る人なぞ何処にだっている。
俺は『ハーメルンの笛吹き』をより強力な都市伝説にする為にとてつもない犠牲を払ったのだ。
犠牲になった人間の関係者の誰かが俺を恨んでいたとしてもなんら不思議ではない。
そもそもあれを手紙と呼んで良いかすらも解らない。
恨みを買う覚えはそれこそ星の数ほどある。
人間というのは皆等しく誰かとつながっているのだ。
誰か一人に害を与えればそれに憤る人なぞ何処にだっている。
俺は『ハーメルンの笛吹き』をより強力な都市伝説にする為にとてつもない犠牲を払ったのだ。
犠牲になった人間の関係者の誰かが俺を恨んでいたとしてもなんら不思議ではない。
ただ一つだけ思うことがある。
恨んでいたから何だというのだ。
呪っていて何になると言うのだ。
何を思おうが、力がなければ結局無意味ではないか、と。
俺が事務所を出てきっかり五分後。
くるりと後ろを振り返ると事務所の近くで巨大な爆発が起きていた。
果たして明日姉は無事に子供達を守ってくれたのだろうか?
まあ自分はハーメルンの笛吹きとしてだけでなく探偵としても各方面から恨みを買っている。
探偵は恨みを買う職業だ。
もしかしたらそっちの方かもなあ、今回は、なんて考えてみたり。
恨んでいたから何だというのだ。
呪っていて何になると言うのだ。
何を思おうが、力がなければ結局無意味ではないか、と。
俺が事務所を出てきっかり五分後。
くるりと後ろを振り返ると事務所の近くで巨大な爆発が起きていた。
果たして明日姉は無事に子供達を守ってくれたのだろうか?
まあ自分はハーメルンの笛吹きとしてだけでなく探偵としても各方面から恨みを買っている。
探偵は恨みを買う職業だ。
もしかしたらそっちの方かもなあ、今回は、なんて考えてみたり。
「俺をおびき出してその間に事務所の爆破を試みる。
なるほど、意趣返しとしては中々悪くない発想だ。
そうすれば俺が事務所に残してきたものは破壊できるだろうな。
ただやっぱりどうして知識不足。
起きると解っていればそれを回避するのはすごく容易いことな訳だし、
それを事前に予知できる能力者があそこには居る。」
なるほど、意趣返しとしては中々悪くない発想だ。
そうすれば俺が事務所に残してきたものは破壊できるだろうな。
ただやっぱりどうして知識不足。
起きると解っていればそれを回避するのはすごく容易いことな訳だし、
それを事前に予知できる能力者があそこには居る。」
橙・レイモン、通称レモン。
彼女の持つ『ラプラスの悪魔』の都市伝説の予知能力ならばその程度の災難は簡単に回避できるはずだ。
なんだ、つまらないことを考えているものだ。
またつまらない復讐の相手をしてやらなくてはいけないのか。
彼女の持つ『ラプラスの悪魔』の都市伝説の予知能力ならばその程度の災難は簡単に回避できるはずだ。
なんだ、つまらないことを考えているものだ。
またつまらない復讐の相手をしてやらなくてはいけないのか。
さてと、それはそうとしてだよ。
俺に恨みを持っている人間は今どこで何をしているのだろうか?
多分あの爆発を見れば俺が慌てて事務所に戻ろうとする、なーんて思っているのかね。
いいや、思っていないか。
俺に恨みを持っている人間は今どこで何をしているのだろうか?
多分あの爆発を見れば俺が慌てて事務所に戻ろうとする、なーんて思っているのかね。
いいや、思っていないか。
手紙に書いてあった場所と時刻はこの町の西にある廃工場。
俺を事務所から引き離すだけならこういうことはしなくて良かった筈だ。
おそらく事務所など無視してそのままこっちに来るとにらんでいるのだろう。
ずいぶん冷淡な人間だと思われたものだ。
この俺にはこんなにも熱い血が流れる只の人間だというのに。
俺を事務所から引き離すだけならこういうことはしなくて良かった筈だ。
おそらく事務所など無視してそのままこっちに来るとにらんでいるのだろう。
ずいぶん冷淡な人間だと思われたものだ。
この俺にはこんなにも熱い血が流れる只の人間だというのに。
そのまましばらく歩くと約束の場所、そして時間である。
昼過ぎの廃工場は人っ子一人居ない静かな場所であった。
昼過ぎの廃工場は人っ子一人居ない静かな場所であった。
「おーい、誰か居ますかー?」
廃工場の中に入って声を出しても誰もいない。
まさかあちらの方に契約者を集中させているのだろうか?
