【上田明也の協奏曲32~月夜に踊る踊る踊る~】
俺の契約する都市伝説にはまだ進化の余地がある。
これから戦いがよりいっそう激しくなることが予知される現在、俺はその進化をせねばならない
そう結論した俺は夜中こっそりバイクで事務所を抜け出して特訓をしようとしていた。
努力をしなければ進化なんて、より強くなるなんてありえないからだ。
これから戦いがよりいっそう激しくなることが予知される現在、俺はその進化をせねばならない
そう結論した俺は夜中こっそりバイクで事務所を抜け出して特訓をしようとしていた。
努力をしなければ進化なんて、より強くなるなんてありえないからだ。
「…………さて、」
とは言ったものの何をしよう。
真夜中に一人で近所をうろうろするって完全に痛い高校生じゃないか。
夜の散歩で己の影に向かう俺かっこいいーってか?
おお寒い寒い。
真夜中に一人で近所をうろうろするって完全に痛い高校生じゃないか。
夜の散歩で己の影に向かう俺かっこいいーってか?
おお寒い寒い。
――――――――――真面目に考えると
都市伝説の能力でまだ使ってない部分を引き出すか
もう使っている部分を更に強化するか
自分がやれることはそのどちらかである。
もう使っている部分を更に強化するか
自分がやれることはそのどちらかである。
自分は都市伝説の中でも“操作系”の都市伝説能力の扱いに適正があるらしい。
更に“操作系”に対する飛び抜けた才能から説明のしようがない系統の都市伝説能力も引き出せるそうだ。
逆に何かを“変化”させる能力や
有りもしない物を“作り出す”能力、
そして自らの身体を“強化する”能力も引き出しづらいらしい。
さて自分は都市伝説の“操作する”能力を引き出したが、それ以外には大して何もしていない。
ならば自分は操作系以外の能力を試しに引き出してみれば良いのではないだろうか。
更に“操作系”に対する飛び抜けた才能から説明のしようがない系統の都市伝説能力も引き出せるそうだ。
逆に何かを“変化”させる能力や
有りもしない物を“作り出す”能力、
そして自らの身体を“強化する”能力も引き出しづらいらしい。
さて自分は都市伝説の“操作する”能力を引き出したが、それ以外には大して何もしていない。
ならば自分は操作系以外の能力を試しに引き出してみれば良いのではないだろうか。
「月の綺麗な晩だなあ……。」
何の気無しに空を見上げると月が綺麗だった。
赤くて黄色くて青くて黒くて白くて明るい丸い月。
さっきまで自分は何を考えていたのだかも忘れてしまいそうだった。
そうだ、俺は月夜の晩に散歩するといつもなにか出会いがある。
今日もそれを待つとしようか。
赤くて黄色くて青くて黒くて白くて明るい丸い月。
さっきまで自分は何を考えていたのだかも忘れてしまいそうだった。
そうだ、俺は月夜の晩に散歩するといつもなにか出会いがある。
今日もそれを待つとしようか。
「イヤアアアアアアアアアアアアア!」
ああ、どこかで誰かが襲われている。
まあとりあえず助けに行ってみるか。
本当に助けるかどうかは襲われている人間見てから決めればいいし。
そもそもあれが今日の俺に与えられた出会いかもしれない。
俺は悲鳴の方向にバイクを走らせた。
まあとりあえず助けに行ってみるか。
本当に助けるかどうかは襲われている人間見てから決めればいいし。
そもそもあれが今日の俺に与えられた出会いかもしれない。
俺は悲鳴の方向にバイクを走らせた。
俺が見たのは芥子色のセーターを着た女性に襲いかかる首無しライダーだった。
暗くても俺にはよくわかる、あの変態的なファッションセンスを除けば中々好みのタイプだ。
いいやむしろ!
可愛い女の子はちょっと変人なくらいの方が萌える!
なぜなら親しみが持てるから!
暗くても俺にはよくわかる、あの変態的なファッションセンスを除けば中々好みのタイプだ。
いいやむしろ!
可愛い女の子はちょっと変人なくらいの方が萌える!
なぜなら親しみが持てるから!
