【上田明也の協奏曲29~上田明也を形容する言葉→HERO~】
月明かりがまぶしい夜。
俺は考えごとをしていた。
それは幾度も幾度も繰り返した思考実験だった。
俺の目の前に現れるあの女に、何故自分はこんなにも憎悪を抱いているのだろう?
その理由を何度だって何度だって考えた。
俺は彼女に憎悪を抱いていた。
正義の味方になるんだと言って自分勝手な正義を振り回し、最後に挫折した彼女。
この俺が助けてやったというのに彼女は正義の味方になれなかった。
違う。
俺は邪魔をしていたんだ。
彼女が正義の味方になれないように邪魔していたんだ。
俺は考えごとをしていた。
それは幾度も幾度も繰り返した思考実験だった。
俺の目の前に現れるあの女に、何故自分はこんなにも憎悪を抱いているのだろう?
その理由を何度だって何度だって考えた。
俺は彼女に憎悪を抱いていた。
正義の味方になるんだと言って自分勝手な正義を振り回し、最後に挫折した彼女。
この俺が助けてやったというのに彼女は正義の味方になれなかった。
違う。
俺は邪魔をしていたんだ。
彼女が正義の味方になれないように邪魔していたんだ。
「なぁメル、ちょっと昔話して良いか?」
「なんですかマスター。」
「マスター、か。良い呼び方だ、懐かしい。」
「そうですか所長。」
「まあ膝の上にでも座れよ。
ああ、可愛い奴だ。
お前を助けて良かったと心から思えるよ。」
「……そのことについては本当に感謝しています。
マスター以外に私を助けられる人は居ませんでした。」
「なんですかマスター。」
「マスター、か。良い呼び方だ、懐かしい。」
「そうですか所長。」
「まあ膝の上にでも座れよ。
ああ、可愛い奴だ。
お前を助けて良かったと心から思えるよ。」
「……そのことについては本当に感謝しています。
マスター以外に私を助けられる人は居ませんでした。」
メルからの素直な謝辞に少しばかり心が躍った。
「俺は昔正義の味方の手伝いをしていた。」
「ああ、そんな事言っていましたね。」
「俺はその正義の味方のことが嫌いだった。」
「ああ、それも言っていましたね。」
「でもそんな正義の味方は俺さえも救おうとした。
俺が何時か素直に誰かを好きになれるようにって、頑張っていた。」
「……無理でしょう。」
「ああ、無理だった。俺を救うのは正義の味方じゃない。
あの正義の味方は結局俺を否定しているだけで俺を理解しない他の奴らと変わらなかった。」
「ああ、そんな事言っていましたね。」
「俺はその正義の味方のことが嫌いだった。」
「ああ、それも言っていましたね。」
「でもそんな正義の味方は俺さえも救おうとした。
俺が何時か素直に誰かを好きになれるようにって、頑張っていた。」
「……無理でしょう。」
「ああ、無理だった。俺を救うのは正義の味方じゃない。
あの正義の味方は結局俺を否定しているだけで俺を理解しない他の奴らと変わらなかった。」
そうだ、今なら解る。
「結局、俺はあいつを正義の味方、いいやHEROとして認めていなかった。
あいつは善人を救おうとして、あいつは人が皆善人だと思っていたから。
悪人を悪のまま認めて、受け入れて、救おうなんて思わなかったから。
そんなの偽善だ。
そんなの偽善だ。
そんなの偽善だ。
俺が一番嫌いな偽物だ。
だから汚してやったんだ、正義の味方って奴を。