だとしたら明日姉の餌食になるだけなのでそれはそれで愉快である。
まさかあちらの方に契約者を集中させているのだろうか?
だとしたら明日姉の餌食になるだけなのでそれはそれで愉快である。
空気がわずかに震える音色。
そしてそれに乗ってわずかに這い寄ってくる殺気。
都市伝説のそれではない。
人間の恨み、人間の悪意、人間の害意。
そしてそれに乗ってわずかに這い寄ってくる殺気。
都市伝説のそれではない。
人間の恨み、人間の悪意、人間の害意。
俺の知り合いの殺人鬼が好む人間の醜悪。
これは正しくそれだ。
これは正しくそれだ。
バチィン!
ボウガンの矢が突如として俺の鼻先を通り抜ける。
間一髪で当たらないで済んだが、どうやら確かに何か居るようだ。
間一髪で当たらないで済んだが、どうやら確かに何か居るようだ。
ハーメルンの笛吹きとの契約で与えられた聴力で周囲の様子を探る。
距離は近い。だが視覚では捕らえられない場所。
カチャカチャとした金属音がしない以上、銃器を持っている可能性は少ない。
何処に隠れている?
距離は近い。だが視覚では捕らえられない場所。
カチャカチャとした金属音がしない以上、銃器を持っている可能性は少ない。
何処に隠れている?
「村正……蜻蛉切。」
蜻蛉切に手をかけて精神を集中する。
一秒でも早く、敵の居場所、狙い、全てを看破する必要がある。
わずかに衣のすれる音が頭上から聞こえてきた。
一秒でも早く、敵の居場所、狙い、全てを看破する必要がある。
わずかに衣のすれる音が頭上から聞こえてきた。
ここで少しばかり蜻蛉切の能力の説明をしたい。
この蜻蛉切は持ち主の感情の振れ幅に呼応して切れ味をあげる刀型の都市伝説だ。
リーチはそれほど無いが単純な破壊力と速度だけならば俺の手持ちの武器の中では最強である。
また、蜻蛉切には使用者の記憶や意志を蓄積する『村正の妖刀』としての能力もあり、
それらを引き出して自分の物のように扱うことで、
刀を持った経験の無い人間でも自在に村正を使いこなすことが出来るのだ。
しかしそれにも限界はある。
ほぼ自動で身体が動いて敵に対応することができても、
自分自身が認識できない攻撃に対しては村正の能力を発動することが出来ないのだ。
だから俺はその弱点を『ハーメルンの笛吹き』で得た聴力や視力などで補っている。
まったく噛み合っていないようにみえて実はこの二つの都市伝説の相性は良いのだ。
この蜻蛉切は持ち主の感情の振れ幅に呼応して切れ味をあげる刀型の都市伝説だ。
リーチはそれほど無いが単純な破壊力と速度だけならば俺の手持ちの武器の中では最強である。
また、蜻蛉切には使用者の記憶や意志を蓄積する『村正の妖刀』としての能力もあり、
それらを引き出して自分の物のように扱うことで、
刀を持った経験の無い人間でも自在に村正を使いこなすことが出来るのだ。
しかしそれにも限界はある。
ほぼ自動で身体が動いて敵に対応することができても、
自分自身が認識できない攻撃に対しては村正の能力を発動することが出来ないのだ。
だから俺はその弱点を『ハーメルンの笛吹き』で得た聴力や視力などで補っている。
まったく噛み合っていないようにみえて実はこの二つの都市伝説の相性は良いのだ。
……ふむ、そうか。
隠れているのは二人。
いつの間にやら後ろに一人。
そして真上に一人。
いつの間にやら後ろに一人。
そして真上に一人。
判断材料は心音、呼吸音、etc
ああ、それと工場の入り口に一人近づいてきた。
次の瞬間、後ろに居た一人が俺に飛びかかる。
なにか身体能力を上げる都市伝説と契約したのだろう。
動きは速い。
だがとても直線的な動きしかしない。
真っ直ぐ真っ直ぐ俺に向かってくる。
これじゃあとても俺は殺せない。
なにか身体能力を上げる都市伝説と契約したのだろう。
動きは速い。
だがとても直線的な動きしかしない。
真っ直ぐ真っ直ぐ俺に向かってくる。
これじゃあとても俺は殺せない。
いいや待てよ、こいつらの狙いは俺を殺すことか?