俺は女性を守るようにその首無しライダーを奴のバイクごと我が愛車IMZ・ウラルwithサイドカー(戦闘仕様)で挽き潰す。
目前の敵の骨を粉砕撃滅するいい音が響いた。
目前の敵の骨を粉砕撃滅するいい音が響いた。
「ライダー!ヴィア・エクスプグナティオ!?
私がマスターにでもなるの?」
私がマスターにでもなるの?」
何を言っているのだろう、頼むから日本語で話して欲しい。
「……ライダーって、仮面ライダー?」
「え、あ、……何でもないです。ってあれ?
よく見たら貴方は…………。」
「お久しぶりです看護婦さん。お変わりありませんか?」
「今は看護師なのです。」
「え、あ、……何でもないです。ってあれ?
よく見たら貴方は…………。」
「お久しぶりです看護婦さん。お変わりありませんか?」
「今は看護師なのです。」
――――――――――ていうか、知り合いだったのだ。
彼女は俺が先日起こした病院破壊事件で病院の建物が崩落する所に巻き込まれた看護婦だった。
俺が思わず助けてしまった後、精神が錯乱していたので放っておいていたのだが……。
俺が思わず助けてしまった後、精神が錯乱していたので放っておいていたのだが……。
「いやあそれにしても探偵さんには二回も助けられてしまいましたね。」
「なに、趣味でやってるから気にしないでください。
それよりもこの辺りは危ないですから……良ければ送りましょうか?」
「いやいや悪いですよ。
三回もお世話になってちゃ申し訳ないです。」
「それを言ったら俺だって前に病院で迷った時に道案内して貰っていますから。」
「ああ、そうだ!
そういえばあの患者さんは今日退院でしたよね!」
「そう……ですね、まあ忙しくて中々あれ以来見舞いにも行けなくて……。」
「それは駄目ですよ、あの子……純ちゃんでしたっけ?
絶対探偵さんのこと好きですよ、罪な人ですねえあんな小さい女の子にまで好かれるなんて。」
「ははは……そうなんですかね?」
「そうですよそれは。」
「なのかなあ?あ、こっちのサイドカーに乗ってください。」
「わぁ、サイドカーなんて始めて乗ります!」
「なに、趣味でやってるから気にしないでください。
それよりもこの辺りは危ないですから……良ければ送りましょうか?」
「いやいや悪いですよ。
三回もお世話になってちゃ申し訳ないです。」
「それを言ったら俺だって前に病院で迷った時に道案内して貰っていますから。」
「ああ、そうだ!
そういえばあの患者さんは今日退院でしたよね!」
「そう……ですね、まあ忙しくて中々あれ以来見舞いにも行けなくて……。」
「それは駄目ですよ、あの子……純ちゃんでしたっけ?
絶対探偵さんのこと好きですよ、罪な人ですねえあんな小さい女の子にまで好かれるなんて。」
「ははは……そうなんですかね?」
「そうですよそれは。」
「なのかなあ?あ、こっちのサイドカーに乗ってください。」
「わぁ、サイドカーなんて始めて乗ります!」
サイドカーに乗り込む看護婦さん。
ところで、サイドカーは運転席より少々低いところにある。
セーターで解らなかったが、上から見ると中々どうしてたゆんとしていらっしゃる。
素晴らしいことだ。
胸は無くても良いが有っても良い。
どちらにせよ均整のとれた麗しい形であれば良いのだ。
でも、この大きさは素晴らしい。それだけで一つの美として認めざるを得ない。
偶然にも立ったこのフラグは大事にせざるを得ないだろう。
修行なんて後回しだ。
友情・努力・勝利とか目の前のおっぱいに比べたら犬の餌なのだ。
ところで、サイドカーは運転席より少々低いところにある。
セーターで解らなかったが、上から見ると中々どうしてたゆんとしていらっしゃる。
素晴らしいことだ。
胸は無くても良いが有っても良い。
どちらにせよ均整のとれた麗しい形であれば良いのだ。
でも、この大きさは素晴らしい。それだけで一つの美として認めざるを得ない。
偶然にも立ったこのフラグは大事にせざるを得ないだろう。
修行なんて後回しだ。
友情・努力・勝利とか目の前のおっぱいに比べたら犬の餌なのだ。
「住所は?」
「えっと、北区の外れですね。ハッピーピエロ北区店の近くです。」
「了解。」
「えっと、北区の外れですね。ハッピーピエロ北区店の近くです。」
「了解。」
バイクは静かに走り出す。
月をかげらせる雲が伸びて辺りは急に暗くなっていた。
月をかげらせる雲が伸びて辺りは急に暗くなっていた。
「そういえば探偵さん、探偵さんって何者なんですか?