善であれ悪であれそれが心より生まれ出た願いならそれは否定されてはならない。
ぶつかり合っても良いが否定だけはしちゃいけない。
お前だって生まれながらの悪じゃないか。
悪すら救えない正義の味方なんて偽物だ、俺はずっとそう思っていたんだよ。
でも、それは常識的に考えて変なことで、悪いことだから、俺はその気持ちを押し殺していた。
悪人を救おうとするのが悪いことだっていうのは解っていたんだ。
しかしそれでも救おうとするのがHEROだろって信じていたんだ。」
「善人になった悪人を救う人は居ても悪人を救ってくれる人は居ないじゃないですか。」
あいつは善人を救おうとして、あいつは人が皆善人だと思っていたから。
悪人を悪のまま認めて、受け入れて、救おうなんて思わなかったから。
そんなの偽善だ。
そんなの偽善だ。
そんなの偽善だ。
俺が一番嫌いな偽物だ。
だから汚してやったんだ、正義の味方って奴を。
善であれ悪であれそれが心より生まれ出た願いならそれは否定されてはならない。
ぶつかり合っても良いが否定だけはしちゃいけない。
お前だって生まれながらの悪じゃないか。
悪すら救えない正義の味方なんて偽物だ、俺はずっとそう思っていたんだよ。
でも、それは常識的に考えて変なことで、悪いことだから、俺はその気持ちを押し殺していた。
悪人を救おうとするのが悪いことだっていうのは解っていたんだ。
しかしそれでも救おうとするのがHEROだろって信じていたんだ。」
「善人になった悪人を救う人は居ても悪人を救ってくれる人は居ないじゃないですか。」
メルは悲しそうな顔をしている。
そうだ、彼女のこんな顔を見たくないと思ったから俺は人間の道を外れたのだ。
生まれながらにして悪であるものだから退治する。
そんなことは間違っていると俺は思ったから。
だから俺は俺は自分の全てをなげうってでもこいつと契約した。
そうだ、彼女のこんな顔を見たくないと思ったから俺は人間の道を外れたのだ。
生まれながらにして悪であるものだから退治する。
そんなことは間違っていると俺は思ったから。
だから俺は俺は自分の全てをなげうってでもこいつと契約した。
「良いじゃないか、お前は俺が救った。」
それは事実だ。
誰がなんと言おうとこいつは俺の手で救われたのだ。
メルの顔に光が戻る。
誰がなんと言おうとこいつは俺の手で救われたのだ。
メルの顔に光が戻る。
「そうですね、本当に、本当に、ありがとうございます。
全滅寸前だったハーメルンの笛吹き男も今では世界中に現れているそうです。」
「そのオリジナルは他ならぬ俺だ。
吸血鬼で言うところの真祖か?
なんにせよ少しばかり気分が良い。」
「あは、マスターって本当は良い人でしょう?
血も涙もない人殺しを装っているけど、貴方は私の為に涙を流していたんだ。
血も流し続けていましたしね。」
「それを言ったらお前だって俺の為に働いてくれたさ。」
「えへへ……。」
「そう、お前の喜ぶ顔を見ると俺は少し嬉しい気分になる。
誰かを幸せにするのはきっと俺が喜ぶことなんだ。
でも、まだ足りない。」
「足りないって?」
全滅寸前だったハーメルンの笛吹き男も今では世界中に現れているそうです。」
「そのオリジナルは他ならぬ俺だ。
吸血鬼で言うところの真祖か?
なんにせよ少しばかり気分が良い。」
「あは、マスターって本当は良い人でしょう?
