【上田明也の探偵倶楽部29~電脳世界の最遊記~】
「ここが砂漠か?」
「…………。」
「おい、何か喋れよ。」
「…………。」
「おい、何か喋れよ。」
駱駝に乗った僧衣の男の後ろを黙ってついてくる鎧騎士。
砂漠のど真ん中だというのに真っ赤な鎧で全身を包んでいるので性別すらも解らない。
砂漠のど真ん中だというのに真っ赤な鎧で全身を包んでいるので性別すらも解らない。
「ったく、ボイスチャット機能が壊れたのかぁ?
俺ってば寂しいと死んじゃうタイプなんだよなあ。」
俺ってば寂しいと死んじゃうタイプなんだよなあ。」
赤い部屋に戻って茜さんと話しても良いのだが、そうすると町から再びこの砂漠を渡らねばならない。
それは流石に面倒だ。
上田明也はやれやれと首を振る。
彼はこれから砂漠のど真ん中のオアシスにいる竜を狩らなくてはならないのだ。
そう、ここはネットゲーム『COA』の世界。
彼はこの世界においてはマニアックなグラフィックの銃を使う旅のハンターである。
Lvは182、このゲームで言うと廃人入門に相当する。
ちなみに茜さんのキャラはLv230という馬鹿みたいなレベルである。
流石ニート、時間だけは余っているらしい。
職業は三蔵法師
スキルは
銃 中装備 見切り 解読
探知 交渉 騎乗 道具 重量挙げ
料理 演奏
フィート「他力本願(交渉Lv500固定&従者のレベルを+100までアップ)」
と言ったところである。
戦闘に向いていないのは事実だがNPCからは好かれたい放題。
出会う傍から大抵の言うことを聞いてくれるパラダイスである。
それは流石に面倒だ。
上田明也はやれやれと首を振る。
彼はこれから砂漠のど真ん中のオアシスにいる竜を狩らなくてはならないのだ。
そう、ここはネットゲーム『COA』の世界。
彼はこの世界においてはマニアックなグラフィックの銃を使う旅のハンターである。
Lvは182、このゲームで言うと廃人入門に相当する。
ちなみに茜さんのキャラはLv230という馬鹿みたいなレベルである。
流石ニート、時間だけは余っているらしい。
職業は三蔵法師
スキルは
銃 中装備 見切り 解読
探知 交渉 騎乗 道具 重量挙げ
料理 演奏
フィート「他力本願(交渉Lv500固定&従者のレベルを+100までアップ)」
と言ったところである。
戦闘に向いていないのは事実だがNPCからは好かれたい放題。
出会う傍から大抵の言うことを聞いてくれるパラダイスである。
「うー、ボイチャが上手くつながらない~!」
困ったことにボイスチャットがつながらない。
明也さんはこのゲームの初心者である以上、私がサポートしなくてはいけないのに!
茜さん――赤い部屋――は頭を抱えていた。
しかしいつまでそうしていてもしょうがない。
そう思って息抜きに彼女はネットサーフィンを始めていた。
適当に開いたサイトに、興味深い広告が載っていた。
明也さんはこのゲームの初心者である以上、私がサポートしなくてはいけないのに!
茜さん――赤い部屋――は頭を抱えていた。
しかしいつまでそうしていてもしょうがない。
そう思って息抜きに彼女はネットサーフィンを始めていた。
適当に開いたサイトに、興味深い広告が載っていた。
「あ、新作のフィギュア出るの!?