ビルを爆破してみたり空飛んでみたり……。」
「え、俺は探偵ですよ。ビル爆破したり空飛ぶだけの。」
「そうですか。」
「そうですね。ところで俺だけ質問されるのもあれなので俺から質問しても良いですか?」
「はい、どうぞ。」
「看護婦さんの名前を教えてください。」
「看護婦さんは看護婦さんです。」
「俺が聞いたのは名前です。」
「そうですか、じゃあ倉光とでも呼んでください。」
「解りました看護婦さん、じゃあそういうことにしておきます。」
「それじゃあ今度は私の質問です。
私をさっき襲った首の無い人は何者だったんですか?」
「都市伝説と呼ばれる物です。あれは首無しライダーかな?」
「なるほどなるほど……。」
ビルを爆破してみたり空飛んでみたり……。」
「え、俺は探偵ですよ。ビル爆破したり空飛ぶだけの。」
「そうですか。」
「そうですね。ところで俺だけ質問されるのもあれなので俺から質問しても良いですか?」
「はい、どうぞ。」
「看護婦さんの名前を教えてください。」
「看護婦さんは看護婦さんです。」
「俺が聞いたのは名前です。」
「そうですか、じゃあ倉光とでも呼んでください。」
「解りました看護婦さん、じゃあそういうことにしておきます。」
「それじゃあ今度は私の質問です。
私をさっき襲った首の無い人は何者だったんですか?」
「都市伝説と呼ばれる物です。あれは首無しライダーかな?」
「なるほどなるほど……。」
何時の間にか質問合戦のようになっている。
面白い、俺と質問合戦しようなんて俺を知る人間は考えない。
だが今俺の前の前にいる彼女は俺をあまり知らないのだ。
ならば良いだろう、どうせだからとことん遊んでやろう。
面白い、俺と質問合戦しようなんて俺を知る人間は考えない。
だが今俺の前の前にいる彼女は俺をあまり知らないのだ。
ならば良いだろう、どうせだからとことん遊んでやろう。
まずはどれくらい狂っているのかを試すか。
「看護婦さん、あの事件の時に貴方は人命は軽いと言っていましたが……。
本当にそうなんでしょうか?」
「それはそうですよ、だってあんな良い人だった院長先生が死んでしまうんですもの。
だったら人間の一人や二人、簡単に死んでも構いませんよね。」
本当にそうなんでしょうか?」
「それはそうですよ、だってあんな良い人だった院長先生が死んでしまうんですもの。
だったら人間の一人や二人、簡単に死んでも構いませんよね。」
交互に質問をするというルールを無視してたたみかける。
「人間の一人や二人死んでも良い、それは正しいのでしょうか?