血も涙もない人殺しを装っているけど、貴方は私の為に涙を流していたんだ。
血も流し続けていましたしね。」
「それを言ったらお前だって俺の為に働いてくれたさ。」
「えへへ……。」
「そう、お前の喜ぶ顔を見ると俺は少し嬉しい気分になる。
誰かを幸せにするのはきっと俺が喜ぶことなんだ。
でも、まだ足りない。」
「足りないって?」
「喜ばせる存在の数が足りないのさ。確かに誰かを救えば一瞬だけ心の渇きが消える。
一瞬だけな、一瞬だけ楽になったと思ったら後はまた長々続く退屈と渇望さ。
面白いと思えることが少ないんだよ、圧倒的に。
面白いと言えば人を救う以外にもあるんだけどな。
何でも良いから“本物”って呼ばれるものを見れば感動でまた一瞬それを忘れる。
サンジェルマンが【異常】の研究をしているのはその渇きを誤魔化したいからかもな。」
「知ったこっちゃ無いですよ、私あの人苦手です。」
「はっきり嫌いと言えよ。
あいつだってあそこまで長生きしなきゃまともな精神を保てただろうに。
心優しい人として長生きし続けるには人間の精神はあまりに脆い。
なんてのは嘘で、あいつにはとびきり性格の悪い友人が居る。
そいつの影響だね。」
「は?」
「死神だよ、女性の死神だ。
あいつはサンジェルマンにくびったけなんだがあいつは首を縦に振らない。
あいつ昔の恋人が忘れられないんだとよ。」
「え……、マジですか?」
「らしいね。
死神といえばどこぞの医者にサンジェルマンが死神の力を貸し与えたらしいな。
親父の友人らしいんだけどねえ……。
そいつは正義の味方を標榜しているらしい。
正義の味方が嫌いなHEROとしては一遍会ってみたいもんだね。」
「正義の味方じゃなくてヒーローなんですか?」
「ああ、HEROな。」
一瞬だけな、一瞬だけ楽になったと思ったら後はまた長々続く退屈と渇望さ。
面白いと思えることが少ないんだよ、圧倒的に。
面白いと言えば人を救う以外にもあるんだけどな。
何でも良いから“本物”って呼ばれるものを見れば感動でまた一瞬それを忘れる。
サンジェルマンが【異常】の研究をしているのはその渇きを誤魔化したいからかもな。」
「知ったこっちゃ無いですよ、私あの人苦手です。」
「はっきり嫌いと言えよ。
あいつだってあそこまで長生きしなきゃまともな精神を保てただろうに。
心優しい人として長生きし続けるには人間の精神はあまりに脆い。
なんてのは嘘で、あいつにはとびきり性格の悪い友人が居る。
そいつの影響だね。」
「は?」
「死神だよ、女性の死神だ。
あいつはサンジェルマンにくびったけなんだがあいつは首を縦に振らない。
あいつ昔の恋人が忘れられないんだとよ。」
「え……、マジですか?」
「らしいね。
死神といえばどこぞの医者にサンジェルマンが死神の力を貸し与えたらしいな。
親父の友人らしいんだけどねえ……。
そいつは正義の味方を標榜しているらしい。
正義の味方が嫌いなHEROとしては一遍会ってみたいもんだね。」
「正義の味方じゃなくてヒーローなんですか?」
「ああ、HEROな。」
「そう、正義の味方なんかじゃない、善も悪も等しく助けるHEROだ。
その中でも特に正義の味方じゃ助けられない存在を助けるんだ。
生まれながらも悪とされて忌み嫌われていた存在だろうが
助けることによって後に人々を苦しめる存在だろうが
他ならぬ俺が許す、俺が救う、俺が癒して、俺が傷つけよう。
俺が騙し、俺が信じ、俺が奪い、俺が与え、俺が受け入れよう。
そうだ、お前のように。
それが俺の目指すHEROだ。
正義からはほど遠い、でも悪とすることなどできはしない。
誰よりも人間らしく目の前の救えるもの救いたいものを救おう。
それが俺の誓いだ。
今夜は月が綺麗だし丁度良い、良く聞いておけメル。
俺はガキの頃ウルトラマンや仮面ライダーになりたいと言った気持ちそのままに宣言してやる。
俺はHEROになる。
大人達は何時か変わる夢と言って笑ったが……
俺は一度それを捨てても、それでも取り戻したんだ。
俺は今やっとそれに気付いた。」
その中でも特に正義の味方じゃ助けられない存在を助けるんだ。
生まれながらも悪とされて忌み嫌われていた存在だろうが
助けることによって後に人々を苦しめる存在だろうが
他ならぬ俺が許す、俺が救う、俺が癒して、俺が傷つけよう。
俺が騙し、俺が信じ、俺が奪い、俺が与え、俺が受け入れよう。
そうだ、お前のように。
それが俺の目指すHEROだ。
正義からはほど遠い、でも悪とすることなどできはしない。
誰よりも人間らしく目の前の救えるもの救いたいものを救おう。
それが俺の誓いだ。
今夜は月が綺麗だし丁度良い、良く聞いておけメル。
俺はガキの頃ウルトラマンや仮面ライダーになりたいと言った気持ちそのままに宣言してやる。
俺はHEROになる。
大人達は何時か変わる夢と言って笑ったが……
俺は一度それを捨てても、それでも取り戻したんだ。
俺は今やっとそれに気付いた。」
青い月明かりの下でメルが何か考え込んでいる。
その姿はとても美しくて何処かに心が融け出してしまいそうだった。
その姿はとても美しくて何処かに心が融け出してしまいそうだった。
「でもマスター?」
「なんだ?」
「マスターは、人を殺しすぎたんじゃないですか?