amazonで変えるかなあ……、ああ注文できるのね。
明也さんが帰ってきたら取りに行って貰わないと……。」
amazonで変えるかなあ……、ああ注文できるのね。
明也さんが帰ってきたら取りに行って貰わないと……。」
海●堂の変な生き物フィギュアコレクションの最新作が出るらしいのだ。
細部にわたって本物に近づけた作りといい、彩色の見事さといい、
変な生き物という題材と良い、どれをとってもすばらしい。
しばし、えへらえへらとだらしなくにやける茜さん。
細部にわたって本物に近づけた作りといい、彩色の見事さといい、
変な生き物という題材と良い、どれをとってもすばらしい。
しばし、えへらえへらとだらしなくにやける茜さん。
「あれ……、ちょっとよそ見している間に……。」
しかしその間にまずいことになっていた。
どうやら何時の間にか彼がPKを始めていたらしい。
毎度毎度物騒なことだ。
どうやら何時の間にか彼がPKを始めていたらしい。
毎度毎度物騒なことだ。
時間は少しまき戻る。
「おやおや、もう飲み物が無くなっているじゃないか。」
ゲーム内のキャラならば渇きも飢えも問題無いのだろうが、彼はゲーム内に居る只の人間である。
食欲性欲休息欲共にバリバリ全開22歳☆なのだ。
この世界に来てからという物自らの隠された性癖開放し放題で機嫌の良い22歳☆なのだ。
食欲性欲休息欲共にバリバリ全開22歳☆なのだ。
この世界に来てからという物自らの隠された性癖開放し放題で機嫌の良い22歳☆なのだ。
「何処かに適当なプレイヤーキャラ居ないかなあ?」
上田はクルクルと辺りを見回す。
彼は茜さんが急に動きを止めたので置いてきぼりにしていた。
どうせ水竜の居るオアシスまではあと少しである。
そこで落ち合えば何の問題もない。
それよりも今が大事だ。
そら見ろ、視線をあげればそこには綺麗なお姉様。
レベルは俺よりも遙か上の238だ。
俺と同じ銃器中心の戦闘スタイルと見える。
そんなことよりとにもかくにもなかなかの美人だ。
少なくとも俺の好きなタイプの年上の女性である。
確かに俺は由緒正しいロリコンではあるが、それでも声をかけざるを得ない。
そんなことを考えながら彼はそのプレイヤーに話しかけた。
彼は茜さんが急に動きを止めたので置いてきぼりにしていた。
どうせ水竜の居るオアシスまではあと少しである。
そこで落ち合えば何の問題もない。
それよりも今が大事だ。
そら見ろ、視線をあげればそこには綺麗なお姉様。
レベルは俺よりも遙か上の238だ。
俺と同じ銃器中心の戦闘スタイルと見える。
そんなことよりとにもかくにもなかなかの美人だ。
少なくとも俺の好きなタイプの年上の女性である。
確かに俺は由緒正しいロリコンではあるが、それでも声をかけざるを得ない。
そんなことを考えながら彼はそのプレイヤーに話しかけた。
「お姉さん、水……じゃなくて下着の色を教えてくださいませんか?」
当然のごとく彼には銃が向けられた。
BANG!BANG!
「うわっ、ちょっ!PKはやめて!
話せば解る、話せば解るから!」
「しまった……、つい銃を撃ってしまった。」
「って話している間にも撃ち続けないで!?」
「すばしっこいなあ、防具も良いもの装備してるし……。
こういう変態が一番性質悪い。
そして、性犯罪者との間に言葉なんてきっと要らないよな。」
「それはきっと身体でわかり合おうって事ですよねお姉様!」
「ああ、そうだよ。今日は朝までお姉さんが付き合ってあげようじゃないか。
ただし…………」
話せば解る、話せば解るから!」
「しまった……、つい銃を撃ってしまった。」
「って話している間にも撃ち続けないで!?」
「すばしっこいなあ、防具も良いもの装備してるし……。
こういう変態が一番性質悪い。
そして、性犯罪者との間に言葉なんてきっと要らないよな。」
「それはきっと身体でわかり合おうって事ですよねお姉様!」
「ああ、そうだよ。今日は朝までお姉さんが付き合ってあげようじゃないか。
ただし…………」
ガシャコン
大振りの銃が二丁、違うことなく照準は上田に向いている。
大振りの銃が二丁、違うことなく照準は上田に向いている。
「こいつでだけどね!」
仕方ないね、“俺から”は手を出していないし。
これはもうPKではない。
正当防衛だ。
偶然にもこのような自体になってしまった以上、仕方ない。
そんな事を思いながら彼はにやりと笑う。
これはもうPKではない。
正当防衛だ。
偶然にもこのような自体になってしまった以上、仕方ない。