貴方はさっき襲われて悲鳴をあげた。
前に貴方を助けた時も貴方は恐怖だけでなく安堵の色を見せていた。
貴方自身は死にたくないんじゃないですか?」
「それはそうですよ、私はまだ死にたくないです。」
「貴方は人間じゃないですか。」
「ええ、人間です。人間だけどそれ以前に私です。」
「ふぅん……、そうですか。」
「じゃあ私からの質問を……。」
「ああ、【ちょっと待って】ください。」
貴方はさっき襲われて悲鳴をあげた。
前に貴方を助けた時も貴方は恐怖だけでなく安堵の色を見せていた。
貴方自身は死にたくないんじゃないですか?」
「それはそうですよ、私はまだ死にたくないです。」
「貴方は人間じゃないですか。」
「ええ、人間です。人間だけどそれ以前に私です。」
「ふぅん……、そうですか。」
「じゃあ私からの質問を……。」
「ああ、【ちょっと待って】ください。」
狂う素質が有るかどうかのテストは及第点だ。
バイクを運転しているくせに隣に座っている彼女の瞳を覗き込んでお願いをする。
決めた、この娘で遊ぼう。
バイクを運転しているくせに隣に座っている彼女の瞳を覗き込んでお願いをする。
決めた、この娘で遊ぼう。
「もう、仕方ない探偵さんですね。」
「ありがとうございます。いや、【貴女に興味が出てきた物ですから】。」
「ありがとうございます。いや、【貴女に興味が出てきた物ですから】。」
言葉が浸透していく。
俺の言葉が、俺の気持ちが、相手の意志を無視して浸透していく。
相手は内側へ入り込んできた俺の気持ちを何時しか自分の気持ちと取り違える。
そして俺は相手のわずかな言葉から相手の気持ちを想像し、自分の中に取り込む。
勝手に想像して勝手に取り込んだ物を相手の内側にまた流し込む。
フィルターを使って都合の良いものだけを抽出するような作業。
俺の言葉が、俺の気持ちが、相手の意志を無視して浸透していく。
相手は内側へ入り込んできた俺の気持ちを何時しか自分の気持ちと取り違える。
そして俺は相手のわずかな言葉から相手の気持ちを想像し、自分の中に取り込む。
勝手に想像して勝手に取り込んだ物を相手の内側にまた流し込む。
フィルターを使って都合の良いものだけを抽出するような作業。
「貴女は人間だけどそれ以前に自分は自分だと言いましたね。
だから人間が死んでも良いけど、自分は死にたくない。
ふむ、そうですよね。
世の中なんて無くなっちまえ、ただし自分除いて。
良くある話だ。
でもね、無くなっちまえとか、死んでも良いとか、
そんなこと考えている時にそう思っている対象って大抵人間全体じゃないんですよ。
むしろ人間ですらないことが多い。
貴女だって本当に無価値に思えたのは人間の命じゃない。」
「じゃあなんなんですか?」
「都市伝説のような非日常ですよ。
貴女が尊敬していた太宰院長の命を、尊い命を容易く奪った非日常。
貴女が非日常と言う言葉にどんな価値を認めていたか私には解らない。
でも心優しい一人の老医師の命をあんな簡単に奪う物ならば、
非日常という存在には価値なんてない。
そんなものただただ陰惨で残酷なだけだ。
そう思って貴女は非日常に絶望した。
でもそれを認めたくないから、貴女は人の命の価値がないと言うことにした。
…………なんて、戯れ言ですよ。探偵って仕事やってるとつい、こんな馬鹿なことを言ってみたくなる。」
だから人間が死んでも良いけど、自分は死にたくない。
ふむ、そうですよね。
世の中なんて無くなっちまえ、ただし自分除いて。
良くある話だ。
でもね、無くなっちまえとか、死んでも良いとか、
そんなこと考えている時にそう思っている対象って大抵人間全体じゃないんですよ。
むしろ人間ですらないことが多い。
貴女だって本当に無価値に思えたのは人間の命じゃない。」
「じゃあなんなんですか?」
「都市伝説のような非日常ですよ。
貴女が尊敬していた太宰院長の命を、尊い命を容易く奪った非日常。
貴女が非日常と言う言葉にどんな価値を認めていたか私には解らない。
でも心優しい一人の老医師の命をあんな簡単に奪う物ならば、
非日常という存在には価値なんてない。
そんなものただただ陰惨で残酷なだけだ。
そう思って貴女は非日常に絶望した。
でもそれを認めたくないから、貴女は人の命の価値がないと言うことにした。
…………なんて、戯れ言ですよ。探偵って仕事やってるとつい、こんな馬鹿なことを言ってみたくなる。」
自分で言っておいてあれだが自分は何を言っているのだろうか。
非日常の無価値さを認めたくないから、人の命の価値をおとしめて自らの平衡を保った。
だとしたら彼女はどれだけ非日常に夢を抱いているのだ。
非日常の無価値さを認めたくないから、人の命の価値をおとしめて自らの平衡を保った。
だとしたら彼女はどれだけ非日常に夢を抱いているのだ。
「…………じつは、そうなのかもしれません。」
え゛っ?
……えっ?
―――――――ええええ!?
どんだけ非日常に夢抱いちゃっているのこの子!?
……えっ?
―――――――ええええ!?
どんだけ非日常に夢抱いちゃっているのこの子!?