今更ウルトラマンにも仮面ライダーにもなれませんよ。」
「なんだ?」
「マスターは、人を殺しすぎたんじゃないですか?
今更ウルトラマンにも仮面ライダーにもなれませんよ。」
「ああ、確かに必要ない命を奪いすぎた。
そのせいで要らない恨みも買ってしまった。
でも、それは俺がHEROであることを邪魔などしない。
他人の評価が変わるだけで自分が自分をHEROであると信じて認められていればそれで充分だ。」
「我が道行っちゃってますねえ?」
「だろ?それにな。」
「それに?」
「俺はウルトラマンや仮面ライダーになりたいんじゃないんだ。
俺はあくまで俺だ。俺は俺のままに俺の願ったHEROになる。」
「良いですねえ……。最高に狂っている。でもそれ故に無敵だ。」
「良いだろ?俺に並び立てる存在なんて居ないからな。」
「一生ついて行きますよ、貴方と居ればきっと幸せになれる。
都市伝説としても強化こそすれ弱体化はありえない。」
「そうか、それは良いや。
じゃあ早速身の回りの世話でもお願いしようか?」
そのせいで要らない恨みも買ってしまった。
でも、それは俺がHEROであることを邪魔などしない。
他人の評価が変わるだけで自分が自分をHEROであると信じて認められていればそれで充分だ。」
「我が道行っちゃってますねえ?」
「だろ?それにな。」
「それに?」
「俺はウルトラマンや仮面ライダーになりたいんじゃないんだ。
俺はあくまで俺だ。俺は俺のままに俺の願ったHEROになる。」
「良いですねえ……。最高に狂っている。でもそれ故に無敵だ。」
「良いだろ?俺に並び立てる存在なんて居ないからな。」
「一生ついて行きますよ、貴方と居ればきっと幸せになれる。
都市伝説としても強化こそすれ弱体化はありえない。」
「そうか、それは良いや。
じゃあ早速身の回りの世話でもお願いしようか?」
そういって俺はいきなり、でも柔らかにメルの胸を揉んでみる。
―――――――うん、無い!
―――――――うん、無い!
「はぁ……、性欲の塊なのは変わらないんですね。」
「知っているか?」
「なんです?」
「HERO=H+ERO」
「……もしかしてそれ言いたいが為に?」
「ばれちまっちゃあしょうがねえ、ほれほれ成長しやがれ。」
「ちょ、待ってくださいこれだとムードも何もあったもんじゃあ……」
【上田明也の協奏曲29~上田明也を形容する言葉→HERO~fin】
「知っているか?」
「なんです?」
「HERO=H+ERO」
「……もしかしてそれ言いたいが為に?」
「ばれちまっちゃあしょうがねえ、ほれほれ成長しやがれ。」
「ちょ、待ってくださいこれだとムードも何もあったもんじゃあ……」
【上田明也の協奏曲29~上田明也を形容する言葉→HERO~fin】