そんな事を思いながら彼はにやりと笑う。
「仕方ないか……。」
彼は小さく呟くと都市伝説の力を発動させた。
「へ、へ、変態だああああああああああああ!」
「どうしたの母さん?」
「いや、結構雑魚敵のドロップがおいしい砂漠をふらついてたら……」
「ふらついてたら?」
「下着の色を聞かれた。」
「……紛う方無き変態だね。」
「どうしたの母さん?」
「いや、結構雑魚敵のドロップがおいしい砂漠をふらついてたら……」
「ふらついてたら?」
「下着の色を聞かれた。」
「……紛う方無き変態だね。」
一方その頃、新島家。
この家の主である新島愛美は最近、『COA』というネトゲにはまっていた。
この家の主である新島愛美は最近、『COA』というネトゲにはまっていた。
「ほら、このマントの男だよ。レベルもそこそこだ。」
「あれ、piedpiper……って、母さんこの人って最近有名なPKKだよ。」
「え、ああそういえば私結構PKもPKKもしていたが……。」
「手口はねえ、廃人レベルの強敵相手にわざと隙を見せて攻撃させてから……。」
「あれ、piedpiper……って、母さんこの人って最近有名なPKKだよ。」
「え、ああそういえば私結構PKもPKKもしていたが……。」
「手口はねえ、廃人レベルの強敵相手にわざと隙を見せて攻撃させてから……。」
愛美の娘である友美が後ろからパソコンを覗き込む。
彼女は一つ大きくため息を吐いた。
彼女は一つ大きくため息を吐いた。
「出てこおおおおい!ロッズ!」
砂漠の真ん中で上田の大きな声が響く。
それと同時に、今まで辺りには居なかったモンスターが大量に現れた。
それと同時に、今まで辺りには居なかったモンスターが大量に現れた。
「な、なんだこいつら!?」
「話は簡単ですよお姉さん、今からここは“モンスターハウス”だ!」
「話は簡単ですよお姉さん、今からここは“モンスターハウス”だ!」
ぶぅうぅぅうぅうぅぅぅううん!
ぶううううううぅぅぅぅぅううん!
ぶううううううぅぅぅぅぅううん!
蜂の羽音のような鈍い音。
愛美のキャラは辺りを見回す。
だが、その正体はつかめない。
愛美のキャラは辺りを見回す。
だが、その正体はつかめない。
「っていうかお姉さんいまなんだこいつらって聞きましたよね。
やっぱすごいなあ。一応こいつら見えづらい筈なんですけどねえ。」
やっぱすごいなあ。一応こいつら見えづらい筈なんですけどねえ。」
僧侶のような衣装の下の上田明也の顔はよく見えない。
だが、その声色だけで解る。
彼は今、獲物を視界に捕らえた一羽の鷹だ。
歓喜と凶暴な本能、それに少しの悪意や理性を織り交ぜた、生まれついての捕食者。
殺人鬼でこそないが、自らの為であれば何人を犠牲にすることもいとわない。
ハーメルンの笛吹き男として、彼が成功させてきた数十数百の殺人は偶然で成功した物ではないのだ。
だが、その声色だけで解る。
彼は今、獲物を視界に捕らえた一羽の鷹だ。
歓喜と凶暴な本能、それに少しの悪意や理性を織り交ぜた、生まれついての捕食者。
殺人鬼でこそないが、自らの為であれば何人を犠牲にすることもいとわない。
ハーメルンの笛吹き男として、彼が成功させてきた数十数百の殺人は偶然で成功した物ではないのだ。
「おい友美!なんか大量にモンスター出てきた!
しかも全部私だけ狙ってる!」
「piedpiperの従者なんじゃないの?」
「でも、私は“主人よりレベルの高い従者”なんて、聞いたことがない!
ああくそっ、これくらいの攻撃!
リアルバトルだったら簡単に躱せるのに!」
「え、まさかチート!?
ってこれ……。」
「どうした、なんかしってるのか?」
「いや、piedpiperってよく考えたらハーメルンの笛吹き男……。」
「うわあああああああ!?
なんかモンスターの攻撃で状態異常になった!
一体の攻撃当たるだけでこれなの?
麻痺った、毒、眠ったああああああああああ!
そ、し、て、…………殺られた。」
しかも全部私だけ狙ってる!」
「piedpiperの従者なんじゃないの?」
「でも、私は“主人よりレベルの高い従者”なんて、聞いたことがない!
ああくそっ、これくらいの攻撃!
リアルバトルだったら簡単に躱せるのに!」
「え、まさかチート!?
ってこれ……。」
「どうした、なんかしってるのか?」
「いや、piedpiperってよく考えたらハーメルンの笛吹き男……。」
「うわあああああああ!?
なんかモンスターの攻撃で状態異常になった!
一体の攻撃当たるだけでこれなの?
麻痺った、毒、眠ったああああああああああ!