「私、小さい頃から絵本が大好きだったんです。
お伽噺には何時でも出てくるじゃないですか、白馬の王子様。
ああいうのが何時か自分にも来てくれると信じて生きていたら何時の間にか大人になっていて……。
今も実家に暮らしていて両親に迷惑かけ続けで……
趣味なんて絵本の代わりに何時の間にか嵌っていたゲームしかなく……。
女子力ダウンってレベルじゃない残念な現実ですよ。
そしてそこから逃げる為にまたゲーム等に逃避して……。」
お伽噺には何時でも出てくるじゃないですか、白馬の王子様。
ああいうのが何時か自分にも来てくれると信じて生きていたら何時の間にか大人になっていて……。
今も実家に暮らしていて両親に迷惑かけ続けで……
趣味なんて絵本の代わりに何時の間にか嵌っていたゲームしかなく……。
女子力ダウンってレベルじゃない残念な現実ですよ。
そしてそこから逃げる為にまたゲーム等に逃避して……。」
たゆん
再びチラリと胸を見る。
あなたの女子力はどうみてもMAXです。
完全にカンストどころかオーバーリミットしてメーター振り切れているので安心してください。
再びチラリと胸を見る。
あなたの女子力はどうみてもMAXです。
完全にカンストどころかオーバーリミットしてメーター振り切れているので安心してください。
「でも看護婦さん。俺思うんですが逃避するって悪いことですかね?」
「えっ?」
「俺なんてそこそこまともな家の生まれだったのですが家業が嫌で逃げ出しました。
商才だけは両親に似たらしくって探偵事務所は切り盛りできているんですけど……
まあこれも逃げですよね。
あと昔付き合っていた女性が最近結婚するらしいんですけど、
その結婚相手が俺のことをある理由から滅茶苦茶恨んでいてデスねえ……、、
なんていうかこのまま放っておくと後々面倒になりそうなんですけど俺は何も出来ていません。
まあこれもまたまた逃げですよええ。
とまあ学校町の名探偵と名高い笛吹さんですらこれですよ。
人間ってのはむしろ逃げない方が難しい。」
「名探偵……?」
「さっきの首無しライダーみたいなの退治して回っているんですよ。
料金は応相談、名刺には書いてませんけどね。
ちなみに暇な時は浮気調査やら失せ物探しやら人探しやらやってます。
都市伝説っていうかそっちの筋ではそこそこ有名なんです、そこそこ。」
「へぇ……。」
「で、まあさっきの逃げる逃げないの話に戻りますけどね。
現実から逃げるのは決して悪くないです。
ただ追いつかれるだけなんですから。
ただ追いつかれた時に痛い目に遭うだけですから。最悪振り切ればいい。
此処で問題なのはまたも貴女の言葉が貴女の心理を正確に表していないことなんです。
あなたは貴女が逃げているのは現実じゃなくて日常です。
ストレスの多い普段の生活から逃げたいと思っているだけです。
でも、貴女が逃げ道にしていた非日常も今回の事件で最低だと解ってしまった。
だから貴女は人の命の価値を切り捨ててまで非日常という自分の為の逃げ場を維持しようとした。」
「えっ?」
「俺なんてそこそこまともな家の生まれだったのですが家業が嫌で逃げ出しました。
商才だけは両親に似たらしくって探偵事務所は切り盛りできているんですけど……
まあこれも逃げですよね。
あと昔付き合っていた女性が最近結婚するらしいんですけど、
その結婚相手が俺のことをある理由から滅茶苦茶恨んでいてデスねえ……、、
なんていうかこのまま放っておくと後々面倒になりそうなんですけど俺は何も出来ていません。
まあこれもまたまた逃げですよええ。
とまあ学校町の名探偵と名高い笛吹さんですらこれですよ。
人間ってのはむしろ逃げない方が難しい。」
「名探偵……?」
「さっきの首無しライダーみたいなの退治して回っているんですよ。
料金は応相談、名刺には書いてませんけどね。
ちなみに暇な時は浮気調査やら失せ物探しやら人探しやらやってます。
都市伝説っていうかそっちの筋ではそこそこ有名なんです、そこそこ。」
「へぇ……。」
「で、まあさっきの逃げる逃げないの話に戻りますけどね。
現実から逃げるのは決して悪くないです。
ただ追いつかれるだけなんですから。
ただ追いつかれた時に痛い目に遭うだけですから。最悪振り切ればいい。
此処で問題なのはまたも貴女の言葉が貴女の心理を正確に表していないことなんです。
あなたは貴女が逃げているのは現実じゃなくて日常です。
ストレスの多い普段の生活から逃げたいと思っているだけです。
でも、貴女が逃げ道にしていた非日常も今回の事件で最低だと解ってしまった。
だから貴女は人の命の価値を切り捨ててまで非日常という自分の為の逃げ場を維持しようとした。」
「探偵さん、気になるんですけど……。」
「なんですか?」
「探偵さんが私を分析したことで私は日常にも非日常にも逃げ場がなくなっちゃったんじゃないですか?」
「いいえ、貴女はこれからも非日常を逃げ場にし続けたらいい。」
「え、だって私がもう非日常にも絶望しているって言ったじゃないですか。」
「ええ、でも日常と非日常は違います。
非日常は自らの意志で変えてしまいやすい。
日常は貴女以外にも沢山の貴女と関係有る人間が干渉してきます。
家族とか友人とか同僚とかですね。
そうするとそれを変えることに遠慮するでしょう?