今工場の入り口に近づいてきている人間は誰だ?
その誰かに俺が人を殺す姿を見せたいんじゃないのか?
その為に自ら殺されに来ているんじゃないか?
そうだ、殺人鬼への復讐に殺人を用いるのではあまりに芸がない。
本当に憎いならば、本当に恨んでいるならば、
みずからがその殺人鬼と同じ事をしようだなど思わないのではないか?
そうだ、こいつらの狙いは
本当に憎いならば、本当に恨んでいるならば、
みずからがその殺人鬼と同じ事をしようだなど思わないのではないか?
そうだ、こいつらの狙いは
俺に殺人を後悔させることではないか?
……だとすると、いま俺に飛びかかるこいつを殺すのはまずい。
即座に蜻蛉切を鞘に収めるとハーメルンの笛吹きの“悪魔”としての側面を無理矢理引きずり出す。
同じ都市伝説であってもいくつかの側面を持つと言うことは有名だ。
ハーメルンの笛吹きにも人間を操る操作系の側面や、大量の水を生み出して天変地異を起こす変化系の側面、
それに悪魔の身体能力を与える強化系の側面など様々な側面がある。
自らと相性の悪い側面を引き出すことは当然契約者にとってはリスクが高い。
だが俺は自らの心の器を契約を通じてではなくメルと直接繋げているためにある程度のリスクは回避できる。
まあそれは飲み込まれかけている、といっても良いのだが。
同じ都市伝説であってもいくつかの側面を持つと言うことは有名だ。
ハーメルンの笛吹きにも人間を操る操作系の側面や、大量の水を生み出して天変地異を起こす変化系の側面、
それに悪魔の身体能力を与える強化系の側面など様々な側面がある。
自らと相性の悪い側面を引き出すことは当然契約者にとってはリスクが高い。
だが俺は自らの心の器を契約を通じてではなくメルと直接繋げているためにある程度のリスクは回避できる。
まあそれは飲み込まれかけている、といっても良いのだが。
俺は正面から近づいて来ている敵の横に回り込むと耳の近くに口を寄せる。
人々は俺の言葉に催眠作用があるように言っているがなにもそれだけではない。
言葉とは心以上に身体に働きかけるものなのだ。
人々は俺の言葉に催眠作用があるように言っているがなにもそれだけではない。
言葉とは心以上に身体に働きかけるものなのだ。
「わああああああああああああああああああ!!!!」
全身の息という息を絞り出した腹のそこからの大声。
廃工場内部でも山彦のように何回も反響している。
当然その音が鳴り響くのは工場の内部だけではない。
廃工場内部でも山彦のように何回も反響している。
当然その音が鳴り響くのは工場の内部だけではない。
「ぐ……ああああ!?」
先ほどまで俺に襲いかかってきた男が頭を抱えて蹲っている。
「悪いが中学高校と声を出し続ける部活だったからなあ。
都市伝説のサポートがあればこれくらいヨユーな訳だよ。
……つっても聞こえていないか。」
都市伝説のサポートがあればこれくらいヨユーな訳だよ。
……つっても聞こえていないか。」
俺は男を蹴り飛ばすと真上を見上げる。
今出したのは何の工夫もない只の大声であり、
普段俺が他人を洗脳する為に使っている発音、言葉、その他諸々の要素に細心の注意を払った言葉ではない。
単純明快純粋な音の塊である。
それだけ聞いているとたいしたこと無いように思われるかも知れない。
しかしソプラノ歌手の歌声はガラスを平気で割ったりする。
俺のそれもまったく同じものだと考えて欲しい。
勿論、先ほど言った通り都市伝説との契約で強化はされているが。
普段俺が他人を洗脳する為に使っている発音、言葉、その他諸々の要素に細心の注意を払った言葉ではない。
単純明快純粋な音の塊である。
それだけ聞いているとたいしたこと無いように思われるかも知れない。
しかしソプラノ歌手の歌声はガラスを平気で割ったりする。
俺のそれもまったく同じものだと考えて欲しい。
勿論、先ほど言った通り都市伝説との契約で強化はされているが。
ドサッ
ついでに上に居た男も落ちてきた。
大声を出すのも久しぶりで少々慣れていなかったがまあ結果オーライだろう。
大声を出すのも久しぶりで少々慣れていなかったがまあ結果オーライだろう。
「おい、何やっているんだ笛吹!」