そ、し、て、…………殺られた。」
新島愛美、まさかの初PK被害である。
「本人よりレベルの高いチートモンスターを一瞬で召喚して……。
しかもそれを完全に統率しきるって……。
今度会ったらコロス、マジコロス……!」
「piedpiper……、よく考えたらもしかして?」
「どうした友美、心当たりがあるのか?」
「いやなに、うろ覚えなんだけどね……。」
しかもそれを完全に統率しきるって……。
今度会ったらコロス、マジコロス……!」
「piedpiper……、よく考えたらもしかして?」
「どうした友美、心当たりがあるのか?」
「いやなに、うろ覚えなんだけどね……。」
そう前置きしてから友美は話を始めた。
「はいはい、強きを挫き、弱きを支配するのは本当に気分が良いね。」
「…………。」
「あ、茜さんやっと来た?
もう終わっちゃったよ。
今は剥ぎ取り中だ。お、ラッキー、この銃欲しかったんだよね。」
「…………。」
「あ、茜さんやっと来た?
もう終わっちゃったよ。
今は剥ぎ取り中だ。お、ラッキー、この銃欲しかったんだよね。」
上田は自分の後ろに立っている真っ赤な騎士に向けて独特なフォルムの銃を見せびらかす。
モーゼルC96、RED9、第一次世界大戦中ドイツ軍が使用していた拳銃である。
箒のようなグリップが上田明也のようなマニアにはたまらない。
使用する際には9mmパラベラムが撃てるのがありがたいところである。
勿論、現実では既に骨董品だが、このゲームでは事情が別である。
モーゼルC96、RED9、第一次世界大戦中ドイツ軍が使用していた拳銃である。
箒のようなグリップが上田明也のようなマニアにはたまらない。
使用する際には9mmパラベラムが撃てるのがありがたいところである。
勿論、現実では既に骨董品だが、このゲームでは事情が別である。
「さて、身ぐるみ引っぺがし完了!
さすがに全部持って行くのは悪いからお金と水とこの銃だけにしておくぜ!
南無南無ってね。
そーう、みがきつづけーたー、ナイフのようさー……。」
さすがに全部持って行くのは悪いからお金と水とこの銃だけにしておくぜ!
南無南無ってね。
そーう、みがきつづけーたー、ナイフのようさー……。」
昔西遊記のアニメで聞いた曲を口ずさみながら上田は再び駱駝に歩かせる。
視界良好天気は晴天。
目的地も彼の視界の隅に映っていた。
視界良好天気は晴天。
目的地も彼の視界の隅に映っていた。
「あーあ、やっちゃったよ……。
廃人狙いPKK偽装PKとか悪質過ぎるからやめようって言ったのに……。」
廃人狙いPKK偽装PKとか悪質過ぎるからやめようって言ったのに……。」
茜さんは画面の前でも頭を抱える。
COAの世界に入ってからという物、上田の危険度に磨きがかかっていた。
それこそサンジェルマンから聞いたハーメルンの笛吹きと契約したばかりの頃の彼そっくりだ。
本質は当時も今でも変わってないのだろうが、
近くに制止しようとする人物がいないのでそれが寄り強く表に出ているのだ。
茜さんは何かに気付いたようにとあるサイトを開く。
COAの世界に入ってからという物、上田の危険度に磨きがかかっていた。
それこそサンジェルマンから聞いたハーメルンの笛吹きと契約したばかりの頃の彼そっくりだ。
本質は当時も今でも変わってないのだろうが、
近くに制止しようとする人物がいないのでそれが寄り強く表に出ているのだ。
茜さんは何かに気付いたようにとあるサイトを開く。
「うわ、某巨大掲示板でもチートじゃないかって噂になってるし……!」
まるで大きな赤ん坊、いいや、赤ん坊の子守の方がまだ楽だ。
「さぁ、俺たちの行く先は……西だ。
はるか天竺まで聖杯を取りに行くんだぞ。」
はるか天竺まで聖杯を取りに行くんだぞ。」
画面の中で三蔵法師を気取る己の契約者に赤い部屋は頭を悩ませることになる。
だが、それもあと少し。
だが、それもあと少し。
「なーにーを、みつめてーいーよー……。」
のんきに歌いながら道を行く彼に、
災難が降りかかるのはいつものことなのだから。
災難が降りかかるのはいつものことなのだから。
「まーたー、こっこーでーあえるーよー、それが真実ならー。」
【上田明也の探偵倶楽部29~電脳世界の最遊記~fin】