でも非日常ならそんな心配要らない。
なんせ貴女の非日常を知るのは私と貴女だけだ。
貴女は貴女の望むように貴女の非日常を楽しめばいい。
たとえば……、コスプレしてさっきみたいな都市伝説を倒してみるとか。
軽くヒーロー気分ですよ?」
「そんなの無理ですよ、だってあんなお化けみたいなの倒せる訳無いじゃないですか!」
「それが】【貴女の】【思い込みだ。」
「なんですか?」
「探偵さんが私を分析したことで私は日常にも非日常にも逃げ場がなくなっちゃったんじゃないですか?」
「いいえ、貴女はこれからも非日常を逃げ場にし続けたらいい。」
「え、だって私がもう非日常にも絶望しているって言ったじゃないですか。」
「ええ、でも日常と非日常は違います。
非日常は自らの意志で変えてしまいやすい。
日常は貴女以外にも沢山の貴女と関係有る人間が干渉してきます。
家族とか友人とか同僚とかですね。
そうするとそれを変えることに遠慮するでしょう?
でも非日常ならそんな心配要らない。
なんせ貴女の非日常を知るのは私と貴女だけだ。
貴女は貴女の望むように貴女の非日常を楽しめばいい。
たとえば……、コスプレしてさっきみたいな都市伝説を倒してみるとか。
軽くヒーロー気分ですよ?」
「そんなの無理ですよ、だってあんなお化けみたいなの倒せる訳無いじゃないですか!」
「それが】【貴女の】【思い込みだ。」
なんとなく、遊びが最終段階に入ったと感じる。
あと少し方向性を示すだけで彼女は完全に狂う。
あと少し方向性を示すだけで彼女は完全に狂う。
「そもそも都市伝説を倒すなんて簡単だ。
貴女も都市伝説の力を借りればいい。
いいや、それすら必要ない。
たとえば銃弾で眉間をぶち抜く。
もしくは毒薬でこっそりと命を奪う。
あとは俺みたいな人間を騙して都市伝説を無料で倒させても良いかもしれない。
まあ方法は任せますけど。
ありとあらゆる都市伝説について調べ抜いてその攻略法を探求していけば……
極論ですが、只の人間でも都市伝説は倒せる。
そもそも妖怪だのお化けだの都市伝説の元になったもの達は
『人間に退治される為に生まれた』存在だと言われていますから。
彼等も所詮人間の望みから生まれた以上、人間に消されるのが宿命なんでしょうね。」
「…………なるほど。」
「わかってくれましたか?
只の人間だからって非日常に巻き込まれるだけである必要は無い。
むしろ楽しまないといけません。
物事は何でもハレとケがあります。
非日常を自分の望むように変革すれば、きっと楽しい人生を送れますよ?」
貴女も都市伝説の力を借りればいい。
いいや、それすら必要ない。
たとえば銃弾で眉間をぶち抜く。
もしくは毒薬でこっそりと命を奪う。
あとは俺みたいな人間を騙して都市伝説を無料で倒させても良いかもしれない。
まあ方法は任せますけど。
ありとあらゆる都市伝説について調べ抜いてその攻略法を探求していけば……
極論ですが、只の人間でも都市伝説は倒せる。
そもそも妖怪だのお化けだの都市伝説の元になったもの達は
『人間に退治される為に生まれた』存在だと言われていますから。
彼等も所詮人間の望みから生まれた以上、人間に消されるのが宿命なんでしょうね。」
「…………なるほど。」
「わかってくれましたか?