「よぅ明日じゃねえか。」
「よぅ明日じゃねえか。」
耳を押さえながら廃工場に入ってきた最後の一人は明日真だった。
そして床に倒れた男達を見て明日の表情が一瞬で変わる。
どうやら俺の読みは当たっていたらしい。
そして床に倒れた男達を見て明日の表情が一瞬で変わる。
どうやら俺の読みは当たっていたらしい。
「知り合いか?」
「…………ああ。普段から仲良くしているバイクショップのあんちゃんだよ。」
「…………ああ。普段から仲良くしているバイクショップのあんちゃんだよ。」
明日は驚きを隠せない様子でそう答えた。
成る程、俺がこいつらを殺そうとしていたら明日が止めに入った。
そうなれば俺は明日と戦わざるを得なかっただろう。
そうすれば『組織』、その前に黒服Hは本腰を入れて俺を殺しに来る。
弱小契約者にすぎないこいつらはそのまま戦えば俺に一矢すら報えない。
だからより強い者を利用した。
成る程、弱者らしい発想だ。実に腹立たしい。
そうなれば俺は明日と戦わざるを得なかっただろう。
そうすれば『組織』、その前に黒服Hは本腰を入れて俺を殺しに来る。
弱小契約者にすぎないこいつらはそのまま戦えば俺に一矢すら報えない。
だからより強い者を利用した。
成る程、弱者らしい発想だ。実に腹立たしい。
「この状況を見れば俺が正当防衛でこいつらを倒したと思って頂ける筈だぜ、明日真。」
俺は武器も何も持っていない両手をヒラヒラさせる。
「俺が来たからトドメを刺さなかった、とも考えられるだろう。」
俺に対して警戒するような素振りの明日真。
困った奴だ。自分の姉が面倒ごとに巻き込まれているというのに。
いや、巻き込んだのは俺だが。
困った奴だ。自分の姉が面倒ごとに巻き込まれているというのに。
いや、巻き込んだのは俺だが。
「それより良いのか?俺の事務所に居たお前の姉がもしかしたらピンチかもしれないのだが。」
「どういうことだ?」
「いや、そいつらがどうも俺をおびき出してから俺の事務所を壊そうとしていたらしくてね。
今すぐにでも彼女に電話してみると良い。もしかしたらそれに巻き込まれているかも。
こいつらが心配ならここにすぐ黒服でも呼べ。
ただし俺はこいつらに危害は与えていないぞ?」
「…………くそ!」
「どういうことだ?」
「いや、そいつらがどうも俺をおびき出してから俺の事務所を壊そうとしていたらしくてね。
今すぐにでも彼女に電話してみると良い。もしかしたらそれに巻き込まれているかも。
こいつらが心配ならここにすぐ黒服でも呼べ。
ただし俺はこいつらに危害は与えていないぞ?」
「…………くそ!」
迷う、迷う、二三秒迷っただろうか?
その少しばかりの葛藤の後に明日は急いで工場を出て行った。
その少しばかりの葛藤の後に明日は急いで工場を出て行った。
さて、となると困ったのはこいつらだ。
下手に自殺とかされると困るし、かといって元気を取り戻されてもまた俺を狙うだろう。
下手に自殺とかされると困るし、かといって元気を取り戻されてもまた俺を狙うだろう。
俺は急にある一つのことを思いついて倒れている男達に近寄った。
常識的に考えて年齢は俺が操作できる領域を超えている。
だが、その常識は果たしてどこまで通用するのだろうか。
たとえば今の俺は口笛などで子供達を操れる。
だがその逆を言えば口笛程度では子供までしか操れないと言うことではないか?
俺が最も得意とする『言葉』を使えば、人は簡単に操れる。それに都市伝説の支援が加われば?
操るまでいかなくても悪魔の囁きのように、そうだ、メルとて悪魔なのだ。
同じ悪魔なら囁けぬ道理は……ない?
…………パキィン!
―――――――ハーメルンの笛吹きはまだ成長する。
透明なガラスが割れるような音がして、俺の中の悪魔が俺にそうささやいた。
“これ”を試し終わったらネギを買って帰るとしよう。
【上田明也の探偵倶楽部23~割と平和な日もあって~fin】
透明なガラスが割れるような音がして、俺の中の悪魔が俺にそうささやいた。
“これ”を試し終わったらネギを買って帰るとしよう。
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