只の人間だからって非日常に巻き込まれるだけである必要は無い。
むしろ楽しまないといけません。
物事は何でもハレとケがあります。
非日常を自分の望むように変革すれば、きっと楽しい人生を送れますよ?」
俺は微笑む。
彼女の顔が輝く。
眼と眼があってそこに一瞬の間が生まれた後、彼女は口を開いた。
彼女の顔が輝く。
眼と眼があってそこに一瞬の間が生まれた後、彼女は口を開いた。
「なるほどなるほど……そうですね!
最初からそうすれば良かったんだ、ありがとうございます!」
最初からそうすれば良かったんだ、ありがとうございます!」
――――――――――――――ああ、完璧だ。
もともと狂気に陥る素質が有る人間を完璧に堕とすのは何時でも楽しい。
だって彼等が本当に幸せそうにしてくれるから。
もともと狂気に陥る素質が有る人間を完璧に堕とすのは何時でも楽しい。
だって彼等が本当に幸せそうにしてくれるから。
俺の作業が終わるとそこから先はたわいもない世間話をした。
お気に入りの中華料理店とか、お気に入りの麻婆豆腐とか。
そうやって話している内に何時の間にか彼女の家の前までついていた。
お気に入りの中華料理店とか、お気に入りの麻婆豆腐とか。
そうやって話している内に何時の間にか彼女の家の前までついていた。
「困ったことがあったら何時でも言ってください。
これ、私のプライベートの方のメールアドレスと携帯の電話番号ですから。
都市伝説の倒し方までなら無料で教えられますし。」
「わぁ、ありがとうございます!
あれ……今携帯もって無いんですか、赤外線通信の方が早いですよ?」
「そういえばそれもそうか。あんまりやったこと無いんだよなあ……。
これで大丈夫ですか?」
「はい、ばっちり登録されました!」
これ、私のプライベートの方のメールアドレスと携帯の電話番号ですから。
都市伝説の倒し方までなら無料で教えられますし。」
「わぁ、ありがとうございます!
あれ……今携帯もって無いんですか、赤外線通信の方が早いですよ?」
「そういえばそれもそうか。あんまりやったこと無いんだよなあ……。
これで大丈夫ですか?」
「はい、ばっちり登録されました!」
おいおい、白衣の天使のメアドゲットできちゃったよ。
流石俺、流石名探偵俺。
故意……じゃなくて恋の行方も操作……じゃなくて捜査しちゃうぜ!ってか。
流石俺、流石名探偵俺。
故意……じゃなくて恋の行方も操作……じゃなくて捜査しちゃうぜ!ってか。
「それじゃあ今日はここのところで。」
「はい、今日は本当にありがとうございました。
今度こそお礼させてくださいね、その中華料理店とかでご飯でもごちそうさせてください。」
「良いんですか?嬉しいなあ、無駄遣いして今週ピンチだったんですよ。」
「はい、今日は本当にありがとうございました。
今度こそお礼させてくださいね、その中華料理店とかでご飯でもごちそうさせてください。」
「良いんですか?嬉しいなあ、無駄遣いして今週ピンチだったんですよ。」
今週ピンチとか当然嘘ですごめんなさい。無駄遣いなんてする性格じゃないです。
自分が持っているビルのテナント代も入っているのでほくほくです。
でもちょっとだらしないところを見せた方が良いじゃないですか、可愛らしく見えて。
心の中で看護婦さんに謝りながら俺はMZ・ウラルで事務所に向けて走り出した。
【上田明也の奇想曲32~月夜に踊る踊る踊る~fin】
自分が持っているビルのテナント代も入っているのでほくほくです。
でもちょっとだらしないところを見せた方が良いじゃないですか、可愛らしく見えて。
心の中で看護婦さんに謝りながら俺はMZ・ウラルで事務所に向けて走り出した。
【上田明也の奇想曲32~月夜に踊る踊る踊る~fin】